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MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

ブログ引っ越しました!

2025-08-15 19:55:27 | ブログ

当ブログへのご来訪、ありがとうございます。

goo blog 閉鎖に伴いアメブロ ↓ に引っ越しました。

MrKのぼやき

 

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果たして髄膜炎は治ったのか?

2025-07-13 18:55:27 | 健康・病気

2025年7月のメディカル・ミステリーです。

 

7月5日付 Washington Post 電子版

 

Medical Mysteries: He beat a fungal infection. So why was he so ill again?

メディカル・ミステリー:彼は真菌感染症を乗り越えた。それではなぜ再び彼の病状は悪化したのか?

Doctors were stumped by a man’s continuing severe illness months after his treatment.

医師らは治療後数ヶ月して男性に重篤な病状が続いていることに困惑した。

 

(Illustration by Bianca Bagnarelli/For The Washington Post)

 

 

By Lenny Bernstein,

 Peter Redweik(ピーター・レドウェイク)さんの割れるような頭痛、呂律の回りにくさ、そして歩行時のよろめきが真菌感染によって生じた脳の重篤な炎症である cryptococcal meningitis(クリプトコッカス髄膜炎)によって引き起こされていることが彼の担当医らによって解明されたとき、amphotericin B(アムホテリシンB)が処方された。

 この薬剤は、腎機能障害、貧血、吐き気、けいれんなどの重大な副作用を起こすことから医師らはこれを“amphoterrible(アムホテリブル:非常にひどい)”と呼んでおり、通常、生命を脅かす感染症に限って用いている。Redweik さんはおそらく2016年半ばに Vancouver Island(バンクーバー島)を訪れたときに真菌感染症にかかり、今や間違いなく瀕死の状態にあった。彼は歩こうとすると壁にぶつかり、頻回に嘔吐していた。

 「病院を受診したとき彼はおそらく数日以内に死んでもおかしくない状況でした」と Redweik さんの妻 Joyce(ジョイス)さんは言う。

 Redweik さんは8月から10月まで入院し、その間医師らは amphotericin の全身投与を行い真菌を治療した。彼は重要な神経への浮腫による圧迫により聴力を失い、一側の目が失明した。またこの薬で腎臓が障害された。彼は歩くことはおろか飲み込みもできなかったため鼻からの管で経管栄養を受けた。元重量挙げの選手で当時58歳の Redweik さんは63ポンド(約29kg)体重が減った。

 

Peter Redweik.さん (Peter Redweikさん提供)

 

 6週間後、amphotericin により真菌は死滅したとみられた。Redweik さんの髄液の培養検査は陰性化し始めた。彼は歩き方、飲み込み方、そして自立の仕方の習得を開始した。10月17日、彼は自宅に戻り、そのまま健康を取り戻し、数週間後には娘の結婚式に出席し、バージンロードを一緒に歩くまでとなった。

 しかし、その4日後、アリゾナの自宅のソファに座っていた Redweik さんは意識を失った。Tucson(ツーソン)市の病院で彼は眼窩の痛みを訴えた。脳圧が急上昇していたため、そこの外科医が頭にシャントを留置し、過剰な脳脊髄液を腹部へと流した。

 しかしほどなく歩行能力は再び低下し、意識不明に近い状態に陥った。アムホテリシンの追加投与が唯一の選択肢のように思われた。しかし彼の髄液の培養では真菌が死滅していることは確実だった。このような状況で、あの“amphoterrible”をさらに投与して何になるのだろうか?

 Redweik さんの重篤な病状に困り果てた主治医は、Redweik さんと似た症例を知っているという National Institutes of Health(NIH、国立衛生研究所)の真菌症の専門医を探し出した。National Institute of Allergy and Infectious Diseases(国立アレルギー・感染症研究所)の translational mycology section(真菌学臨床応用部門)のチーフである Peter Williamson(ピーター・ウィリアムソン)氏は、Redweik さんの治療法についてある直感を持った。ただし Redweik さんはNIHの臨床センター(Williamson 氏が勤務する重症患者のための研究病院)まで行かなくてはならなかった。しかしそこで初めてRedweik さんの病状が明らかとなり、治療を受け、彼の命が救われたのである。

 

Unbearable headaches 耐えがたい頭痛

 

 2017年の春に激しい頭痛が始まったとき、Redweik さんは市販の鎮痛剤を食べるように飲んでいたが最終的にはアリゾナ州 Green Valley(グリーンバレー)の自宅近くの緊急室を訪れた。そこで彼は、暑く乾燥した気候に住む人々にとって一般的な診断を受けた:脱水症だった。

 彼と Joyce さんはその診断を信じなかった。Redweik さんは以前ふくらはぎに血栓ができたことがあったので、彼らは頭の中にも血栓ができたのではないかと心配した。MRI検査を望んだが、神経科医の診察待ちは4~6ヶ月だった。Redweik さんはテキサス州 Plano(プラノ)で新しい仕事を始めており、一足先に現地に向かい Joyce さんは後から合流することになっていた。

 そこで彼の病状は悪化した。頭痛はほとんど我慢できないほどで、頸部まで痛みが広がっていた。彼は1日に2、3回吐くようになり、歩行は不安定になっていた。

 「まるで酔っ払っているようでした」と Redweik さんは振り返る。「安定して歩くことができませんでした。人が見ていないことを願っていました。酔っぱらって仕事に行くような感じでした」。

 数週間後に Joyce Redweik さんが訪れてみると夫が混乱し見当識が障害されていることに気づいた。8月になると、Peter Redweik さんは歩こうとしても転んでしまうようになった。彼には車椅子が必要だった。ようやく神経内科を受診し、MRI検査を受けた。

 血栓はなかった。しかし、病状から Redweik さんは入院となり、検査でクリプトコッカス髄膜炎が見つかった。治療を受けなければ致死的となりうる疾患である。Amphotericin による治療が彼に開始された。

 Redweik 夫妻は成人してからアリゾナやネバダの砂漠地帯で過ごしていたので、Peter さんが Cryptococcus gattti(クリプトコッカス・ガッティ)という森林地帯でみられる湿潤で温和な気候で繁殖する真菌に感染したのは異例だった。しかし彼らは前年にそのような気候の Vancouver Island(バンクーバー島)を訪れていた。そのため Peter さんが菌にさらされたのはおそらくその時だとみられた。

 脳内の圧が危険なレベルまで上昇するため、Redweik さんはは数日おきに脳脊髄液を抜くために痛みを伴う腰椎穿刺に耐えた。最終的にはその処置は、圧力が高くなりすぎたときに腰から液を流出させる腰椎ドレーンに変更となった。

 6週間後、Redweik さんの髄液の培養検査は陰性になった。Amphotericin はついに真菌を死滅させ、彼は歩き方、飲み込み方、そして自立の仕方の習得を開始した。

 AIDS(エイズ)が流行していた時代には、免疫力が低下して cryptococcosis(クリプトコッカス症)pneumocystis pneumonia(ニューモシスチス肺炎)を回避できなかった何十万人もの人々が真菌症に感染した。しかしエイズの原因ウイルスであるHIVを制御する強力な薬剤が開発されたため、現在は感染者はほとんどいなくなっている。

 NIHの Williamson 氏によれば、現在クリプトコッカスに感染する人は年間約3,000人に過ぎない。そのうち約1,000人がHIV患者であり、さらに1,000人が移植を受けた人など免疫系の抑制を受けた人、そして1,000人が Redweik さんのような病前には健康だった人である。3,000人のうち約3分の1が死亡する。

 Redweik さんがソファーで意識を失い、再発と思われる症状で再び病院に運ばれたとき、彼の医師たちは困惑した。髄液の培養検査では生きた真菌が存在する証拠は得られなかったが、いまだに重症の髄膜炎の症状が見られた。一つの検査が間違っているかもしれないが、複数の検査は間違っていない。その結果を無視し、もう一度真菌を殺す努力をすべきなのだろうか?

 その答えを探していたところ、Redweilk さんの主治医の一人が Williamson 氏の名前をネットで見つけ、連絡を取った。

 Williamson 氏によれば、それまで健康であった患者の一部に、真菌が死滅した後の自己免疫反応、すなわち post-infectious inflammatory response syndrome(PIIRS、感染後炎症反応症候群)がみられるという。これは、一部の人々にみられる long covid(ロング・コビッド=新型コロナ罹患後症状)を生み出してきた炎症反応とよく似ている。

 Williamson 氏は、Redweik さんがそうした患者の一人であり、彼の免疫系がまだ真菌を脅威と捉えていることを確信した。免疫系は侵入微生物を攻撃する様々な細胞を強化するが、クリプトコッカスが死滅した後、Redweik さんの体内に残っていた真菌が放出したタンパク質や細胞壁などの真菌の微粒子がそのターゲットとなる。

 それこそが、新たな炎症をもたらし新たな症状を引き起こした原因だ、と Williamson 氏は理論立てた。

 NIHに到着した時、Redweik さんは急速に衰弱していた。Williamson 氏は、免疫反応を抑えるためにステロイドの methylprednisolone(メチルプレドニゾロン)を大量に投与し、同時にクリプトコッカスが何らかの形で再増殖した場合に備えて抗真菌剤の fluconazole(フルコナゾール)を併用した。

 Williamson 氏によれば、菌の微細な粒子が Redweik さんの脳に残っていて、それを免疫系が攻撃したために髄膜炎と同様の脳浮腫や圧の上昇を引き起こした可能性があるという。あるいは、恐らく抗体が脳の領域に移動し、全般的な炎症を引き起こしたかもしれない、と彼は言う。

 「それは直感でわかるものではありません」と Williamson 氏は言う。「医師はわからないからまた amphotericin で治療してしまうのです」。 しかし「人を殺してしまうのは診断の遅れと炎症反応です。」と彼は言う。「そして人が死んでしまうのは浮腫(脳の腫れ)によるのです」。

 3日後、Redweik さんはステロイドに反応し始め、症状が改善し始めた。

 彼の免疫反応をモニターするNIHの病院で使用可能な技術が彼を救うのに非常に重要であったとWilliamson 氏は言う。最新の flow cytometry(フローサイトメトリー)によって、医師たちは Redweik さんの髄液中の免疫細胞を迅速に特定することができ、彼の病状が感染の再発ではなく、死んだ真菌に対する免疫反応にさらされていたことによるという Williamson 氏の診断を確認することができたのである。

