MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

幼児の “消え入る” 声

2019-03-29 22:55:45 | 健康・病気

3月のメディカル・ミステリーです。

 

3月23日付 Washington Post 電子版

 

 

A toddler’s dwindling voice was chalked up to acid reflux. Her problem was far more serious.    

だんだん小さくなっていく幼児の声は胃酸の逆流のためだとされた。しかし彼女の病気ははるかに深刻だった。


By Sandra G. Boodman,

 

 Vivienne Weil(ビビアン・ウェイル)ちゃんは異様に静かな赤ちゃんだった。

 「彼女は私たちを悩ませるほどの大きな声で泣くことはありませんでした」Natalia Weil(ナタリア・ウェイル)さんは、2011年生まれの娘についてそう思い起こす。

 Vivienne ちゃんは生まれて数ヶ月は元気いっぱいに声を発していたが、最初の誕生日のころには声が小さくなっていた。声の質も同様で、正常だったものがかすれ気味となり、ほとんどささやき声となるまで悪化した。さらに Vivienne ちゃんは言葉が遅かった:2歳になるまで話し始めることはなかった。

 彼女のかかりつけのメリーランドの小児科医は最初、この幼児の嗄声(声がれ)の原因は呼吸器感染症であると考え、我慢するよう助言した。しかし、症状が持続したことから、その医師は胃酸逆流と診断し、逆流が起こしているとみられる声の症状を治療する薬を処方した。

 しかし Vivienne ちゃんの病気は胃酸過多よりはるかに深刻で、めずらしいものであることが明らかとなった。原因を知ることとなった日は、Weil さんの人生の中で最悪の一日に数えられる。

 「その病気のことを聞いたことはありませんでした。ほとんどの人がそうでしょう」 現在33歳になる Weil さんは娘の診断名についてそう話す。

 

その慢性疾患は Vivienne Weil ちゃんの声をひどく障害した。現在 8 歳になるこの女の子は、新しい治療によって最近元気になっている。母親によると、彼女は新しい友達を作りたがっている“明るいおしゃべりな少女”になっているという。

 

 

Dwindled to a whisper 小さくなってささやき声に

 

 当初、統計学者の Natalia さんと、彼女の夫で写真家の Jason(ジェイソン)さんは、娘の声の症状の原因が呼吸器感染症であるとする小児科医によって安心していた。その医師の説明は理にかなった話だった:幼児は毎年平均で7~ 8回は風邪をひくからである。

 Weil さんによると、Vivienne ちゃんの声は正常に回復すると思っており過剰に反応したくなかったという。

 「私たちは初めて子を持った親だったので心配していました。しかし、おそらく過剰に心配している可能性があるため様子をみるべきだと考えました。時間が経つのを待つことにしたのです。1歳か2歳のとき子供がどのくらい多く話せるのか知りませんでした。その医師が話したことにそのまま従ったのです」と Weil さんは言う。

 しかし Vivienne ちゃんの父方の祖母は懸念を募らせていた。Vivienne ちゃんは話すのが遅かったので、祖母は彼女に発育遅延か会話障害があるのではないかと心配し、speech pathologist(医療言語聴覚士)による評価を受けるよう持ちかけた。

 2013年9月の受診の際、小児科医はこの2才半になる子供に胃酸をおさえる水薬を処方した。その医師は、さらに耳鼻咽喉科専門医に紹介することに同意した。

 ほどなく Vivienne ちゃんを診察した耳鼻咽喉科医は彼女を dysphonia(発声障害)と診断した。これは声帯の問題に起因する発声の障害である。彼はさらに徹底的な評価を受けるよう彼女を小児耳鼻咽喉科医に紹介した。

 その小児専門医は彼女が呼吸し、話すのを聞いたあとで喉頭鏡検査を予定した。この検査は喉の奥を視覚的に観察するものである。必要な症例に対して医師は小さな光ファイバーカメラが取り付けられた細い柔軟性のある管を鼻腔から喉まで通すことで、上気道の観察ができる。

 この検査は、Vivienne ちゃんと両親にとって衝撃的だったと Weil さんは思い起こす。自分に行なわれようとすることに怯えてこの幼い少女が叫び始めたため、数人の看護師によって彼女を押さえつけなければならず、それによって医師は検査を行なうことができたのである。

 しかしその結果は明確だった―そして、Vivienneちゃんの長期にわたる失声の理由を説明することができた。彼女は recurrent respiratory papillomatosis(RRP、再発性呼吸器乳頭腫症)という稀な疾患に罹っていたのである。これは、ヒトパピローマウイルス(human papilloma virus, HPV)の2つの株によって引き起こされる性感染症で、出生前もしくは生下時に感染する可能性がある。この疾患は治癒させることができない;腫瘍を切除する手術で治療され、それによって一時的に声を回復させることができる。治療の目標は脆弱な声帯に対し永続的な損傷を残さないようにしながら手術の間隔の延長させることである。

 

A painful answer 辛い答え

 

 HPV は至るとこに存在する;ほぼすべての性的活動性のある成人はこのウイルスに晒されている。ほとんどの人々はそれに感染したことを知らないうちに体内から感染を除去する。しかし、一部のケースでは HPV6 と 11 の2つの株によって genital warts(陰部疣贅=ゆうぜい)が生じうる:これは良性だが、しばしば papilloma(乳頭腫)と呼ばれるカリフラワー状の腫瘍を形成する。これらの疣贅はウイルス暴露後、数ヶ月、時に数年で発生する。

 時として、陰部疣贅を持つ母親が出産時にこのウイルスを子に感染させることがあり、小児の呼吸器、とりわけ喉頭に乳頭腫の発生を引き起こす。(“ハイリスク”と考えられている2つの株、すなわち HPV 16 と 18は子宮頸がんを引き起こしうる。HPV はさらに口腔がん、肛門がん、陰茎がんも引き起こす)

 米国疾病管理予防センター(CDC)は、小児10万人中2人に RRP がみられると推定しているが、RRP は Gardasil(ガーダシル)と呼ばれるワクチンで予防可能である。連邦保健当局はこのワクチンの投与を推奨している。このワクチンは2006年に初めて、性的活動期前の11歳もしくは12歳時の小児に対する接種が認可されている。

