MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

ウィローブルック肝炎研究

2013-03-27 16:33:26 | 映画

約半世紀前、かのアメリカでも
公然と人体実験が行われていた。
それをもとに映画が作られているそうである。
日本での公開の可能性は低そうだが、
一体どのような内容なのだろうか。

3月11日付 ABCNews.com

Film Highlights Hepatitis Research on Kids With Disabilities 障害を持つ子供たちで行われた肝炎研究を題材にした映画

Willowbrook

By SYDNEY LUPKIN
 1960年代に実際にあった、障害を持った子供たちに対する肝炎研究を題材にした映画 “Willowbrook” が、障害をテーマにした映画祭 Reel Abilities の一環として先週末ニューヨークで上映された。
 「その作品は私たちの委員会によって全会一致で承認されました」ReelAbilities の委員長 Isaac Zablocki 氏は言う。「それを見たとき、迷うことなく選びたいと思いました」
 この映画はフィクション作品であるが、Willowbrook State School(ウィローブルック州立学校)がもとになっている。これは1980年代後半まで、知的障害のある子供たちのためにニューヨーク州 Staten Island(スタテン島)にあった施設である。1950年代から1960年代にかけてそこの一部の子供たちが研究のために意図的に肝炎にさらされた。
 この映画は新人医師 Bill Huntsman を追う。彼は、この研究の患者たちが入院治療のために我慢していることを知り、彼がそこに加わるべきかどうかを決断しなければならない状況にあった。Horowitz 医師という名前でしか知られていない Huntsman の上司は、親たちは他の選択肢はないと考えているので自分たちの子供たちを実験台にする肝炎研究を進んで承諾するのだと説明する。研究の行われない病棟は新たな患者の受け入れを中止していたが、もし彼らが肝炎の注射を受けるというのであれば研究病棟で子供を受け入れてくれるのである。
 監督の Ross Cohen 氏も脚本の Andrew Rothschild も Willowbrook と個人的なつながりはなかったが、Cohen 氏によると、偶然それを見つけ興味を持ったのだという。
 「危害を与えることはないと医師たちが予測していたという事実はさておき、主たる倫理的問題はその決断が自由に行われなかったことです」とCohen 氏(29才)は言う。「その学校の収容者が満杯状態だったという事実に基づいており、1963年の終わりまでにはもはやそれ以上の人たちを受け入れないようにしていたのです」
 映画の中に出てくる主演男優を除くすべての子供たちには実際に障害があった。彼らは Ann Belles 氏とカリフォルニアに住んでいた。彼女は1989年以降、障害を持つ59人の少年たちを受け入れ育ててきた。さらに彼女は非営利団体を運営し、障害を持つ成人のための生活支援プログラムを実践している。
 「彼らは実際、それに参加することに冷静でした」そう Cohen 氏は言う。「彼らにとってそれは楽しいことだったのでしょう」
 すべての俳優たちが Belles の子供たちと時を過ごしたが、Zachary Winard ほど彼らと多くの時間を過ごしたものはいなかった。彼は知的障害で話すことができない十代の若者 Brian Sussman を演じた俳優である。この映画の中で、この少年 Sussmanの母親は肝炎研究の同意書にサインすべきかどうか思案する。
 「人々はその信憑性に期待するのです」と Zablocki 氏は言う。そして、映画の中に正確な感覚を得ようとすれなら障害を持った監督や俳優が求められることが多いと付け加えた。
 ReelAbilities には何千人もが参加するが、彼らのうち障害を持っていたり、障害のある人とつながりを持つ人は約半数に過ぎないと彼は言う。
 「認識を高めるだけでなく、格差を埋めることにもつながります」と Zablocki 氏は言う。「障害の壁を越え、主流となるコミュニティとつながれることに期待しているのです」

この “Willowbrook” という映画は
非倫理的臨床研究として悪名高いウィローブルック肝炎研究を
題材にしたものである。
この研究についてはここに詳しく記載されている。
ご一読いただければ幸いだが、内容を以下に要約してみる。

1956年から1972年にかけて、
ニューヨーク大学のソール・クルーグマン博士の研究チームは
肝炎ワクチン研究のため
ニューヨーク州・スタッテン島にある知的障害児施設
『ウィローブルック州立学校』において肝炎ウイルスを
障害児たちに意図的に感染させる実験を行った。
入所者の大半はIQ20以下の重度知的障害児で
施設の衛生状態はきわめて悪く、
便を介して経口感染する肝炎が蔓延していた。
当時はまだ肝炎の病原体であるウイルスを
実験室で培養することが不可能な時代で、
治療研究には人体を用いるしか方法がなかった。
1954年にウィローブルックの顧問医に着任したクルーグマンは
ガンマ・グロブリンの肝炎予防効果の研究にとりかかる。
同施設内にある隔離病棟に入所してきた
3才~11才の知的障害児を二つのグループに分け、
一方はガンマ・グロブリンを投与後、
もう一方はガンマ・グロブリンを投与しないまま、
両グループに肝炎発症患者の便から採取したウイルスが投与された。
その後、6ヶ月後、9ヶ月後、1年後にもウイルスが追加され、
ガンマ・グロブリンの発症予防効果が調べられた。
また同じように被験児を肝炎に感染させる別の実験を行い、
肝炎ウイルスに、潜伏期の短いタイプ(現在のA型肝炎)と
潜伏期が約90日と長いタイプ(現在のB型肝炎)が
あることを確認し、それぞれのウイルスを分離することに
成功した。
クルーグマン博士のこれらの研究成果は
世界から賞賛を受けることになる。
現在では考えられないような人体実験も、驚いたことに
当時の倫理的審査では問題なしとして承認されていたのである。
その後、告発者の登場やマスメディアによって
この研究は世論の批判を浴びることになるが、
これに対してクルーグマンは、
もともとウィローブルックの衛生状態は
きわめて悪く入所者は放っておいてもいずれ肝炎に感染する、
被験者になれば衛生状態のよい特別病棟に入り他の感染症に
罹る危険は低くなる、
被験者は肝炎ウイルスに対する免疫が獲得できる、
親に十分説明し同意を得ている、などと反論した。
これに対して批判者らは、
放っておいても肝炎に感染するなら人為的に感染させられることで
被験者が特に利益を得られるとは言えない、感染すると
1,000人に1~2人の割合で劇症肝炎となり死亡することがあり
慢性肝炎から肝硬変になる危険性がある、
免疫獲得は実験の本来の目的でなく副次的結果に過ぎない、
親への説明は一方的で同意も半強制的に取られたものである、
などと主張した。
実際、入所する知的障害児の親に対しては、
実験の詳細については告知せず、
『発症する率は低く、発症しても穏やかなものに過ぎない』
『一生続く免疫が獲得できるかもしれない』
『予防できる可能性のある新しい方法を実施する』などと
説明していたようである。
さらに収容人員が過剰となり
1964年からは一般の入所者募集が中止されるが、
被験者になることに同意すれば入所できると
通告されるようになる。
重度の障害のある子供を預ける場所を持たない親たちには
子供たちが被験者になることに同意する以外の選択肢は
なかったであろう。
しかしこの非人道的研究の結果、800名近くの肝炎患者が発生し、
大勢が亡くなっている。
肝炎研究に邁進したクルーグマンは、
施設の衛生状態の改善を図るという基本的施策より、
注射による肝炎発症予防の研究を優先したことで
多くの犠牲者を出してしまったのである。
こうした批判を浴び、施設の劣悪な環境も問題視され、
ウィローブルック州立学校は1975年に閉鎖されることになる。
しかし同施設に入っていた障害者たちは、
他の施設に移ってからもB型肝炎の感染者として
登校禁止措置をとられるなど
ひどい偏見や差別にさらされたという。
しかし一方、クルーグマン博士は
1972年にはアメリカ小児科学会会長に就任、
全米肝炎研究委員会委員長や、
『米医学雑誌』の編集委員などを歴任し
1983年にはアメリカ医学会最高の賞とされる
ラスカー賞の公益事業賞を得るなど
医学界での名声に傷がつくことはなかったのである。