 NIHで3週間、再びリハビリを受けた後、Redweik さんは自宅に戻った。

 彼によると現在も聴力は低下し、右目は見えないままであり、両足は膝から下がしびれているという。 また amphotericin によって引き起こされたステージ3の腎臓病のため、いつか透析が必要になるかもしれない状況である。

 しかし、そのような障害があっても、Redweik さんは体重を戻し、Joyce さんと計画していた引退後の生活を再開した。50年以上連れ添った夫妻は、そのことに感謝している。

 「自分では普通の生活を送っていると思っています。かつてできていたことはほとんどできているのですから」と彼は言う。

 

 

 

参考サイト

クリプトコッカス症については

MSDマニュアルプロフェッショナル版

 

クリプトコッカス性髄膜炎合併感染後の炎症反応症候群については

症例報告『遅発性増悪を来した健常者発症のクリプトコッカス髄膜脳炎の1例』

 

 

 

クリプトコッカス症は、莢膜を有するクリプトコッカス属真菌の

Cryptococcus neoforman、またはCryptococcus gattiiで汚染された土壌を

吸入することで発症する肺または播種性感染症である。

肺炎、髄膜炎のほか、皮膚,骨,内臓に病変が出現する。

本症の原因菌は、通常の免疫状態ではその増殖が抑えられるが、

AIDSの発症患者やステロイドや免疫抑制薬を長期に投与された人では、

病原性を発揮する。

なおC. gattiiは C. neoformansと比べると免疫能が正常な宿主に

感染を引き起こす可能性がより高いといわれている。

 

クリプトコッカス症が疑われる場合、髄液,喀痰,尿,および血液の培養を

行い診断を確定する。

補助診断として、莢膜多糖の主要成分であるグルクロノキシロマンナン抗原を

検出する血清学的検査が有用である。

 

髄膜炎以外のクリプトコッカス症にはフルコナゾールが有効である。

髄膜炎に対してはアムホテリシンBの投与が必須となる。

単剤またはアムホテリシンBとフルシトシンの併用に続いて

フルコナゾールが用いられる。

 

なおクリプトコッカス髄膜炎では本症例のように、

一旦軽快したのちに遅発性の増悪がみられることが知られている。

記事中にあったpost-infectious inflammatory response syndrome

(PIIRS、感染後炎症反応症候群)である。

これには感染後の免疫機構の不均衡が関与していると考えられている。

この病態と感染の再発を臨床症状のみで鑑別することは困難であり、

髄液培養検査の陰性化が重要な指標となる。

PIIRS に対しては、ステロイドがサイトカインの分泌を弱めるため

有効であるとされている。

日和見感染症と思われてきたクリプトコッカス症が健常人でも

起こり得ること、

また感染が制御されても遅発性に炎症反応が生じ増悪し得ること、

などしっかり頭に入れておく必要がある。

 

 

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2025年7月新ドラマ

2025-06-08 19:31:09 | テレビ番組

4月クールドラマ視聴率は、一応、放映開始前の予想通り、

阿部寛主演の『キャスター』が唯一の10%越え。

ようやく平穏なクールを迎えることができるかと思っていたのだが、

永野芽郁、田中圭の不倫疑惑問題が勃発。

『キャスター』では、関わりのあったとされる韓流俳優が

いつのまにか消滅されてしまう事態に。

初回14.2%(関東リサーチ調べ)あった視聴率もその後徐々に低下しており、

この問題による影響が少なからずあったようである(内容もいまいちだっったが)。

それ以外のドラマはいずれもパッとせず、低調だった。

何を伝えたいのか意味不明なドラマが多すぎる。

そんな中、個人的一推しは全く期待していなかったドラマだが、

川栄李奈の『ダメマネ!-ダメなタレント、マネジメントします-』。

視聴率はさえなかったが、単純にコメディ要素だけは楽しめた。

『それでは、このセリフでお願いしますよ』

(日テレ『ダメマネ!-ダメなタレント、マネジメントします-』より)

 

 

それでは、次クール・2025年7月ドラマを一通りチェック(随時更新)します。

 

 

 

フジ月9 7/7 ~ 『明日はもっと、いい日になる』 福原遥(主演)、林遣都、生田絵梨花、風間俊介、勝村政信、柳葉敏郎、他

谷碧仁(劇団時間制作)・脚本による完全オリジナルストーリー。児童相談所を舞台に、そこで働く個性的な面々たちがこどもたちの純粋な思いに胸を打たれ、その親までも救っていく姿が描かれる。海沿いのある街で、そんな爽やかな景色とは対照的に汗をかき、息を切らして走り抜けるのは、主人公・夏井翼(なついつばさ・福原遥)。神奈川県警所轄警察署強行犯係の刑事である翼は、ある日突然、児童相談所への出向を命じられた。刑事の仕事への未練があり異動を受け入れられないままそこで新人児童福祉司として働くことになる。明るく朗らかな性格の翼は心優しい両親にたっぷりの愛情を注がれて育てられたため、彼女自身も愛情深い人間だ。さらに正義感が人一倍強いため目の前で悩み、苦しんでいるこどもがいると放っておけずとことん寄り添おうとする。しかしその性格が裏目に出て思わぬ波紋を起こすことになる。一方、児童相談所で翼の指導係としてバディを組むことになるのが林遣都演じるベテラン児童福祉司の蔵田総介(くらたそうすけ)。普段は無愛想で皮肉ばかり口にするため、とっつきにくい人間と思われがち。いざとなると周りが見えなくなる翼に対し、「一つの家庭に踏み込みすぎてはいけない」と厳しすぎるくらいに指導する。次から次へと押し寄せてくるクライアントからの相談やいたずら電話への対応に追われる日々が始まるが、事件に発展する前に、SOSをうまく伝えられないこどもたちの異変にいち早く気付き助け出すだけでなく、その後も続いていくこどもの未来のために心のケアをし、こどもたちの“翼”のような存在となり、羽ばたいていくための一助となるべく奮闘する。いいお話ではありそうだが、果たして月9がこの題材で視聴率を獲れるか疑問。

 

 

 

フジ(関西テレビ)月10 7/14 ~ 『僕達はまだその星の校則を知らない』 磯村勇斗(主演)、堀田真由、稲垣吾郎、平岩紙、市川実和子、坂井真紀、尾美としのり、木野花、光石研、他

独特の感性を持つがゆえに何事にも臆病で不器用な男性が少子化による共学化で揺れる私立高校にスクールロイヤー(学校弁護士)として派遣され、法律や校則では簡単に解決できない若者たちの青春に向き合っていく姿が描かれるオリジナルドラマ(脚本・大森美香)。主人公の白鳥健治(しらとりけんじ・磯村勇斗)は小さな法律事務所で働く弁護士。星や植物、豊かな自然が好きで、幼少期から文字や音に『色』や『匂い』を感じる独特な感性を持っている。感覚が周囲の人間と違うことやマイペースな性格で集団行動になじめず、学校という存在自体に恐怖と不信感を抱え、不登校になった過去がある。その後、見事司法試験に合格したものの大手弁護士事務所では挫折を経験、現在は小さな法律事務所に勤める健治は、ある日恩人でもある事務所の所長・久留島かおる(くるしまかおる・市川実和子)により濱ソラリス高校にスクールロイヤーとして派遣される。しぶしぶ学校での勤務についた健治は、臆病で不器用ながら法律や校則を武器に“生徒の最善の利益”のために奮闘するが、学校という社会は白黒つけられないグレーな問題ばかりだった。十人十色の悩みを抱える生徒や個性的な教師、さらには腹の底が見えない辣腕理事長・尾碕美佐雄(おざきみさお・稲垣吾郎)と関わる中で、健治の個性がいかに発揮されるのか、そして彼自身も自分の過去のトラウマや家族と向き合っていくことになる。スクールロイヤーが主人公のドラマは2018年にNHKで放映された(『土曜ドラマ やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる』)が、似たような内容となるのか?磯村くんの健闘を祈りたい。

 

 

 

フジ 火9 7/22~ 『スティンガース 警視庁おとり捜査検証室』 森川葵(主演)、藤井流星、本郷奏多、玉山鉄二、志田彩良、井内悠陽、杉本哲太、他

日本ではまだ制度としての確立も曖昧な“おとり捜査”に真正面から挑む警視庁内の異端チームの活躍を描く。スティング(sting)には人をだます、おとり捜査で引っかけるという意味がある。闇バイト強盗、なりすまし詐欺、違法薬物売買、フィッシング、反社勢力のステルス化…。現代的な犯罪が蔓延する日本で、これらの犯罪に有用なのは、『だまされたふりをして元締めにたどりつく』『関係者のふりをして一網打尽にする』『仲間のふりをして実態をつかみ黒幕を討つ』といった“おとり捜査”。だが、正体がバレたら失敗どころか、命の危険さえ迫る捜査手法である。警視庁の新設チーム『スティンガース(おとり捜査検証室)』のリーダー・二階堂民子(にかいどうたみこ・森川葵)は、警察庁のエリートとしてFBIで本格的な“スティングオペレーション(=おとり作戦)”を学び帰国したトップキャリアのキレッキレの警視。変装や即興演技、心理操作、トリック構成までを自在に操る捜査のプロフェッショナル。説明は端的、しかし指示は謎だらけ。突飛な行動で部下を翻弄しながらも、いつの間にかすべてが一本に繋がっていく。そんな不思議なリーダーが、スティンガースを事件解決に導く。一見クールで知的な女性捜査官に見えるが、どこかイタズラ好きのような余裕と軽やかさがあり、仲間の個性を見抜き、最大限に活かす戦術眼も抜群。捜査では、制服、スーツ、有閑マダム、やさぐれホステス、バカップルまで様々な役になりきり“七変化”を披露する。極限状態の中で、笑顔を絶やさず冷静に現場を仕切るヒロインの活躍が描かれる。ところでなぜタイトルの“スティンガース”は“スティンガーズ”ではないのだろうか?

