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免疫抑制療法下でのタミフル耐性遺伝子H1N1感染(米国)

2009-08-20 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
免疫に問題のある人はインフルエンザのハイリスク層に位置づけられています(日本では「感染弱者」というそうです)。

米国ワシントン州で白血病の治療のため移植を受けた2名がタミフル耐性遺伝子をもつインフルA/H1N1に感染し、その報告がMMWRの8月14日号に載っています。

オーストラリアの症例を先に紹介しましたが、このレポートの2例目でも、未承認のリレンザの注射剤が使用されていました。

〔1例目〕
2008年11月に白血病と診断された10代の男性が、移植のため4月29日入院、
5月7日実施。これより前から免疫抑制剤が投与されていた。

5月31日に咳・発熱症状があり、飛沫感染対策がとられ、スタッフはN95マスクをケア時に使用。この日の検査でインフルA(H1N1)。
6月1日から臨床試験として10日間のタミフル治療開始。
6月4日に新型インフルと判明し、6月20日まで20日間の治療コースへと延長となった。6月7日に退院し、その後も服用継続。

7月6日の検査結果でもA陽性であったためタミフルは7日から再開された。

7月14日にカテーテル刺入部感染で再度入院をしてときの検査でもインフルエンザA陽性のため、タミフル高用量(150 mg 経口、2回/日)となり、7月18日に退院。治療は8月6日に終了。

長期間ウイルスが検出されたため、耐性をうたがいCDCに検体を送付。8月5日にCDCに届いた検体は、

5月31日 タミフル感受性
6月4日  タミフル感受性
6月11日 タミフル耐性【H275Y】
7月14日 タミフル耐性【H275Y】
7月30日 タミフル耐性【H275Y】

シアトル-King群は院内スタッフの調査を行ったがこの事例の前後にインフルエンザ様症状は確認されなかった。


〔2例目〕
2009年3-4月に免疫抑制療法2クール目の40代女性白血病症例。
6月21日に化学療法のための入院時に呼吸器症状があり、院内の検査では判定できなかったが、ワシントン大学のラボからはインフルAの報告が6月26日に届いた。

高用量タミフル(150mg経口、2回/日)とリマンタジン(100mg経口、2回/日)を6月26日~7月1日に投与。
7月3日にウイルスは新型novel influenza A (H1N1)と判明したため、再び高用量タミフル+リマンタジン再開。呼吸症状が悪化したため、酸素も投与された。

7月6日と14日の鼻腔検査でもインフルA、16日と28日のBALでも陽性であった。

長期間ウイルスが検出されるため、8月4日に検体をCDCに送付、感受性検査を依頼。

8月6日にCDCが実施した検査では、
6月21日 感受性
7月28日 タミフル耐性【H275Y】

耐性遺伝子判明後、ザナビビルの吸入を試みたが継続できず、8月7日にザナビビルの注射剤(緊急開発新薬対象、compassionate use)とリバビリンのエアロゾル療法が開始された。

8月13日現在、患者は入院中でザナミビルの注射剤での治療を継続、リバビリンは経口剤に変更。入院延長は好中球減少と骨髄回復の問題、発熱、感染、ニューモシスチス肺炎のため。

8月10日にCDCは取り寄せた過去の検体を再度検査し、7月14日の時点でのH275Y変異が確認された。

入院後から適切な予防策がとられており、事後の調査の結果、200名前後の病院スタッフでインフルエンザ様症状の報告はなかった。

Oseltamivir-Resistant Novel Influenza A (H1N1) Virus Infection in Two Immunosuppressed Patients --- Seattle, Washington, 2009
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm58d0814a1.htm
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