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“破壊的医師”への対応策

2013-03-14 18:49:07 | 健康・病気

日本では『破壊的医師』という言葉は
あまり聞き慣れない。
英語で “disruptive physician” と呼ばれるこのような医師は、
スタッフの過ちを執拗に責めたり、
突然激怒し汚い言葉で罵ったり、傲慢な態度をとったり、
他の医師を激しく非難したりして、、
医療現場の他のスタッフを畏縮させてしまう。
これによりチーム医療は混乱し、
医療の質に多大な影響が及ぶことになる。
アメリカではガイドラインまで策定されており、
こんな尊大な医者をもはや野放しにはできない、というのが
常識となっているようだ。

3月5日付 Washington Post 電子版

Anger management courses are a new tool for dealing with out-of-control doctors アンガー・マネージメント・コース:怒りを抑えることのできない医師たちに対応する新しい手段

Disruptivephysician
長い間、医師による怒りの爆発は容認され見て見ぬふりをされてきた。しかしもはやそんな時代ではない。

By Sandra G. Boodman,
 こみ入った腹部手術の重大な局面で、外科医に渡された器具が、手術技師が誤って装着していたために作動しなかった。それを使えなかったことに激怒したその女性外科医はそれを乱暴に叩きつけ、その技師は指にケガをしてしまった。「堪忍袋の緒が切れたように感じたのです」とその外科医は思い起こす。その医師は2週間停職となり、医師のためのアンガー・マネージメント・コースへの参加を命じられた。
 2011年のこの事故は、それまで多くの病院が取り組んでこなかった積年の問題に光を当てることになる。その問題とは、すなわち医師による破壊的で、しばしば怒りにまかせた行為のことである。患者のことで深夜に電話をかけた看護師をひどく叱りつけたり、機敏に動かない研修医にメスを投げつけたり、使えないとみなした仕事仲間を卑しめたり、多く質問をしてくる患者を排除したりといったような行為を医師の3~5%が行うと専門家らは推定している。
 「きわめて少数の医師についての話ではありますが、その波及効果は深刻です」行動に問題のある医師たちを診察している George Washington University School of Medicine の精神医学准教授 Charles Samenow 氏は言う。
 数世代にわたって、医師による悪い振る舞いはストレスからの避けがたい産物として片付けられており、措置を講じることでその医師との関係が悪化してしまうことを嫌がる管理者によって暗黙のうちに容認されてきた。特にその攻撃的な医師が多大な収入を稼ぐ場合はなおさらである。University of Virginia School of Nursing の学部長 Dorrie Fontaine 氏によると、最近、とあるバージニアの病院で、30年の経験を持つベテランの手術室のナースが、必ず行うことになっている数量カウントで手術器具が一つなくなっていることを外科医に告げた時、彼女に向かって怒鳴りつけたため―これはありがたくない知らせに対する彼のいつもの反応だったのだが―彼女は上司の執務室に行き辞職したという。病院の管理者たちはこの件を重要視せず、こう述べたらしい。「まあ、彼はそういう人間ですから」
 しかし、病院を認証する団体 Joint Commission によって2009年に求められた規定により、そんな昔ながらの寛容さは弱まっていると Samenow 氏をはじめとする専門家たちは指摘する。この規定は、書類に回答することやミーティングに出席することを拒むような消極的な形で行われるものを含めた破壊的な(disruptive)行為に対処する手続きを策定するよう病院に求めている。同団体は“zero-tolerance(いかなる違反も許さない)”アプローチを求めてきた。ただしそのような行為は医師特有のものというわけではない。研究者たちは、看護師もまた、他の看護師に対してというのがほとんどのケースだが、感情をぶつけてしまうことがあることを明らかにしている。しかしそういった行為が患者に向けられる傾向は低いという。

Corrosive effect on morale 士気に対する腐食効果

 
 手術を行う外科医と他のスペシャリストとの間に最も多く発生すると見られているこの問題に対する関心が高まったことで、アンガー・マネージメント・カウンセリングを行う療法士という小規模業種が生まれた。このカウンセリングはしばしば『executive coaching(エグゼクティブ・コーチング)』と呼ばれている。プログラムが多く行われている施設には Vanderbilt、University of Virginia、San Diego の University of California、そしてごく最近では GWU(George Washington University)などがある。
 登録している医師のほとんどは、彼らにきちんとした振る舞いをすることを命じた病院あるいは州の医事当局から送られてきた中年男性である。
 医師たちの良からぬ行為は単に不快であるということに留まらないと専門家は指摘する。それには士気に対する腐食効果も伴っており、患者の安全に対して重大な脅威を及ぼすことになる。American College of Physician Executives(米国医師エグゼクティブ学会)の病院管理者842人に対する2011年の調査で、その懸念の広がりが明らかにされた。彼らの71%は破壊的な行為がそれぞれの病院で少なくとも毎月発生していると答えており、11%は日常的に起こっていることだと回答している。そういった行為が患者の医療にマイナスに作用すると99%の人たちが考えており、約21%はそれと患者の不利益とを関連付けていた。これらの知見は2008年の医師・看護師4,500人以上を対象にした研究結果を忠実に再現していた。先の研究では71%がそういた行為が医療ミスにつながると考え、27%が患者の死とつながると考えていた。
 「多くの病院や医療機関は自分たちの認証を保持するためにこの問題に取り組み始めています」と、この医師エグゼクティブ団体の最高責任者である Peter Angood 氏は言う。以前、Joint Commission の安全管理の主席担当官を務めていた Angood 氏はこの問題を車の運転中にキレることに例える。自動車の場合と同じように、死を招く結果につながり得るというのである。Medical Board of California の執行部長代理である Laura Sweet 氏によると、看護師が“非難されたりバカにされたりする”ことを恐れるあまり胎児モニターの気がかりな所見を医師に連絡しなかったため母親や胎児が死亡した数例の事案を調査してきたという。
 「病院にはもはや見て見ぬふりをしている余裕はないのです」この問題について詳しく記載してきたカリフォルニアの内科医 Alan Rosenstein 氏は言う。医師による悪い振る舞いによって看護師たちが職場から離れたことが看護師不足の一因となったことを明らかにした2002年の反響を呼んだ研究が発端となっている。VHA 病院ネットワークの西海岸の医療責任者だった Rosenstein 氏によると、敵意に満ちた職場の存在を主張する被雇用者による訴訟や、採用には費用がかかり代わりを見つけるのが困難な経験豊富な看護師の集団退職といった形で、こういった悪い振る舞いは高くつく結果を招く可能性があるという。

‘The patient died’ “その患者は死亡した”