 その小児耳鼻咽喉科医は、Weil 夫妻に、彼らが長く待つことなく治療を求めたのは良いことだったと話した。Vivienne ちゃんの腫瘍は非常に大きくなっていて気道に危険を及ぼすほどだったからである。

 「私は言葉を失っていました」と Weil さんは思い起こす。当時、彼女は二人目の娘を妊娠中だった。「『私が長女にこの病気を感染させてしまった』そう考えました。小さな部屋の中に座って『娘は永久にこの病気と向き合っていかなければならない』、そう思ったことを覚えています」

 自分に性器疣贅があったこと、あるいは HPV に感染していたことなど全く知らなかったと Weil さんは言う。メリーランドの自宅に戻る車のなかで、彼女は、二人目の子供もこれに感染するのではなかと怯え、泣きながら必死にスマホをスクロールしてこの病気について知ろうとしたという。

 2013年11月 Vivienne ちゃんの最初の手術のちょっと前に、Weil さんは自分の産科医に回答を求めた。彼女はこう尋ねた。どうして HPV は見逃されたのか?と。

 その医師は 2009年と2011年に行った Pap smears(パパニコロー塗抹標本)は正常だったと答えた。保健当局は、30歳未満の女性―Vivienne ちゃんが生まれたとき Weil さんは25歳だった―には一般的に HPV 検査を行うことを推奨していない。というのも、このウイルスは普通にみられるからである。

 『あなたはこのウイルスを持っていたもののあなたの免疫系がそれを排除したために Vivienne ちゃんが生まれて10ヶ月後の2011年12月にはあなたの検査が陰性となった可能性があります』 そうその医師は回答している。

 帝王切開をしていればこの疾患が防げていたかについても明らかでない。専門家によれば、子宮内で感染したとみられるケースもあるのだという。

 Weil さんは、年齢的な理由から、13歳未満の少女に焦点を絞ったワクチンの初期の目標対象に含まれていなかった。(連邦保健当局は最近、ワクチンの最新バージョン Gardasil 9 を認可した。これは45歳までの成人を対象に HPV の9つの株に対して予防するものである)

 

 

Permanently silent?  永久に話せない?

 Vivienne ちゃんの最初の手術は全身麻酔で行われたが、これはデブリードメントという腫瘍を削り落とす手技が基本となるものだった。

 夫と一緒に回復室に入っていくと Vivienne ちゃんが大声で泣いているのが聞こえたことを覚えていると Weil さんは言う。「それはびっくりでした。私たちにとって、それは世界で最高の声でした」そう彼女は思い出す。

 しかし、ほぼすべてのケースでみられるように数ヶ月後に腫瘍が再増大し Vivienne ちゃんの声は弱くなりささやき声になった。それからの数年間、彼女は4~6ヶ月ごとに両側の声帯を同時にデブリードメントする手術を受けた。

 2018年3月、11回目の手術のあと彼女の声が戻らなかった。身体的な説明は不可能で、その原因は声帯の運動低下、あるいは心理的要因に起因している可能性があると医師は言った。それからの6ヶ月間、Vivienne ちゃんは催眠療法を受け、言語聴覚士を受診したが効果はなかった。

 Weil さんは必死の思いで娘のビデオをインスタグラムに上げた。誰か―それはたぶん別の親が期待された―から何らかの助言を得られるかもしれないと彼女が思ったからである。

 数日のうちに、娘がその病気を持っているカリフォルニアの女性から、異なる治療を試みるよう言われた。彼女から、デブリードメントの代わりに、potassium titanyl phosphate laser(KTPレーザー)を用いる医師を探すよう勧められた。一部の専門医はこのレーザーの使用が優れていると考えているが、それはこの方法が声帯への損傷を最小限にとどめながらより広く腫瘤を除去できるからである。

( MrK 註:KTPレーザーは,波長532nmの緑色可視光で、ヘモグロビンに極めて良く吸収され、水にほとんど吸収されず、組織浸透度が比較的浅いという特性を持つため血管腫などの光凝固に適している)

 「たくさん調べてみました」と Weil さんは言う。そして彼女は Simon Best(サイモン・ベスト)氏にたどりついた。彼は Johns Hopkins(ジョンズ・ホプキンス)の耳鼻咽喉科医で、この疾患の研究者でレーザー治療の専門家でもある。

 Weil さんによると、彼女は Best 氏に受診予約を試みたがだめだったという。彼が小児耳鼻咽喉科医ではないため小児は治療しないと言われたとのことだった。

 それでも彼女は引き下がることなく、医療データベースを調べ、彼の eメールアドレスを探し出し、娘の経過を記載したメッセージを彼に送った。

 Best 氏は Vivienne ちゃんを診察することに同意し、Weil さんの保険者はネットワーク外の医療費を承認した。

 

'Happy, babbly little girl' 明るいおしゃべりな少女

 

 耳鼻咽喉科学准教授である Best 氏は、13年の経歴で RRP の患者約100人を治療してきたが、そのほとんどは成人だったという。(成人の専門家として、彼は本疾患を有するあらゆる年齢の患者を治療している)。その中には小児期に本疾患を発症した例もあった。その他のケースでは、HPV に感染してから10年かそこらの 30歳代や40歳代に発症している例もある。

 「本疾患には、繰り返し戻ってくるという厄介な傾向があります」と Best 氏は言う。彼の患者の中には20歳までに300回の手術を受けた人もいる。「それが声質にどのような影響を及ぼすか想像できるでしょう」

 Best 氏は一度に一側のみ声帯を治療するがこれは webbing(膜張り)を予防するためである。Webbing は声帯が同時に再生するときに生じるもので発声能力に害を及ぼすことがある。

 「大きな瘢痕組織がなかったことはうれしい驚きでした」 2018 年8月に初めて診察した Vivienne ちゃんについて Best 氏は言う。

 この2年生の右側の声帯に対する最初のレーザ-手術は 2018年 11 月に行われた;声は回復したが、声のかすれは残存した。2019 年1月の左側の声帯に対する2回目の手術では良好な結果が得られた。数日前、Vivienne ちゃんは右側に対して同じ手技を受け成功した。