 

 

 

テレ朝火9 7/8 ~ 『誘拐の日』 斎藤工(主演)、永尾柚乃、深澤辰哉(Snow Man)、佐藤寛太(劇団 EXILE)、望海風斗、内田有紀、安達祐実、鈴木浩介、長谷川初範、江口洋介、他

原作は『シグナル』『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』などのヒット作を生みだした韓国有数のスタジオ・ASTORYが 2023年に製作した連続ドラマ『誘拐の日』で、本作はその日本版リメイクとなる。間が悪くてお人よしの主人公が頭脳明晰な天才少女を誘拐するがその少女が記憶喪失となり、さらに殺人の容疑までかけられてしまうという“巻き込まれ型”ヒューマンミステリー(コメディ?)。主人公の新庄政宗(しんじょうまさむね・斎藤工)は心臓病の娘の手術費用を確保するため、妻の発案で裕福な病院長の娘である七瀬凛(ななせりん・永尾柚乃)の誘拐を試みる。最後まで踏ん切りがつかずためらいつつも電話で遠隔操作してくる妻に背中を押されどうにか目的の院長宅近くまで来たが、新庄の車の前にひとりの女の子が飛び出してくる。間一髪、急ブレーキで事故を免れた次の瞬間、その少女は気を失って倒れてしまう。あわてて駆け寄った新庄は少女の顔を見て驚く。気絶した女の子こそ誘拐のターゲットだった。あっさり誘拐が成功して拍子抜けする新庄だったが、目を覚ました凛は自分が誰なのか分からず混乱する。凛が記憶喪失になってしまったことに気づいた新庄はとっさに自分がパパだとウソをついてしまい、以来、“父親役”を演じるハメに陥る。しかしその直後、事態は思いがけない方向へ。凛の両親である院長夫妻が何者かに殺害されてしまうのである。この事件により、新庄は誘拐のみならず、殺人の容疑者となってしまう。身に覚えのない殺人事件の謎を解かなければ絶体絶命。そんな最悪の状況にありながら、誘拐した凛が多言語を操り博識で発想も鋭い天才児であることが判明。新庄は勝ち気でしっかり者の凛にダメ出しされながら、この状況をどうすれば抜け出せるのかアドバイスをもらうという関係となり立場が逆転する。警察だけでなく、凛を狙う正体不明の男たちにも追われ、運命共同体となったマヌケな誘拐犯・新庄と天才少女・凛の一風変わった逃避行が始まる。

 

 

 

TBS 火10 7/1 ~ 『初恋DOGs』 清原果耶(主演)、成田凌、ナ・イヌ、萩原利久、宮澤エマ、なだぎ武、野呂佳代、永瀬莉子、NOA、円井わん、坂井真紀、岸谷五朗、深田恭子、他

原案は韓国で連載中のウェブトゥーン(縦読み式の電子マンガ)で連載中の漫画。愛を信じないクールな女性弁護士と動物しか愛せないこじらせ男性獣医、それぞれの“愛犬”同士が恋に落ちたことをきっかけに始まるラブストーリー。主人公の花村愛子(はなむらあいこ・清原果耶)は、離婚訴訟を専門に手掛ける敏腕弁護士。完璧主義でいつもクールだが、夫婦間の問題で苦しむ依頼人と親身になって向き合う温かい人物でもある。仕事は完璧にこなす半面、不仲な両親を見て育ったことで恋や愛を信じなくなってしまった“こじらせ女子”。プライベートでは最近飼い始めた愛犬の『サクラ』を溺愛し、シングルライフを満喫していた。そんな愛子と愛犬を通じて出会うことになるのが獣医・白崎快(しろさきかい・成田凌)。24時間診療の動物病院で若き院長を務め、日々動物たちの命に向き合っている快は、腕もルックスも良くスタッフや患者からも慕われていた。しかし一見“陽キャ”だが自分のことはあまり語らず、どこかつかみどころがなく、実は周りに人を寄せ付けない人物だった。そんな快には『将軍』と名付けた愛犬がいた。1年前、迷い犬として病院に運ばれてきたところを保護し飼い始めたのだが、今ではすっかり快の大事な相棒となっていた。ある日、快は将軍の散歩中にサクラを連れた愛子と出会うのだが、愛犬同士が一目ぼれ。それを機に2人の運命も大きく動き出すことになる。そんな愛子・快と深く関わっていくことになるのが韓国からやって来た御曹司ウ・ソハ(ナ・イヌ)。韓国屈指の大企業の御曹司で財閥三世、189cmの高身長に抜群のルックスを持ちながらも人懐っこいキャラクターでどこへ行ってもモテモテだった。兄弟間の出世争いには興味がなく、仕事ができないふりをしていたが、実はある使命を持って日本に来ていて快に近づこうとしていた。ひょんなことからソハは愛子とも出会うことになり、3人は次第に奇妙な縁が結んだワケアリの三角関係へと発展していく。本能のままに引かれ合って恋をする愛犬たち。一方で人間は気を遣ったり人と関わることを面倒くさいと思い、本当の気持ちを隠し、うそをつく。でも心の奥底では『犬のように素直になれたらどんなに楽だろう』と思ったりする。そんな、“愛”をこじらせている男女3人が犬をきっかけに出会い、時にぶつかり合いながらも“愛”を理解するようになる。犬好きの人には必見のドラマ?

 

 

 

テレ朝水9 7/9~ 『大追跡~警視庁強行犯係~』 大森南朋(主演)、相葉雅紀(主演)、松下奈緒(主演)、他

テレ朝水9定番の刑事ドラマに新たなシリーズが登場。現代捜査のキーマンである最先端の部署に初めてスポットライトを当てる。凶悪犯罪を担当する“捜査一課を専門に支援する別班”とそこを取り巻く人々の活躍、そして人間模様を描いていく。福田靖によるオリジナル脚本ドラマ。物語の舞台はSSBC(Sousa Sien Bunseki Center←なんと日本語!捜査支援分析センター)。SSBC とは、平成21年(2009年)に警視庁に新設された分析・追跡捜査の専門部隊。初動捜査で犯人の足取りを追うための防犯カメラ映像の収集や分析、スマートフォン、パソコンの解析、犯人像のプロファイリングなどを担う《現代捜査のキーマン》とも言うべき最先端のプロフェッショナル集団。主人公の一人、SSBC強行犯係の《機動分析》担当・伊垣修二(いがきしゅうじ)を大森南朋が演じる。もともと捜査一課の刑事だったが 3年前に問題を起こしSSBC強行犯係に異動になったという経歴がある。犯人を自分の手で逮捕する刑事という仕事に誇りを持っているため、SSBC強行犯係での仕事にはやや不満を感じている。そんな折、“キャリア組”の名波凛太郎(ななみりんたろう・相葉雅紀)が警察庁からSSBC強行犯係に出向してくる。名波は一流大学を卒業、外資系証券会社に就職した後、警察庁が実施する『国家公務員総合職中途採用試験』に合格し入庁したという経歴を持ち、彼の伯父は元警察庁長官で現・内閣官房長官だった。そんな名波の教育係を任されたのが伊垣だった。そして松下奈緒が演じるのが、警視庁捜査一課・主任の青柳遥(あおやぎはるか)。3年前、伊垣が捜査一課から追い出されたのと入れ替わるようにして、所轄から本庁に異動してきた後、刑事としての優秀さとリーダーシップを捜査一課長に認められ主任に抜擢される。実は青柳は伊垣とは元夫婦で 4年前に離婚、13歳になる1人娘の美里は遥が育てていた。捜査上、密に関わるSSBC強行犯係の伊垣には“上から目線”で支援を要求してきたが、伊垣×名波のコンビが誕生し暴走をし始めることで、次第に迷惑を被る立場となる。わざわざトリプル主演にしなくても良いと思うのだが…。

 

 

 

フジ水10 7/9 ~ 『最後の鑑定人』 藤木直人(主演)、白石麻衣、迫田孝也、中沢元紀、阿部亮平、栗原類、他

かつて科捜研のエースとして活躍し“最後の鑑定人”と呼ばれていた主人公が、科学的アプローチを駆使して難事件を解決に導いていくサイエンス&ミステリー作品。岩井圭也の同名小説が原作。かつて科捜研のエースだった土門誠(どもんまこと・藤木直人)は、その鑑定技術の高さから『彼に鑑定できない証拠物なら、他の誰にも鑑定できない』と言わしめ、科学捜査最後の砦として“最後の鑑定人”との異名を持つ凄腕鑑定人。しかし、ある事件をきっかけに科捜研を辞め、現在は自ら開設した土門鑑定所を営んでいる。有能ではあるものの、人に興味が全くなく合理的、時には依頼人にも心ない言動で不快にさせてしまうことがたまにキズだ。一方、土門鑑定所でクセ強な奇人・土門を研究員として支える高倉柊子(たかくらしゅうこ・白石麻衣)は、心理学の専門家で嘘を見抜くことが得意。鑑定所に訪れる依頼人の嘘を見抜こうとする“変人”で、物怖じしない性格から土門とも言い合いになることも。そんな2人の元には、捜査に行き詰まった警察関係者や司法関係者から科学捜査の依頼が舞い込んでくる。土門と高倉は科学的アプローチを武器に、事件現場に残された小さな痕跡から事件の証拠を暴き出すと共に犯人の嘘を見破り、真実に光を当てていく。事件の意外な真相にぼうぜんとしてしまう関係者たち。しかし誰よりも科学と向き合い科学の力を信じる土門は、『嘘をつくのは、いつだって人間です』と言い放ち、人間の暗部や悲しき事実をも明らかにする。第1話では、海から引き上げられた水没車から正体不明の白骨遺体が発見される。わずかな情報から12年前に起きた未解決の強盗殺人事件の容疑者が浮上するも、手掛かりはゼロ。難解過ぎる事件を依頼された土門だったが、まずは発見された白骨遺体のデータから人物を特定しようと試みる。さらに引き上げられた水没車を確認すると、ある部分が気になるのだった。解決不可能に近い状況から科学警察研究所の協力も得ながら遺体の正体と事件の真相を暴き出す。

 

 

 

日テレ水10 7/9 ~ 『ちはやふる~めぐり~』 當真あみ(主演)、上白石萌音、齋藤潤、山時聡真、齋藤潤、嵐莉菜、高村佳偉、原菜乃華、石川雷蔵、瀬戸琴楓、髙橋佑大朗、他