 時として患者が犠牲となることがある。集中治療室の患者が誤嚥性肺炎を起こしているのではないかと心配して自宅に電話をかけたことでその看護師をばかにした医師のケースを Rosenstein 氏は引き合いに出す。誤嚥性肺炎は、食べたものや吐物などが肺に吸い込まれたときに起こる致死的となり得る合併症である。「彼はその看護師に『もっと上等のトレーニングを受けるよう』言い、その問題に対処することを拒否したのです」と Rosenstein 氏は言う。「結局その患者は死亡しました」
 医療の行われ方の変化だけでなく、より多くの患者を診察するようにとの要求が増していることや、病院が医療業務を獲得する際に見られる看護スタッフの不足や不確定性が、悪い振る舞いを助長しているのかもしれない。バージニア大学 Effective Coping and Communication Skills Program の共同責任者 J. Kim Penberthy 氏はそのように言う。「私たちが多く目にするのは、年配の医師の変化に対処するフラストレーションや困難さです」
 今、医療は持ちつ持たれつの関係を保ちながらのチームで行われており、そこでは絶対性や自分勝手は許されないと Fontaine 氏は言う。Fontaine 氏には破壊的行為についての著作があり、手術室の看護師としてそれに直面した経験がある。「40年前、医療はずっと階級的で、チームワークはあまり重要ではありませんでした」と彼女は言う。
 Vanderbilt やそれに類似したアンガー・マネージメント・プログラムに回された医師のほとんどは同僚や管理者と長年衝突を繰り返しており、それはしばしば研修医の訓練期間にまでさかのぼると GWU の Samenow 氏は言う。感情の爆発の原因が、もともと薬物乱用や精神疾患であるような人たちは通常他の種類の治療に回される。
 たとえ職場の同僚たちが一緒に働くことに耐えられない人物だとしても、その多くは技術的に優れていて、中には患者に愛されているものもいる。「しばしば最も破壊的な人間が、指導者の賞やワシントンの一流医師の賞を獲得しています」と Samenow 氏は言う。彼らはナルシスティック(自己陶酔的)で、強迫的な完全主義者であることが多く、苦情が申し立てられた場合には自分こそが真の被害者であると主張し、患者に最善のことをしていると主張することで自身の行為を擁護しようとする。
 「一般的には破壊的な(distressed)人物として経験されますが、私は“distressed(苦悩した)”という言葉を好みます」と Vanderbilt のProgram for Distressed Physicians を共同で統括する William Swiggart 氏は言う。Swiggart 氏は、一人あたり4,500ドルかかるこのコースの参加者に次のように話しているという。「このコースは皆さんがどのように感じ取るかにかかっています。皆さんの心は健康であると思いたいですが、皆さんの行為は最悪です」
 Vanderbilg のチームは、医師が Nashville にやってくる前に、その人の技能、行為、あるいは他の要因について仕事仲間や管理者にインタビューするなどして、十分な情報を収集する。
 なぜ送られてきたのか理解できないと訴えるある医師に対して、Swiggart 氏は『あなたが傲慢なクソ野郎と思われていることが送られてきた理由です』と答えたという。
 カリフォルニア州 Beverly Hills のソーシャル・ワーカー George Anderson 氏は様々な職業の人たちに対して25年間アンガー・マネージメント・カウンセリングを行ってきた。医師に対してはグループではなく個人的に治療しているが、彼の業務に占める医師の割合は増加しているという。
 「地球上で最も優秀な集団の人たちを相手にしているのです」と Anderson 氏は言う。彼のクライアントには UCLA Medical Center の医師が含まれる。「こういった人たちは高い IQ を持っていますが、彼らの心の知能指数(emotional intelligence)は実際痛ましいほどです」Anderson 氏によると、手術室から一人の麻酔科医を追い出したある外科医を扱っているという。二人の医師は口論となり手術中に患者を監視もせず放置したというのである。
 破壊的行為は人格特性に根差すもので、しばしば、小児期の機能障害的経験によって強化されるものだが、医師たちが訓練されてきた厳しいやり方も関わっていると Rosenstein 氏らは指摘する。
 Rosenstein 氏は、伝統的に「『お前たちは何も知らないのだからわかるようになるまでは黙っていろ』と医学生は言われるのです」と言う。彼によると、多くが『独裁的、非依存的、支配的』であるように訓練を受けて浮上してきており、彼らは教えられたやり方を模倣するという。「それが問題のお膳立てとなっているのです」
 Swiggart 氏によると Vanderbilt での3日間のプログラムは対処法の育成・実践とコミュニケーション能力に焦点が当てられ、その後6ヶ月の間に3回のフォローアップ・セッションがあるという。さらにセッションが年間約6回開催されるが、これは Nashville に連れてこられることになった事案のロール・プレイを行う必要がある6人の医師に限られる。
 「グループが必要ですし、参加者にはフィードバックが求められます」と Swiggart 氏は言う。
 このようなプログラムの有効性を評価する研究はほとんど存在しない。Vanderbilt のコースを修了した100人の医師の予備的研究では、仕事仲間や管理者、およびその医師自身による評価によると、破壊的行為は統計的に有意に減少していることが示されている。しかし、「全員がうまくいっているわけではありません。本当に退職する必要がある人たちもいるのです」と Swiggart 氏は付け加える。

One surgeon’s story ある外科医の話

 技師の指を骨折させた例の外科医はそれを睡眠不足と過重労働によって引き起こされた事故だと述べた。彼女によると、彼の手は、『置いておくべきでない場所』、すなわち、患者の下肢の金属製ストラップの上にあったという。
 「私がそんなことをするような人間だったということにひどく動揺しました」とその外科医は言う。彼女は、氏名および医療行為を行っている中西部州を公表しないという条件で語る。同病院は自費で Vanderbilt に行くよう勧告した。そこは登録者の約20%が女性である。
 その他には明白な事案はなかったが、彼女のキャリアは、特に看護師との“相互関係が困難”と特徴づけられていたと彼女は言う。「嫌われていると感じました」と彼女は言い、彼女を妬んでいる者がいると考えていたと付け加える。彼女は仕事仲間との人間関係を築こうとすることはなく、周囲の人たちから辛辣なタイプであり慢性的に不機嫌な人物と見みなされたために、自分が避けられるようになったことを後になって知ったという。
 現在40才代半ばになる彼女は、レジデントや研究生の研修中に教えられてきた通りに振る舞っていたと言う。
 「私は、部屋に入ってきて『経鼻胃管を使えるようにしろ!』と怒鳴るような男性ばかりから指導を受けました」あるとき手術室で指導者が器具を彼女に投げつけたことを思い出す。「私には女性の指導者はいませんでした。女性として手術に入る時に言われたことは、『強くなければならない』でした。悪い振る舞いに関して言えば、男性は女性よりずっとうまく罰を逃れることができると思います」
 彼女が Nashville にやってきたとき、“島送りにされ罰を与えられた”ように感じていたが、このプログラムによって自分の感情をよりうまく調整し、ぞんざいな態度を和らげることができるようになったという。
 「それは実際には集団療法のような感じです」と彼女は言う。「最も効果を発揮する部分は他の人たちの話を聞いたり、自分の話をしたりすることでした」事件のロール・プレイングはとりわけ厳しいものだった。
 彼女によると、このコースは息を抜くことや自己監視能力を知り、自身の行為に対する見方を改善するのに非常に有用だったという。「私は正常に役割を果たしていなかったのにそれに気づいていなかったのです」