 「今回はこれまでの彼女の声の中で一番です」と母親は言い、娘の口げんかの騒音でさえ彼女を喜ばせていると付け加える。

 彼女によると、この数ヶ月で Vivienne ちゃんは元気になっていて、新しい友達を作りたがっている“明るいおしゃべりな少女”になっているという。

 「声が出せるということは彼女が考えていたよりずっと素晴らしいことだと彼女は言います」と Weil さんは言う。一年前、数人のクラスメートたちから“cheerleader”というゲームで仲間はずれにされたと彼女は母親に話していた。

 一ヶ月以上長く続く発声障害は『喉頭を診ることのできる人間』によって検査を受けるべきであると Best 氏は推奨する。

 今後 Vivienne ちゃんにどれくらい多くの手術が必要となるかを予測するのはむずかしいと彼は言う。再発は必至であることから、この3回で終わる可能性は低い。「それぞれが固有の臨床経過をたどります」と Best 氏は付け加える。

 「 RRP は、この疾患が広範な損傷を来たす前に、早期に診断されるほど、良好です」と Best 氏は言う。「この疾患は数ヶ月間から数年間とかなり長い期間見逃されていることもしばしばです。相当重度な影響が出るまで、小児においては診断的考慮の範疇に入ってこないのです」

 この耳鼻咽喉科医は本疾患を予防できる HPV ワクチンの強力な提唱者でもある。Weil さんは、娘たちに予防接種を受けさせ、自身もワクチンを受けるつもりである。それによって HPV の他の株からも自身を守ることができるからである。

 CDC によると十分な接種は米国の思春期人口の半数にしか行われていないという。これに対し、10年以上、学校での無料の予防接種が推進されてきているオーストラリアでは、子宮頸癌と性器疣贅のケースが劇的に減少している。

 「 RRP は稀な疾患ではありますが、心理社会的な観点から、この疾患が家族にどのような影響をもたらすか想像することができます。このような子供たちの母親は大きな負担を負うことになるのです」と Best 氏は言う。

 

 

再発性呼吸器乳頭腫症

(recurrent respiratory papillomatosis, RRP)は

咽頭から肺にわたる呼吸器系に発生する稀な良性の

腫瘍で、耳鼻咽喉科で診断されることが多い。

 

RRP の詳細については以下のサイトをご参照いただきたい。

 

MSDマニュアル家庭版

日本呼吸器学会雑誌論文(2011年)pdf

小児感染免疫誌論文(2013年)pdf

 

RRP は

ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus, HPV)による

感染が原因である。

その約90%が、HPV 6型、または11型による感染に

起因していると報告されている。

RRP は思春期を境として『若年発症型』と『成人発症型』に

分類される。

前者は治療抵抗性で再発を繰り返し難治例が

多いのに対し、成人発症型は比較的軽症例が多い。

若年発症型で多くみられるのは 1~4歳の幼児である。

海外のデータでは、若年発症型の発症頻度は

10万人あたり 2~4人と稀である。

 

乳頭腫は、小児の声がれ(嗄声)や泣き声が弱いといった

声の変化に親が気づいて発見される。

下気道に病変が広がると喘鳴が出現するが

肺病変をきたす頻度は3.3%と少ない。

乳頭腫は再発することが多く、気道の狭窄や閉塞を

来すことがある。

思春期以降に自然寛解するケースもあるが、

数%に腫瘍の悪性化がみられると報告されている。

 

喉頭乳頭腫は喉頭鏡による喉頭の検査で確認される。

確定診断には乳頭腫の生検が施行される。

 

治療は手術的切除が一般的である。

正常構造を温存しながら、病変部を可能な限り多く

取り除くことが重要である。

手術には深層の組織を損傷する危険性が低い

種々のレーザー治療が用いられている。

進行性の気道狭窄や多発性の末梢病変をみる症例では

抗ウイルス薬 Cidofovil(シドフォビル)や

インターフェロンなどの薬物療法が用いられることもある。

 

母体に対するHPV の感染予防として

HPV ワクチンの有効性が認められている。

本邦では 2価と 4価ワクチンが承認されているが、

現在世界的に接種が進められている 9価ワクチンは

国内では未承認である。

また本邦では、2010年から始まった思春期女子に対する

無料接種後に認められたけいれんや遷延する疼痛などの

重篤な副反応と HPV 接種との因果関係が解明されないまま、

2013年に厚生労働省が接種の積極的勧奨を中止した。

これ以降、接種率 1%未満の状態が数年続いている。

こうした状況を考慮すると、我が国においては、

子供たちが幾多の手術を強いられる不幸な病気、

RRP を根絶できる日は、はるか先のこととなりそうだ。

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2019年4月新ドラマ

2019-03-11 20:02:09 | テレビ番組

平成最後のクールとなる2019年1月クールドラマも

そろそろ終了。

今クールも各ドラマはパッとせず…。


まずは粛々と各ドラマを振り返ってみたい。

 

3月10日放送分までの

平均視聴率[関東地区・ビデオリサーチ社調べ]上位から

1月クールドラマについてコメントする

【( )内数字は平均視聴率】。

 

 

テレビ朝日『ハケン占い師アタル』より 『よろこんで~!』

 

①テレ朝水9 『相棒(17)』(15.49% 元日スペシャル以降)

今シーズンも視聴率は堅調。確かに内容はワンパターンで意外性はなく真犯人も途中でわかってしまうのだが、抜群の安定感がある。まさにシニア世代が求めている現代版『銭形平次』である。

 

 

②日テレ 日10:30 『3年A組 今から皆さんは、人質です』(11.47%)

真実を追及するために生徒29名を人質に取り立てこもった高校美術教師を描く。初回は緊迫感あふれるシーンで視聴者の心を掴んだものの、その後のあまりに非現実的な設定、時折唐突に見られるコメディシーン、生徒たちの楽し気なエンディングロールなど、ドラマのコンセプトが今一つ掴めないままドラマが進行。それでも、本ドラマ枠始まって以来、最高の視聴率をゲットできたのは菅田将暉のおかげ?やつれた姿に見えたのも、役に合わせてのダイエット?いずれにしても日曜日の夜遅いドラマでこの視聴率は立派。最終回視聴率はなんと 15.4%!

