MrKのぼやき

煩悩を解脱した中年男のぼやき

最初は考えない疾患

2017-04-16 18:28:05 | 健康・病気

4月のメディカルミステリーです。

 

4月8日付 Washington Post 電子版

 

The awful sores in her mouth were

symptom of something very serious

彼女のひどい口のびらんは深刻な病気の症状だった

 

By Sandra G. Boodman,

 2012年10月、Elizabeth Starrels さんはワシントンの耳鼻咽喉科専門医の診察椅子に座り、失意と痛みで涙を流していた。

 それまでの4ヶ月間、当時52才だった Starrels さんは悪化する口のびらん(糜爛)と戦ってきた。食べることはほとんど不可能となっており、ほとんど smoothies(スムージー:新鮮な果物や野菜をミルクセーキ状にした健康飲料)だけを摂取するようになっていた Starrels さんは体重が20ポンド(約9kg)減っていた。

 受診した歯科医や口腔外科医は、彼女が、抗生物質によってもたらされる口腔内真菌の異常繁殖による感染症である thrush(鵝口瘡)であると告げた。彼らが処方した洗浄液や薬物は短期間しか効果がないか全く効かなかった。

 次に彼女が受診した耳鼻咽喉科医は異なる意見だった。彼女の病気は炎症性疾患であると彼は考えた。MedStar's Georgetown University Hospital で働く公認看護師の Starrels さんは取り乱し、この痛みを抱えて生きていけないとその医師に訴えたが、彼の反応は素っ気ないものだった。

 「彼は、その痛みを抱えながら生きることを学ばなければならない、他に選択肢はない、と私に言いました」そう彼女は思い起こす。その医師は抗うつ薬の処方を提案した。

 しかし逆にその耳鼻咽喉科医の反応が刺激効果になったと Starrels さんは言う:抗うつ薬は必要なかったが、彼女には興味を持って快く彼女を支援してくれるような誰かが必要だった。一方で「看護師として、他の人たちを支援することができたのです。自分自身をではなく」と彼女は言う。

 それから2ヶ月が過ぎ、さらに数人の医師を経て、Starrels さんは新たな診断名を得ただけでなく、有効な治療を受けることができた。さらに彼女はオンラインでも、計り知れないほど貴重と感じるほどの援助を受けた支援グループによって勇気を得た。

 「私は診断を得たこと、そして治療があることを知ることができたことに大変感謝しました」彼女の痛みは今は消失しているという。彼女の慢性疾患は今は寛解しているが、それが長く続くことを彼女は望んでいる。

 

Dramatic weight loss 劇的な体重減少

 

 彼女が例の耳鼻咽喉科医のもとを訪れた9ヶ月前の2012年1月、Northwest Washington に住む Starrels さんはたびたび鼻出血で目が覚めた。彼女はそれを自宅の空気が乾燥しているためであり、大したことではないと考え治療を求めなかった。

 5月、彼女は唾液腺結石を発症しペニシリンを10日間投与された。原因不明に形成されるこの大きな害のない結石はカルシウムを含有しており、もし管を閉塞し唾液の流れを障害するようなことがあれば痛みや腫脹を引き起こす。

 病気が今は寛解している Elizabeth Starrels さんは、彼女が見つけた支援グループが計り知れないほど貴重だったという。

 

 その薬剤を止めて間もなく、Starrels さんにアフタ性口内炎(canker sores)に似た有痛性の口腔潰瘍ができたため歯科を受診、その後数回通院した。

 その歯科医が処方した洗浄液やクリームは有効ではなかったため、彼は同じビルの口腔外科医に彼女を紹介した。その口腔外科医は、彼女は鵞口瘡だと思うと彼女に告げたが、彼女にはそれに特徴的な白斑は見られず、むしろヒリヒリする痛みがあった。

 やがて、歯茎まで拡大していた口腔内のびらんに加えて、歯茎の組織が剝がれかけているようであることに Starrels さんは気づいた。

 食べることが大変辛くなっていたが、飲むことは耐えることができた。Starrels さんは、ほとんど噛む必要がなく刺激性のない食べ物であるヨーグルトやスィート・ポテトのほか、プロテイン・シェークや smoothies を摂取して生き永らえていた。

 例の耳鼻咽喉科医は、原因のわかっていない慢性自己免疫疾患である口腔扁平苔癬(oral lichen planus)と診断した。口腔の痛みを引き起こすこの疾患には感染性はなく、通常は局所麻酔効果のあるクリームで治療されるが、重症のケースでは炎症を軽減させる prednisone などの副腎皮質ステロイドが用いられる。口腔科の2番目の専門医も同じ意見だったが、提供できるこれ以上の治療はほとんどないと彼女に告げた。

 Starrels さんは別の方向に向かうべき時だと考えた。

 耳鼻咽喉科医受診から数週間後の11月、彼女はフィラデルフィアに出かけ、University of Pennsylvania の口腔医学の専門家を受診した。その一週間前、さらに彼女を失望させることになったのは、液体を含んだ水疱が胸にいくつか出現したことだった。

 その医師は Starrels さんの口を観察し、扁平苔癬ではないと思うと彼女に告げた。彼は、彼女の疾患がまれな自己免疫疾患である pemphigus vulgaris(尋常性天疱瘡)ではないかと考え、ただちに皮膚科医を受診し水疱の生検を受けるよう彼女を促した。水疱の生検はその疾患の診断の確定や否定に有用である。

 

Blisters 水疱

 

 尋常性天疱瘡(および天疱瘡と呼ばれる関連疾患)は、通常自己免疫系が、健康な皮膚細胞、特に粘膜を誤って攻撃する過剰反応よって引き起こされる重篤で根治不能の疾患である。有痛性水泡を生じる身体の部位によっていくつかのタイプの天疱瘡がある。最も多いタイプである尋常性天疱瘡はほとんどの場合、口腔の疼痛で始まり、他の部位の発疹へと進展する。感染性はなく遺伝性もみられないが、本疾患は地中海沿岸や中東の民族、および東ヨーロッパのユダヤ人においてよく見られる遺伝子と関連している。

 中年および高齢者に最も頻度が高い本疾患は世界中で人口10万あたり約3人が罹患し、炎症を抑える様々な薬剤で治療されている。副腎皮質ステロイドが登場するまでは、多くが致死的だった。

 「天疱瘡を持つ人はいずれも本疾患のリスクを増大させる遺伝子を持っていますが、その遺伝子を持つ1万人に約1人しか実際に天疱瘡を起こしません」そう述べるのは Johns Hopkins の皮膚科学教授 Grant J. Anhalt 氏で、彼は水泡性皮膚疾患の治療を専門にしている。その遺伝子を有する人たちのごく一部しか発症しない理由は研究者らにはわかっていない。

 Pennsylvania を受診した翌日、Starrels さんは生検を受けることができた。この手技は、Starrels さんの皮膚科医のパートナーで皮膚科学と病理学の両方の訓練を受けた医師である皮膚病理学者によって行われた。その生検で尋常性天疱瘡の予備的な確認が得られ、Johns Hopkins の病理学者によって確定診断が行われた。

 

‘A very good treatment’ “非常に良い治療法”

 

 数週間後、その皮膚科医の勧めにより Starrels さんは Anhalt 氏を受診した。

 「彼は大まかには次のように言いました。『この疾患には根本的治療法はありませんが、非常に良い治療法があります』」Starrels さんは彼にそう言われ、ホッとしたことを思い出す。

 Anhalt 氏によると Starrels さんのケースは典型的だったという。患者が診断を受けるまで平均で半年から1年を要するが、それは、口腔のびらんという明確な症状には多くの原因があり、さらに天疱瘡がまれであるということがその大きな理由である。彼女の頻回の鼻出血は本疾患の前兆だったと彼は言う。

 「天疱瘡を考えないのが普通です。その人の口腔の潰瘍が改善せず、その後皮膚にも潰瘍が出現して初めて本当の鐘が鳴るのです」

 彼を受診するまで、患者は当然のことながら不安に感じている。「彼らはインターネットを利用し、写真を見たり、ブログを読んだりしてこう思います。『あゝ何てこと、私の人生は終わってしまった』と」。

 本疾患の様々なタイプ(そのうちの一つのタイプの1990年の発見に彼は貢献している)の4才から89才までの300例の患者を治療してきた Anhalt 氏は rituximab(リツキシマブ)という薬の反復注射に期待を寄せている。この薬剤は関節リウマチや特定の癌の治療用として承認されている。先月、米国食品医薬品局は、第3相臨床試験にある本薬剤に breakthrough therapy status(画期的治療薬としての地位)、すなわち天疱瘡に対する承認を早め、保険適応を促進する指定を与えた。Prednisone やしばしば臓器の拒絶反応防止に用いられる免疫抑制薬の CellCept など他の薬剤もしばしば併用して処方される。

 他の薬剤で効果が見られない重篤なケースで既に治療に成功している rituximab は高価であり、一連の治療に約2万ドル(2,178,000円)かかる。天疱瘡の治療薬として承認されていないので「それに対して支払いを受けることには問題が起こり得ます」と Anhalt 氏は言う。しかし、早期の治療は、より迅速で、より長期の寛解につながる可能性がある。

 診断はショックだったが、原因を知ることができて安堵し、思いやりと専門的助言を示してくれた医師と出会えたことに感謝していると Starrels さんは言う。

 「私は苦悩の中にありましたが、ベストを尽くして頑張ろうとしてきました」と Starrels さんは言う。

 彼女は prednisone と CellCept の内服を始め、その後3回の rituximab の注射の1回目を受けた。彼女の保険は支障なく最初の回を補填してくれた。最終の回の補填については当初は拒否されたものの Starrels さんの要請により補填された。

 何ヶ月かを経て彼女のびらんと水泡はきれいになり痛みも消えた。彼女の最初の寛解は18ヶ月続いている。平均的寛解期は1.5年から2.5年続くと Anhalt 氏は言うが、寛解が10年以上続いた患者も一人いるという。

 Starrels さんはオンラインで、ある患者によって設立されたカリフォルニアに拠点を置くグループ、International Pemphigus および Pemphigoid Foundation から大きなサポートを得たという。本グループは彼女を他の患者たちと結び付けてくれ、難病を抱えて生きることの情動的、および実際的側面への対応に大いに役立っている。

 

 「実際、彼らに私の命は救われました」そう Starrels さんは言う。

 

 

 

天疱瘡についての詳細は難病情報センターのHP

診療ガイドラインを参照いただきたい。

 

天疱瘡は、自己免疫性に発症する皮膚・粘膜の水疱性疾患で、

表皮細胞間の接着機能が障害され棘融解(acantholysis)が生じ、

表皮内に水疱が形成される。

免疫病理学的には表皮細胞膜表面に対する自己抗体が

皮膚組織に沈着、あるいは循環血中に認められることを特徴とする。

免疫攻撃のターゲットは、表皮細胞間接着に重要な役割を持つ

カドヘリン型細胞間接着因子のデスモグレインである。

天疱瘡は、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、その他の3型に大別される。

その他のサブタイプには、腫瘍随伴性天疱瘡、

尋常性天疱瘡の亜型である増殖性天疱瘡、

落葉状天疱瘡の亜型である紅斑性天疱瘡、疱疹状天疱瘡、

薬剤誘発性天疱瘡などが知られている。

 