昨今、日本ではアスリートの体罰が問題になった。
暴力はもちろん非難されるべきだが、
問題となるのは、
コーチや監督など強い立場にある人が
どんなに横暴な態度をとったとしても
弱い立場の人たちはそれに黙って耐えるしかないという
現場の構図なのだと思う。
強い立場にある者はそれなりに
しっかり節度をわきまえておく必要がある。

では、それが医療で起こったとしたらどうだろう。
直接暴力をふるうような医師はごく少数と思われるが、
手術室の執刀医の中には、
術中、怒鳴りちらしたり、器具を投げつけたり、
手術台の下では足で蹴ったり踏みつけたりする輩が
少なからずいることだろう。
もともと強い立場にある医師が、
自分の感情のまま破壊的行動を行うことは、
患者の不利益に直結する。
つまり人命に関わるという意味において
アスリートに対する暴力より深刻である。
また、密室に近い空間が舞台となっていることの
危うさもある。
この問題については米国では重要な課題として認識されており、
すでにガイドラインが制定され、
上記のようなプログラムが進められているが、
残念ながら本邦においては、こういった状況は
いまだ野放し状態のままであると言わざるを得ない。
研修医時代からの抑圧が、
一人前になったときに解き放たれて
こういった態度を示してしまう可能性もあるが、
最近は研修医時代から指導医の言うことを聞かない医師も多い。
そういった人たちは
一体どんなエラい先生になっていくのだろうか?
医師教育にもまだまだ課題が多そうだ。

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2013年4月新ドラマ

2013-03-08 18:09:28 | テレビ番組

まずは2013年1月クールのドラマを総括。
今クールは大当たりと言えるドラマはなし。
しかも15%越えは『相棒』のみという体たらく。
これは視聴者のテレビ離れによるというよりは、
魅せるドラマが実際にないからではないか。

さて、各ドラマ、まだ放映中だが、
例によって、3月8日までのデータに基づいて
視聴率の良かった順に勝手な寸評を加えてみたい
(括弧内は平均視聴率、大河ドラマを除く)。

Photo

『相棒(11)』(16.86%)
昨年10月開始のドラマだが、上述のように今クール唯一の15%越え。しかもほぼ全回で15%以上と新相棒が成宮寛貴に代わっても人気は根強い。新鮮味はあまりないと思うのだが…。皆さん安定した刑事ドラマがお好きなようだ。
『とんび』(14.00%)
旭が子役のころは16%越えだったのだが、佐藤健になってから並の視聴率まで下降(苦笑)。ドラマ自体はNHK版(堤真一)の方が良かったとの声も聞かれる。熱演の内野聖陽の健闘は称えたいが、ちょっとくどすぎる感もあった。原作に忠実に広島弁で見たかった。
『最高の離婚』(11.81%)
坂元裕二の脚本はセリフの細かいところまでよく練られていて、時折の長ゼリフも飽きることなく聞けた。4人とも演技がしっかりしていて安心できた。ただ本ドラマの内容からは視聴者層がかなり限定されたのではないかと推察され、思ったほど視聴率が伸びなかった原因はそのあたりにあるのかもしれない。
『ビブリア古書堂の事件手帖』(11.74%)
舞台となっていた鎌倉の雰囲気がよく描かれていて、剛力彩芽も頑張っていたと思うが、いかんせん彼女の滑舌が悪く、セリフ・ナレーションともに聞きづらかった。ドラマの中心となる3人(剛力、AKIRA、高橋克実)の演技力が揃って今いちで、この中に少なくとも一人は安定した俳優を配したかった。また『事件手帖』とあるが、たいした『事件』はなく、多くの視聴者もどっぷりとはまることができなかったのではないか。
『ラストホープ』(11.50%)
おっちょこちょいでおとぼけの医者役ならまだしも、最先端医療を担う医師役はやっぱり相葉雅紀には無理。その他のキャストたちもとても先進医療センターのスタッフに見えず、専門用語を織り交ぜたセリフもたどたどしい。多部未華子は個人的にはファンなのだが、あえなく初回で視聴を断念。
『夜行観覧車』(11.40%)
鈴木京香と石田ゆり子の配役を逆にした方がよかったのではないかと感じた。夏木マリの演技が大げさすぎてリアリティが削がれてしまったように思う。金曜の夜だったのでなんとかこの数字が獲れたのかもしれない。
『おトメさん』(11.12%)
黒木瞳、相武紗季の両人はなかなか頑張っていた。ただ黒木が演じた姑はもう少し庶民的な感じでよかったのではないか。石田純一の大根ぶりはドラマを壊してしまった。
『信長のシェフ』(10.82%)
深夜ドラマでこの視聴率はなかなかのもの。ただし原作の面白さがドラマに生かし切れていない。玉森裕太は表情の変化などもう少し演技を磨く必要がある。一方、志田未来、役柄に今後どのような方向性を見つけていくべきか、先行きが心配である。
『泣くな、はらちゃん』(10.31%)
個人的には今クール一番だったドラマ。これまで嫌いだったが、長瀬智也がいい味を出していた。麻生久美子も癒し系の雰囲気でほほえましかった。つい口ずさんでしまいそうな挿入歌もグッド。土9時のこの枠はSFファンタジー路線がいいようだ。残念ながら視聴率は獲れなかったが…。
『dinner』(9.88%)
予想通り視聴率は獲れなかったが、惨敗でもなかった。個人的には一回も視聴しなかったのでコメントも控える。なお本ドラマをもってドラマチック・サンデーはあえなく終了。
『サキ』(9.88%)
『美しい隣人』もそうだったが、見ていていい気持ちのしないドラマ。たとえ今回も『サキ』が生き延びたとしても、第3弾は絶対見ない。そんな思いを強くした。
『シェアハウスの恋人』(9.29%)
予想通り視聴率は低迷。やはり水川あさみではちと荷が重い。大泉洋は奮闘していたのだが…。結局何が言いたいドラマか理解できず、個人的には第3話でリタイア。
『あぽやん~走る国際空港』(8.32%)
初回から全く観る気が起こらず、1分も視聴していないためコメントなし。視聴率は推して知るべし。TBS木9、死んでます…。

それでは、4月からの新ドラマ、
ざっとチェックしてみましょう。

フジ月9 4/15~ 『ガリレオ2』 福山雅治、吉高由里子、柴咲コウ、北村一輝、渡辺いっけい
2007年10月クールの『ガリレオ』第2弾。本年夏にこのシリーズの映画『真夏の方程式』が公開される予定で、今回の続編放映はその景気づけ連ドラと目される。原作は東野圭吾の『ガリレオ』シリーズで、今回はその中から『ガリレオの苦悩』『聖女の救済』『虚像の道化師ガリレオ7』『禁断の魔術ガリレオ8』のドラマ化となる。今シリーズから主人公の天才物理学者・湯川学の相棒として、柴咲コウ演じる内海薫に代わり、原作にはないキャラクター・岸谷美砂が登場、吉高由里子がこれを演じるらしい。この交代をめぐっては、映画『真夏の方程式』に出演する織田裕二と柴咲との不仲説が取りざたされている。真相は不明だが、吉高は福山と同じアミューズ所属ということもあり、いろいろと裏がありそうである。それはさておき、柴咲が演じた内海薫が所轄の刑事だったのに対し、吉高演じる岸谷美砂は警視庁捜査一課の女性刑事という設定。薫がMキャラだったのに対し、予告では美砂はSキャラとか。不自然さを払拭するためか、一応、第1話には柴咲も登場するとのことである。とにもかくにも今夏の映画を成功させるため制作側には気合いが入っていそうである。