映画『ちはやふる』の10年後をドラマオリジナルストーリーで描く。『ちはやふる』では競技かるたに青春をかける高校生たちの姿が描かれたが、その10年後の世界を原作者とともに紡ぐ。高校2年生の幽霊部員が新たな顧問と出会い、運命が大きく動き出す。累計発行部数2900万部越えの大ヒット漫画『ちはやふる』は2016年に『上の句』『下の句』、2018年に『結び』3部作として広瀬すず主演で実写映画化された。本ドラマは映画『ちはやふる』から10年後の世界を原作者・末次由紀が制作に加わったオリジナルストーリーで描く。物語の舞台となる梅園高校の競技かるた部は部員が少なく廃部寸前だった。主人公の藍沢めぐる(あいざわめぐる・當真あみ)は幽霊部員だったが、かつての瑞沢高校かるた部創立メンバーだった大江奏(おおえかえで・上白石萌音)が非常勤講師として赴任し新たに顧問となったことから運命が大きく動き出す。

 

 

 

テレ朝木9 7/17 ~ 『しあわせな結婚』 阿部サダヲ(主演)、松たか子、板垣李光人、玉置玲央、金田哲、馬場徹、辻凪子、堀内敬子、小松和重、岡部たかし、段田安則、他

大石静の脚本によるオリジナルドラマ。夫婦の愛を問うマリッジ・サスペンス。お茶の間から絶大な支持を得ている人気弁護士が、ある日突然『運命の出会い』を果たしたことを機に電撃結婚。しかし愛する妻は大きな秘密を抱えていた…。本業の弁護士としても、テレビのコメンテーターとしても、一切手を抜くことなく仕事に邁進する原田幸太郎(はらだこうたろう・阿部サダヲ)。ある日、身体に異変を感じ病院に救急搬送。ICUで生死の境をさまようことに。見舞いに来る家族もいない幸太郎はふいにひとりで生きていくことへの不安や寂しさから、とてつもない孤独に襲われる。一命をとりとめ、その後一般病棟に入院することになった幸太郎は、病院内のエレベーターで偶然出会ったある女性・鈴木ネルラ(すずきねるら・松たか子)がなぜか気になり始めてしまい声を掛けてしまう。するとネルラは突然持っていた紙袋を幸太郎に渡し足早に立ち去る。感情を表に出さず笑顔を見せないネルラのミステリアスな魅力に、すっかりハマッてしまった幸太郎だったが、もう一度彼女に会いたいという願いは叶わぬまま退院の日がやってくる。ところが幸太郎が玄関を出るとなんとそこにはネルラの姿があった。驚く幸太郎に彼女は言う、「うち行きませんか」。運命を感じた幸太郎は、これまで頑なに貫いてきた独身主義をあっさり捨てて、まさかの電撃結婚!各階に彼女の父、弟、叔父が暮らすマンションで新婚生活をスタートさせるのだが、週に一度、家族で食事を楽しむなど、鈴木家の結束は固く、元来“ひとり好き”な幸太郎は“こういうの苦手”の思いながらも少しずつなじんでいく。しかし、いざ新婚生活が始まると、ネルラがとてつもなく《大きな秘密》を抱えていることが発覚。少しずつ明らかになっていく、愛する妻の秘密。それによって、幸太郎の運命は大きく動かされることとなる。「俺はこの妻と共に生きていけるのか?」と、自問し続けることに…。はたして、幸太郎は秘密を知っても妻を愛し続けることができるのか…?ネルラの弟・鈴木レオを板垣李光人が演じる。

 

 

 

フジ木10 7/10 ~ 『愛の、がっこう』 木村文乃(主演)、ラウール(Snow Man)、田中みな実、中島歩、りょう、坂口涼太郎、味方良介、野波麻帆、早坂美海、荒井啓志、別府由来、筒井真理子、酒向芳、沢村一樹、他

真面目すぎる高校教師と文字の読み書きが苦手なホストが大きな隔たりを越えて惹かれ合うラブストーリー。井上由美子・脚本によるオリジナルドラマ。主人公は木村文乃が演じる私立ピエタス女学院高等学校葵組の担任で現国教師・小川愛実(おがわまなみ)。古い価値観を持つ堅い家庭に育ち、親の言うとおりに過ごしてきた。父親に勧められ母校の教師になるなど、両親のいいなりに生きてきた。慎重な性格でまっすぐ過ぎるが故に、過去に一度、大きな過ちを犯したことがある。恋愛面においては奥手で、あまり深い付き合いをしてこなかった。現在は、父親の紹介で出会った男性とおつきあいをしており彼からプロポーズをされている。しかし、彼の発言に引っかかるところがあり将来を考えるのに少し不安がよぎっているが、父親からは「結婚を決めたのならぐずぐずするのはよくない」と言われてしまい頭を抱えている。また勤務する高校では理不尽な保護者もいる上、授業では生徒たちには見向きもされず学級崩壊の危機が迫っていた。“こんなところから逃げ出したい”と嘆く日々の中、愛実の元に「生徒が悪徳なホストにだまされた」という信じられない連絡が入り、世界が一変する。ラウールが演じるのはホストクラブ『THE JOKER』に勤務するホスト・カヲル。年の離れた小さな弟がいる。家庭環境が整わない生活を送り学業がおろそかになっており、義務教育も大して受けられなかった。母親からの愛情もあまり受けていない。そのため、漢字の読み書きを始め勉強が苦手。客への連絡は電話ばかりだが、人なつっこい笑顔とトークスキルを武器にのし上がり、『THE JOKER』のNo.7まで上ってきた。No.1ホストのつばさに横やりを入れられながらも女性を相手に日々必死に生きていた。ある日、愛実の生徒が高校生ではないと偽りカヲルの元へ通っていたことが発覚。それもカヲルの客だった。教師として生徒を連れ戻すために店に駆け込んできた愛実と出会う。さらに、女子生徒ともう2度と連絡をしないことを約束する念書を書いてほしいと言われるが、そこでこれまで誰にも言わずに秘密にしていた問題が愛実に知られてしまう。文字の読み書きが苦手なカヲルの秘密を知った愛実は言葉や社会を教える秘密の“個人授業”を始める。全く異なる世界で生きてきた2人だったが、授業を通じて次第に心の距離を縮めていくのだが、やがて様々な批判や非難、憎しみ、そして嫉妬が容赦なく襲いかかる。

 

 

 

TBS金10 7/4 ~ 『DOPE 麻薬取締部特捜課』 髙橋海人(King & Prince)(主演)、中村倫也(主演)、新木優子、伊藤淳史、三浦誠己、豊田裕大、久間田琳加、小池徹平、真飛聖、忍成修吾、入山法子、蒼戸虹子、井浦新、他

原作は木崎ちあきの小説『DOPE 麻薬取締部特捜課』シリーズ。犯人の更生を願う真っ直ぐな新人と型破りな不真面目教育係が謎に包まれた新型ドラッグ【DOPE】を追う新時代の麻取アクション・エンターテインメント。舞台は謎に包まれた新型ドラッグ【DOPE】が蔓延している近未来の日本。新人麻薬取締官の才木優人(さいきゆうと・高橋海人)は、ある日突然、存在が世間に明かされていない秘匿性の高い部署・麻薬取締部特殊捜査課、通称「特捜課」へ異動となる。そこで出会ったのは第一印象最悪な才木の教育係・陣内鉄平(じんないてっぺい・中村倫也)。考え方が正反対で相性最悪の2人がバディを組むことになり、個性豊かな特捜課のメンバーと共に、DOPEによって巻き起こる不可解な事件の解決に挑んでいく。そんな彼らには他人には言えない“ある秘密”があった。特捜課のメンバーに新木優子、三浦誠己、豊田裕大らがキャスティングされている。

 

 

 

テレ朝 金23:15 7/18 ~ 『奪い愛、真夏』 松本まりか(主演)、安田顕、髙橋メアリージュン、森香澄、白濱亜嵐、谷原七音、石井正則、他

鈴木おさむ・脚本によるオリジナルドラマ。2017年にテレ朝・金曜ナイトドラマ枠で放映された『奪い愛、冬』を皮切りに、その後、『奪い愛、冬』『奪い愛、夏』『殴り愛、炎』『奪い愛、高校教師』が制作された『奪い愛』シリーズの最新作。海野真夏(うみのまなつ・松本まりか)はかつて写真週刊誌の編集部で働いていたが、政治家や芸能人のスキャンダルを暴く仕事に苦悩。自身の人間性も日に日に崩壊していくのを感じていた。そんな中、結婚を約束した恋人と不倫の末に別れ、どん底をさまよっていた真夏は一念発起し、時計メーカー「TOWANI」に転職し人生の新たなスタートを切る。ところが…出勤初日、目の前に現れた社長・空知時夢(そらちたいむ・安田顕)の顔を見た真夏は、言葉を失う。その顔はかつての不倫相手・大浦隼人(おおうらはやと・安田【二役】)と瓜二つだった。時夢には妻がいたが、真夏の心に過去の思い出がまざまざとよみがえり、胸が苦しくなる。彼女はふと、ずっと引き出しにしまっていた母・海野三子の形見を取り出す。それは三子が事故死して以来ずっと故障し、逆回転していた「TOWANI」製の古い時計だった。しかし不思議なことに、時計はいつの間にか正常に動き始めていた。翌日、どうしようもなく心が惹かれるその時計をはめ、真夏は出勤する。妻の重すぎる愛に息苦しさを覚えるようになっていた時夢は、真夏の真摯な仕事ぶりを見るにつけ彼女に信頼を寄せるようになる。そんな中、二人の未来を大きく変える予期せぬ大事故に2人は巻き込まれてしまう

 

 

 

日テレ土9 7/12 ~ 『放送局占拠』 櫻井翔(主演)、比嘉愛未、ソニン、瀧内公美、ぐんぴぃ(春とヒコーキ)、加藤清史郎、曽田陵介、吉田芽吹、戸次重幸、福澤朗、片岡礼子、齊藤なぎさ、山口大地、真山章志、亀田佳明、北代高士、宮部のぞみ、菊池風磨、高橋克典、他

