感染症診療の原則

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歴史に残る暴言 もしくは 救いの言葉か

2013-06-19 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
17日にCRSの当事者の人たちが厚生労働大臣あての文書を結核感染症課の人に渡したということはすでに報じられていましたが、17日の時点では大臣コメントはありませんでした。
そして、18日のぶらさがり会見では、すごいお言葉が!

「風疹はまだ1万人」

インタビュー動画はこちらでみることができます。
「ことしの風疹患者数、1万102人に 厚労相は財政支援に否定的」

お金もないしブツもない。
めちゃくちゃですね。そもそも感染症がなんだかわかってないみたいですね。ふざけんなーばかやろー的な反応をみた18日でした。

もちろん、大臣の意見は担当部署からレク後にきまってますから、行政担当部署のご意見ということかもしれませんが。
怖い国ですね。同じ省庁内では少子化対策とかいってんですよね?

いや、まてよ。

これは「わざと」いったのではないか?とニュース深読みのさらに深読みをしてみました。
不作為責任で国をうったえたときに、国がさっさと負けて健康被害が生じた当事者や家族を救済するための自爆劇なのかも?

だって、あまりにおかしい発言じゃないですか~。1万5千人ならいいわけ?3万人なら動くの? 
通常論点になるのは、その当時の海外や科学の知見レベルにてらしあわせて適切な対策をとらなかったじゃないかというところがつっこみどころなわけですから(問題指摘があったのにそれを軽視したとか、救済策があるのにしなかった、遅れたとか)。

他の感染症と比較して・・ってそれは平時での理屈ですしね。
失策のエビデンスをつみあげて裁判をすすめやすくしているのではないかと勘ぐった訳です。はい。ただの勘ぐり。
メディアにつっこみどころをリークしているようにしかみえませんでした。

もっと炎上させて、不活化ポリオのときでさえしなかった緊急輸入にもちこむための外堀を自らうめているんだとしたら歴史に残る名言だった、、というstoryになるかもしれません。


実際には、1万人以上どころではないわけですしね。


CRSだって11人ですむわけないですよ。いま、小児の専門病院で診断待ちの赤ちゃんが何人いるのか。

間もなく出産、、、赤ちゃにどれくらい影響がでるのかわからない、、という中で不安な思いでその日を迎えるお母さんや家族がどれくらいいるのか。
そのようななかで、周囲に中絶をすすめられて涙している女性がどれほどいるのか。

当事者の手記が公開されていますから、ぜひ読んでみてください。
「妊娠中に風疹になって」


以下はMRICからの転載です。
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「先天性風疹症候群は氷山の一角」

『風疹の流行を止めよう緊急会議』
共同代表 太田 寛 久住 英二

2013年6月14日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

2013年第23週(6月3日~6月9日)に、あらたに1人が先天性風しん症候群(CRS)と報告されました(データ出典:東京都感染症情報センター http://survey.tokyo-eiken.go.jp/epidinfo/weeklyzensu.do )。風しんが流行していた東京都の方です。

これで、昨年秋から11人目になりました(データ出典:国立感染症研究所 http://www.nih.go.jp/niid/ja/rubella-m-111/700-idsc/3516-rubella-crs-20130424.html )。

ですが、これは氷山の一角に過ぎず、もっと大勢のCRS患者が発生しているはずです。
このような報告は必ず『実際の患者数 ≫ 報告数』だからです。

以下のようなコメントが、可兒佳代さんの Facebook に寄せられています。
可兒さんのお子さん、妙子さんは、CRSによる心臓疾患が原因で18歳で亡くなりました。


////////引用はじめ///////////

先天性風疹症候群はいったい何?っと聞かれます。
私のまわりには妊娠中に風疹になって目が白くなる白内障で生まれてすぐ手術したかたが三人います。
目 と心臓と難聴のお子さんもいるし。
どこまでが先天性風疹症候群なんですか?
ちなみに甥っ子も妊娠中の風疹で白内障の手術してレンズ??とってぶっとい メガネかけてます。
まわりにたくさんの妊娠中に風疹の知り合いいますが、 みんな知らないみたいなんですよ。
またちがうのですかね?

////////引用おわり//////////

CRSとして届け出されていない、CRS患者さんが沢山いらっしゃる、ということです。

可兒さんも「妙子の同級生でもお母様が妊娠中に風疹に罹っての難聴の人は沢山いました。この子達はCRSとは言われてません。」と、不思議だったそうです。

かつては、聾学校や病院へのアンケート調査によるCRS患者の全国調査が行われていましたが、1993年を最後に行われていません。これらによると 1963~92年に639名、1978~93年に301名のCRS患者さんが見つかりました(病原微生物検出情報月報 http://idsc.nih.go.jp/iasr/21/239/tpc239-j.html )。

感染症の法律が変わり、1999年4月1日より、医師は CRS患者を診断した場合、報告が義務づけられました。届け出の要件は、白内障又は先天性緑内障、先天性心疾患、難聴、小頭症、精神発達遅滞などから1項 目以上の症状を有し、かつ病原体診断として、風しん抗体価の上昇やウイルスが検出されていること。かつ、出生後の風しん感染でないこと、です(厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-10.html )。

報告が義務づけられていても、必ずしも全てが報告されるわけではありません(感染症診療の原則 http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/10c0e6551493eb428713b764d1225bde )。梅毒は報告率が5%前後という推計値もあります。

そして、病原体診断が必要であるため、出生後しばらくして難聴や心疾患に気づいても、そのころにはウイルスがいなくなっていたり、抗体価が下がってしまえば、CRSとしては報告できません。

あなたの大切な人が、幸せに暮らせるように願っています。
どうか、一刻も早くワクチンを接種して、風しんの流行を止めて下さい。

『風疹の流行を止めよう緊急会議』は、6月16日日曜日にセミナー( http://www.stoprubellajapan.org )を開催し、そこでは可兒佳代さんらCRS患者さんを子にもつ母親に、ご自身の経験をお話しいただきます。どなたでも参加自由です。
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