フジ火9 4/9~ 『鴨、京都へ行く~老舗旅館の女将日記~』 松下奈緒、椎名桔平、堀内敬子、若村麻由美、かたせ梨乃、松平健
松下奈緒が老舗旅館の女将となって奮闘する完全京都ロケによる現代版・細腕繁盛記?東大卒のエリートキャリア財務官僚の主人公・上羽鴨(うえばかも)は、故郷・京都にある実家で名旅館『上羽や』の女将だった母親が急逝したため、急遽、女将業を継ぐことになる。ところがその『上羽や』は借金まみれだった。突然の女将就任に鴨は右往左往し、名旅館の評判は急降下、従業員たちの反発に遭う。そこに現れたのが、椎名桔平演じる外資系コンサルタント会社の金融マン・衣川周平(きぬがわしゅうへい)。計算高く頭のキレるこの京男と鴨はいがみ合いながらもコンビを組みこの旅館の再建を目指すことになる。揃って強烈キャラを持つ旅館の従業員である仲居頭、板長、板前、下足番らと対峙し苦労を重ねながらも、鴨は徐々に女将稼業にハマッていき暴走する。亡くなった母親と鴨との確執、母親が目指していたものは一体何だったのか、などの謎も徐々に解き明かされていく。低迷気味の松下奈緒が起死回生のきっかけをつかめるか注目。“細腕”ならぬ“凄腕”繁盛記?

フジ(関西テレビ)火10 4/9~ 『幽(かす)かな彼女』 香取慎吾(SMAP)、杏、前田敦子、北山宏光(Kis-My-Ft2)、岩橋玄樹(ジャニーズJr.)、森本慎太郎(ジャニーズJr.)、神宮寺勇太(ジャニーズJr.)、澤畠流星、松井健太、田口司 、渡辺貴裕、佐奈宏紀、岡田龍之介、未来穂香、近藤玲奈、飯豊まりえ、広瀬すず、関紫優、中村ゆりか、柴田杏花、荒川ちか、森迫永依、山本舞香、浅川梨奈、加藤里保菜、上白石萌歌、濱田マリ、春海四方、真矢みき、高嶋政宏
キャッチフレーズは人間と幽霊の垣根を越えたコンビが繰り広げるハートフル・ラブコメディ、とか。ある男性教師と、“幽霊”となった元女教師がタッグを組んで学校に起こる様々な問題を解決していこうとするバカバカしい(失礼!)SF ラブコメディ。主人公は霊感を感じることのできる神山暁(香取慎吾)。彼はもともと工学系の仕事に就きたかったため教師という職業には情熱を持てない“行き場を失った”中学校教師。そんな彼がある日、杏演じる“生き場を失った”元教師の幽霊(地縛霊)・アカネと出会う。彼女は、ドジで要領の悪い女幽霊で、神山は妙に放っておけない気持ちになる。しかし、これをきっかけにして神山には教師としての情熱が芽生え、学校にはびこる様々な問題に全力でぶつかっていこうとする。 TBS『MONSTERS』で悲惨な演技を見せてしまった香取、名誉挽回なるか?そして低視聴率女・前田敦子もその汚名払拭なるか?見どころはその辺になりそうだ(おいおいっ!)。

テレ朝水9 4/17~ 『遺留操作(3)』 上川隆也、斉藤由貴、八嶋智人、岡田義徳、正名僕蔵、眞島秀和、波岡一喜、甲本雅裕、西村雅彦、三宅裕司
コメントは特になし。事件ものがお好きな方はどーぞ。

日テレ水10 4/17~ 『雲の階段』 長谷川博己、稲盛いずみ、木村文乃、荻原聖人、青柳翔、キムラ緑子、大友康平、内藤剛志
渡辺淳一原作の小説『雲の階段』のドラマ化。離島の診療所で医師資格を持たずに医療行為を行う青年が辿る運命と彼を愛し抜く二人の女性の生き様が描かれる。長谷川博己演じる主人公・相川三郎は医師不足に悩む離島の診療所に務める事務員。あるとき、診療所の村木所長(大友康平)は三郎に虫垂炎の手術をやらせてみる。手先が器用で勘も良い三郎はそつなくこなし、それをきっかけに様々な治療を覚えていく。そして島民からも信頼されるようになった三郎は医師免許のないまま所長の弟子となり医師の仕事をこなしていく。無資格診療を続ける三郎を愛し、支え続けようとする診療所の看護師・鈴木明子を稲盛いずみが演じる。そして、あるとき大病院の令嬢・田坂亜希子(木村文乃)と出逢ったことで、三郎と明子の運命は大きく変わる。亜希子の父親で東京の大病院の院長・田坂を内藤剛志が演じる。原作がしっかりしているだけに、興味深いドラマとなりそうだ。

フジ水 10 4/17~ 『家族ゲーム』 櫻井翔(嵐)、鈴木保奈美、板尾創路、神木隆之介、浦上晟周 、忽那汐里
フジの日9・ドラマチックサンデーが不調続きでわずか2年半で廃止、代わって水10のバラエティー枠にドラマを持ってきた。その記念すべき第一作には既に映画化・ドラマ化された名作を取り上げ、主役に嵐のメンバーを起用するなど手堅い企画で挑む。原作は本間洋平による1981年の第5回すばる文学賞受賞作品『家族ゲーム』。本作品の初めての映像化は1982年のテレビ朝日制作の2時間ドラマでこのときの主演は鹿賀丈史。続いてあの松田優作が主人公を演じた映画が 1983年6月に公開されている。さらに1983年8月から9月にかけて長渕剛主演でTBSで連続ドラマ化された。風変わりで突拍子がなく型破りな青年が、高校受験を控えた中学生の家庭教師となったことから巻き起こる騒動がコミカルに描かれる。
主人公の変人家庭教師・吉本荒野を嵐・櫻井翔が演じる。落ちこぼれの中学2年生と、多くの問題を抱えるその家庭を独自の方法で更正していく。30年前の原作の時代とは学校・教育の現場も大きく変わっており、現代版『家族ゲーム』はこれまでと違ったテイストとなりそうだ。

TBS木9 4/18~ 『潜入探偵トカゲ』 松田翔太、松岡昌宏(TOKIO)、蓮佛美沙子、ミムラ、吹越満、遠藤憲一、伊東四朗
未解決難事件解決のために捜査一課の密命によって潜入捜査を請け負う奇妙な名探偵とその助手の活躍を描く。主人公・トカゲ(松田翔太)は元警視庁捜査一課の刑事。協調性に欠け、他人にも心を許さないため周囲から疎まれていたが、並外れた“映像記憶”能力と超人的身体能力で多くの難事件を解決し一目置かれていた。しかし、ある事件で致命的なミスを犯し相棒を死なせてしまう。自身は責任を取って警察を辞職、その後探偵事務所の調査員として働いていたが、警視庁からの要請により潜入探偵として捜査に協力することになる。トカゲの助手・望月香里を演じるのは蓮仏美沙子。お嬢様育ちの香里だったが、気が強く大雑把な性格。探偵事務所に入りトカゲのもとで修行をしているが持ち前の強さでトカゲを救うこともある。トカゲの驚異的な記憶能力を武器に二人は犯人を突き止めていく。トカゲのライバルで、警視庁捜査一課の刑事・寺島秀司を松岡昌宏が演じる。トカゲとは正反対の人情家でそのスマートな振る舞いには人気がある。過去にトカゲのせいで信頼する上司を失ったという思いからトカゲに対して強いライバル心を燃やしている。トカゲの元上司・岸森幹雄を遠藤憲一が、トカゲの探偵事務所所長・柳田雅彦を伊東四朗がそれぞれ演じる。彼らには別の思惑があるのだが、回が進むとともにそれらが明らかにされていくことになる。自身の父親による“探偵物語”とはまた一味違った探偵を松田が演じるようである。