 

 

③日テレ水10 『家売るオンナの逆襲』(11.34%)

北川景子演じる不動産営業マン・三軒家万智があらゆる手段で家を売りまくる不動産コメディ。三軒家が前作で仲村トオル演じる屋代大と結婚した展開もさることながら、前作から登場人物のキャラが変わってしまい、面白さも半減した感がある。千葉雄大演じる足立聡がいい例。そもそも足立のボーイズ・ラブ相手となった松田翔太演じる留守堂謙治を登場させる意味があったのか?イモトアヤコもそのまま“テーコー不動産”に置いておくべきではなかったか?なんだかんだで“ゴーっ!”もいい加減飽きた。

 

 

④フジ月9 『トレース~科捜研の男~』(10.65%)

科捜研を舞台にした科学サスペンス。のっけから、船越英一郎演じる虎丸良平のボリュームを下げたくなるほどの怒鳴り声(『こるぁ~、小僧!』)と、錦戸亮演じる真野礼二の聞き取りにくいボソボソ声(『あなたは、お母…を…から救い出す…に生まれて…のです』→思わず字幕オンに)に辟易としたのだが、そもそも科捜研のスタッフが、毎回事件関係者と直接話をして説法するという不自然さ。新木優子演じる助手の沢口ノンナの腹下しも途中からすっかり良くなったのは、なぜ?このドラマ、シリアスな内容で勝負するのであれば、ふざけたタイトルにすべきではなかった。

 

 

⑤テレ朝木9 『ハケン占い師アタル』(10.55%)

派遣社員・的場中(まとばあたる)が特殊能力を駆使して職場の問題を解決していくお仕事コメディ。初回から杉咲花と志田未来の目ヂカラの強さに圧倒。杉咲演じる主人公・アタルが、ハケンされたイベント会社制作Dチームの面々を占うのだが、実際には各人の欠点を鋭く指摘し高圧的に説教。占ってもらうとそれだけでコロッといい方向に変わってしまうのだからこんなめでたい話はない。遊川和彦作品には、一歩間違えると奈落の底的な危うさがあるのだが、あまり深く考えないで視聴すれば楽しめるかも。少なくとも自分はこのドラマをみて、人から頼み事をされれば『よろこんで~』と答えてみたくなったのではあるが…。

 

 

⑥TBS金10 『メゾン・ド・ポリス』(10.33%)

新米女性刑事が、シェアハウスで暮らす退職刑事でワケありな“おじさま”たちに振り回されながらも、彼らの力を借りて事件を解決していく刑事ドラマ。今クールのドラマに多かったのが、主人公が関係する過去の事件の謎解きを縦軸に、前半はどうでもいいような一話完結の事件をダラダラと繰り返すパターン。とはいえ、“おじさま”たちと協力して事件を解決していくだけで終わりのドラマなら退屈きわまりないのは確かだが…。いよいよ終盤になってようやく盛り上がりを見せるのだが時すでに遅し。主人公を演じた高畑充希と彼女をサポートする元刑事役の西島秀俊。うーん、わざわざ『とと姉ちゃん』の親子コンビを持ってこなくても、と思ってしまったのである。

 

 

⑦TBS 日9 『グッド・ワイフ』(9.59%)

2009年から7年間米国で放映された人気ドラマ『The Good Wife』の日本版リメイク。弁護士に復職した主婦の活躍を描く法廷ヒューマンドラマ。前クールで放映された米国人気ドラマ『SUITS』のリメイク版がオリジナルとあまりにかけ離れていて失敗に終わったのと同じように、これが米国ドラマのリメイク?と疑ってしまうほどの不出来。久々に主演に返り咲いた常盤貴子はともかくとして、彼女に想いを寄せる同僚弁護士・多田征大を演じる小泉孝太郎の軽いこと!もう少し渋い俳優が使えなかったのか。

 

 

⑧日テレ土10 『イノセンス~冤罪弁護士』(9.11%)

冤罪事件を科学の力で解決していく裁判・科学ドラマ。一人の若き弁護士がジャーナリストや科学者の協力を得て、精巧な検証実験を行って科学的に冤罪事件を解き明かす。『99.9-刑事専門弁護士』のように毎回冤罪を晴らすわけではなく、時には残念な結果に終わるところもあってより現実的だ。ただ、主人公が法廷で争う相手が、いつも同じ検事ってどうよ…。それから、藤木直人演じる検証実験を行う科学者・秋保恭一郎の態度でかすぎ、『以上で検証は終わりだ…』って何様?この科学者、毎回登場はたかだか終盤の5分~10分。これなら別に藤木でなくても良かったのでは?なんとなくすべてが中途半端な感じがするドラマ。

 

 

⑨TBS 火10 『初めて恋をした日に読む話』(8.33%) 

アラサー塾講師が主人公のラブコメディ。塾の教え子の東大受験を通じて主人公をめぐって3人の男性が交錯する。言いたいことは山ほど。まず、ヤンキーから心を入れ替えて東大受験を決意した由利匡平(横浜流星)くん、いつまでピンク色の髪、続けてんの?普通、一念発起したら黒に戻すでしょ。それからいとこの八雲雅志(永山絢斗)くん、あんたは何でいとこなの?何で、春見順子を好きなこと、周りにバレバレって、普通隠すでしょ。最後に山下一真(中村倫也)くん、ずっと順子のこと忘れられないんだったら、何で14年も経って(それまでに他の女性と結婚しておきながら)今頃順子にアタックするの?絶好のチャンスは順子が東大落ちた時点でしょ…。とか、他にもいろいろあるのだが、深キョンの天然記念物的な可愛らしさだけにその価値を見出すしかないドラマ。

 

 

⑩フジ木10 『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』(6.92%)

スキャンダル対応を専門とする女性弁護士の奮闘劇。情報操作術を駆使して世論のパッシングを受ける女性を救い出す。『スキャンダル対応なんて余裕』ってなわけでもないんだろうが、主人公の弁護士・氷見江(竹内結子)のクライアントに対する高飛車な態度にうーん…。スキャンダルの火消しにウソの会見したり、裏取引したり、やることがチョー姑息で不快。視聴者からは全く賛同できない危機管理対応策のため毎回、見終わっての爽快感はゼロ。これでは視聴率獲れんでしょ。

 

 

⑪フジ(関西テレビ)火9 『後妻業』(6.49%)

