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術前にHIV検査を導入している医療機関

2011-01-04 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
昨年、医療機関が「患者に費用を負担出せてルチンでHIV検査をしていた」のはケシカラン的ニュースが何度か報道されました。
(医療機関は過去の記録をもとに、その検査費用を患者に返金するそうです)

病院ケシカランね!というモードでの記事を書きたい、Oldメディアなわけですが、現場においてどのような問題があるのか?ということまでつっこんでいる記事はあまりみかけません。

他の先進国ではルチン検査を拡大しており、それは早期診断という、個人にも社会にも意味があり、結果的に医療費抑制にもなるので意味がある・・・というような様々な切り口があるので、医療報道としてもぜひ足をつかって取材記事にしてほしいところです。

と、思っていたところ朝日新聞横浜総局が1月4日に記事をのせていました。
記者の解釈や意見などは特にもりこまれていないような印象です。

「3分の2の病院、手術前にHIV検査 費用、患者負担も」

2010年11~12月に、神奈川県内公立病院・大学病院(46病院)に書面と電話で調査。
30病院から得られた回答では、

■30病院中20病院が手術前にHIV検査を実施
■どの病院も医療者から患者に検査を勧め、同意を取って検査
■HIV検査の費用は500円~5200円と差あり
■17病院は病院負担、3病院は患者負担

今回の記事は、今までの報道にない部分に触れています。Good Job。

「手術前のHIV検査を実施している20病院のうち、10病院から「保険適用にすべきだ」との意見が出た。いずれも、肝炎や梅毒など他の感染症検査は保険が適用されるのにHIVは適用されない現状への疑問を理由に挙げた。「手術前のHIV検査が感染の確認に大きく寄与している」という意見もあった。 」

医療関係者の多くは、肝炎や梅毒はOKなのになぜHIVはダメなのか?という疑問を持っています。

専門家としては、その場合、「梅毒のルチン検査は不要ですよね。やめましょう」ということも言わないとなんとなく2011年の話として真っ当っぽくないのでご注意。

プレバレンスを考えたら、東北地方ではルチン検査は現実的ではないですが、東京や神奈川では、「ルチン検査にしよう」という話が医療者や公衆衛生領域から出てきてもおかしくはありません。全国一律にしなくてはいけない根拠もないです。

費用対効果の研究なども期待。
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