尋常性天疱瘡(pemphigus vulgaris)は天疱瘡中最も頻度が高い。

特徴的な臨床的所見は、口腔粘膜に認められる

疼痛を伴う難治性のびらん、潰瘍である。

口腔粘膜症状で初発する頻度が高く重症例では疼痛のため

食事摂取が困難となる。

口腔粘膜以外にも、口唇、咽頭、喉頭、食道、眼瞼結膜、膣などの

粘膜に病変が出現する。約半数の症例で、粘膜病変に留まらず

皮膚にも水疱性病変やびらんを生じる。

びらんは、しばしば有痛性で、隣接したびらんが融合し

大きな病変(局面)となることがある。

皮膚病変の好発部位は、頭部、腋窩、鼠径部、上背部、殿部など

圧力のかかる部位に広がりやすい。

一見正常な部位に圧力をかけると表皮が剥離し、

びらんを呈する(これをニコルスキー現象という)。

 

落葉状天疱瘡で見られる病変の特徴は

皮膚に見られる薄い鱗屑、痂皮を伴った紅斑、弛緩性水疱、

びらんなどである。

紅斑は、爪甲大までの小紅斑が多いが、まれに広範囲な局面となり、

紅皮症様となることがある。

好発部位は、頭部、顔面、胸、背などのいわゆる脂漏部位で、

このタイプでは口腔など粘膜病変を見ることはほとんどない。

 

腫瘍随伴性天疱瘡は、悪性又は良性の新生物

(主にリンパ球系増殖性疾患)に伴い発症する。

びらん形成を主体とした重篤な粘膜病変と

多彩な皮膚病変を認める自己免疫性皮膚疾患で、

口腔を中心に広範囲の粘膜部にびらんを生じ、

赤色口唇に特徴的な血痂を伴う。

皮膚症状は緊満性水疱、浮腫性紅斑、紫斑など多彩。

閉塞性細気管支炎の合併に注意が必要である。

 

治療は、早期診断と十分な初期治療が重要である。

一般的には、まず副腎皮質ステロイドのプレドニゾロンを開始し、

その後減量を開始する。

再燃を認めた場合は、ステロイドを増量し、免疫抑制薬の補助療法を

併用する。

ステロイド増量のみでは減量の際、再燃する可能性が高い。

免疫抑制薬の併用に際しては、肝・腎障害、骨髄抑制作用、

感染症の併発に注意を要する。

治療抵抗例や重症例には血漿交換療法が行われる。

ステロイド内服などの通常の治療法に反応しない場合、

γグロブリン大量静注が行われることもある。

外用治療として、水疱、びらんの湿潤面には抗生物質含有軟膏、

ステロイド軟膏を塗布する。

口腔内のびらん、潰瘍には口腔粘膜用ステロイド含有軟膏、

噴霧剤などが用いられる。

 

尋常性天疱瘡は、一般的に落葉状天疱瘡に比べ難治性で予後が悪い。

特に口腔粘膜病変は治療抵抗性のことが多い。

ステロイド療法導入により、その予後は著しく向上したが、

その副作用による合併症が問題となる。

 

なおリツキシマブについては、本邦においても

まだ天疱瘡の治療薬として承認されていない。

天疱瘡の原因となる自己抗体は、CD20陽性の

Bリンパ球から産生されると考えられているため

抗CD20のモノクローナル抗体であるリツキシマブの

有効性が期待されている。

現在日本でも臨床試験が進行中であり、

早期の薬事承認が待ち望まれている。

 

 

最後に天疱瘡の診断基準を下記に載せておく。

 

<診断基準>

(1)臨床診断項目

①皮膚に多発する、破れやすい弛緩性水疱

②水疱に続発する進行性、難治性のびらんあるいは鱗屑痂皮性局面

③口腔粘膜を含む可視粘膜部の非感染性水疱あるいはびらん

④ニコルスキー現象陽性

(2)病理組織学的診断項目

表皮細胞間接着障害(棘融解)による表皮内水疱を認める。

(3)免疫組織学的診断項目
①病変部ないし外見上正常な皮膚・粘膜部の細胞膜(間)部に

IgG(ときに補体)の沈着を直接蛍光抗体法により認める。

②血清中に抗表皮細胞膜(間)IgG自己抗体(抗デスモグレイン

IgG抗体)を間接蛍光抗体法あるいはELISA法(またはCLEIA法)

により同定する。

[診断のカテゴリー]
①(1)項目のうち少なくとも1項目と(2)項目を満たし、

かつ(3)項目のうち少なくとも1項目を満たす症例を天疱瘡と

診断する。

②(1)項目のうち2項目以上を満たし、(3)項目の①、②を満たす症例を

天疱瘡と診断する。

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

あきらめないで!

2017-03-24 18:53:17 | 健康・病気

3月のメディカルミステリーです。

 

3月20日付 Washington Post 電子版

 

This woman’s labored breathing alarmed her friends. Doctors were startled to find the cause.

女性の友人たちは彼女の努力性の呼吸を心配した。医師らはその原因を発見し驚いた。

 

By Sandra G. Boodman, 

 「どこか悪いの?」友人の Vicky Weinstein さんからそう尋ねられたことを Dianne Hull さんは覚えているが、その声には心配な気持ちがはっきりと込められていた。

 2012年12月、この二人の女性が昼食をちょうど済ませたところだった。Hull さんがその友人の自宅のキッチンを移動するとき重苦しく息をしていたのである。Hull さんの聞き取れるほどの呼吸音と増悪する息切れは彼女の多くの差し迫った問題の中では隅に押しやられていた。この数ヶ月間、Hull さんは、幼い息子を襲った健康上の危機にかかりっきりになっていたのである。

 しかしその時、看護師をしている Weinstein さんは強く助言を行った:それは当時38才の Hull さんが自身の健康に注意を払っていたのが過去のことになっていたためである。

 その日、Hull さんと別れた後、彼女が自分の忠告を聞いてくれる確信を持てなかった Weinstein さんは電話をかけた。

 「力を貸してあげるべきよ。Dianne はどこかが悪いのは確かよ」Weinsteinさんは夫であるフィラデルフィアの肺の専門医 Michael Weinstein 氏にそう話した。

 

彼女は運動していたしタバコも吸わなかった。しかし、この写真で息子の Brent 君と一緒に写っている Dianne Hull さんはほんの少し無理をするだけで息切れを感じるようになっていった。

 

 一ヶ月後、Michael Weinstein 氏の仲介により Hull さんの稀な疾病が診断され治療が行われた。それから9ヶ月後、彼女は初めての5kmレースを問題なく走ることができた。

 「大変もどかしい状況でした。なぜなら、一年以上、何が原因なのか誰も解明できなかったのですから」と Hull さんは言う。そのため、彼女の息子が病気になると、自分の症状をないがしろにするようになっていた。「私は人に言うべきでした。『本当に調子が悪いんです』と」

 

Out of shape? 体調不良?

 

 2011年7月の定期受診のとき、Hull さんのかかりつけ医は、彼女に軽度の息切れがあるようだと告げた。ペンシルベニア州 Swarthmore 在住で University of Pennsylvania の就職斡旋部門で働いている Hull さんは、そのことを重要視しなかったという。とりわけその医師が心配していないようだったこともその理由だった。「その時点ではその症状はおそらく2、3年になろうかというところでした」と Hull さんは思い起こす。彼女は日頃から運動していたが、40才が近づいていた。恐らく運動訓練をさらに強化する必要があると彼女は考えていた。

 一ヶ月後、Hull さんは大学のときから知っている Weinstein さんの夫の Michael さんに症状について話した。彼は自分の診察室に来るよう彼女に勧めた。Michael Weinstein 氏は喘鳴を聴取しなかったが、Hull さんが運動誘発性喘息(exercise-induced asthma)を起こしているのではないかと考えた。これは中年にはめずらしくないものである。彼は、試しに運動前に吸入薬と抗ヒスタミンを用いてみることを勧めた。

 Hull さんによると、その後一年間定期的にそれらの薬を試したが変化は感じなかったという。彼女はタバコを吸ったことはなく、ジャズ体操教室に行き、定期的に歩いたり泳いだりしていたが、ほんのわずかでも無理をするだけで息切れを感じるようになっていた。「階段を上りながら同時に電話で話すことができませんでした」そう Hull さんは思い起こす。

 「いつもぜーぜー息を切らしているんですか?」かかりつけ医がそう尋ねたことを覚えている。彼女は連鎖球菌感染が治まったら胸部レントゲン写真と肺機能検査を受けるべきだと Hull さんに告げた。喘鳴(wheezing)は気道の狭窄、喘息、あるいは声帯の機能障害の症状である可能性がある。

 一ヶ月後に行われたそれらの検査は正常だった。Hull さんが最も気になったことは「私の呼吸には悪いところはないので、すべて頭の中で思っていることだ」ということをほのめかした技師の態度だったという。

 しかし Hull さんは、習慣にしていた50往復を泳ぐときには必ず、一往復ごとに呼吸を整えるために中断しなければならなくなっていた。

 Hull さんが喘息であることが検査で判明するだろうと考えていた Weinstein 氏は当惑した。彼は Hull さんに標準的な喘息の検査を予定に入れるよう求めた:それはメタコリン吸入試験という検査で、薬剤の吸入に対して肺がどのように反応するかを評価するものである。この検査が陰性であれば喘息を確実に除外できると考えられている。

 Hull さんはこの検査を予約した。しかし、それを行う前に、はるかに差し迫った問題に彼女の関心は乗っ取られてしまった:彼女の7才の息子が1型糖尿病と新たに診断され入院し、彼の病気にどう対応するかが Hull さんとその夫の第一の関心事となってしまったのである。「自分の呼吸についての心配事は消滅してしまった感じでした」そう考え検査をキャンセルしたと Hull さんは言う。「私には2人の子供がいて、そのことで一杯でした。病気になっている場合ではなかったのです」

 数ヶ月後、Hull さんの息子は落ち着いたが、彼女の呼吸は著しく悪化していた。彼女は絶え間なく咳払いをするようになり、頻回に咳が出て、体操教室のあいだ中、苦闘していた;彼女の呼吸は高音の笛のような音がした。かかりつけ医は、彼女には吸気性喘鳴(stridor)があると告げた。これは一般には気道が部分的に閉塞しかけていることを示唆する異常な甲高い音のことである。その医師はアレルギー検査を勧めた。

 「自分にはアレルギーはないと思っていました」と Hull さんは言うが、1月に検査予約をした。

 数週間後、彼女は Vicky Weinstein さんと昼食をとった。妻に促された Michael Weinstein 氏が Hull さんに電話をかけると、彼女はアレルギー専門医を近々受診することを話したという。