女結婚詐欺師が資産家の老人男性を狙うラブ・サスペンス。大阪を舞台に、後妻として遺産相続を狙う詐欺師と、その相手家族との間で愛憎が交錯するドロドロ劇…、と思いきや、サスペンスなのかコメディなのかわからないままドラマは進行。案の定、取ってつけの木村佳乃のエセ関西弁が炸裂、木村多江とのケンカシーンなどもコントにしか見えなかった。どの資産家の老人にも結婚をちらつかせて接近、速攻で遺言の公正証書を作成後、相手男性を死に至らしめるというワンパターンで、全くひねりなし、現実味なし。出演者のギャラ以外にはほとんど金かかってないんじゃないの?こんなドラマ、よく成立するもんだわ、と逆に感心。アホくさ~。

 

 

⑫テレ朝金 11:15(金曜ナイトドラマ) 『私のおじさん~WATAOJI~』(4.11%)

新人女性ADとおっさん妖精が織りなす異色のSF社会派コメディ。世のモヤモヤをおっさん妖精がぶった切る。主人公を演じる岡田結実だが、かわいらしいルックスで、何も知らないうちは良かったが、彼女が“ますだおかだ”の岡田圭右の娘だと知った時点でアウト。すべてのシーンで岡田の顔がダブってしまうのである。演技はそこそこ頑張っていたが、放送局の“あるある”をドラマでやってもらっても全く面白くなく、張り切っていた遠藤憲一には申し訳ないが早々にリタイア。

 

 

 

全体に低調なクールだったが、

登場人物が説教を垂れるドラマが目立った。

だらしない人間に喝をいえれるようなシーンを

視聴者は期待しているとみられる。

今クールは、相変わらず人気の『相棒』を除くと

日テレ日曜の菅田将暉の『3年A組…』が大健闘。

シニア向けの刑事ドラマ以外では

よほど若者に受ける内容でなければ11%のラインを

越えるのはむずかしいのかもしれない。

昨今、初回が悪ければもう挽回は困難であり、

初回が好評でも内容がつまらなければジリ貧に落ちていく。

ドラマ制作者にとっては悩ましい時代である。

 

さて、ここからは平成から新しい御代へ向かうクールとなる

2019年4月からの新ドラマをチェックしてみたい。

 

 

フジ月9 4/8 ~ 『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート』 窪田正孝、本田翼、広瀬アリス、遠藤憲一、山口紗弥加、和久井映見、浜野謙太、浅野和之、矢野聖人、丸山智己、他

原作は『グランドジャンプ』(集英社)で連載中の漫画『ラジエーションハウス』(原作・横幕智裕、漫画・モリタイシGJ)。窪田正孝が月9初主演となる医療ドラマ。診療科の一つ放射線科“ラジエーションハウス”で患者の病気の原因を見つけ出す“縁の下のヒーロー”放射線技師の活躍を描く。窪田正孝演じる主人公・五十嵐唯織(いがらしいおり)は写真には必ず“真実”が写っていると信じている優秀な診療放射線技師で、アメリカで最も権威ある放射線科医からその実力を認められていた。帰国後、甘春総合病院で働き始めることになるが、そこの放射線科には放射線科医の甘春杏(あまかすあん)(本田翼)が勤務していた。杏は前院長の娘で、常に患者を救いたいと思ってはいるものの、病院側の人間として、病院のルールや効率を患者より優先してしまうこともあった。また、勝ち気な一面があり、放射線技師を見下しているようなところがあった。反面、自分にはまったく自信がなく、プライドが高いばかりに何でもひとりで背負い込んでしまいがちだった。そんな杏が、患者の“みえない病”を見つけ出し命を救っていく唯織の姿に影響を受けていく。他の登場人物には、甘春総合病院の先輩放射線技師でギャンブル好きだが腕はピカイチの小野寺俊夫に遠藤憲一、新人放射線技師・広瀬裕乃に広瀬アリス、ドS、毒舌で独身の放射線技師の黒羽たまきに山口紗弥加、野心家の放射線科科長で、診療部長を兼任する鏑木安富(かぶらぎやすとみ)に浅野和之、スタッフを優しく見守る病院長・大森渚に和久井映見がキャスティングされている。放射線部門が舞台となるようで、これまでの医療ドラマとはちょっと異なる雰囲気となりそうだ。

 

 

フジ(関西テレビ)火9 4/16 ~ 『パーフェクトワールド』 松坂桃李、山本美月、瀬戸康史、他

原作は有賀リエの少女漫画『パーフェクトワールド』。事故で下半身不随になった同級生との再交流を描いた純愛ストーリー。2018年に杉咲花・岩田剛典のコンビで実写映画化されている(『パーフェクトワールド~君といる奇跡』)。主人公の鮎川樹(松坂桃李)はスポーツ万能の好青年。高校時代はバスケットボール部のエースとして活躍していたが大学3年の時に事故に巻き込まれてしまう。脊髄損傷で下半身不随となった樹は周りに支えられながら苦難を乗り越え、夢だった建築士になる。バリアフリー住宅の設計を担当するなど建築士として活躍中。一方、川奈つぐみ(山本美月)は高校時代から同級生の樹に対して恋心をいだいていた。絵を描くことが好きで、高校時代には美術部に所属、美大を目指していたが自分の実力に自信が持てず受験を断念。その後インテリアデザイン会社に就職し事務を担当していた。ある日、二人は職場の飲み会で偶然再会し、ラブストーリーが始まる。次第に惹かれ合っていく二人だが、親の反対や恋敵の出現、病気やケガなど様々な問題に直面していく。つぐみは、合併症の恐怖と闘う樹を支えたいと思っているが、“相手を幸せにしたい”という思いが強いほど、逆に相手を傷つけてしまったり、想いとは裏腹な行動をとってしまったりすることで、二人は行き違ってしまう…。つぐみの幼なじみで、樹の恋敵となるアプリ制作会社の社長・是枝洋貴を瀬戸康史が演じる。純粋なラブストーリーのようだが、いまどきこの内容の連続ドラマにどれほどの需要があるか…疑問。

 

 