テレ朝木9 4/18~ 『ダブルス~二人の刑事』 坂口憲二、伊藤英明、水川あさみ、夏菜、加藤雅也、高橋克典
刑事のコンビ・ドラマは相当昔から数々ある。古くは『トミーとマツ』『あぶない刑事』から『相棒』『東京DOGS』まで。今回テレ朝は、イケメンコンビを作り上げ新たなシリーズ化を狙っているように思われる。新宿中央署を舞台に伊藤英明扮する刑事・山下俊介と坂口憲二扮する刑事・田代啓一のコンビが凶悪犯罪に立ち向かう。新宿で頻発する多種多様の犯罪に対応するために新宿中央署に新設された刑事課特殊班には警視庁管内から選び抜かれたメンバーが集められた。『何事もゼロベースから見直す』との同署署長の肝煎りで作られた部署であることから『0係』呼ばれている。この0係に山下・田代両刑事が赴任するところからドラマは始まる。山下は前向きで明るい性格で情に厚く正義感にあふれるが、その実直さゆえルールや建前と対立し自身の考えを貫いてしまうことがある。上司の命令に背いて行動したり、思ったことをズバズバと口にして、相方の田代に制止されたり諌められたりする。一方の田代も義理人情に厚い熱血漢。慎重派だが、一度キレるとひどく感情的になることもある。山下は田代と『どこかで会ったことがある』と不確かな記憶を持つが、田代はそれをはぐらかす。そこには何か“秘密”がありそうだ。対立することも多い二人だが、お互いに徐々に“友情”が芽生えてくる。言い合いをしながらも最後には協力して難事件に挑み、時にはアクションシーンも展開される。このコンビ、好対照な二人というより、どちらかというと似たタイプなのかもしれない。人気シリーズ『相棒』とは違ったイケメンかつアクション・コンビで人気シリーズに定着できるかが見もの(男性視聴者としてはあまり期待をしてないのだが…)。

フジ木10 4/11~ 『ラスト?シンデレラ』 篠原涼子、三浦春馬、藤木直人、菜々緒、大塚寧々、飯島直子
39才の“オス化女子”が奮闘するラブ・コメディー。仕事一筋に生きる現代の女性たちの中には、仕事に没頭するあまり自分が女性であることも忘れ、過労やホルモンバランスの崩れから髪の毛が薄くなったり、濃いヒゲが生えたりするなど“オス化”が見られることがあるという。そんな様々な悩みを抱える30代後半のアラフォー女子の実態を描く。主人公である 39 才の“オス化女子”・遠山桜を篠原涼子が演じる。その桜が、あるパーティーで出会い惹かれてしまうことになる年下のイケメン男性・佐伯広斗を三浦春馬が演じる。また桜とは男女の枠を超えた関係にある立花凜太郎を藤木直人、専業主婦で姑との関係や夫とのセックスレスに悩む桜の友人・武内美樹を大塚寧々、同じく桜の親友で、フェロモンを発散させている肉食系女子・長谷川志麻を飯島直子、凜太郎に恋をしているお嬢様・大神千代子を菜々緒が、それぞれ演じる。ドラマの題材に事欠くご時世とはいえ、まあ色々とネタを見つけてくるものである。

TBS金10 4/19~ 『TAKE FIVE』 唐沢寿明、松雪泰子、松坂桃李、倍賞美津子、稲垣吾郎
“TAKE FIVE”は泥棒団の名前。唐沢寿明演じる主人公・帆村正義の表の顔は大学教授、そして裏の顔は大泥棒。20年前まで父親とともに、『悪い奴らから大金をせしめる』史上最強の窃盗団“TAKE FIVE”のメンバーだったが、ある出来事がきっかけで“TAKE FIVE”を引退し、都内の大学で心理学の教授として真っ当な日々を送っていた。ところがある日、謎のホームレスの女からレオナルド・ダ・ヴィンチの名画『ルクレツィアの肖像』の写真を渡される。そしてその絵画が東都銀行の担保倉庫にあることを告げられる。しかもその女は正義の過去を知っているようだった。絵画の事実を確かめたい衝動に駆られた正義はその担保倉庫に忍びこむが、そこには絵画はなく、偶然同じように潜入していた同業者・新見晴登(松坂桃李)に出くわす。このことをきっかけに正義は再び泥棒の道を進み始めることになる。そして彼は5人の仲間を集め“TAKE FIVE”を再結成する。新美もこのメンバーの一人として参加する。彼は警備会社の社員を務める一方、天性の“忍び込み師”でもある。また稲垣吾郎演じる岩月櫂は警察の人間で潔癖症ながら高い情報収集の力を持っていたが、突然の左遷をきっかけに“TAKE FIVE”に加わることとなる。残る“TAKE FIVE”のメンバーである南真一を六角精児が、火岡均を入江基儀がそれぞれ演じる。そして、この窃盗団に対峙する刑事・笹原瑠衣を松雪泰子が演じる。彼女の警察官だった父は“TAKE FIVE”による窃盗事件をきっかけに自殺していたが、瑠衣は正義が父の敵の息子であることをまだ知らないでいた。謎のホームレスの女性を賠賞美津子が演じるが、正義に近づき彼を再び泥棒稼業に引き戻そうとするその目的は不明だ。その他、瑠衣の部下の若手刑事・矢野昇太郎役に千葉雄大、正義の研究室の大学院生・柿沢なな役に福田彩乃がキャスティングされている。その名前と裏腹な行動に走る正義の口癖は『盗みは人を不幸にする。でも盗むならそこに愛が必要だ!』とか。泥棒と警察官との禁断の恋、20年前の窃盗団解散の真相、瑠衣の父親の死の真実、ダ・ヴィンチの名画に隠された秘密など様々な謎や思いが交錯しながら物語が展開される。昨今、おバカなCMで品格を落としている唐沢くんの復権に期待したい。

テレ朝金11:15(金曜ナイトドラマ)4/12~ 『お天気お姉さん』 武井咲、大倉忠義(関ジャニ∞)、佐々木蔵之介、壇蜜
今や何を材料にしてでもミステリードラマが作られるようだ。今回は“気象”の要素をミステリーの世界に取り入れた謎解きドラマ。脚本は大石静。朝の情報番組でお天気キャスターを務める武井咲演じる気象予報士・安倍晴子が幅広い気象知識を駆使して警察と違った視点で事件を解決に導くという物語。晴子とタッグを組んで事件解決に当たる警視庁捜査一課の刑事・青木豪太を関ジャニ∞の大倉忠義が演じる。クールで無愛想な晴子と対照的に直情型だが純粋で打たれ弱い豪太は、晴子の助けを借りて犯人のアリバイや供述の嘘を科学的に否定していくことによって真相に迫っていく。この二人に加え、人付き合いが苦手だが晴子たちの捜査に積極的に協力する監察医・三雲三平を佐々木蔵之介が演じる。ゴールデン3連敗だった武井咲が、深夜ドラマでいかなる活躍を見せられるかが見どころ。