 Hull さんよると、そのアレルギー専門医は極めて丁寧に対応し、重要視してくれているのが明らかだったという。彼女の呼吸に深刻な異常があることを認め、彼女に肺機能検査をもう一度行うために廊下の先に向かわせたが結果は正常だった。それから彼は聴診器を彼女の肺ではなく喉の上に当てた。

 彼女が呼吸したとき、彼は「顔をこわばらせてたじろいでいた」ことを彼女は思い起こす。

 「知りたくないようなことでした」そう彼女は思い出す。彼女は、何が聴こえたのかをその医師に尋ねると、喉に狭窄がある可能性があると考えていると告げた。

 「腫瘍ですか?」と彼女は尋ねたという。「わかりません」とそのアレルギー専門医は答え、手を彼女の肩の上にやさしく置いた。彼は Hull さんを耳鼻咽喉科の専門医に紹介し、彼女のために優先予約を要請してくれた。

 Hull さんによると、その耳鼻咽喉科医は先のアレルギー専門医とは正反対だったという:口数が少なくさらに安心をさせてくれることのない無愛想な男だった。彼は、原因はわからないがCT検査と、おそらく気管支鏡検査が必要であると Hull さんに告げた。気管支鏡検査とは、柔軟性のある内視鏡を用いて医師が患者の気道を観察できる検査手技である。彼は、Hull さんの問題は腫瘍ではなく、声帯の開大が誤って起こる声帯機能不全(paradoxical vocal cords)の可能性が高いと考えていると告げた。彼女にCT検査を行うよう彼は指示した。

 これが何を意味するのか、次に何をするべきなのかについて確信が持てないまま Hull さんは Weinstein 氏の元に向かった。

 

Searching for the cause 原因の追求

 

 Weinstein 氏にとって声帯機能不全という仮説は不可解だった。それでは彼の最大の懸念事項である吸気時喘鳴(stridor)を説明できなかった。成人では吸気時喘鳴は、しばしば気管チューブや煙の吸入による気道の損傷によって引き起こされるが、Hull さんはこれらのいずれも経験していなかった。さらに彼女に腫瘍や閉塞があるようには見えなかった。

 吸気時喘鳴を引き起こすと考えられる原因リストの下の方に声門下狭窄(subglottic tracheal stenosis)と呼ばれるきわめて稀な疾患を見つけたと Weinstein 氏は言う。理由は不明だが、これに罹患する人のほとんどが30才から50才までの白人女性である。この疾病は声帯直下の気管が狭窄する。(症例の約15%に見られる)原因不明のケースでは、その疾病は特発性と見なされる。本疾患の発症率や有病率はわかっていない。

 症例はしばしば喘息や、それより頻度は低いが、慢性閉塞性肺疾患などと誤診される。本疾患に特異的な検査はないが、頸部のCT検査で狭窄が確認できることがある。

 これまでに狭窄の治療に薬や手術が用いられてきたが、本疾患がきわめて稀なことから、最も有効な治療法はわかっていない。

 Weinstein 氏は Hull さんに、自分はその症例を経験したことはないが彼女が声門下狭窄ではないかと疑っていると告げた。彼がCT検査の依頼を見たとき、それが肺のCTであり頸部でなかったことに気付いたため、介入してその依頼を変更させた。さらに彼は Hull さんを、声門下狭窄の治療を専門としている Penn’s Lung Center のインターベンショナル呼吸器科の医師に紹介した。Hull さんによると、Penn では年間に約10症例を診ていると言われたという。

 CT検査では Weinstein 氏が疑っていた所見、すなわち Hull さんの気管の狭窄が示された。その呼吸器科医は診断を確定した。Hull さんによると「実際のところ私はストローを通して呼吸をしていたのです」と彼が言ったという。「しかし、原因が何かを告げられたことは大変な安心となりました」

 一ヶ月後、Hull さんは気管拡張術を受けた。これには、しばしばバルーンを用いて気道を拡張させる方法が用いられる。さらに重篤なケースや拡張術に反応しない例では、患部を切除して気管を繋ぎ合わせる細心の注意を要する難しい手術が必要となる可能性がある。患者には複数部分の拡張を要する人もいれば、単一の手技のみでよい人もいる。

 「頸部での狭窄が強ければ強いほど、拡張が困難となります」と Weinstein 氏は言う。「そうなると切除が必要となりますが、それは大変大がかりな手術になります」

 Hull さんによると、今回の治療で彼女の気管は約90%の機能を取り戻しており、「私としては十分満足です」という。これまでのところ彼女に2回目の治療は必要ないが、本疾患ではそうなる可能性が続くことをオンラインの患者のグループから聞かされている。

 「最初の一年間はずっと、大きな不安がありました」と言う彼女は、受けた治療の有効性に思いを巡らしている。「こういった拡張術を12回受けた人がいることを知っています」

 Hull さんによると、正常より咳や咳払いの回数が多いことに加えて、風邪がなかなか治らないといったことがあるという。前回の風邪からの回復には3週間かかっている。

 Hull さんは、彼女の病気への対応に手を貸し、適正な専門医に導いてくれた友人に特に感謝しているという。

 一方、Weinstein 氏にとっては、今回の Hull さんの経験から、貫き通すことの大切さが例証されたという。

 Hull さんの様な症状を持つほとんどの人は喘息であり、それらの人たちは「治療を受け、快方に向かいます」。しかし、そうならなかったとき、「正解が得られるまで探索を続けることが重要なのです」と彼は言う。

 

特発性声門下狭窄症については

邦文には詳細な説明が少ないため、

米国 National Organization for Rare Disorders のHP

記載されている概説を以下に要約する。

 

声門下の気管狭窄は先天性に見られることがあるほか、

後天性に起こるものでは、気道感染、外傷、

ウェジェナー(Wegener)肉芽腫症などの自己免疫疾患、

外傷、気道熱傷、気管内挿管や気管切開、腫瘍や喫煙に

起因することが多い。

しかしまれに原因を特定できない気管の狭窄があり

それらはほとんどが声門直下から気管上部に起こるため

特発性声門下気管狭窄症と

呼ばれている(全声門下狭窄例の約15%)。

誤診例も多いため本症の正確な発症頻度は不明である。

海外ではまとまった症例が報告されているが、

本邦ではきわめて稀である。

北米のまとまったデータでは

患者は閉経前後の女性が大多数(平均年齢50.4%、女性98%、

白人95%)となっており、何らかの要因が関与していることが

疑われるが、詳細は不明である。

家族発生も認められていない。

発症の基盤にホルモンや膠原血管病が関わっていると

みられるが、元々女性の声門下が狭い傾向にあることに加えて、

咳嗽や胃食道逆流などによる機械的損傷が関与している

可能性も示唆されている。

環境因子や遺伝的要因、免疫学的要因も考えられているが

いずれも確証は得られていない。

 

症候としては、労作時の息切れ、嗄声、長引く咳、

高音の呼吸音などが見られ

息切れは年単位で緩徐に増悪し、

次第に安静時にも認められるようになる。

本症は原因が不明なため、診断には喘息、再発性の気管支炎、

慢性閉塞性肺疾患など類似した症候を示す疾患の除外が

重要となる。冒頭に挙げた声門下狭窄をきたす原因についても

調べる必要がある。

明らかな原因がなく肺機能検査で気道流量の減少、

換気量の減少があり、特徴的な症候が確認されれば

気管支鏡検査や CT や MRI で狭窄の存在を確認する。

なお病理組織学的にはほとんどの症例で

狭窄部の粘膜及び粘膜下層に線維化を伴う

非特異的慢性炎症が認められる。

 

軽症例に対してはただちに治療を行わず経過観察が

行われる。

症状が進行性で治療を要する症例に対しては、

侵襲の少ない治療法として、これまで

ステロイド薬の狭窄部への注入、

ステントやバルーンを用いた拡張術、レーザー治療

などが行われている。

しかしこれらの治療が行われても、

組織の炎症の活動性が持続するケースでは

再発が認められる。

こういった難治例や、症状の重篤なケースに対しては

狭窄病変を切除する外科的手術が行われるが侵襲は大きく、

術後に声の変化を来たすことがある。

現在、いまだ症例が少なく、どの治療が有効であるかの

エビデンスはないため、今後の臨床研究の結果が待たれる

ところである。

 

きわめて稀な疾患ではあるが、

喘息と誤診されたまま漫然と治療が続けられることがないよう

きっちり診断することが重要である。

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

2017年4月新ドラマ

2017-03-09 23:21:15 | テレビ番組

最初に 2017年1月クールのドラマを総括する。

 

“腐っても鯛”のキムタクドラマ、

なりふり構わぬキムタク・ファースト攻勢で

何とか面目躍如、

皆、ホッと胸をなでおろしたことだろう。

 

全くの低レベルだった1月クールの各ドラマについて、

3月5日放送分までの

平均視聴率[関東地区・ビデオリサーチ社調べ]上位から

順にコメントしてみる。( )内数字は平均視聴率

 

相棒(15)』(1月以降放送分の平均:15.15%)水曜21時 テレビ朝日系

根強いファンがいるためか安定した視聴率をキープだが個人的には全く視聴意欲が湧かなかった。

 

A LIFE~愛しき人~』(14.32%)日曜21時 TBS系

元SMAP の木村がアメリカ帰りのチョーカッコいいスーパー外科医・沖田一光を演じ、堅実に難手術を成功させる、キムタクの、キムタクによる、キムタクのためのドラマ。が、これって医療ドラマでもなく恋愛ドラマでもなく、言うなれば、“孤高ヒーロー”ドラマ?総合医療監修はあの天野篤教授とのことだが、医療考証はお粗末極まりない。スーパー外科医が、論文やアトラスを床に広げて『何か手術法があるはずだ』…。うーん、笑うしかない。解散後もキムタクはこれまで通りの路線を突き進む、との覚悟がよく伝わったドラマだった。

 

東京タラレバ娘』(11.96%)水曜22時 日本テレビ系

「〜できタラ」「〜できレバ」と言い続けて崖っぷちの30歳を迎えた3人の独身女性たちの恋愛事情。単に男に遊ばれただけかもしれなかった一夜の関係も、2番目の都合のいいカノ女として元カレとズルズル続ける関係も、妻子持ちとわかっていながら離れられない関係も、この3人の間では“第4出動”ですべて明け透けに報告。親友といえどもさすがに隠したいこともあると思うのだが…。そのあたりの感覚はオッサンのワタクシには全く理解できず。それと再々出てくる『タラ』と『レバ』のCGキャラクターの登場や、胸にグサリと刺さったりパンチをくらうCGなど、それってホントに必要だろうか?アラサー女子のリアルドラマというからには、もっと『うーん、あるある』ってな展開にしてほしかった(てか、オッサンには共感無理無理)。

 

嘘の戦争』(11.37%)火曜21時 フジテレビ系(関西テレビ)

