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感染症と「社会の暗部」

2009-05-31 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
記者会見をマニュアル思考でした行政、関係無い人たちには不要な個人に関わる情報を掲載したメディア。

病気の疑い、病気になった「ケアを必要とする」人たちが責められ追い込まれた原因は記者会見や報道だけだったでしょうか。

医療者は個人を守る砦でなくてはならないと思うことの多い数週間でした。

疫学データは対策上必要でしたし、サマリーの説明が行政からあってもいいのかもしれませんが、本来個人情報を守る立場の専門家に白衣を着せて(記者会見に白衣はパフォーマンスでしかない)、個人の病状説明をする必要性はなかったはずです。
多くの人が恐怖を感じた映像でした。


神奈川新聞がていねいに「その後」をおっています。
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■社会の暗部”が噴出/横浜 高校生インフルの疑い(5月31日カナコロ)

「横浜市内の高校生が国内初の新型インフルエンザ感染疑い」。今月一日未明、厚生労働省が緊急会見で明らかにした。「疑い」が晴れたのは、十六時間後。その間、学校は「パニック」に見舞われた。あれから一カ月。生徒を思い、安堵(あんど)の涙を流した校長の胸にはしかし、言い得ぬ恐れが深く沈んだままだ。あの日、目の当たりにしたのは、すぐそこに潜む社会の暗部-。
 
■犯人捜し

校長は、いまも不思議に思っていることがある。
「厚労省の発表は校名を伏せていた。それがなぜ広まったのか」

舛添要一厚労相が会見場に姿を見せたのは午前一時三十五分。その二十分前、インターネットの匿名掲示板では、すでに”犯人捜し”が始まっていた。

「横浜の私立高校」「四月十日から二十五日にカナダへ修学旅行」

テレビの速報の断片的な情報を基に、書き込みが重ねられた。「日程で特定できそうだな」。そして二百二十五件目。「この時期カナダは○○○○(学校名)だろ」。会見が始まる五分前のことだった。

「その十分後です。報道機関から(校長の)自宅に電話がかかってきた。それからほぼ十分おきに三、四件。私の電話番号まで、どこで調べたのでしょうか」

■パニック

校長がタクシーを飛ばして学校に駆け付けると、そこにはすでに報道陣約四十人が詰め掛けていた。アンテナを立てた中継車、上空にはヘリコプター。駆け付ける教員を、待ち構えたカメラが追った。

 「まさにパニックだった」

明けて朝。学校周辺の薬局からマスクが消えた。「生徒がどの交通機関を使っていたか教えろ。うつされていたらどうするんだ」。電話口で声を荒らげる、近隣に住むという匿名の男性。

「業者が調べたところ、学校のホームページに一時間で千百三十万件のアクセスが殺到し、パンクしていた。二百万人がつながらない状態だったそうです」

模擬試験に申し込んだ生徒について、受験業者から「外出自粛なら受けに来ませんよね。代金は返しますから」と、念押しするような連絡が入った。

■抗議

「教員によると、他校の部活動の顧問から『大会でおたくと対戦することになったら、うちは棄権する』と言われたそうです」

暗に学校を非難する圧力が、教育関係者からもかけられた。

生徒の「疑い」は晴れたが、同様に北米研修に参加した残りの五百五十三人の健康に不安があるとして、休校が決まった。問題は部活動だった。大会に出られない三年生は、「最後の試合」を迎えることなく引退することになる。

「一部の生徒は泣きながら校長室に直談判にやってきた。保護者もです。つらかったが、周囲の状況を考えても(出場という)選択の余地はなかった」

十二日、校長はホームページにメッセージを載せた。「声を大きくして訴えたい。すべての生徒、ご家族、先生方、学校そのものが被害者だったことを」

疑いの段階で詳細を公表した厚労省と横浜市、過熱した報道、ネットを介してパニックを増幅させた社会への、ささやかな抗議だった。
http://www.kanaloco.jp/localnews/entry/entryivmay0905826/
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今回は症例の多くが未成年の、より手厚いケアや保護を必要とする人たちでした。

通学路で待ち受けされ了解もなくカメラを向けられたのは高校生でした。
空港で長時間隔離されたのも高校生でした。
病床から「すみませんでした」という手紙を書いたのも米国から帰国して体調不良だった女子高校生でした。

説明不十分のまま突然学校が休みになり、自宅から出るなといわれたのはもっと小さい子どももふくまれていました。

心理的なケア、信頼を確認しあう時間なども必要なのだとおもいます。

医療の現場では、たったひとことでもそのような配慮をしていることをぜひ伝えてください。

検査、入院、退院、と・・・慌ただしく(それがお役所の都合であっても)病院が指示しているかのように受け取られるのは仕方ありませんが。
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