櫻井翔が主演を務める『大病院占拠』『新空港占拠』に続く第3作。面で顔を隠した武装集団が500名の人質を取り“あらたな場所”を占拠、刑事・武蔵三郎の“最悪な1日”が三たび始まる。『新空港占拠』事件から1年。2025年、夏。面で顔を隠した武装集団が500名の人質を取り“あらたな場所”を占拠した。武装集団に立ち向かうのは、あの刑事・武蔵三郎(櫻井翔)。新たな敵の正体は?その目的とは…?武蔵三郎の“最悪な1日”がまた繰り返される。

 

 

 

NHK日8 継続中 『べらぼう~蔦重栄華之夢噺』 横浜流星(主演)、安田顕、小芝風花、宮沢氷魚、中村隼人、石坂浩二、片岡愛之助、高橋克実、里見浩太朗、渡辺謙、他  

小芝風花退場後も主演の横浜流星が頑張っている。(複雑で理解が難しいところもあるが)当時の出版業界と江戸幕府内のゴタゴタを織り交ぜながらこれまでの大河ドラマにない雰囲気の中で物語が進んでいる。視聴率は低調だが個人的には楽しみに視聴している。

 

 

 

TBS日9 7/13 ~ 『19番目のカルテ』 松本潤(主演)、小芝風花、新田真剣佑、木村佳乃、田中泯、他

原作は富士屋カツヒト・川下剛史の漫画『19番目のカルテ 徳重晃の問診』(ゼノンコミックス/コアミックス)。脚本は『コウノドリ』シリーズの坪田文。病気を診るだけでなく、心や生活背景をもとに患者にとっての最善を見つけ出し、生き方そのものに手を差し伸べる19番目の新領域・総合診療科の医師が描かれる。現在の日本の医療は高度に発展し『脳外科』『眼科』『整形外科』といったように臓器ごとに18の専門分野に分けられ、それぞれその専門医たちが診察・治療を行っている。そんな18の分野に新たに19番目の新領域として加わったのが総合診療科。臓器や患者の性別、年齢にかかわらず、患者の訴えをひとつひとつ丁寧にすくい取り、その人の暮らしや家庭環境、心の状態までも含めてその名の通り“総合的に”診察を行う科。近年、専門医制度が整備され 19番目の新領域として発足したものの未だ広く世間にはその存在が知られていない。そんな総合診療医である徳重晃(とくしげあきら・松本潤)の最大の武器は、高難度の手術をこなすゴッドハンドでもなく、瞬時にすべてを見抜く超天才的頭脳でもなく、『問診』。つまり、患者と向き合い、徹底的に患者の話を聞き、時には患者の話に隠されたうそを見抜き、対話していくことだ。穏やかで飄々としており、一見つかみどころのない人物に見える徳重だが、その根底にあるのは、『人』や『命』や『生きること』に向き合い救いたいという強い思いだった。そんな徳重のもとには、どこの科を受診すればいいか分からない複雑な症状を抱えた患者や、時には検査をしても専門医でさえも診断が難しい患者たちが次々とやってくる。「このくらいで休んではダメだ」と否定してしまう人、家庭の事情や本音を隠し一人で耐えようとする人など、日常の中で誰もが抱える小さな苦しみが、総合診療医・徳重だからできる診療により、どう解きほぐされ、どう導かれていくのか、が見どころ。整形外科医・滝野みずき役で小芝風花が出演する。ドラマはまだ始まっていないが、しつこく問診をする松潤のあの口元が目に浮かんできてしまう。

 

 

 

テレ朝日22:15(ABCテレビ)日22:15 7/6 ~ 『こんばんは、朝山家です。』 中村アン(主演)、小澤征悦(主演)、さとうほなみ、小島健(Aえ!group)、影山優佳、渡邉心結、嶋田鉄太、土佐和成、竹財輝之助、河井青葉、丸山智己、宇野祥平、松尾諭、他

足立紳・足立晃子の連載日記『ポジティブに疲れたら俺たちを見ろ〜ままならない人生を後ろ向きで進む〜』(辰巳出版)が原案、脚本は足立紳。妻と残念な夫の衝突不可避な夫婦が、罵倒と叱責、ときどき愛、で家族の難題を切り抜けていく一家奮闘の物語。朝山家は、脚本家として売れている夫の朝山賢太(あさやまけんた・小澤征悦)、夫が所属する事務所で社長を務める妻の朝山朝子(あさやまあさこ・中村アン)、高校1年の長女・蝶子(ちょうこ・渡邉心結)と小学6年の息子・晴太(せいた・嶋田鉄太)の4人家族。その日、賢太は、執筆した朝の国民的ドラマ『ムキムキ』初回放送の朝を、家族と一緒に見ようとそわそわしながら迎える。しかし、居間には賢太以外、誰の姿もない。発達障害の特性から朝が弱い晴太はぐずって起きてこず、朝子はそんな晴太の世話と家事、そして仕事に出かける準備で大忙し。反抗期的不機嫌さがデフォルトの蝶子に至っては、父のドラマなどそもそも興味の対象外。一世一代の日をさみしく迎える賢太。だが、それは朝子から見れば、夫が日がな一日エゴサーチに明け暮れる、悪夢のような1日の幕開けだった。子どもの面倒も見ず自分の承認欲求を満たすためエゴサーチに没頭する賢太と、そんな賢太を長年夢見る映画監督としてデビューさせるため、家庭と仕事を切り盛りしながら営業に勤しむ朝子。どこまでも自己中心の夫と、そんな夫にキレまくりながらも自分以外のことを優先する妻の、愛しくも奇妙な家族の物語が始まる。

 

 

 

日テレ(読売テレビ) 日22:30 7/6 ~ 『DOCTOR PRICE』 岩田剛典(主演)、蒔田彩珠、三浦貴大、成海璃子、北山宏光、林泰文、坪倉由幸、ユースケ・サンタマリア、篠原涼子、他

逆津ツカサ・原作、有柚まさき・作画の同名漫画シリーズが原作(双葉社アクションコミックス)。“医師に値段をつけ、病院に売る仲介業”を行っている主人公と、行動を共にする女性が、軽快な会話劇から悪を罰する痛快劇まで様々な展開を見せる。「生涯年収が多い」という理由で、医師になった主人公・鳴木金成(なるきかねなり・岩田剛典)。極東大学病院の小児科医だったが、「もっと儲かる仕事を見つけた」と医師に見切りをつけた鳴木は、“医師に値段をつけ、病院に売る仲介業”通称・医師専門転職エージェントとなる。毒舌だが、計算能力・資料作成力などに長けた優秀な事務スタッフ・夜長亜季(よながあき・蒔田彩珠)と共に、転職エージェント会社『Dr.コネクション』を立ち上げた鳴木。彼らは、医師という商品を、元医師としての豊富な知識や情報量、巧みな話術を使って、思わぬ方法で交渉を優位に進め、病院相手に売りさばき、依頼を叶え大金を稼いでいく。しかし鳴木が医師を辞めたのには、ある理由があった。3年前、彼が医師だった頃、同じ極東大学病院で医師として働いていた父が医療過誤を起こし、同僚からも世間からも誹謗中傷を浴び精神的に追い詰められて自殺。そんな父の死に疑念を抱き、“医療過誤”に不審な点を見つけた鳴木は、亡き父のために真相を追い求めていく。

 

 

フジは若手の登用が目立つがやはり経費を抑えたいため?

7月クールも今ひとつ抜き出た作品が見当たらない印象だが、

俳優の安定感からみるとテレ朝木9が一番期待できるかも。

TBS 日9 は松潤の演技力次第か?

今年も暑い夏となりそうだが、

心を涼ませてくれる作品に出会いたいものである。

 

 

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心不全症状で発症した若い女性の病気とは?

2025-05-22 17:08:43 | 健康・病気

2025年5月のメディカルミステリーです。

 

5月17日付 Washington Post 電子版

 

 

Breathlessness, nausea, a cough and a mass suggested cancer. But was it?

息切れ、吐き気、咳、腫瘍は悪性腫瘍を示唆していた。しかし本当にそうだったのか?

A young woman endured alarming symptoms, a biopsy that nearly killed her and radical surgery before getting answers.

若い女性は憂慮すべき症状、危うく命を落としかけた生検、そして根治手術に耐えたあと答えを得た。

 

 

(Bianca Bagnarelli/For The Washington Post)

 

By Marlene Cimons

 

 2023年8月、Chelsea Cresencia(チェルシー・クレセンシア)さんはボーイフレンドの Allen Nguyen(アレン・グエン)さんとともに California(カリフォルニア)から New York City(ニューヨーク)へ飛んだ。計画された“楽しい旅行”は彼女にとって初めての東海岸への訪問であり、ニューヨークの Chelsea district(チェルシー地区)やそこの有名な市場を散策するなど、おいしい食べ物や観光客向けのものが満載の旅だったが、そこに決めたのは「私の名前が入っているからです」と彼女は言う。

 しかし到着してまもなく Cresencia さんは食事後ほぼ毎回嘔吐がみられるようになり、2018年から彼女を悩ませていた息切れが増悪、休まなければ10分以上歩くのがむずかしくなった。またひっきりなしに咳がみられるようになった。

 「私たちは食中毒だと思って無視していましたが、連日、1度か2度は嘔吐していました」現在27歳の Cresencia さんは言う。彼女は user experience manager(顧客体験マネージャー)として健康保険会社にリモートで働いている。

 「彼女はまた少量の血液も喀出していました」そう思い起こすのは ソフトウェアエンジニアをしている 現在28歳の Nguyen さんである。「私はビビりました」と彼は言う。

 

 

Chelsea Cresencia さんと彼女のボーイフレンドの Allen Nguyen さん、2024年5月撮影(Chelsea Cresencia さん提供)

 

 それでも彼らは旅行を続けたが活動性や食事を制限しながら週末には自宅に帰った。San Diego(サンディエゴ)に戻ると、「症状は多少治まったようで数日間は嘔吐することなく過ごせるようになり呼吸も改善しました。ニューヨークに何かあったに違いないと自分に言い聞かせていました」と Cresencia さんは言う。しかし、数週間後、Nguyen さんを訪ねて San Francisco Bay Area(サンフランシスコ・ベイエリア)に滞在中、彼女に突然気がかりな新たな症状が出現した:両足の著明な腫脹である。「痛くはありませんでした。ただ液体が貯まっていたのです」と彼女は思い起こす。