幼い頃に家族を殺された主人公が、犯人たちに復讐すべく天才的な詐欺師となり、犯人たちに迫っていく仇討ちサスペンス。それにしても主役の草彅剛のポケットに両手を突っ込み身体を揺さぶる歩き方、何とかならないか。前シリーズの『銭の戦争』でも全く同じだった。それって演出?それはさておき、30年前の復讐に燃える主人公に共感はできるが、市村正親をはじめとする復讐対象が全く悪人に見えない点が致命的。さらにダマして罠に陥れるやりかたも非常に稚拙で行き当たりばったり。そもそも一度見たら忘れられない特異な顔した水原希子が詐欺仲間というのは大失敗。視聴者をうならせるようなダマシのテクニックを期待していただけに残念。これではキムタクとのガチンコ勝負、歯がたちそうにない。

 

就職家族~きっと、うまくいく~』(9.57%)木曜21時 テレビ朝日系

平穏な生活を送っていた家族が、あるきっかけから一家揃って就職活動をすることとなり、就活を通じてバラバラになりかけていた家族の絆を取り戻していく。主演の三浦友和と息子役の工藤阿須加はそれなりに頑張っていたとは思うが、ホストクラブにはまる妻役の黒木瞳が何を考えてるのか理解不能。黒木の演技が下手なのか、そういう設定なのか?娘役の前田敦子のひっくり返る声も聞くに堪えない。今回のクールにおいては異色のドラマだっただけに、女性陣さえ良かったら、と思ってしまうのである。

 

スーパーサラリーマン佐江内氏』(9.42%)土曜21時 日本テレビ系

藤子・F・不二雄が手がけた大人向けSF漫画『中年スーパーサラリーマン佐江内氏』の実写化。謎の男からスーパーマンの能力を引き継いだ中年サラリーマンが正義のために活躍する。前半はこんなエピソードで1クールもつのかと心配したが、結局はこのドラマにストーリーはあまり意味は持たなかった。視聴率は伸びなかったが、週末に単純に笑えて、個人的には今クール一番だったドラマ。鬼嫁役の小泉今日子と娘役の島崎遥香、その性格の悪さがよく滲み出ていて、また佐藤二朗の意味不明の会話もナンセンスに花を添えた。監督・福田雄一ワールド、それなりに楽しめた。

 

視覚探偵 日暮旅人』(9.42%)日曜22時30分 日本テレビ系

五感のうち視覚以外の四つの感覚(聴覚、嗅覚、味覚、触覚)を失った主人公が、感情や痛みなど、目に見えないモノを“視る”という能力で事件を解決していく。解説が不十分で、SP版を見ていなかった人はなかなか入り込めなかったのでは。登場人物の複雑な関係が全く理解できず。というわけで、初回を見終わった時点で脱落。視聴率も伸びず。堤幸彦ワールド、連戦連敗である。

 

下克上受験』(8.51%)金曜22時 TBS系

中卒の父と偏差値41の娘が受験塾にも行かず二人三脚で最難関中学を目指した“奇跡の実話”のドラマ化。ダメな父親自身が猛勉強し娘に教えようとする姿を阿部サダヲが好演するのだが、ホントにこれ、実話ノンフィクションなのか。懸命に勉強して実力以上の学校に合格したとしても、その後が心配になってしまう。一般社会に対して安易にお受験を推奨してしまうような内容。入試がすべてではないことも是非伝えていただきたいものだ。

 

カルテット』(8.40%)火曜22時 TBS系

それぞれが秘密を抱える30代男女4人が織りなすヒューマンサスペンス・ラブストーリー。坂元裕二お得意の、一見他愛もない会話に伏線があるパターン。何話か進んで初めて“あゝそうだったのか”となる。記憶力の良い人は何てことないのだろうが、一般ピープルはなかなか付いていけない。ドラマ視聴がむしろストレスになるのではないか?そのあたりが視聴率が伸び悩んだ原因だろう。ちゃんと楽しもうとするなら録画が必須、巻き戻して再吟味する覚悟が必要かも。

 

嫌われる勇気』(6.71%)木曜22時 フジテレビ系

アドラー心理学を100%体現できる“嫌われる勇気”を持った主人公の女性刑事が難事件を解決する。毎回、彼女とコンビを組む青山年雄(加藤シゲアキ)が心理学教授・大文字哲人(椎名桔平)からアドラー心理学について解説を受けるのだが、視聴者には事件とアドラー心理学との関係がさっぱり。挙句の果てに、『日本アドラー心理学会』から、本ドラマにおけるアドラー心理学に対する見解が学会における一般的理解と著しく異なっていると抗議があったとか。視聴者としては別にアドラー心理学を持ち込まなくても、普通の刑事ドラマで何ら問題ないように思うのだが…。『明確に否定します』の決めゼリフ、良かったんだけどなぁ。とりあえず、『嫌われる勇気』を持って果敢に主役を演じた香里奈には賛辞を送りたい。

 

奪い愛、冬』(6.20%)金曜23時15分 テレビ朝日系

鈴木おさむによるオリジナル脚本で“奪い合う恋愛”=“奪い愛”が描かれたドロドロなドラマ。レイトドラマとはいえ、初回から濃厚なラブシーンがふんだんに登場(ちょっと度を越している感も)。主人公に共感できないドラマはなかなか視聴しづらいところである。それと榊原郁恵ってあんなに演技下手だったっけ?というわけで鈴木おさむのお寒いドラマは初回でリタイア。

 

突然ですが、明日結婚します』(6.88%)月曜21時 フジテレビ系

バリバリのキャリアウーマンだが結婚し専業主婦になることを熱望する主人公が、価値観が合わない以外はすべて完璧という結婚否定男とバトルを繰り広げながら次第に惹かれ合うようになり恋愛モードに突入していくというラブストーリー。西内まりや、山村隆太の演技力云々の前に、見る気を失うシチュエーションと展開。結婚、結婚と大騒ぎすればするほど視聴者はひいてしまいそう。そもそも西内まりや演じる主人公が、カレ氏にふられ、婚活もことごとく失敗、あげくの果て意味不明に専業主婦にこだわるなど、全く説得力なし。月9史上最低視聴率も納得のドラマである。

 

大貧乏』(5.05%)日曜21時 フジテレビ系

小雪演じるシングルマザーが権力者の陰謀や社会の理不尽に立ち向かっていく奮闘劇。残念ながら、主人公の小雪が一文無しの“大貧乏”にまったく見えなかった。どうでもいいシーンで過剰な演出を施すくらいなら、貧乏らしさを徹底してほしかった。やり手弁護士の伊藤淳史とのコンビも違和感多すぎ。あまりのひどさに、裏で喘いでいたキムタクドラマが完全に息を吹き返した。ジャニーズ存続に大きく貢献したドタバタドラマ。

 

 

それでは、ここから

4月からの新ドラマを簡単に紹介する。

 

 

フジ月9 4/17~ 『貴族探偵』 相葉雅紀(嵐)、武井咲、生瀬勝久、中山美穂、井川遥、滝藤賢一、松重豊、仲間由紀恵(特別出演)、他

今クールのフジ月9は前クールと異なり早々に豪華キャストを押さえた鉄板ネタ!なはずなのだが、相葉雅紀主演ではちと心許ない?ミステリーを解決するドラマではあるらしいが、“主人公が推理をせずに謎を解いていく”のだとか。原作は麻耶雄嵩(まやゆたか)の本格推理小説『貴族探偵』『貴族探偵対女探偵』(ともに集英社文庫)。相葉雅紀演じる主人公は年齢、家族、学歴、住所、さらには本名まで不明。自分のことを貴族と名乗り、探偵を趣味にしている青年で『貴族』『主』『御前』などと呼ばれている。働いている様子はないが、身なりは常にオシャレ、言動は紳士的でレディファーストを心がけ、一方で貴族の自覚を強く持ち、権威に頓着することがなく常に泰然としている。事件に際しては警察上層部への働きかけにより、現場の刑事・鼻形雷雨(生瀬勝久)もしぶしぶ捜査への関与を認めざるを得ない。しかし、捜査、推理をするのは彼ではなく、彼を取り巻く召使いたちだった。「推理などという雑事は使用人に任せておけばいいんですよ」と言い放ち、事件関係者の女性と会話を楽しみ、遊びに興じている間、絶対的な忠誠心を持つ執事の山本(松重豊)、メイドの田中(中山美穂)、運転手の佐藤(滝藤賢一)の3人が現場分析、証拠集めなどを行い捜査を開始する。そんな貴族たちと、頻繁に同じ事件現場に居あわせ、競うように謎に向き合うのが探偵の高徳愛香(武井咲)。喜多見切子(井川遥)という女性探偵を師匠と仰ぎ、彼女に憧れて探偵になったという愛香は駆け出しの新米だったが、探偵という職業に人一倍の誇りと信念を持っている。このため貴族のやり方には反感をもち、現場を奔走し推理を積み重ねて貴族よりも先に謎を解こうとする。方や、推理や捜査は人任せにし、のらりくらりとしている貴族だが、実は深い洞察力を持って動く人物だった。どうも『謎解きはディナーのあとで』なテイストのようで、風変わりな主人公は結構な難役だと思われるが、果たして相葉にこの役が務まるだろうか?

 

 

フジ(関西テレビ)火9 4/11~ 『CRISIS~公安機動捜査隊特捜班』 小栗旬、西島秀俊、田中哲司、新木優子、野間口徹、長塚京三、飯田基祐、他

原作・原案は金城一紀の『SP 警視庁警備部警護課第四係』。金城は『BORDER 警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係』や『GO』の作者でもある。本ドラマは警察ドラマといいながら国家を揺るがす重大な事件に立ち向かう男たちの活躍が描かれる。テロリスト、政治家、新興宗教、軍事スパイなど深刻な脅威と対峙する。基本は1話完結型のストーリー展開となっている。小栗旬演じる主人公の稲見朗(いなみあきら)は元自衛隊員で考案起動捜査隊特捜班の捜査員。時に周囲の想像を超える派手な立ち回りで犯人を制圧する。一方、西島秀俊が演じる田丸三郎は稲見と同じ特捜班に所属する真面目で常に冷静沈着な捜査員。タイプは異なるが高い格闘スキル、判断力、正義感を持つ二人がフィリピンの武術『カリ・カリシラット』を使って激しいアクションシーンを繰り広げる。小栗旬のカッコ良さを前面に押し出すアクションドラマのようである。構想5年ということだが関テレ制作ということなので過度な期待は禁物?