日テレ土9 4/13~ 『35歳の高校生』 米倉涼子、溝端淳平、片瀬那奈、升毅、相葉裕樹、横山めぐみ、榎木孝明、柄本明、渡哲也
全日制高校を舞台にした学園ドラマだが、35歳の謎の編入生を演じる米倉涼子は正真正銘の女子高生。いじめ、不登校、ひきこもり、モンスターペアレント、自殺など様々な高校生たちを取り巻く問題に一人の大人が同級生の立場で真っ向から立ち向かっていこうとする社会派エンターテインメントドラマ。新学期、高校3年生のクラスに一人の編入生がやってくる。18年ぶりに復学した35歳のその女子高生はクラスの中でも同級生たちと一線を画す孤高の存在。朝は高級外車で登校、昼休みは喫煙所で一服し、放課後は缶ビールをあおる。謎に包まれたこのオバさん女子高生が、その破天荒な強さで校内に蔓延している『闇』をぶち壊す。一匹狼が硬直化した閉鎖社会に殴り込むという内容と予測され、さながら『ドクターX~外科医・大門未知子』の学園版といったところか?局は違うが、今回もそこそこの視聴率を獲りそうである。

フジ土11:10 4/13~ 『間違われちゃった男』 古田新太、中丸雄一(KAT-TUN)ほか
昨年解散した東京セレソンデラックスの舞台『ぴえろ』をもとに今回連続ドラマ用に宅間孝行が書き下ろしたコメディ。下町・蔵前の寿司屋で繰り広げられる人情ドラマが1話ごとに1日のストーリーとして展開される。人情に厚く、涙もろいせいで失敗を繰り返すコソ泥の主人公・沢木裕次郎を古田新太が演じる。また裕次郎の舎弟・ヤスを KAT-TUN の中丸雄一が演じる。沢木裕次郎はコソ泥だが、その盗みには彼なりのポリシーがある。ある夜、蔵前にある寿司屋『すし政』にヤスと忍び込むが、あっさり見つかりボコボコにされ2人は意識を失う。ところが目覚めた2人は『すし政』の面々の大歓迎を受ける。沢木が10年前に店を飛び出した腕の立つ板前・テルとうり二つだったのだ。何とかその場から立ち去ろうとする沢木とヤスだったが、その人情の厚さと人の良さが災いし逃げ出せず、さらには亡くなったばかりの大将の娘・秋子に一目惚れしまった沢木はますます深みにはまっていく…。こんなドラマ、土曜の深夜に視たいと思う人がどれくらいいるだろうか?

NHK日8 継続中~ 大河ドラマ 『八重の桜』 綾瀬はるか、西島秀俊、長谷川博己、剛力彩芽、黒木メイサ、松重豊、風吹ジュン、長谷川京子、工藤阿須加、綾野剛、稲森いずみ、玉山鉄二、池内博之、斎藤工、北村有起哉、貫地谷しほり、芦名星、市川実日子、白羽ゆり、秋吉久美子、小泉孝太郎、村上弘明、降谷建志(Dragon Ash)、生瀬勝久、市川染五郎、小堺一機、反町隆史、加藤雅也、吉川晃司、中村獅童、西田敏行、オダギリジョー、勝地涼、水原希子、谷村美月、小栗旬、及川光博、高嶋政宏、奥田瑛二、松方弘樹
ここまで新島八重と綾瀬はるかの間にイメージ上のギャップが大きいこと、さらにドラマの展開も遅いことから視聴率は右肩下がりの状況にある。綾瀬はるかが華奢過ぎる印象。また幕末の緊迫感も今ひとつ伝わってこない。前作に比べ映像はきれいになっているのだが…。とにかく、最近の視聴者は性急さを求めている傾向にあり、我慢して視聴を続けようとする人が減ってきているように思われる。とはいえ、会津の視点から幕末・明治維新が描かれる点は新鮮でもあり、今後に期待したい。

TBS日9 4/14~ 『空飛ぶ広報室』 新垣結衣、綾野剛、水野美紀、要潤、高橋努、ムロツヨシ、桐山漣、渋川清彦、三倉茉奈、前野朋哉、生瀬勝久、柴田恭兵
原作は人気作家・有川浩のベストセラー小説『空飛ぶ広報室』。美人テレビディレクターと航空自衛隊の元戦闘機パイロットが『幼い頃からの夢を絶たれ、ただいま人生の壁にぶち当たっている』という共通の思いからお互いに理解を深め、惹かれ合い、次の目標を見つけ出し成長していく姿が描かれる。さらにこの2人を軸として、航空自衛隊の『チーム広報室』の個性的なメンバーたちが、ときには衝突し、ときには影響し合いながら、仕事に対する目標を見て受け、成長していくという群像劇も映し出される。強気なテレビディレクター・稲葉リカを新垣結衣が、不慮の事故で夢を絶たれた元戦闘機パイロット・空井大祐を綾野剛が演じる。また航空自衛隊の広報室長で、部下の企画を全面的にパックアップし、優れた交渉術を持つ理想の上司・鷺坂正司を柴田恭兵が演じる。物語は2010年、東日本大震災以前から始まる。帝都テレビに勤務する稲葉リカは幼い頃からの夢だった報道記者となり、警察庁付きの記者として活躍、有望な人材として高く評価されていた。しかし、リカの強引すぎる取材は取材対象とトラブルになることが多く、不本意ながら入社5年目で夕方の情報番組のコーナーディレクターへ異動させられる。そこで制服特集企画の担当となったリカは自衛隊の取材を始めることになる。一方、念願の戦闘機パイロットになることができた空井大祐二尉は不慮の事故で足を負傷し、ブルーインパルスに搭乗するという幼い頃からの夢が絶たれてしまう。航空幕僚監部広報室への異動となった空井は感情を表に出すこともなく失意の日々を送っていた。空井が“当たり障りのない穏和な能面”をかぶっているだけだと見抜いた上司の鷺坂正司は周囲の反対を押し切って空井にリカのアテンド役を任せることにする。空幕広報室に通うことになったリカは、スクープを物にして記者に戻りたいとの気負いから空井をはじめとする空幕広報室のメンバーに対して挑発的な言動を繰り返す…。フジ日9のドラマ枠が廃止となりライバルがいなくなった日曜劇場だが、放送業界関係(および自衛隊)のドラマではあまり視聴率は期待できそうにない。

以上、今クール、
最も高視聴率を期待できそうなのは
米倉涼子の二番煎じ風ドラマ?
あるいは渡辺淳一原作ドラマ?
それともやはり実績のある『ガリレオ』?
乞うご期待!ですね~。

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迷子にならない子猫ちゃん

2013-03-01 16:41:35 | ペット

鮭ははるか彼方の大洋から生まれた川に戻ってくる。
アオウミガメは大洋を泳ぎ毎年2,000㎞も離れた
いつもの産卵場所を目指す。
渡り鳥は毎年、何千キロも離れた土地を往来する。
種の保存のためとはいえ、動物たちの方向感覚の正確さには
驚かされる。
住み慣れた町でも迷ってしまうことのある人間には
持ちあわせない何かが彼らにあるのは間違いないなさそうだ。
果たしてその何かとは一体何なのであろうか?