 Nguyen さんが彼女を緊急診療施設に連れて行くと医師らは一連の検査を行った。そのうち CT 検査で彼女の心臓に腫瘍が認められたが、これは若い人にとっては衝撃的な発見だった。彼女は恐怖に襲われた。「気持ちが落ち込み、耳が熱くなりました」そう彼女は思い起こす。「どうしてできたの?癌なの?何か悪いことをした?」

 この発見を皮切りに、その腫瘍の正体を突き止めるための数ヶ月に及ぶ苦難に満ちた試練が始まった。その間には、危うく命を落としかけた生検や、彼女の命を救うことになり彼女をこれほどまでに病ませた原因を明らかにすることができた根治手術が行われた。

 「もっと早く健康診断を受けていればよかったと思う一方で、過去にそれほどとらわれず今を楽しむことに焦点を合わせている自分に気づきました」と彼女は言う。

 

From urgent care to the hospital 緊急診療から病院まで

 

 Cresencia さんは数年前から息切れに悩まされていた。主に坂道を歩いて上るときに息切れがしたが、わざわざ医者にかかるには“微妙”だと思い無視していた。しかし今回のニューヨークへ旅行がそれを変えた。「いつもよりひどかったのです」と彼女は言う。吐き気と血の混じった咳の発作は初めてだったからだ。

 緊急診療所では、医師たちはCTスキャンで見られた腫瘍について明らかに心配しCresencia さんに病院に行くよう促した。二人は San Francisco Bay Area(サンフランシスコのベイエリア)にある Nguyen さんの自宅近くの小さな地域病院に行った。待つこと6時間、ようやく医師が診察し、すぐに彼女を入院させた。

 翌日、もっと詳しく見たいと、その病院の医師は transesophageal echocardiogram(経食道心エコー検査)を行った。これは超音波を使って心臓とその周囲の構造を詳細に画像化する検査である。その結果、左心房(心臓の上方にある2つの部屋のうちの1つ)に大きな腫瘍があることがわかり、医師たちはそれが彼女の症状の根本的な原因であることはほぼ間違いないと告げた。もっと大きな病院で特別な治療を受けるよう勧められ、1週間後、San Diego で2番目の病院の医師によって追加検査が行われ、腫瘍を確認、さらに「肺に穴が開いている」ようだと告げられたと彼女は言う。

 医師は彼女に、おそらく心肺移植が必要になるだろうと告げ、La Jolla(ラ・ホヤ)にあるUC San Diego Health(UCサンディエゴ・ヘルス)の Jacobs Medical Center(ジェイコブスメディカルセンター)に彼女を送った。そこはそのような手術を行えるこの地域における唯一の病院である。

 そこで、心臓専門医は Cresencia さんに、肺に穴は開いていないが、心臓の angiosarcoma(血管肉腫)であると考えていると告げた。これは血管の内膜から発生し予後不良な稀な悪性の癌である。「もしまさにその通りであれば、見た目も悪いだろうと言われました。私は恐怖に襲われました。死ぬことも恐ろしかったし、Allen や家族を失うのが怖くて、何度も泣きました」と彼女は言う。

 血管肉腫の治療法は腫瘍の大きさや部位によって異なり、手術と化学療法の両方が行われる。それでも予後は非常に悪く、生存期間は2年未満であることが多い。

 彼女の担当となった UC San Diego の心臓移植と cardiac amyloidosis(心臓アミロイドーシス)の責任者である UC San Diego の心臓専門医 Marcus Urey(マーカス・ウレイ)氏は、最も適切な治療法、例えば化学療法を開始するかどうかを決める前に、推定診断を確定する必要があると考え、医師たちは生検を試みた。しかし、必要な細胞を採取するためのプローブが腫瘍の外縁を通過できず、この処置は失敗した。

 2度目の試みはさらに悪い結果となった:腫瘍は肺から心臓の左側に血液を運ぶ静脈を塞いでおり、肺動脈の血圧が高くなる肺高血圧症を引き起こしていた。Cresencia さんの右側の心臓は既に負担がかかっていたが、麻酔下で心不全と循環虚脱、いわゆるショックが引き起こされた。ショック状態では、循環系は体の組織に酸素と栄養を供給できなくなる。

 Cresencia さんを救命するため、医師たちは患者の呼吸と心臓の機能を代行する生命維持装置に彼女をつないだ。彼女は10日間、ECMO(extracorporeal membrane oxygenation、体外膜酸素供給装置)につながれ、挿管され、鎮静剤を投与されながら、ようやく状態が安定したが、その間医師たちは何をすべきかを議論した。

 正確に腫瘍が何であるかがわからないとしても可能な限り腫瘍を摘出する以外に選択肢はないと彼らは結論づけた。心不全が悪化していることを考えると「腫瘍をできる限り多く取り除こうとする以外に選択肢はありませんでした。手術をしなければ、彼女の予後は末期的と考えたのです」と Urey 氏は言う。

 「私は外科医に、もし何もしなければ彼女は死ぬと伝えました」そう Urey 氏は振り返る。そして彼女の家族に伝えたところ「誰もが同じ考えでした。もし肉腫が見つかれば彼女は死ぬ危険性が高いが、何もしなければ死の確率は100パーセントでした。誰もが挑戦したいと思ったのです。」

 すぐに手術が予定された。

 CresenciaさんにはECMOを受けていた時の記憶も、手術に臨んだ時の記憶もない。しかし、ある時、Cresencia さんが Nguyen さん、両親、5人の兄弟の腕に油性マジックで“ I love you(愛してる)”と落書きしたことを、彼女の医師と Nguyen さんは覚えている。手術前夜、Cresencia さんは執刀医の Victor Pretorius(ビクター・プレトリウス)氏に fist bump(グータッチ)をし、彼女が書いたメモを彼に手渡した:“ You got this!(あなたならできる!)」。Pretorius 氏は彼女の不安を振り返る。「彼女の目には恐怖が浮かんでいました。彼女は本当に勇気があり、家族に別れを告げようとしていました。とても辛いことでした」。

 手術は10時間近くかかり、外科医2人、麻酔科医3人、看護師4人、技師2人の11人体制で行われた。Crecensia さんをECMOにつないだ状態で Pretorius 氏は心臓を摘出、体外に出した状態で腫瘍を切除し、人工のブタの組織を用いて患部の左心房を再建した。また、4本ある肺静脈のうち3本の瘢痕組織を切除して再開通させた。彼によると4本目は瘢痕が強くうまく再開できなかったという。その後、医師らは彼女の心臓を体内に戻した。

 Pretorius 氏によれば、摘出した腫瘍は「血管肉腫とは似ても似つかぬものでした。硬くて革のようでした。それが何なのかはわかりませんでした。組織の一部を採取して迅速診断のため病理医に送りました。1時間以内に電話がかかってきて、悪性細胞は見られないと言われたのです」。つまり、彼らが恐れていたような悪性の血管肉腫ではなかった。しかし、病理医は histiocytes(組織球)というタイプの白血球を確認、そしてそれによって彼女の病気の原因についての初めての真の手がかりが得られた。

 

The pathology report 病理報告書

 

 最終的に病理報告がもたらされたが、解析の結果この腫瘍は組織球の増殖でできていることがわかった。組織球の増殖は、Rosai-Dorfman disease(ロサイ・ドルフマン病)として知られる非常にまれな疾患の特徴であり、小児、10代、および若年成人に最も多くみられる疾患である。Cleveland Clinic(クリーブランド・クリニック)によれば、20万人に1人しか発症しないという。免疫系の白血球の過剰な増殖が引き起こされ、多くの場合リンパ節で過度の腫大がみられる一方、それより頻度は低いが体内の他の部位にも発生することがある。

 「ほとんどの医師がそれについて聞いたことがないのです」と UC San Diego の血液内科医で、現在彼女の観察を行っている Aaron Goodman(アーロン・グッドマン)氏は言う。「多くの医師がこの病気が何なのか知らないし見たこともないのです。そもそも信じられないほど稀な病気であり、彼女の場合は非常に稀な病気が非常に稀な形式で発症したのです。それは悪い場所にあり、死に至っていた可能性もありました」。

 患者によっては、ステロイド、免疫系を抑える薬が用いられ、時には化学療法などの治療が行われる。しかしCresencia さんの場合、医師は腫瘍をすべて摘出したと考えているので「経過観察以外にすることはありません」と Goodman 氏は言う。

 再発がないことを確認するために Cresencia さんは定期的にMRI検査を受けているが、今のところ再発は起こっていない。Goodman 氏によれば、再発する可能性はあるが、患者の何パーセントが再発するかは専門家でもわからないという。Cresencia さんの4月の直近の検査は完璧だった。

 Cresencia さんは自分の試練については幸運に感じており、原因を解明してくれたことだけでなく“心からの親切”に対して UC San Diego の医師たちに“とても感謝している”と言う。

 2月、バレンタインデーを含む週に、現在ベイエリアで一緒に暮らしている Cresencia さんと Nguyenさんは再びニューヨークを訪れた。彼女によればそれは「redemption trip(取り戻しの旅行)」とのことで、そこで彼らは毎日市内を歩いて探索したが何ら問題はなかったという。

 「経験することができたすべての“初めて”を心からありがたいと思っています。その中にはこの街での最初の夜に降った雪も含まれている。「生粋のカリフォルニア人として、歩道を覆い、まつ毛をかすめるようなそんな雪を見たことがありませんでした。その夜、私は初めて雪玉を投げたんです!」

 

 

 

 

 

 

本例はきわめてまれな病気がきわめてまれな部位に発生した特殊なケースなので

ここでは Rosai-Dorfman disease(RDD、ロサイ・ドルフマン病)について

紹介する。

詳細については

JLSG(日本ランゲルハンス細胞組織球症研究グループ)のサイト

PathologyOutlines.com(英語)

をご参照いただきたい。

 

本疾病は、1965年に Destombes が首のリンパ節の腫れと副鼻腔炎がある4症例を

報告したのが最初で、1969年に Rosai と Dorfman が同じ特徴のある患者34例を

まとめて報告している。

かつては反応性の病変とされてきたが

WHO分類では『組織球性腫瘍/樹状細胞性腫瘍』に分類されている。

RDD は20歳前後の黒人に多く、米国では20万人に1人の頻度でみられ、

年間約100例が新たに診断されている。

やや男性に多く発症年齢中央値は 20.6才。

本邦においては診断例は少なく年間10例以下と推定されている。

 