TBS 火10 4/16~ 『わたし、定時で帰ります。』 吉高由里子、向井理、柄本時生、内田有紀、泉澤祐希、シシド・カフカ、ユースケ・サンタマリア、他

原作は朱野帰子(あけのかえるこ)の小説『わたし、定時で帰ります。』。残業ゼロの前に立ちはだかる訳ありブラック上司や曲者揃いの同僚らとの間で奮闘しながら、彼らの抱える様々なトラブルを解決していくワーキングドラマ。長時間労働やサービス残業など社会問題に切り込む。働き方新時代に生きる主人公・32歳の独身OLの東山結衣(ひがしやまゆい)を吉高由里子が演じる。結衣は過去のトラウマを抱え、以来『必ず定時で帰る』というモットーを貫くワーキングガール。大手企業を辞め転職したWEB制作会社『ネットヒーローズ』でディレクターとして働いている。『仕事は命を懸けるものではない』という想いを持ち、誰よりも集中して仕事を終わらせ、プライベートを大切にする。基本はことなかれ主義で他人の問題に首を突っ込むことは極力避けたいし面倒くさいと思っているが、根が優しいため結局人のために動いてしまう。一方、彼女には新人時代のトラウマや、2年前のワーカホリック(仕事中毒)の男性との婚約破談という背景があった…。仕事ができて部下からの信頼も厚いが、一度仕事にのめり込むと周りが見えなくなってしまう元婚約者・種田晃太郎を向井理が演じる。ヘッドハンティングされ奇しくも結衣と同じ職場で働くことに。また結衣の職場の先輩で、産休を取って双子を出産するも早々に職場復帰するスーパー・ワーキングマザーの賤ヶ岳八重に内田有紀、転職で結衣の新しいチームの部長となり、ブラック上司として職場の面々を振り回す福永清次にユースケ・サンタマリアがキャスティングされている。その他、仕事の要領が悪くトラブルメーカーとして目をつけられている結衣の同僚・吾妻徹を柄本時生、結衣が教育係として面倒を見るが二言目には『辞めたい』と言うやる気ゼロの新人・来栖泰斗を泉澤祐希、さらに皆勤賞であることを誇りにしておりまじめすぎる努力家だが融通が利かない結衣の同僚・三谷佳菜子をシシド・カフカが演じる。このところ乱立する『働き方改革ドラマ』にもそろそろ飽きてきたようなのだが…。

 

 

テレ朝水9 4/10 ~ 『特捜9(2)』 井ノ原快彦(V6)、山田裕貴、寺尾聰、羽田美智子、中越典子、田口浩正、津田寛治、吹越満、原沙知絵、伊東四朗、里見浩太朗、名取裕子、他

故・渡瀬恒彦・主演の『警視庁捜査一課9係』から、昨年2018年4月クールに井ノ原快彦・主演で再出発した『特捜9』の一年ぶりとなる第2弾。一作目は平均視聴率14.0%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)と井ノ原が意外な健闘を見せ、渡瀬の不在をカバーした。今回はこれまで巡査部長だった、井ノ原演じる浅輪直樹が警部補に昇進し名実ともに主任を務める。なお本ドラマ、4月7日(日)に先行特番を放送するという念の入れようである。このスペシャルドラマには、“9係”時代に警察庁刑事局参事官で、階級は警視長だった神宮司桃子(名取裕子)が、警察庁審議官で、階級は警視監と、さらに偉くなって特捜班のメンバーの前に現れるそうで、特捜班を掻きまわす存在になりそう。いずれにしても相棒ロスの人たちにとっては、貴重な警察ドラマとなるに違いない。それと、木曜8時の『科捜研の女 Season19』 の方もお見逃しなく~。

 

 

日テレ水10 4/10 ~ 『白衣の戦士!』 中条あやみ、水川あさみ、小瀧望(ジャニーズWEST)、沢村一樹、安田顕、他

中条あやみ、水川あさみのW主演のナースドラマ。中条あやみはドラマ初主演となる。梅田みかによるオリジナル脚本作品。新米ナースと34歳ベテランナースがタッグを組み、仕事に恋に奔走する。新米ナース・立花はるかを演じるのが中条あやみ。明るく破天荒な性格の元ヤンナースで、失敗を繰り返しながらもあきらめずに前に進もうとする。一方のベテランナース・三原夏美を演じるのは水川あさみ。34歳という年齢で、仕事においても恋愛においても曲がり角で、婚活に関しては崖っぷちの心境。新米のはるかの影響を受け初心を思い出し変わっていく。この二人を中心に病院という『命の現場』でナース・コメディが展開される。はるかに振り回されることになる体育会系新米看護師・斎藤光役に小瀧望がキャスティングされている。シチュエーションはまさにあの『ナースのお仕事』そっくりで、新鮮味は全くなさそう。

 

テレ朝木9 4/11 ~ 『緊急取調室3』 天海祐希、田中哲司、でんでん、小日向文世、大倉孝二、速水もこみち、鈴木浩介、塚地武雄、他

2014年1月クール、2017年4月クールに続く同シリーズ第3弾。昨年 2018年2月に中田善次郎役でレギュラーを務めた大杉漣が死去したため制作が懸念されていたが、過去2シーズンの平均視聴率は 12.9%、13.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と好評を博しており、三度目の登場となった。今回、中田は退職したとの設定で、代わりに中田の縁で配属になったメンバーを塚地武雄が演じる。警察の仕事は犯人を捕まえて終わりではない。刑罰を法廷で確定させるため、被疑者の取り調べを行うチームが『緊急事案対応取り調べ班』、通称キントリ。『取調室』におけるキントリ・メンバーたちと被疑者との間に緊迫したかけひき、心理戦が展開される。天海祐希演じる主人公・真壁有希子が、チーム一丸となって被疑者の“裏の顔”を丸裸にしていく活躍が描かれる。今シーズンではこれまでにない新しい価値観や、人工知能(AI)の登場など、これまでにない変化も起こる中、キントリ・メンバーはこれまで同様、“人と人との向き合い”に重点を置き、“深い人間力”を基盤にした泥臭い取り調べを展開していく。また今シーズンでは、被疑者にかかわらず、さまざまな立場の“油断ならぬ女たち”にチームが翻弄されるとか。そこそこの視聴率が期待されそうだ。

 

 

