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※数字修正 HPVワクチン(俗称「子宮頸がんワクチン」)失神「多発」ニュース

2010-12-28 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
読売新聞「子宮頸がんワクチンで副作用、失神多発」のニュースがネット上で話題になっています。

もともとこのワクチンへの反対意見や啓発の仕方への疑問視は各国・専門家の間にもあるのですが、特に反対派や不安層にインパクトをもたらしているようです。

読売新聞の記者は専門家への確認などをとったのかわかりませんが、ワクチンに詳しい医師等に確認をすれば、ネガティブにとられないような書きかたもあるのではないか、が感想です。

まず、グラクソ・スミスクラインは接種上の注意文書のなかで、この反応がおこりうることを説明し、接種後30分ほど医療機関で観察時間をおくことをすすめています。

そして重要な文書はこちら。
日本小児科学会予防接種感染対策委員会 声明 「予防接種後の失神に対する注意点ついて」 
一部ペースト紹介:
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注意すべき対象: 海外の報告では、ヒトパピローマウイルスワクチンの接種対象の関係上、女性の報告が多が、男性も少なくはない、
10 歳以上、注射への恐怖心が強い人、起立性調節障害(体位性頻脈症候群も含む)を有する人。
主な症状 : 顔面蒼白、全身の冷感、血圧低下と徐脈、失禁、失神または意識消失。
鑑別: アナフィラキシー(循環器症状のみではアナフィラキシーとならない)。
好発時間 : 長時間立位を持続した時。特に暑い時期。
海外の報告では、接種後5 分以内が52.2%、15 分以内が69.6%とされる。
機序: 痛み、恐怖、興奮などに引き続く血管迷走神経反射。
処置: 下肢を軽く挙上し安静臥床させる。必要に応じて輸液や酸素投与を行う。
予防: 米国ACIP(予防接種諮問委員会)は、接種後15 分は椅子に腰掛けるか、体を横たえる。
また、接種に際し、出来る限り不安の除去や疼痛対策を行うよう勧告している。
失神をおこす恐れがある場合には、あらかじめベッドに臥床の上で接種する方法がある。
接種後30 分は座って体調の変化を観察してから、帰宅することが望ましいと考える。
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麻疹排除計画のため、MRワクチンを中学1年、高校3年相当の人に接種することになったときに、この反応のことが話題になりました。
このため小児科の先生達はよく知っていますが、MRワクチンを接種しない診療科の医療者には「どびっくり!」な人もいたかもしれません。

このワクチンだけでなく、他のワクチンでもおきますし、採血や献血のあとでもおきることは知られています。

用語の説明はこちら日本救急医学会「迷走神経反射」

ところで、「副作用」ですが、「副反応」「有害事象」という用語がつかわれることもあります。厳密には何をさしているのか、がワクチンでは特に重要。

ワクチン接種後におきた何らかのイベント情報を集める情報システムが各国にあります。
とりあえず全部報告をしてもらい、専門機関がワクチンとの関連性を検討します。

ワクチン接種後に、食事をして歯が欠けても報告されるし、運転をして事故ればそれも報告されます。
転んで骨折もモチロン報告されます。

ただし、なぜ転んだのか?を検討したときに、失神して階段を落ちたというような場合、ワクチン関連のイベントになり、失神について深く検討されることになります。

このような報道の影響として、かえって「こわいぞ~」「痛いのやだ~」と緊張が高まればこの反応を誘発するかもしれませんし、アナウンス効果で報告も増えるかもしれませんね。

ヒステリー反応として症状が出ることもあるので注意(^^;)。
(採血する前に、採血の緊張に耐えられず倒れた人も・・)

米国CDCのHPVワクチンの安全性に関するサイトをみてみましょう。

2006年6月に4価のGardasilが認可され、2009年10月に(日本で現在使われている)Cervarixが認可されました。
Cervarixは2010年9月30日の時点で、米国内で報告されている有害事象は12件(CDCの下記のページはこのようになっています。間違いかも?)。

※注意:CDCの2010年の会議スライド資料では下記の様になっています
有害事象の報告は264例、深刻な報告は94(36%)。


Gardasilはこれまでに3200万回接種されており、2010年9月30日までに17160件の有害事象報告がありました。このうち8%がシリアスなものとして検討の対象になりました。

有害事象報告は全体で5%。ここには接種したところがかゆい、腫れた、頭痛など軽微なものが含まれます。

深刻な報告は1373件ですので、全体で見ると0.004%。
(一見多いようですが、分母が大きすぎて、ワクチン接種した人がその後別の理由で死亡して、詳細が不明というようなまぎれこみも多いとわかっているので、実際にはもっと小さな数字になることは、1次情報にあたればすぐわかります)

シリアスではないものとして、「 fainting, pain, swelling at the injection site (the arm), headache, nausea, fever」がならんでいます。

この、フェインティングが思春期に特徴的といわれるもので、軽微なものにくくられています。

Fainting is common after injections and vaccinations, especially in adolescents. Falls after fainting may sometimes cause serious injuries, such as head injuries, which can be prevented by closely observing the vaccinated person for 15 minutes after vaccination.

よろめいてケガするといけないから、15分くらい様子見ましょうね、です。
日本では大事をとって30分になっていますが、待合室が狭いので現実的ではありません。
(でも、自転車や運転はやめたほうがいいよといいます)

詳細はこちら

読売のニュースでは約40万件の接種があり、失神、それに似た症状は23件。
0.00575%です。
報告されていないものもあるとおもいますので、実際にはこれより多いかなとはおもいますが。

10万人に6人。

で、これは「多発」? なわけですが。

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