原因:

骨髄の造血前駆細胞(白血球、赤血球、および血小板の元になる細胞)に

遺伝子変異が起こり異常な組織球ができてしまうことが原因の一つと

考えられており、

約半数の患者に遺伝子変異が確認される(RAS と MEK1 が多い)。

自己免疫疾患、糸球体腎炎、リンパ腫などに合併することもある。

 

病型:

①リンパ節型

RDDの60%がこのタイプで両側の頸部のリンパ節の腫脹がみられる。

その他、脇の下や足の付け根、胸部のリンパ節の腫大をみることがある。

発熱、寝汗、体重減少などがみられる。

②リンパ節外型

RDDの40%を占める。発生部位では、皮膚、鼻腔、眼窩病変が10%、

骨病変が 5~10%、脳・脊髄病変が 5%、腎臓病変が 4%、肺病変が 2%、

胃腸病変が 1% となっている。

その他きわめてまれであるが本記事の患者のように、心腔内、肺動脈内、

心外膜など心血管に発生する例も報告されている。

20% の患者では複数の臓器に病変がみられる。

脳病変では頭痛、けいれん、手足の麻痺がみられることがある。

 

診断:

CT、MRI検査で病変を同定する。PET 検査を行うこともある。

血液検査では、白血球増多、炎症反応(CRP上昇・血沈亢進)、

γグロブリンの高値がみられる。

確定診断は病変の一部を採取した病理検査で確定する。

S100・CD14・CD68・CD163・OCT2 陽性の大型の組織球の増生を認める。

CD1a・CD207 は陰性となることが多い。

組織球の細胞質内に消化されない無傷のリンパ球・形質細胞などが取り込まれている

細胞内細胞陥入現象(emperipolesis、エンペリポレシス)が10%を超えて見られれば

診断が確定する。

 

治療:

病変数の少ないリンパ節型や皮膚病変のみの場合には無治療で軽快することがある。

多臓器病変がある例では副腎皮質ステロイド療法や

化学療法(ビンブラスチン/メソトレキセート、クラドリビン、クロファラビン)が

行われる。

摘出可能な病変については手術で切除する。

約70%の患者では治療により症状が改善するが、長期間にわたって

症状の悪化と軽快を繰り返すことがある。

遺伝子変異が確認されたケースでは変異している遺伝子の働きを抑える

分子標的療法が期待される。

2023年には、標準的な治療が困難な BRAF 遺伝子変異を有する進行・再発の

組織球症に BRAF 阻害薬である dabrafenbib(ダブラフェニブ)と

MEK 阻害薬である trametinib(トラメチニブ)の併用療法が承認されている。

ステロイドや抗がん剤治療に反応しないBRAFV600E変異のあるケースでは

本分子標的療法の有効性が期待される。

ただし、BRAFV600E変異は RDD 患者の中でも少ない(5%未満)ため、

その恩恵を受ける患者さんは少数に限られる。

本疾患全体では死亡率は10%前後であるが、

特に肺・腎・消化管・肝病変のある例では命に関わる経過をとることがある。

 

若年者にみられる病気のようであるが、最初から本疾患を鑑別診断に挙げるのは

無理なように思われる。

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鼻で呼吸できない!

2025-04-27 22:43:34 | 健康・病気

これまで18年にわたってこの Medical Mysteriesを担当していた

Sandra G. Boodman(サンドラ・G・ブードマン)女史がこの3月を持って

退任されました。

4月から Marlene Cimons(マレーネ・キーモンズ)さんが新たなライターと

なられたようです。

19年目になるというこの月1回のコラム、引き続き紹介を続けて参ります。

 

2025年4月のメディカル・ミステリーです。

 

4月19日付 Washington Post 電子版

 

 

It started with a whistling sound in his nose. Then things got much worse.

最初は彼の鼻の奥で口笛のような音がしていた。その後事態はひどく悪化した。

It took nearly six years and visits to 17 different doctors to figure out what was going on.

何が起こっているのかが解明されるまでに17人の医師にかかり6年近くを要した。

 

(Bianca Bagnarelli For The Washington Post)

 

 

By Marlene Cimons, 

 

 2017年10月、Bradley Rhoton(ブラッドリー・ロートン)さんがハロウィンのために妻とカボチャを彫っていた時、彼が鼻から息を吸い込むたびに奇妙な口笛のような音がするのに気づいた。「今の聞いた?」と彼は妻に尋ねた。彼女は聞いていた。「それはいきなり起こったのです」と彼は言う。

 現在43歳、ボストンでソフトウエアのマーケティングを担当している Rhoton さんが耳鼻咽喉科の専門医を受診したところ鼻中隔弯曲症を指摘された。鼻中隔弯曲症とは、軟骨および左右の鼻腔を隔てる骨の仕切りである鼻中隔が“正中からずれている”というものでよく見られる病態である。その医師が矯正手術を勧めたので Rhoton さんはそれに同意した。医師はさらに両鼻孔の鼻甲介(turbinate)をほぼ全摘出する第二の手術も同時に行うことを提案した。鼻甲介は左右に3つずつある小さな構造物で、鼻に吸い込んだ空気を浄化し、温め、加湿する役割がある。しかし、Rhoton さんのように炎症を起こして肥大化することもあり、スプレーや他の治療で効果がみられない場合には、呼吸を改善するために医師が鼻甲介を縮小、あるいは切除することがある。

 医師は Rhoton さんに手術は定型的なものでリスクは低いと説明した。その時、実際には呼吸が楽になるどころか、彼には真逆のことが起こり、持続的な鼻づまり、睡眠障害、高度の倦怠感とブレインフォグ(頭に霧がかかった感じ)、不安、体重増加など、人生を一変させるような症状がもたらされることになるとは考えもしなかった。結局、ある医師がようやく問題を特定し、解決策を提供してくれるまで 6年近くかかり、その間に 17人の医師を受診したが、そのうちの何人かからは思い過ごしだと言われた。

 「症状のおかげで日常生活を普通に機能させるだけでも一苦労でした」と彼は言う。「これを解明するのにあそこまで多くの医師への受診と多くの時間を要するなんて信じがたいことです」

 

Jayakar Nayak(ジャヤカー・ナヤック)医師の診療所で診察を受ける Bradley Rhoton さん(Lisa Kim)

 

Congestion, burning and no sleep 鼻づまり、灼熱感、そして不眠

 

 Rhoton さんの最初の手術は 2018年4月に行われた。医師は鼻中隔を矯正し、3つの鼻甲介のうち最も大きい『下』鼻甲介(かびこうかい)の大部分を両鼻孔から切除した。Cleveland Clinic(クリーブランド・クリニック)によれば、鼻甲介縮小術は鼻腔内の気流を改善するための一般的な手術であり、成功率は82パーセントであるという。

 しかしそれから3ヶ月の間に、Rhoton さんには症状悪化の連鎖が出現した。彼はもはや鼻を通じて息ができないように感じた。彼の鼻腔は鼻づまり状態となり痂皮が生じ、しつこい灼熱感を伴っていた。「息が詰まりそうでした」と彼は言う。

 彼は口で息をしなければならず、まるで治らない風邪が続いているかのようだった。彼は眠ることができず、日中は極度の眠気を感じるようになった。絶え間ない疲労により、彼はエネルギーもモチベーションも奪われた。彼は不安になり、ジャンクフードを食べるようになった。そのため体重が増加した。さらに、彼を苛立たせることになったのは、口笛の様な音が再び始まったことだった。

 中でも悩ましかったことに、彼が疲弊しすぎて現在5歳と2歳の息子たちと遊ぶことができなくなっていた。「まるで2時間のバッテリーで動いているようでした」と彼は言う。「私は子供たちと楽しいことをしたかったのですが、私はひどく弱ってしまっていたので彼らの世話をすることができませんでした。彼らが外で遊ぶのを見ているはずなのに、芝生の上の椅子で眠りこんでしまっていました。」

 彼はそれまで睡眠に問題を抱えたことはなかったが、そのころには夜間に眠れないため仕事中に居眠りをしてしまうようになった。「電話中にも眠りに落ちてしまうんです」と彼は言う。「電話の相手が『Bradley、聞こえてますか?』と問いかけるので、私は電波の調子が悪いかのように対応していました」

 彼は点鼻薬やその他の充血除去薬、生理食塩水による洗浄、アレルギー治療薬、抗ヒスタミン薬等を試したがどれも効果がなかった。彼は10月に最初の耳鼻咽喉科の医師の元に戻ったところ、鼻中隔に小さな穴が見つかったのでそれを修復したが Rhoton さんの症状は改善しなかった。5月、彼は鼻腔の一方から小さな良性腫瘍を摘出された。しかしそれでも良くならなかった。

 イライラが増した彼は、それからの18ヶ月の間に、プライマリケア医、2人の新たな耳鼻咽喉科専門医など他の医師に助けを求めた。「彼らは私の鼻は良さそうだと言ってくれました」と彼は言う。「彼らはこう言いました。『あなたの鼻腔は大きく開いている。真っ直ぐだし治っています。あなたには何の問題もない』と」。

 

All in his head, sleep apnea? すべては彼の気のせい、それとも睡眠時無呼吸?