フジ木10 4/11 ~ 『ストロベリーナイト・サーガ』 二階堂ふみ、亀梨和也、江口洋介、他

誉田哲也の人気小説『姫川玲子シリーズ』を新規キャストで6年ぶりリメイク。捜査一課の若き女性刑事・姫川玲子と年上部下とがバディを組んで事件を解決する。2012年に竹内結子が主演したテレビドラマ『ストロベリーナイト』は平均視聴率15.4%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)と人気で、2013年には映画化もされたが、今回は若返りを図って?二階堂ふみ・亀梨和也のW主演で再登場(このキャスト変更には賛否両論あり)。本作では、姫川玲子シリーズ第一作となった表題作『ストロベリーナイト』のほか、死体なき殺人事件の真相を暴く『ソウルケイジ』、暴力団抗争が絡んだ惨殺事件に迫る『インビジブルレイン』、青い仮面の猟奇的殺人鬼を追う『ブルーマーダー』など、これまで映像化されていない人気シリーズの傑作が取り上げられることから『サーガ(saga=英雄物語)』がタイトルにつけられたようである。二階堂ふみ演じる姫川玲子はノンキャリアながら27歳という若さで警部補に昇任、警視庁捜査一課殺人犯捜査第十係主任を務めている。前回、西島秀俊が演じた姫川の年上の部下となる巡査部長・菊田和男を亀梨和也が演じる。菊田は生真面目な性格で寡黙な一方、その内面では曲がったことが嫌いな正義感を持ち、熱い男気を秘めた体育会系刑事。捜査一課姫川班に異動してきた当初こそ、直感を武器に危険な捜査を繰り返す姫川を懐疑的に捉えていたものの、共に事件を追うにつれ、姫川の刑事としての優秀さと人間的魅力に気づき、自分の中に特別な感情が芽生え始める。この二人に絡むのが姫川の天敵となる警視庁捜査一課殺人捜査第五係主任・勝俣健作、江口洋介が演じる。“ガンテツ”という通り名を持つクセ者刑事で、摘発率は圧倒的トップを誇り、刑事としての腕前は誰もが認めるベテラン。公安に8年いた経歴を持ち、警察内外の情報収集にたけているが、掟破りの捜査方法が様々な疑惑を招いてしまう。前作はサイコホラー的な雰囲気が印象的だったが、二階堂・亀梨コンビでうまく再現できるか、若干不安。特に西島→亀梨のチェンジはブーイングが多そう。

 

 

TBS金10 4/12 ~ 『インハンド』 山下智久、濱田岳、菜々緒、藤森慎吾(オリエンタルラジオ)、光石研、高橋春織、酒井貴浩、他

原作は『イブニング』(講談社)で連載中の朱戸アオの漫画『インハンド』。ロボットハンドの義手を持つ科学者が難事件を解決していくサイエンス・ミステリー。山ピーが寄生虫学を専門とする天才かつ変人科学者・紐倉哲(ひもくらてつ)を演じる。紐倉は人嫌い、無愛想でドSな変わり者。植物園を買い取って巨大温室を研究所兼自宅とし、様々な動物たちと暮らしながら寄生虫の研究をしている。右手に黒いロボットハンドのような義手を装着しているが、義手になった経緯は謎。そんな紐倉が、お人好しな助手とクールな美人官僚とともに次々と起こる難事件を科学的な方法で鮮やかに解決していく。紐倉の助手を務めている高家春馬(濱田岳)は救命救急の専門医。ある事件をきっかけに紐倉と出会い助手として雇われることとなった。紐倉と対照的に、正義感が強く、心優しい熱血タイプ。お人好しな性格のため自分勝手な紐倉にいつも振り回されてしまう。そして、紐倉のもとに事件調査の依頼を持ち込む美人官僚が牧野巴(菜々緒)。彼女は医療機関で起きる未知の病気など様々な問題に対処する内閣官房サイエンス・メディカル対策室に外務省から出向してきたエリート。同対策室で結果を出してできるだけ早く外務省に戻りたいと思っており、紐倉が飛びつきそうなことをエサに事件調査への協力を依頼。まんまとエサに食いついた紐倉は力を貸すことになる。最新の科学テクノロジー、遺伝子操作、国外からの未知の病原体などに絡む摩訶不思議な事件の解決に紐倉ら3人が挑んでいく。その他のキャストは、内閣官房サイエンス・メディカル対策室の一員で、牧野からいいように使われ事件調査に強力させられる御子柴隼人に藤森慎吾、同対策室の室長で、事なかれ主義のため牧野と言い争いの絶えない網野肇に光石研、同対策室の一員で周りに流されないマイペースなメガネ女子・熊谷美緒に高橋香織。ドラマは一話完結の事件の解決と並行して、紐倉の謎めいた過去、義手の秘密などが明らかにされていく。扱われる諸事件は異色で興味をそそられそうだが、山ピーが超博識な天才科学者をうまく演じきれるかが鍵。

 

 

テレ朝金 11:15(金曜ナイトドラマ) 4/19 ~ 『家政夫のミタゾノ(3)』 松岡昌宏、伊野尾慧、川栄李奈、他

201610月クールのパート120184月クールのパート2に続く第3弾。松岡昌宏演じる女装した大柄な家政夫・三田園薫が派遣された家庭・家族の内情を覗き見し、家の汚れだけでなく、そこに巣食う“根深い汚れ”までもスッキリと落としていく。パート1のヒロイン・清水富美加、パート2のヒロイン・剛力彩芽がいずれも出演後間もなく芸能界からほぼ消滅、といういわくつきのドラマ。パート3ではこの勇気ある配役に伊野尾慧と川栄李奈が選ばれている。松岡が演じる三田園は、男性ながらに掃除・洗濯・料理・子守などの家事全般を完璧にこなしてしまう最強の家政夫。依頼人の家庭の内情を覗き見し、そこで得た秘密をネタにその家を崩壊させてしまうのだが、同時にその家の再生への道筋を残してきた。そんな三田園の活躍の場に新たに加わるのは『むすび家政婦紹介所』で働く見習い家政夫の村田光(伊野尾慧)と、若き家政婦の恩田萌(川栄李奈)。光は同紹介所の所長・結頼子(余貴美子)の甥、頼子は彼に社会経験を積ませ一人前のオトナの男に育てるため家政夫として働かせ始める。三田園は海外にいたが、その教育係として頼子から呼び戻される。一方、萌は、頼子から『若いけれども優秀』とお墨付きをもらうほどの家事スキルを持つが、勝ち気で疑り深い性格。三田園、光、萌の3人体制で、派遣先の様々な問題を解決していくことになる。パート3でも毎回“お役立ち家事の HOW TO”が三田園から紹介されるようであり、遅い時間枠ながらそこそこの視聴率が期待できそうだ。