2月19日付 Washington Post 電子版

How does a lost animal find its way home? 迷子の動物はどうやって自宅にたどりつくのか?

Animalswayhome

果たして哺乳動物が磁北を感じることができるのか、また感じるとすればどれほど強く感じることができるのかは科学者たちに分かっていないが、それらは別の方向感覚の手段を持っている。

By Brian Palmer,
 フロリダ州 West Palm Beach のある夫婦の猫が11月に Daytona Beach でいなくなったが、結果、2ヶ月後に自宅から1マイル以内のところにその動物が現れた。その猫が200マイル移動したことは間違いない。この驚くべきできごとには前例がないわけではない。オーストラリアの猫が1年以上かけて1,000マイル以上を旅して自宅に戻ったことが伝えられている。Bobbie the Wonder Dog という犬がインディアナからオレゴンまで歩いて自宅に戻ったことで1920年代にちょっとした有名犬となった。また昨年 Buck という名前のラブラドールは、バージニアの Winchester からサウス・カロライナの Myrtle Beach まで500マイルを移動した。動物たちはそのような遠距離の地からどのようにして自宅までの道を見つけるのであろうか?
 それではまず基本的なことから始めてみよう。動物にとって最も単純な手段は taxon navigation と呼ばれるもだが、これはほとんどナビゲーションといえるようなものではない。Taxon navigation は自分が居たい場所を直接的に感じる能力である。
 「ラットや犬は臭いの跡を追跡します」そう言うのはカナダ、University of Waterloo で空間的意思決定の神経科学を研究している Matthijs van der Meer 氏である。「虫は化学的痕跡を追跡し、それらを引きつける化学物質の濃度が高い方向に移動するのです」
 アニマル・ナビゲーターとして最も有名な鳥類は地球の磁場を感知することができる。そのため、夏の間、雁が北に渡るとき、その手段の一つは地球の磁北を感じそれに向かうことである。他の動物にもこの磁気感覚を持っているという兆候が見られるが、それらの大部分において、その感覚はより弱い形でしか現れない。
 動物がその目標を直接的に感じとれないとき、作業ははるかに複雑となる。そうなると一連の別の能力が必要となる。最も基本となるのは記憶である。動物が向かいたいと思う場所について何かを記憶していなくてはならない。猫、犬、さらに鳥までもが、すべてこのタイプの能力を持っている。記憶を持たずに道を進むことは、住所を知らないまま地図上でレストランを見つけようとするようなものである。
 もう一つの基本的なスキルは自分の位置と他の場所とを関連付ける能力であり、これを私たち人間は方向感覚と呼んでいる。
 「鳩は、その磁気感覚を用いて北を感知できますが、もし東に向かう必要があるときにはそれは役に立ちません。北と東の関係を理解する追加の情報が補足されなければなりません」と van der Meer 氏は言う。
 哺乳動物が磁北を感知できるのか、できるとしたらどれくらい強く感知できるのかについては科学者たちにはわかっていないが、それらには別の方向感知戦略が備わっている。哺乳類は内耳に小さな毛があり、向きを変えるときにそれがある方向から他方向へ押されることで、身体が回転していることを脳に伝えるようになっている。このいわゆる前庭器官は便利なものではあるが、鳥類の体内コンパスと比べると発達が不良である。この毛はゆっくりとした方向転換を感知することはできないし、一方であまりに速い回転は方向感覚を失わせる(ぐるぐる回転させられた後ロバの絵に尻尾をつけるゲーム“Pin the Tail on the Donkey”をご記憶か?)
 現在地を視覚化することももう一つの位置確認の手段となる。人間が用いるその一つの形は目印をつけることである。誰かが方角を尋ねたら、あなたは、「あの教会に向かいなさい」とか「コーヒーショップを見たら左に曲がりなさい」とか言うでしょう。動物もまた目印を頼りにすることがわかっている。van der Meer 氏の実験によると、もし実験用ラットが方向感覚を失うまで回転させられたなら、ラットは、自宅への帰り道を見つけるための指針として人間の作った出口標識や電球などの視覚的手掛かりを用いることになるという。
 メンタルマップを作成する人間の能力を人間以外の哺乳類も保有しているとの神経学的エビデンスが存在する。ラットが迷路を探っているとき、head cell と呼ばれる特殊な地図製作ニューロンが活動を起こす。ラットが動き回るとき、様々な細胞のスイッチが切れたり入ったりして、活動する脳細胞に基づいてラットは迷路の中でその位置を特定することが可能となる。さらに grid cells と呼ばれる別個の細胞群も存在し、それらはラットの一般環境を区別するという。例えば、ラットが迷路Aにいるのかそれとも迷路Bにいるのかといったことである。(Head cells は都市の地図、grid cell は国道の地図と考えていただきたい。有効なナビゲーションには両者が必要である)
 さて神経科学の話はこれくらいにしておこう。例のネコに話を戻そう。どのようにして猫は Daytona から West Palm Beach まで行けたのだろうか?おそらく海が鍵となったと考えられる。West Palm Beach は Daytona から海岸沿いにまっすぐ200マイル南にある。その猫が一旦海を見つけたら、一つの選択をするしかないのである。すなわち左か右か?である。
 「猫は弱い磁気感覚を持っていたか、それとも北へ向かっていた間にどちら側に海があったかを覚えていたことが考えられます」と van der Meer 氏は言う。「あるいは単にまぐれ当たりだったのかもしれません」
 まぐれ当たりだったというのはちょっと手厳しい。とりあえず、この猫が利用した可能性がある能力の数を列挙しておこう。記憶(自宅は海の近く)、目印(海そのもの)、taxon navigation(海を感じること)、そしておそらく過ちの繰り返しを避けるためのメンタルマップ。
 『チャンスは備えあるところにだけ訪れる』―パスツールもそう言っているのだから―

遠く離れた場所から自分たちの巣に戻ることのできる
動物たちが持つ能力を帰巣本能という。
この本能が発揮されるには、
自分の位置認識や方位の正確な判断を可能にせしめる
特殊な能力が備わっているに違いない。
その能力がどのようなものであるかはいまだ解明されていないが、
彼らには自立航法システムのようなものが備わっていると
考えられる。
これについては、
視覚、聴覚などの感覚器官から得られる情報を基にして
脳に地図のようなものを描いているのではないかとする説、
あるいは体内にあるコンパス機能を持つ物質を利用して
方角を感知できるのではないかという説、
さらには方向細胞(記事中の head cell、正確には head
direction cell)という大脳辺縁系に局在する脳細胞が
暗闇でも目標の方向に頭が向いたときだけ活性化し、
目的地の方向を察知するという説、などがある。
いずれにしても、
私たち人間には及びもつかない特殊な能力が
関与している可能性がある。
ひょっとしたら、実際に私たちのまわりにも
“体内コンパス(生体磁石)”を持ち
方角を感じとる能力を持つ人間が存在するかも知れない。
それとも、人は皆、本来その能力を持っていたのに
地図やコンパスを利用するようになって
退化してしまった、とは考えられないだろうか?

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