 

 最初の手術がうまくいくと期待していた分、その後の症状に驚いたが、彼が受診した専門医の何人かが「すべては気のせい」と言ったことが正しいのではないかと思い始めていた。しかし誰も彼の症状を真剣に受け止めてくれないことを腹立たしく思った。「それは、医療制度の対応の仕方や、医学的に正しく理解されないことからもたらされる見過ごされがちな精神的な負担について疑問がもたらされた動揺の遍歴でした」と彼は言う。

 Rhoton さんは、時に症状がひどいために、友人と出かけたり、運動したり、写真やホッケーの競技などお気に入りの趣味に参加できないほどの呼吸の症状が、実際には彼の鼻と手術とは無関係かもしれない可能性を考えた。

 彼は、睡眠障害が彼の途切れがちの睡眠を引き起こしているのではないかと考え睡眠専門医を受診した。その医師は彼を軽度の睡眠時無呼吸と診断し、夜間に気道を開いたままにするのに役立つCPAP装置を勧めた。彼は試してみたが、鼻と口にマスクを装着することで症状が悪化し、息苦しく感じたため、装着を続けることができなかった。

 その後、彼は心臓専門医を受診、負荷試験を行い、臨床検査のために採血を行った。すべて正常だった。

 最終的に、2023年11月、Rhoton さんは、ソーシャルメディアを通じて名前を見つけたオハイオ州 Columbus(コロンバス)の U.S. Institute for Advanced Sinus Care and Research(米国先進副鼻腔治療研究所)の医長である Subinoy Das(スビノイ・ダス)氏と電話で話した。Das 氏は、Rhoton さんを遠隔で診断することはできないと言ったが、2人は、鼻甲介手術後に時々発生し衰弱を来す稀な疾患を含めたいくつかの可能性について話し合った;“empty nose syndrome(ENS、空鼻症候群)” は、患者が執拗な重度の鼻づまりを起こし鼻からの呼吸が著しく制限される疾患である。

 ENSはいまだ十分に理解されている疾患ではなく、本来鼻甲介手術は呼吸を悪化させるのではなく呼吸を改善することを目的としていることから、一見理にかなっていない意味合いを持つことからいささか議論の多い診断名となっている。

 鼻甲介の手術後に一部の患者が呼吸障害を経験する一方で、ほとんどの患者がそれを経験しない理由は不明となっている。一部の専門家は、患者間の解剖学的な違いが関連している可能性があると考えている。「とにかく現実に存在しています」、ワシントンD.C.の耳鼻科医である Pryor Brenner(プライヤー・ブレナー)氏は言う。とはいえ彼が行った2,000件以上の鼻の手術のうち、24年間でENSの症例を見たのはわずか2件だったという。

 「私はENSの可能性についてすべての患者と話し合っています。なぜなら、それが起こった場合、大きな医学的問題となるからです」と彼は付け加える。「それはメンタルヘルスを含めて患者の健康や生活の質に非常に大きな影響を与える可能性があります」。

 一部の専門家は、ENSは、正常な空気の流れを伝える重要な鼻甲介組織にある受容体が手術によって失われることに起因すると考えている。重要な受容体が失われることで、「患者の中には息ができないと感じる人もいます」と、ニューヨーク州立大学バッファロー校の耳鼻咽喉科・頭頸部外科の臨床教授である Eugene Kern(ユージン・カーン)氏は話す。「彼らは口からの呼吸を余儀なくされるのです。もはや普通の呼吸の感覚が得られないのです」

 Kern 氏は、Mayo Clinic(メイヨクリニック)で働いていた1994年に同僚とこの症候群を特定し、その病名を生み出した。ENSは知られているよりも高い頻度で発生すると考えているが、信頼できる推定値は得られていない。

 Mayo にいる間、Kern 氏は250人近くのENS患者を治療したが、その全員が他の施設で鼻甲介の手術を受けていた。「私は週に4、5人の患者を診ていました」とカーンは言い、「多くの医師がその機序を理解していないため診断されないままになっているのです」と付け加える。「探しているものがわかっていれば、診断は容易です。見逃されることはないのです」。

 

Bradley Rhoton さんとその家族(Bradley Rhoton さん提供)

 

A reason for hope 希望が持てる理由

 

 Das 氏と話した後、自分はENSに苦しんでいるのだと Rhoton さんは確信した。「突然、すべてが理にかなったのです」と彼は振り返る。Das氏は Rhoton さんに、スタンフォード大学の耳鼻咽喉外科医であり、いくつかの効果的な新しい治療アプローチを採用し、Rhotonさんの健康保険ネットワークに参加もしていた Jayakar Nayak(ジャヤカル・ナヤック)氏に連絡することを提案した。Nayak 氏は、この病態に関する研究論文を発表し、ENSに関するポッドキャストを持っていた。

 「これは何年も感じていなかったなにかを私に提供してくれました」と Rhoton さんは言う。「それは希望です」。

 鼻腔と副鼻腔疾患の専門家である Nayak 氏は、長年にわたって鼻づまりに対する下鼻甲介縮小手術を後遺症なく何千回も行ってきたと言うが、問題が散発的に発生し診断に当惑させられることがありうることを認めている。

 「異常に肥大し、閉塞をもたらす鼻甲介組織に対する下鼻甲介縮小術は、患者の呼吸と睡眠を改善するにはきわめて安全で有効な手技です」と彼は言う。そして残念ながら「なぜENSが少数の人々で起こり、他の人々では起こらないのかはわかりません。ENSの症状がなく自分の呼吸にとても満足している他の患者でも、同様のレベルの組織喪失が見られているからです」。

 彼はまた、ENSの症状のある患者を評価するために、長年にわたって何百例もの紹介を受けてきたが、この疾病を持っていることが判明したのはごく一部であると彼は言う。

 Rhoton さんの場合、彼の症状が手術直後に出現したため ENSと診断された可能性が高い。

 これを確認するために、Nayak 氏は昨年6月に Rhoton さんが受診に来た時に一連の検査を行った。「ENSで良くみられる症状をリストアップする30点満点の評価システムがありますが、最悪のケースでは30点となります。Bradley さんのスコアは26点でした」と Nayak 氏は振り返る。

 その医師は、Rhoton さんの鼻のさまざまな部分に綿球を挿入することにより、2つ目のの診断テストを行った。鼻腔内の組織が不足している部分に綿球が置かれた時、「彼は正常人のように呼吸していました。彼の得点は26点から2点になりました」。

 Nayak 氏は、「Rhoton さんはとても喜んで、ほとんど泣きそうでした。そして彼は私にこう言ったのです。『あなたが何をしたにせよ、そのままにしておいて下さい。やっと鼻で呼吸ができるようになったのですから』」。

 次のステップは、多くの医薬品に使用されている充填剤であるカルボキシメチルセルロースで作られたゲルを使用して、各鼻腔にそれぞれ4〜5回の一連の注射を行うことだった。一時的な充填剤が失われた神経や受容体を回復したり、永遠に持続したりすることはないが、気流を改善することができる。良い治療適応とみられる人々に対する恒久的な解決策は、肋骨軟骨(死体材料から採取し消毒および放射線照射された素材)を鼻腔内に埋め込んで、欠落している鼻甲介組織に置換する手術である。完全な治療法ではないが、それによって症状が有意に軽減することがNayak氏の研究で明らかになっている。

 昨年9月、Rhoton さんは幾度か注射を受け、翌月には大幅に改善した。「鼻で息をすることができました。眠れるようになりました。気分が良くなりました。やる気が出ました。」と彼は言う「その違いは驚くべきものでした。」彼はその後、追跡で一連の注射を受けたが、呼吸が再び悪化し、今のところ、おそらく秋に手術を受ける方針となっている。

 そして「約6年ぶりに希望を抱いています。昔の自分が再び現れてきたような気がします。」と彼は言う。

 

 

Empty Nose Syndrome(ENS、空鼻症候群)とは

不思議な病気である。

鼻の空気の通りを良くするために行った手術の後に、

逆に鼻で呼吸することがむずかしくなるとは…

 

ENS については下記サイトに詳しく記載されているのでご参照いただきたい。

 

ばば耳鼻科のホームぺージ

 

ウィキペディア(英語)

 

 

鼻腔内には骨でできた装甲のような組織が左右それぞれ、

外側から内側に向かって庇のように垂れ下がっている。

これを鼻甲介(びこうかい)というが、3段構造になっていて、

上から、上鼻甲介、中鼻甲介、下鼻甲介と呼ばれる。

このうち下鼻甲介が最も大きく、空気の流れの調整や、

加湿・加温を行うなど重要な役割を果たしている。

 

鼻腔の解剖(看護roo より)

 

ENS は、鼻の手術、特に下鼻甲介の手術を受けた後に、

下鼻甲介が過剰に小さくなった際に起こることがあるまれな疾患である。

 

 

ENSの患者は、実際には鼻の通りには問題がないにもかかわらず

『鼻が詰まっている感じがする』という不思議な感覚を訴える。

この症状の発生には、

①鼻の構造の変化による気流の乱れ

②鼻粘膜の機能障害

③神経の感覚(気流を感じる能力)の低下

の3つの要因が関係していると最近の研究で報告されている。

 

ENS患者では、下鼻甲介の下側にある下鼻道(かびどう)を通る空気の量が減り、

その上の中鼻道(ちゅうびどう)を通る空気の量が増えるという逆説的な現象が

起こる。本来なら広くなった空間には空気が流れやすくなるはずであるが、

ENS患者では気流のバランスが崩れ、鼻の奥へ空気が適切に流れなくなっている。

これによって呼吸の違和感や息苦しさが生じると考えられている。

またENSの患者では、鼻の粘膜が空気の刺激を感じにくくなり、

『鼻が空っぽな感じがする』『息を吸っている実感がない』といった症状に

つながることも確認されている。

 

また鼻粘膜表面積の減少による鼻粘膜の機能障害や受容体の減少により

脳に『空気が流れている』という信号を送れなくなることも

症状発現の原因の一つと考えられている。

 

ENS では、鼻閉感の他にも、

鼻の乾燥感、鼻内に空気が流れているのを感じない、

息苦しさ、呼吸のしづらさ、鼻内が開きすぎている感覚、

鼻内のごみ(鼻垢)が溜まる感覚、鼻内が焼ける、顔が痛い

など様々な症状があるほか、心理的負担や生活への悪影響がみられる。

不眠、集中力の低下、不安などで生活の質が低下することがある。

 

治療は保湿スプレーや薬などの保存的治療が中心となるが、

最近の研究では、手術で鼻腔内を形成することで、

長期的に症状が改善する可能性が示唆されている。

 

また ENS の発症を予防するためには、元の手術の際に

下鼻甲介を少なくとも50%は温存することを推奨する報告がある。

 

鼻の気流を良くするためには邪魔なものは取ってしまえばよい、的な

単純な感覚では、実は繊細な機能を持つ鼻粘膜を損なうことによって

思わぬ障害が生じてしまう可能性があることを肝に銘じておく必要がある。

 

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