 

 

TBS 火10 4/18~ 『あなたのことはそれほど』 波留、東出昌大、鈴木伸之、仲里依紗、他

原作は『FEEL YOUNG』(祥伝社)に連載中の、いくえみ綾のコミック『あなたのことはそれほど』。不倫ドロ沼ラブコメディ。現実的判断によって2番目に好きな男性と結婚してしまった主人公が、1番好きだった男性と再会。相手が妻帯者と分かりながらもドロ沼に溺れていく。二組の夫婦の結婚生活に“嫉妬”や“疑惑”が渦巻く大人の四角関係が描かれる。眼科クリニックで医療事務として働く主人公・美都(波瑠)は、患者として来ていた渡辺涼太(東出昌大)に交際を申し込まれる。涼太は真面目で穏やか、優しい人間で、食事の趣味も合い、なにより美都を一番に考えてくれ、美都自身も居心地の良さを感じることができた。しかし美都が1番好きだったのは中学の頃好きだった有島光軌(鈴木伸之)だった。有島は美都に別れを告げることなく引っ越してしまったが、美都は今でも彼に似た男性を見つけるとつい目で追ってしまう。そのためこれまで美都は有島と似た男とばかり付き合ってきた。しかし、占い師からも「2番目に好きな人と結婚したほうが幸せになれる」と言われた美都は涼太との結婚を決意。多くの人たちから祝福を受け幸せな結婚をしたのだが…。ある日美都は、飲み会の帰り道に偶然ずっと想い続けていた有島に再会する…。それが、ドロ沼の四角関係の始まりだった。浮気をする夫を手のひらで転がす有島の妻・麗華を仲里依紗が演じる。今どき不倫ドラマは視聴率が獲れないと思うのだが、他にネタがないんでしょうか。

 

 

テレ朝水9 4/12~ 『警視庁捜査一課9係(12)』 渡瀬恒彦、井ノ原快彦、羽田美智子、津田寛治、吹越満、田口浩正、原沙知絵、中越典子、竹中直人、中村俊介、他

2006年4月に始まった“9係”も早12年目で、今クールはシーズン12となる。これまでのレギュラー陣に加えて、今回は新たに加納倫太郎(渡瀬恒彦)と過去に因縁を持つ世界的な法医学者・黛優之介として竹中直人が加わる。さらにシーズン2で登場した浅輪直樹(井ノ原快彦)の恋敵・園田俊介役の中村俊介がセミレギュラーとして加わるとのことである。御年72になる渡瀬がいつまで現役の警部役を務めあげるのか?さすがに苦しくなってきた感がある。

 

 

日テレ水10 4/12~ 『母になる』 沢尻エリカ、小池栄子、板谷由夏、藤木直人、風吹ジュン、浅野和之、高橋メアリージュン、藤澤遥、望月歩、中島裕翔(Hay!Say!JUMP)、道枝駿佑(関西ジャニーズJr)、他

3人の未婚女性が登場した『東京タラレバ娘』に続いて今度は3人の母親の葛藤を描くヒューマンドラマ。主人公の柏崎結衣(沢尻エリカ)は愛する夫・陽一(藤木直人)と息子に囲まれて幸せな人生を過ごしていた。しかし息子が3歳になった幼稚園のある日の帰り道、結衣が繋いでいた手を離しほんの一瞬目を離した隙に息子が誘拐されてしまう。その後息子は戻ることなく家族は崩壊し結衣は夫と離婚、友人の西原莉沙子(板谷由夏)に励まされながらなんとか一人で生きていた。そんな莉沙子の方は良い母親になれないと悩み自身の子育てに疑問を感じていた。誘拐から9年後、結衣は13歳になった息子・広(道枝駿佑)と再会する。どうしても母になりたかった門倉麻子(小池栄子)によって育てられてきたのだった。果たして結衣と息子は、空白の9年間を埋められるのか?母になるとはどういうことなのか?3人の女性が母親とは何かを巡って葛藤する姿が描かれる。沢尻エリカもついに母親役か…。

 

 

テレ朝木9 4/20~ 『緊急取調室2』 天海祐希、田中哲司、速水もこみち、鈴木浩介、大倉孝二、でんでん、他

2014年1月クールで放映された井上由美子によるオリジナル脚本刑事ドラマの第2シーズン(途中 2015/9/27 に単発でドラマスペシャルあり)。第1シーズンの平均視聴率は12.9%とそこそこの数字。なお、第2シーズンもレギュラー陣に若いキャストのいないオバサン、オッサン中心の地味~なメンバーがほぼそのまま続投らしい。違うのは、2016年5月に取り調べの録音録画(可視化)を義務付ける『刑事司法改革関連法案』が可決したこと。“落としのプロ”“尋問のエキスパート”・真壁有希子(天海祐希)が可視化設備の整った特別取調室の中で犯人と目される容疑者と心理戦を繰り広げる。第2シーズンのテーマは『普通の人間が一番怖い』。一線を越えてしまった普通の人々の“裏の顔”を暴いていくらしい。真壁の所属する『緊急事案対応取調班(通称・キントリ)』のメンバーは第1シリーズとほぼ同じオッサン集団。キントリの管理官・梶山勝利に田中哲司、キントリメンバー・菱本進にでんでん、同じく中田善次郎に大杉漣、小石川春夫に小日向文世、警視庁刑事部部長・磐城和久にドラマスペシャルから出演の大倉孝二、警視庁捜査一課一係“もつなべコンビ”の一人で係長の監物大二郎に鈴木浩介、もう一人の渡辺鉄次に速水もこみち。よくこれだけオッサン俳優を招集したものである。こうなると若いキャストは犯人役のゲストに期待するしかない?

 

 

フジ木10 4/13~ 『人は見た目が100パーセント』 桐谷美玲、水川あさみ、成田凌、町田啓太、鈴木浩介、室井滋、他

桐谷美玲が『女子力ゼロの理系女子(リケジョ)』役。原作は『BE・LOVE』(講談社)で連載中の大久保ヒロミのコミック『人は見た目が100パーセント』。主人公の城之内純(桐谷美玲)は、製紙会社に勤務する真面目で見た目はさえない理系女子の研究員。『自分に自信がない』『男性にモテたことがない』『ガールズトークが得意ではない』『メイクやおしゃれもほとんどしない』『イケメンや美女には目も合わせられない』『自分の容姿を褒められたことがない』と女子力ゼロ。研究に没頭し、「女子力」や「美」に背を向けた人生を歩んできたばかりに、おしゃれ偏差値が最低レベルになった女性。ところがある時、自分は『女子』ではなく『女子モドキ』なのかもしれないということに気がつき、研究室の同僚女子2人と一緒に、流行のメイク・ファッション・美容など『美の特別研究』を始める。しかし、新しいファッションの研究のためにおしゃれなファッションビルに入ると、慣れないまばゆい空間に呆然として貧血を起こして倒れてしまうなど、とにかく前途多難。果たして、彼女たちは女性たちが求める“美”を自分たちのものにして『ステキ女子』になれるのか?そして、イケメン男子との素敵な恋の機会は訪れるのか?自分を見つめ直し、新しい自分を見つけてより輝こうと努力するリケジョたちの奮闘ぶりが描かれるラブコメディ。主演の桐谷美玲がどれだけダサい姿で登場するのか?女子力ゼロと言われても無理があるのでは?

 

 

TBS金10 4/14~ 『リバース』 藤原竜也、戸田恵梨香、市原隼人、玉森裕太、小池徹平、三浦貴大、門脇麦、YOU、志賀廣太郎、片平なぎさ、武田鉄矢、他

原作は湊かなえの同名小説。タイトルのリバースは、英語の reverse、これは “逆”“反転”の意味だけでなく rebirth“再生”“復活”をも表しているという。視聴者の目線を毎回“リバース”させ、事件や事故の真実を“反転”するミステリーであり、亡くなった親友を軸に登場人物たちが友情や絆を“再生”させていく物語なのだとか。友情や葛藤、贖罪に向き合う現代の若者たちの姿が描かれる。事務機器メーカーに勤める32歳の深瀬和久(藤原竜也)は有名大学を卒業しながらも地味で、つまらないほど普通の人生を送ってきた。そんな彼が唯一くつろげる場所として通っていた“クローバー・コーヒー”で一人の女性・越智美穂子(戸田恵梨香)と出会い、やがて付き合うようになる。その矢先、その美穂子に『深瀬和久は人殺しだ』と書かれた告発文が送りつけられてくる。実は10年前の冬、深瀬が、大学のゼミ仲間である広沢由樹(小池鉄平)、谷原康生(市原隼人)、浅見康介(玉森裕太)、村井隆明(三浦貴大)、と村井の妹・明日香(門脇麦)で行ったスノボの旅行中に広沢が不審な事故死を遂げていたのだ。しかしこの事故には隠された重大な『秘密』があった。告発文は深瀬だけでなく、谷原、浅見、村井にも送られており、彼らに次々と事件が襲いかかる。深瀬は10年前の秘密に向き合うことを決意、隠された罪と真相、そして脅迫犯の正体が明らかにされていく。このほか、出演者には、当時、広沢の死を事故ではないと直感した刑事・小笠原に武田鉄矢、息子の死をいまだ受け入れられない広沢の母親・昌子に片平なぎさがキャスティングされている。結構豪華なキャストで TBS としては気合の入った作品。なお、ドラマでは原作の結末後もオリジナルに描かれるという。

 

 

テレ朝金 11:15(金曜ナイトドラマ) 4/21~ 『女囚セブン』 剛力彩芽、山口紗弥加、トリンドル玲奈、平岩紙、橋本マナミ、木野花、安達祐実、他

プライムタイムからは消えたものの深夜ドラマでしたたかに生き抜いている剛力彩芽が今回は女囚役を演じる。『民王』の西荻弓絵によるオリジナル脚本。京都の芸妓・神渡琴音(かみわたりことね)(剛力彩芽)は酔っ払って寝ていた間に仲間の芸妓が殺され、状況証拠から殺人罪で女子刑務所に放り込まれる。そこでは女たちが女囚の頂点を巡り壮絶なバトルを繰り広げていた。そこで一癖も二癖もある女囚たちにいじめられ、時には命まで狙われるが、舞妓・芸妓の厳しい世界で鍛えられてきた琴音はひるむことなく、その優れた語学力、超地獄耳、合気道、怪力を駆使し、持ち前の腹黒さ、したたかさで切り抜けていく。魑魅魍魎が跋扈する刑務所という異世界の中でトップを目指す琴音の奮闘ぶりが描かれるが、並行して、なぜ琴音が無実の罪をかぶり、刑務所に入れられることになったのかという謎も次第に解き明かされていく。なおタイトルの『女囚セブン』は琴音を含めた7人の女囚を表しているとか(“女性セブン”とは関係なし)。女たちのサバイバルゲームが繰り広げられていく。しぶとい剛力が京都弁で本領発揮?