 

 

日テレ土10 4/20 ~ 『俺のスカート、どこ行った?』 古田新太、松下奈緒、他

櫻井智也、加藤拓也によるオリジナル脚本作品。ゲイで女装家の高校教師がダイバーシティを尊重する学園で生徒と向き合っていくドラマ。私立・豪林館学園高校は多様性を尊重する『ダイバーシティ』宣言を掲げていた。そんな豪林館学園高校にゲイバーを経営していた原田のぶお(古田新太)、52歳が赴任してくる。原田はゲイで女装家、歯に衣着せぬ物言いで本音を語り、ハンパない行動力を持っている。原田はトランスジェンダーのため、男女分け隔てなく生徒の相談に乗ることができ、酸いも甘いも噛み分けることのできる彼にしか生徒に伝えられないことがある。奇想天外で破天荒な原田が巨大な権力に負けない力を発揮してあふれる愛で高校生たちと向き合っていく姿が描かれる。視聴にはまずは古田新太の(気持ち悪い?)女装姿に慣れることが先決か。キャラクター監修を女性パフォーマーでエッセイストのブルボンヌが務める。

 

 

NHK日8 継続 大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』 中村勘九郎、阿部サダヲ、ビートたけし、森山未來、神木隆之介、役所広司、綾瀬はるか、他

宮藤官九郎のオリジナル脚本だが、多くの大河ファンの期待を裏切り、視聴率低迷。とにかく毎回大きなイベントがないのがファンの思惑と大きく外れたところだろう。噺家を演じるビートたけしの滑舌が悪いとの批判があるが、大きな問題ではない。本ドラマ、この先も大きな事件は期待できそうにないため、視聴率の回復は難しそうである。

 

 

TBS 日9 4/21 ~ 『集団左遷!!』 福山雅治、香川照之、神木隆之介、井脇海、中村アン、三上博史、高橋和也、橋爪淳、津嘉山正種、尾美としのり、他

原作は江波戸哲夫の小説『集団左遷』。訳あり支店長に抜擢された中年サラリーマンの葛藤を描いた奮闘劇。福山雅治演じる主人公・片岡洋は三友銀行に勤める銀行員。理不尽なことだと分かっていても『会社で生き残るため』と考え、やむなく受け入れてきた典型的なサラリーマン。一方、部下や仲間の頑張りにほだされてしまう情に熱い男でもあった。片岡はある日、50歳を目前にして支店長への昇任人事を受ける。その喜びもつかの間、赴任先の『蒲田支店』は廃店が決定していることを知る。上層部からは『無事廃店が済めば本部に戻す』と伝えられる。しかし、片岡は、廃店となることを知らない支店員たちを前に自分の立場に葛藤し思い悩んでいく。そんな片岡に向かい合うのが、香川照之演じる蒲田支店の副支店長・真山徹。真山はどこか掴みどころのないような男。常に笑顔で全てを見透かしているような真山への対応に片岡は苦労する。ああ言えばこう言う、常に上手で返してくるのだった。一方、蒲田支店のリストラ候補『クビ社員集団』の面々。かつては幹部候補だったが、ある事件がきっかけでドロップアウトした法人営業一課の滝川晃司に神木隆之介、セクハラ上司を殴って同支店に飛ばされてきた法人営業一課主任・木田美恵子に中村アン、ドジで気弱で頼りなげな法人営業二課の平正樹に井之脇海。銀行上層部の面々には、まず、片岡にとって最大の宿敵である常務・横山輝生を三上博史が演じる。彼は蒲田支店の廃店を決め、片岡を同支店に送り込んだ人物である。そして、頭取・藤田秀樹に市村正親。藤田は三友銀行に吸収合併された大昭和銀行の元頭取で、三友銀行の頭取に就任するが、三友銀行出身の会長と副頭取に実権を握られている。リーマンのイメージとは程遠い福山がどれだけ銀行員らしく演技できるかが課題。

 

 

日テレ 日10:30 4/14 ~(2クール連続放送) 『あなたの番です』 原田知世、田中圭、西野七瀬、木村多江、生瀬勝久、竹中直人、浅香航大、袴田吉彦、片岡礼子、奈緒、安藤政信、真飛聖、他

秋元康が企画・原案を担当した近隣住民間で相次ぐ謎の連続殺人の真相を追う本格ミステリー。日テレでは異例の2クール連続で放送される。閑静な住宅街に立つ一棟のマンションに、スポーツウエアなどのデザインを手がけるデザイナー・手塚菜奈(原田知世)とスポーツジムでトレーナーをしている手塚翔太(田中圭)の15歳の年の差新婚夫婦が引っ越してくる。念願のマイホームを手に入れ“穏やかで幸せな暮らし”を期待していたが、菜奈が住民会に出席したことで、事態は大きく動いていく。やがてマンションの周囲で次々と人が死に始める。その謎の連続死の裏側には住民で行われたあるゲームがあった。それは、13人の住民がそれぞれ『殺したい人』を書いて、その紙をランダムに引いていく“交換殺人ゲーム”だった。『まあ、ゲームだし。ムカつく奴の名前を書いたらスッキリするかも』と、みんな軽い気持ちだったが、実際に書かれた人間が次々に殺され始めたのである。そして、それぞれの家に脅迫状が届く。『あなたの番です』と。そこから動機なき殺人の連鎖が始まっていく。主な登場人物には、202号室の住人で理系女子大生の黒島沙和に乃木坂46を卒業したばかりの西野七瀬、103号室の住人で早期退職した元エリート銀行員・田宮淳一郎に生瀬勝久、402号室の住人で住民会会長の専業主婦・榎本早苗に木村多江、マンションの管理人で図々しい仕切り屋の床島比呂志に竹中直人。秋元康原案ドラマといえば、2017年福士蒼汰主演の『愛してたって秘密はある。』でかなりガッカリさせられた記憶があるが、2クールにまたがる力作ということでもう一度期待を寄せてみたいのだが…。

 

 

 

というわけで、一通りチェックしてみたが、

どうもパッとしない印象である。

個人的には『ストロベリーナイト・サーガ』『インハンド』

あたりに期待するのだが…。

いずれにしても大ブレイクとなりそうなドラマはなさそうだ。

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