 

 

日テレ土10 4/15~ 『ボク、運命の人です。』 亀梨和也(KAT-TUN)、木村文乃、山下智久、他

『嵐にしやがれ』との枠交換で、日テレ土曜ドラマが今クールから1時間ずり下がることになる。本ドラマは“運命の恋”をテーマにした、一昔前の月9で見たような恋物語。お互い全くの見ず知らずだが、30年もの間、幾度となくすれ違いをしてきた男女の恋を描くラブコメディ。亀梨、山下が“野ブタ。をプロデュース”以来12年ぶりとなるドラマ共演。まもなく30才を迎えようとする会社員・正木誠(亀梨和也)と晴子(木村文乃)は、幼い頃から何度も奇跡のようなすれ違いを重ねていた。それは小さな頃に行った海水浴場だったり、大学受験の会場だったり、今年の初詣の神社だったり…。しかし二人は、お互い顔も名前も一致していなかった。そんな時、誠の目の前に『自称・神』と名乗る謎の男(山下智久)が現れ、『あなたたちは絶対に恋をしなければならない“運命の二人”だ』と告げる。そして、誠は、ほぼ初対面の晴子を呼び止めて声をかけた。『こんにちは。――ボク、運命の人です』。誠はあっさりと晴子にフラれてしまい最悪の出会いとなってしまうのだが、そこから最大の“運命”の物語がスタート、晴子を運命の人と信じる誠は告白をし続けることになる。“プロポーズ大作戦”で三上博が演じた“妖精”のような役で山ピーを無理やり捻じ込んだ感じだが、今や人気落ち目の、亀と山P が過去の栄光(『修二と彰』)を再びと狙うジャニーズの仕掛けがプンプンただよう作品である(ドラマ主題歌も担当するとか)。

 

 

NHK日8 継続 大河ドラマ『おんな城主 直虎』 柴咲コウ、杉本哲太、財前直見、前田吟、春風亭昇太、宇梶剛士、吹越満、三浦春馬、貫地谷しほり、菅田将暉、高橋一生、でんでん、筧利夫、柳楽優弥、市原隼人、小松和重、浅丘ルリ子、阿部サダヲ、菜々緒、ムロツヨシ、和田正人、苅谷俊介、小林薫、山口紗弥加、光浦靖子、田中美央、矢本悠馬、寺田心、他

序盤は主人公・おとわ役のこまっしゃくれた子役と柴咲コウとのギャップが大きすぎて、同一人物とはとても思えず違和感大。物語もこれまでのところローカル過ぎて戦国時代の緊張感はゼロ。まあ、これから城主・直虎となって面白くなってくることに期待したい。

 

 

TBS 日9 4/16~ 『小さな巨人』 長谷川博己、岡田将生、春風亭昇太、安田顕、香川照之、他

刑事ドラマ。捜査一課から左遷されたノンキャリ刑事と、キャリアながら捜査一課長を目指す若手刑事が捜査を巡って対峙していく完全オリジナル脚本ドラマ。警視庁と所轄の確執や警察内部の戦いが描かれる。警視庁捜査一課強行班1係長のエリート刑事・香坂真一郎(長谷川博己)はこれまでの活躍ぶりから、“未来の捜査一課長間違いなし”と言われていたが、取り調べの際に一つのミスを犯してしまい所轄へと左遷され出世街道から外れてしまう。挫折を味わった香坂だったが、所轄でどのような小さな事件でも正義を信じて事件解決に挑む同僚たちの姿を見ながら“警察”という名の巨大組織の中で、己の正義を信じて犯人らと対峙していくことになる。一方、岡田将生演じる山田春彦は警視庁の刑事。警察庁次官から内閣官房副長官という官僚のトップに上り詰めた人物を父に持つ。山田自身も東京大学法学部を卒業したが、将来ある未解決事件の捜査指揮をとるために現場の総指揮官である捜査一課長となることを目指し、警察庁ではなく警視庁に入庁した。香坂とは『警視庁 vs 所轄』という形で対峙することになる。また、香坂の異動先の所轄で同僚となる現場叩き上げの刑事・渡部久志を安田顕、前捜査一課長で所轄署の署長・三笠洋平を春風亭昇太が演じる。三笠は、現・捜査一課長の小野田義信(香川照之)とは操作理論を異にすることから、お互いが激しく嫌悪し対立する。そのほか、駿河太郎、手塚とおる、木場勝己、竜星涼らの出演が決まっている。事件解決の警察ドラマというより、横山秀夫作品のようなドロドロした警察ワールドが描かれるのか?

 

 

フジ 日9 4/23~ 『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』 観月ありさ、藤ヶ谷太輔、高嶋政宏、新川優愛、上川隆也、他

原作は2012年に小説投稿サイト『エブリスタ』に掲載された太田志織による同名web 小説で漫画版も『ヤングエース』(KADOKAWA)に連載中。骨好き変人お嬢様が骨知識を用いて難事件を解決する。主人公・九条櫻子(観月ありさ)は、美人で名家の令嬢でありながら、“三度の飯より骨が好き”という常人には理解しがたい嗜好を持ち、日本に数名しかいない骨格標本を組み立てる“標本士”。博物館や研究・教育機関からの依頼を受け、自宅のアトリエで動物の骨を組み立てる仕事である。そんな櫻子には、外見は美しいのに口調は男勝りでぶっきらぼう、空気を読めないところがあり、他人の目や周囲の評判などはお構いなし。歯に衣着せぬ際どい発言で、周りをドン引きさせるクセ者的キャラクター。高校時代の恩師から標本を学び、大学時代は、教授で監察医でもあった叔父のもとで法医学を学んできた。類まれな頭脳と洞察力を持ちながらも、法や行政のためにそれを使う気はさらさらなく、自分の琴線に触れるものにしか興味を示さない。検視もできるが、それを本職にはせず、自分が一番好きな『骨』を扱う職に就いたのである。しかし、難事件に遭遇すると『死体は雄弁』と語り、目の前の死体や事件現場をくまなく観察分析し、真実を一つひとつあぶり出していく。すべてを理解し明らかにするための最も重要な『芯』を、櫻子は『骨』と呼び、「何事にも必ず“骨”がある。それが通れば、真相はおのずと見えてくる」という考え方で事件を解決に導いていく。謎解きミステリーの様だが、令嬢役に観月ありさとは、ちょっと無理がある気がする。

 

 

日テレ 日10:30 4/23~ 『フランケンシュタインの恋』 綾野剛、二階堂ふみ、柳楽優弥、川栄李奈、他

フランケンシュタインと人間とのラブコメディ。現代の日本を舞台に、往年の怪物・フランケンシュタインの恋物語が描かれる。100年前、ある事件をきっかけに生み出された怪物(綾野剛)は、100年間、人間から身をひそめ、孤独に生きてきた。永遠の命と人並み外れた力を持つ彼だったが、人間が捨てたものを拾い集め、ラジオを聞いて人間の生活に憧れる日々を過ごしていた。ある日、怪物は若いリケジョ大学生・津軽継実(二階堂ふみ)と出会い、彼女に恋をしてしまう。継実もまた相手が怪物だとは気付かず、次第に彼に惹かれていく。しかし、怪物はある秘密により人間に触れることができなかった。継実と同じ研究室の大学院生で、怪物・継実との三角関係に揺れる稲庭聖哉を柳楽優弥が演じる。不老不死の怪物が恋を知り、友情を知り、人間の世界を知っていく、歳の差100才のラブストーリーが展開される。悲しい結末を迎えそうな、そんな予感のするドラマ。これまでの土曜9時枠のSFコメディ専科がこちらに移動ということか?

 

 

相変わらず視聴意欲を掻き立てられない

お寒いドラマのオンパレード。

全体に刑事もの、謎解きものが多いのは、

大コケだけは避けたいということだろう。

キャスティングだけ見ると、

かなり気合いの入っているドラマは確かにある。

フジ月9、日テレ水10、TBS金10など、

相当前から有力な出演者を押さえていたように見える。

ただ最近のドラマはキャストが良くても

内容でこけるというパターンが多いので、

過度な期待はしないでおきたい。

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

その原因、明確にお答えします

2017-02-13 23:41:08 | 健康・病気

2月のメディカルミステリーです。

 

2月6日付 Washington Post 電子版

 

At 12, he had stopped growing. Doctors were stumped. The answer was in his gut.

12 才で彼の成長は止まった。医師らは困惑した。果たしてその答えは彼の腸にあった。

 

By Sandra G. Boodman,

 なぜ彼はあんなに疲れやすいのだろう、Jackie Mann さんは疑問に思ったが、それは初めてのことではなかった。彼女の3人の子供たちの真ん中の子である Evan 君は放課後の昼寝をするために自分の寝室にフラフラと向かうのだった。

 歳の割に小さいこの 12 才の少年はどこにいてもすぐに寝込んでしまうようだった:サッカーや体操に行く途中の車の中、学校から真っすぐに家に帰った午後、宿題をしている途中、さらに、小児科医に診てもらうために待っているときのこともあった。

 しかし、家族が生活しているカリフォルニア州オークランド郊外のやや鄙びた地域での週末には、Evan 君が明らかに活動的に見えると両親は感じていた。そして彼はほぼ問題なく魚釣りや、狩りや、ハイキングに出かけた。

 「彼が疲れたふりをしているのではないかと考えたりしていました」 Mann さんは、整形外科医である夫と 2010 年から始めるようになった Evan 君についての話し合いを思い出して言う。「彼は友だちに遅れないように付いていこうとしていました」

 

Evan Mann 君は 2014年に手術を受け、薬の定期的な点滴が始まってからはずいぶん成長した。現在17才になる彼は、身長 5フィート6インチ(168cm)、体重 122ポンド(55kg)になっている。

 

 しかし、Mann さんの心配は Tahoe 湖(タホ湖、カリフォルニア州とネバダ州の境にある)への旅行のあと増大した。この家族はそこでキャビンを借りていた。熱心なスキーヤーである Evan 君はスキーのコースを一周か二周、完走しようとしたが、疲れたと訴えてキャビンに戻り数時間眠ったのである。

 それからの18ヶ月間、Evan 君の疲れやすさは増悪し、成長は止まり、原因不明の微熱と関節痛に苦しむようになり、何人かの医師が彼の病気の原因を見つけ出そうとした。

 そして、2012 年1月に見つかった答えは驚くべきものだった。振り返ってみれば多くの手掛かりがあったと母親は言うが、そこには Evan 君の家族を含め、医師たちの判断を誤らせた煙幕もまた存在していたのである。

 「Evan には典型的な症状が見られなかったのです。事態が本当に悪化するまで断片のそれぞれがうまくつながらないということはあるものです」と母親は言う。

 

Genetics, or something else? 遺伝的なもの?それとも何か別な問題?

 

 Mann さんの最初の心配は、息子の疲れやすさではなかった。

 Evan 君が5年生のときに初めて、息子が異常に小さいことについて彼女は小児科医に尋ねた。しかし、その医師は、自分は小児科診療で基盤となる成長曲線の正当性を信じていないと Mann さんに告げて安心させていた。彼女の子供たちが全員小さいことから、遺伝形質の現れであると彼は指摘した。長距離ランナーで、かつては大学で体操選手だった父親は 5フィート6インチ(168cm)で、Mann さんは5フィート3インチ(160cm)である。

 小児科医のその安心の言葉にもかかわらず Mann さんは不安を感じていた。そして、Evan 君に疲れやすさが見られるようになったことに彼女は当惑した。その倦怠感はいくつかの放課後の活動をやめても続いた。2011年の春、Evan 君は、小児科医の診察を待つ長い時間に診察室のテーブルの上で眠り込んでしまった。

 そのとき Mann さんは医者をかえようと決意した。その医師は彼女の懸念をまともに受け止めてくれないと考えたからである。そのころ、Evan 君は体重 63ポンド(28.6kg)、身長 4フィート4インチ(132cm)で、同年の少年の平均値より、7インチ(18cm)低く、25ポンド(11.3kg)軽かった。

 「これは尋常ではないと感じました」と彼女は思い起こす。彼女はさらに Evan 君の繰り返す副鼻腔炎がアレルギーの結果であり、それが彼の成長を遅らせ、疲れやすさを引き起こしている可能性を確定するためにアレルギー専門医を見つけた。子供のころ彼は耳の感染症のために頻回に抗生物質を内服しており、やや大きくなってからは副鼻腔炎に対ししばしば薬剤が処方された。しかし精密検査ではアレルギーは見つからなかった。

 数ヶ月後、Evan 君は別の小児科医を受診した。Mann さんは、息子に性徴が見られず、2才年下の妹の Eliana ちゃんと同じように見えるということを話した。その医師は、とりわけ成長曲線を書いたあと、懸念を増大させた。Evan 君が少なくとも2年間成長していないことがその成長曲線によって示されたからである。

 その受診からまもなく、Evan 君は重症の蕁麻疹を発症し、炎症を抑えるために用いられる副腎皮質ホルモンである prednisone が数週間処方された。その変化は劇的だった:彼の活力や食欲が上昇したのである。グリルしたチーズを一度に半分しか食べられなかった少年がサンドイッチを二つ、食べられるようになっていた。「ここ数年で、彼は最高に元気でした」と Mann さんは思い起こす。

 しかし、学校が始まり Evan 君がステロイドの内服をやめると、疲れやすさが再び始まった。

 調子の良さそうに見える日もあったが、学校から帰ると昼寝をし、夕食を食べると再びベッドに戻り一晩中眠るといったような日もあった。

 親戚とのハイキングのとき、親戚の一人に内科医がいたため、Mann さんは Evan 君が発熱を繰り返しているのではないか、あるいはライム病ではないのかといった不安を打ち明けた。その親戚は懐疑的だった。「息子さんは勢い良く丘を駆け上がっている。私には彼はきわめて元気に見えるよ。彼の体温はどうなんだい」彼がそう言ったことを彼女は覚えている。

 Mann さんによると、体温計は使っていなかったが Evan 君の身体は熱っぽいと思っていたという。

 「おいおい、君は『mom-o-meter(ママ温計)』を使っているのかい」内科医はそうジョークを言った。彼は、Evan 君の症状日記とともに体温の記録を続けるよう彼女に助言した。

 Mann さんは実行した。そしてあるパターンに気づいた。Evan 君は3日かそこらおきに疲れに襲われているように思われた。そのような日の午後、彼はおよそ華氏101度(38.3度)となる発熱があり、しばしば、頭痛や関節痛を訴えた。時には軽度の下痢を認めることもあった。

 「かなりの発熱があると言うことが皆の関心を引いたのです」と Mann さんは言う。彼女が新たな小児科医に体温と症状の表を見せたところ、彼はすぐに小児感染症の専門医に Evan 君を紹介した。

 

Absolute certainty 絶対確実

 

 Evan 君の蕁麻疹、発熱、倦怠感は、環境的な原因を示唆しているように思われた。この家族は40エーカー(約16ヘクタール)の農場で生活をしており、そこには馬や鶏のほかいつくかの動物を飼っていた。また Mann 家はしばしばヨセミテなどの国立公園にハイキングに行った。そこは、2012年に流行し 3人が死亡したネズミが媒介する疾患、hantavirus(ハンタウイルス)感染症の発生地となっていた。Evan 君はリスを狩りして皮を剥ぐことを楽しんでいた。そして彼は繰り返しダニに咬まれていた。

 しかし、広範囲な検査で、ライム病やハンタウイルスだけでなく他の感染症も含めた多くの人獣共通感染症(動物から人へと感染しうる疾患)は除外された。

 この感染症の専門医は Evan 君を小児消化器科医に紹介した。

 2012年1月10日の初診時、その消化器専門医は Evan 君の指を見て、彼の口角に前からあったとみられる cold sores(ヘルペス)を確認し、少年の腹部を触った。10分も経たないうちに彼は Evan 君の両親の方に向き直った。

 「息子さんは Crohn’s disease(クローン病です)」そう彼が告げたのを Mann さんは覚えている。「間違いないと思います」

 Mann さんとその夫はショックを受けたが半信半疑だった。ひどい腹部の痛みや下痢が特徴的な深刻で治癒不能な慢性の自己免疫疾患であるクローン病はありえそうにはないと彼らには思えたからである。Evan 君にはごくたまに軽度の下痢があっただけだったからである。

 「どうしてそう確かに言えるのですか」そう尋ねたことを Mann さんは思い出す。その医師は明確な徴候を列挙した:まず、Evan 君の成長が妨げられていたこと。そして彼には、クローン病でよく見られる症状である両側の口角の慢性の cold sores が認められたこと。さらに彼の指先が棍棒状になっていたこと。さらに彼が Evan 君の右下腹部を押さえると、少年は痛みを感じたこと。いくつかの検査で異常に高い炎症の数値が示されたこと。また Evan 君はクローン病の治療の中心となっているステロイド剤を内服している間、顕著に改善していたこと、などである。

 さらに家族歴もあった:Evan 君の祖母と別の親戚の一人がクローン病と診断されており、他の近い親戚には類似疾患である潰瘍性大腸炎があった。Evan 君が幼いころ多くの抗生物質を内服していたこともクローン病のリスクを高めた可能性がある。そして最後に、Mann 家は Ashkenazi Jews(アシュケナジム系ユダヤ人)だった。この民族の子孫は中央ヨーロッパや東ヨーロッパに由来している;クローン病は、他の民族におけるより、アシュケナジム系ユダヤ人で頻度が高い。研究者らは最近、クローン病の発症リスクを高めるいくつかの遺伝子変異をアシュケナジム系ユダヤ人において発見している。

 2013年以降 Evan 君を治療してきた小児消化器科医の Sabina Ali 氏によると、本疾患は遺伝と環境の相互作用に起因すると信じられているが、小児と思春期で異なる様相を呈する可能性があるという。小児例ではしばしば、成人のクローン病で見られる古典的症状(主として、激しい腹部の痛みや頻回の下痢)を欠くため医師の診断を誤らせる可能性がある。

 「Evan 君には腸管以外の症状(extra-intestinal symptoms)が見られました」と Ali 氏は言い、さらに、極端な疲れやすさはめずらしく、いまだ原因不明の症状として二の次に考えるべきかもしれないと述べた。「こういった子供たちに消化管の問題があることが誰にもわからないまま他の領域の専門医のところへとそれていってしまう可能性があります」加えて、「この子供たちの中には、頻回に調子が悪くなったり熱を出すものもいます」発熱は感染症の徴候とみなされるが、実際にはそれは炎症の警告症状なのである。

 上部消化管内視鏡と大腸内視鏡検査で診断が確定した。Evan 君の病状の重篤さから、医師らは、炎症を起こしている腸の部分切除をするよう外科医に勧告した。

 2014年の手術以降、Evan 君はクローン病治療に一般的に用いられる薬剤 Remicade(レミケード)の定期的点滴を受けている。また栄養不足に対応するためにビタミンを摂取している。

 現在17才になる彼はかなり成長しており、母親によると、「この何年かでは最も健康な状態」だという。身長は 5フィート6インチ(168 cm)で兄より1インチ低く、体重は122ポンド(約55kg)となっている。彼は高校3年生となっていて、流域管理を勉強するために California university に進学したいと考えている。

 Evan 君がクローン病と診断されたのち、彼の妹も同疾患の検査を受けた。健康ではあるが、両親は彼女の小柄な体格は潜在する消化管の問題を反映しているのではないかと心配したからである。

 「彼女は現時点ではこの病気ではありません。身長は 4フィート9インチ(144.8cm)、彼女はただ単に背が低いだけです」現在15才の娘について Mann さんはそう語った。

 

クローン病の詳細については難病情報センターのHP

小児慢性特定疾患情報センターのHP を参照いただきたい。

 

クローン病は主として若年者に発症し、原因不明に

消化管に潰瘍や線維化を伴う肉芽腫性炎症性病変を生じる。

病変は口腔から肛門までの消化管のあらゆる部位に

発生し寛解と増悪を繰り返しながら進行する。

消化管の症状以外にも、発熱、栄養障害、貧血などの

全身症状や、関節炎、虹彩炎、肝障害などの全身性合併症が

起こりうる。

 

病因は単一ではなく、遺伝的因子のほか、

ウイルスや細菌などの感染、腸内細菌叢の変化、

食事の抗原などの環境因子が複雑に関与して、

免疫系の過剰反応が引き起こされ発症すると考えられているが

詳細な発症機序はいまだ明らかになっていない。

腸管の粘膜固有層に TNFαを産生する細胞が増加しており、

炎症性サイトカインの過剰分泌により炎症が惹起される。

成人発症例では CARD15(NOD2) 遺伝子の異常が

発見されているがこれは全症例の一部にしか確認されていない。

 

10才代後半から20才代での発症が多く、

男女比は 2:1。本邦でも患者は増加傾向にあるが、

人口10万人あたりの有病率は約27人で

欧米の約10分の1となっている。

20才未満での発症が約30%である。

成人発症に比べ、小児期発症はより重篤なケースが多く、

特に10才未満発症例はさらに重篤な傾向がある。

 

小腸、大腸、あるいはその両方に、縦走潰瘍、

不整形潰瘍やアフタ、特徴的な敷石像が形成される。

なおこれらの所見を欠く特殊型もある。

小児例の約6割は回腸病変である。

一般的な症状は腹痛、下痢、血便、体重減少、発熱で、

時に虫垂炎様の症状、腸閉塞、腸穿孔、大出血を呈し

発症することもある。

小児では摂食障害と食欲不振のため

診断時に 85%に体重減少が認められ、

15 ~40%に成長障害が存在する。

また思春期発来の遅延も認められる。

腸管外徴候として、

貧血、末梢関節炎、強直性脊椎炎、口腔内アフタ、

皮膚症状(結節性紅斑、壊疽性膿皮症など)、肝炎、

硬化性胆管炎、膵炎、腎結石、虹彩炎、ぶどう膜炎、

上強膜炎など多彩な症候が認められ、

肛門部膿瘍や瘻孔も15%程度に発生する。

また経過の長い症例では悪性腫瘍(大腸癌、小腸癌)の発生に

注意が必要である。

 

診断は、臨床症状や、炎症を示すCRP上昇や貧血などの

血液検査所見から本症を疑う。

内視鏡検査(上部消化管内視鏡、カプセル内視鏡、

大腸内視鏡)で縦走潰瘍、敷石像を確認する。

また生検標本にて病理学的に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を

同定する。

鑑別すべき疾患には、腸結核、腸型ベーチェット病、

非ステロイド性抗炎症薬による潰瘍、感性性腸炎などがある。

詳細は診断基準・重症度基準を参考にされたい。

病変の存在部位により、小腸型、小腸大腸型、大腸型に分類し

小腸大腸以外に所見が認められる場合、特殊型とする。

特殊型には、多発アフタ型、盲腸虫垂限局型、直腸型、

胃・十二指腸型などがある。

 

本症を完治させる根本的な治療法は現時点では確立されていない。

従って治療の目的は、病気の活動性(炎症)をコントロールして

寛解状態をできるだけ維持し、栄養障害を予防しながら

患者のQOLを高めることとなる。

治療には、炎症を抑え込む治療(寛解導入療法)と

再発を防ぐ治療(寛解維持療法)とがある。

炎症の抑制には

 5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤(ペンタサ)や

副腎皮質ステロイド薬が用いられる。

腸管に高度の狭窄がある場合や、広範囲に病変がある症例では

腸管の安静と食事抗原による刺激を回避する目的で

完全静脈栄養や経腸栄養が行われることがある。

小児例では経腸栄養剤による栄養療法の有用性が

確認されている。

難治例に対しては、抗TNFα受容体拮抗薬である

レミケード(infliximab)やヒュミラ(adalimumab)が

用いられるが投与に際し感染症の合併に注意が必要である。

寛解が得られたら寛解維持療法に移行する。

抗TNFα受容体抗体薬で寛解導入を行った場合には

そのまま投与を継続する。ただし同薬投与中の患者では

約30%の症例で治療効果が減弱する2次無効が起こると

されている。

免疫調整薬のアザチオプリン(イムラン)の併用で

治療効果が高まることが期待されるが、

悪性リンパ腫の発症リスクが高まることに注意が必要である。

なお、腸閉塞や高度の狭窄、穿孔、大量出血、中毒性巨大結腸症、

癌合併例などでは

外科的治療(大腸・小腸切除、人工肛門造設術)の適応となる。

クローン病患者の手術率は10年で70.8%、

一生涯ではほとんどすべての患者で一度は手術が必要になり、

再手術率も5年で28%と報告されている。

しかし、近年の薬物治療の進歩により、

将来的には手術率や再手術率が低下していくことが期待される。

現在の内科劇治療では、たとえ臨床的寛解が得られたとしても、

多くの患者で病気は緩徐に進行していると考えられているため

厳重な経過観察が重要と考えられている。

何はともあれ本疾患は若年時に発症し長期戦となることから

患者さんにとっては生涯にわたって大変な負担となる。

根治的治療法の早期の確立が強く望まれるところである。

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

地図を持たない世界で生きること

2017-01-26 18:30:26 | 健康・病気

渡り鳥たちの能力には遠く及ばないが、

人にはみな、体内にナビゲーションシステムが備わっている。

しかし、生まれつきそのシステムが機能せず、

“方向音痴”という言葉では片付けられないほどの

深刻な問題に悩む人たちがいるという。

そんな障害を抱える一女性のエッセイを紹介する。

 

1月22日付 Washington Post  電子版


I can’t follow a map or directions, and at 61 I still get lost and frightened.

私は地図や方角に従うことができない、そして61才になる今でも道に迷い恐怖を覚える

 

Mary McLaurine さんには発達性地誌的見当識障害という神経学的異常がある


By Mary McLaurine,

 

 自分に身の危険がないということはわかっていました。

 私は飼っていたビーグル犬の Otis と一緒に歩き始めたところからほんの数ブロックのところにいました。しかし、そんなことは理解していても何の役にも立ちませんでした;恐怖とアドレナリンが私の静脈を流れ、ひどく汗をかき始めました。そして私の脳の中の混乱が一層増大しました。自分がどこにいるのかわかりませんでしたし、周囲の状況が全く見知らぬもののように見えました。それはまるで自分が見知らぬ土地の真ん中に降ろされたかのようでした。どの方向に歩くとしても当てずっぽうにすぎませんでした:自分は行くべき場所に近づいているのでしょうか、それとも離れようとしているのでしょうか?

 住んでいた家の住所を書き留めていなかったので人に方角を尋ねることはできませんでした。携帯電話や GPS のナビゲーションはまだない時代です。幸運にも Otis に挨拶しに近づいてきた女性が、飼い主とその家を知っていたのです。彼女は親切にも私を連れて帰ってくれました。私たちがいた場所は家からほんの4ブロックしか離れていなかったのです。

 このできごとは私が13才の時のことで、自分が目的地にたどり着くのが他の大勢の人たちより難しいということはずっと幼いころからわかっていましたが、他の人について行きさえすれば問題はありませんでした。しかし、その経験から、自分にはどこか異常があるということを身につまされることになったのです。私の人生は永久に変わってしまいました。

 あの女性が偶然居あわせなかったらどうなっていたでしょうか?誰かの家のドアをノックして、警察に電話するためにそこの電話を借りるよう頼まなくてはならなくなっていたのでしょうか?警察には何て言ったいいのでしょう?もし、提供できる住所や説明がなかったら、どのようにして自分を戻してくれることをお願いできたでしょうか?

 私には developmental topographical disorientation(発達性地誌的見当識障害、DTD)があります。これは、自分の周囲の心象的な地図やイメージをかたち作ることができないことを意味します。大方の人たちと違って、私には体内コンパスがないのです。61才の今でも私は道に迷い、何十年も前と全く同じように、それは私を混乱させ恐怖に陥れるのです。

 「人は移動するとき、多くの情報を観察することによってそれを行うことができます。目印となる建物を見て、壁にぶつからないようにします」 そういうのは University of Calgary の認知神経科学の Giuseppe Iaria 准教授です。「動的情報の様々な処理作業があります。人はそれによって自分の周りにあるあらゆるものの認知地図を形成し、常に更新しているのです」

 脳の病変はしばしばこの位置確認の作業に影響を及ぼし、後天的地誌的見当識障害と呼ばれる障害を起こします。しかし、DTD を持つ私たちのような人では脳損傷の形跡は認められません。

 「言い換えると、脳には損傷がないのです。つまり自動車事故、脳腫瘍、あるいは脳梗塞などはありません」 DTD の診断を発展させ、これについて2009年に初めて報告した Iaria 氏はそのように言います。「彼らは、特定の能力を形成できていないのです。この障害を持つ人たちは、基本的に最も慣れた環境でも毎日迷ってしまい、生涯そんな感じなのです」

 Iaria 氏によると、DTD の人の脳は他の人たちの脳とは全く違った働きをするそうです。安静時の DTD 患者の脳検査では海馬と前頭前野灰白質との間の連絡が減少していることが示されています。この両領域は空間見当識に重要です。この2ヶ所はお互いに協調して機能しないとナビゲーション能力が障害されます。Iaria 氏によると、この障害は人口の2%に見られるとのことです。

 

この障害により、人は自分の周囲の心象的地図を形成できなくなる

 

 DTD は、自分のアパートの周辺の道がわからなくなったデンバーの Sharon Roseman さんについての2010年のドキュメンタリー映画 “Lost Every Day” の映画制作者 Michelle Coomber 氏によって有名になりました。

 Roseman さんは多重人格障害などいくつかの誤った診断を受け何年もの間自分の障害を秘密にしていました。彼女がついに兄に秘密を打ち明けたところ、彼は Iaria 氏と連絡をとれるよう尽力してくれました。以来、彼女のほかにも数百人の患者が多くの研究に参加し、それらすべての人たちの脳には脳梗塞など、脳、記憶、知能に対する障害がないことが結論づけられたのです。

 かつて運転を始めたとき自分の障害に適応しなくてはならなかったことを私は鮮明に覚えています。私は、パーティーやその他の会合に行くために、すぐ前の車に乗っている友人について行くか、同乗者となるしかありませんでした。運転するとき同乗者がいなければ、たとえ1マイル半離れた店に行くのでさえも恐怖を覚えていたのです。数時間戻れないこともしばしばでした。

 私は多くの時間を費やしたものですが、それは自宅から数マイル以内のところで完全に迷ったためでもあり、単純な方角にも従うことができない理由を人に説明しようとしたためでもありました。人は、全く、完全に迷うようなことがどうして起こりうるのか理解できませんでした。「自分がどこにいるかわからない?目印がわからないの?運転中注意してないの?地図が読めないの?」

 時に迷うことは誰もが経験することですが、それは、きわめて慣れている環境で完全に方角がわからなくなることとは全く異なるものです。どこにいるのかが分からなくなって片田舎の道路で非常に長い時間を過ごしたこともあります;あるとき、自分がどの州にいるのかさえわからないこともありました。

 バージニア州での緊急事態に急いで対応するため、午後10時にメリーランド州 Frederick の自宅を出て約60マイル離れた Alexandria に向かったことがあります。7時間後、ガソリンがごくわずかとなってしまった私は、道路端に立ち往生し停まってくれる誰かにすがるしかない状況になるのではないかと案じてパニックになりかけていました。しかし明け方にガソリンスタンドを見つけました。私は車を止め、自分がどこの州にいるのかを尋ねなければなりませんでした。私がいる場所は自宅から約200マイル西のウェストバージニア州 Elkins で、Alexandria からは遠く離れていたことがわかりました。正しい道へと私を戻すために係員が方向を走り書きしてくれたと思われる汚れたレシートを握りしめ私は丁寧に会釈しました。しかしそれらは何の意味もありませんでした。私は地図や書かれた方角に従うことができないのです。真昼になってようやく私は州間高速道路を見つけ出し、息子が目的地の近くの休息施設で私を出迎え無事到着したことを確認したのです。

 私は目的地に到達するのに必要な時間を計算する際“損失時間”を考慮に入れます。そして、GPS 装置がある現在でも確実に行き先にたどりつけるとは限りません。しばしば自分の衛星信号を失うと、それによって安心感も失われてしまうのです。現在、自分の電話や GPS 機器に何か起こるといけないので、私は家を出る前には常に目的地の住所を書き留め、行き先を誰かに伝えるようにしています。

 迷子になるかもしれないため、私が外のどこかで待ち合わせることをためらっていると、友人や知人はしばしば親切ぶって笑います。「道路のすぐ近くだよ!見逃すことはないよ:あの大きな赤い建物はちょうど角のところにあるから」 実際、 DTD の患者にとって、既に理解できなくなっている経路にさらに目印を加えることは事態をさらに複雑にさせるだけなのです。

 今、私は自身の障害の説明に迫られたとき例えを提供しています:それは、盲目の人に黄色い色を見るように言うことと似たものです。「目の前にあるでしょう、見損ねることはないでしょう:それは明るい黄金色ですよ!」 社会は盲目については容易に受け入れその本質を理解しています:つまり、その人はどれだけその色が明るくても見ることができないと。しかし、DTD についてはほとんど知られておらず、また、たいていの人たちが容易に脳内の認知地図でナビゲートすることができるため、その障害に対して “アホ” ではないかという 烙印が押されてしまいます。この障害と闘っている私たちはしばしば、不安、絶望、孤立、自信喪失などの感覚を持ち続けており、そのため自身の障害を他人に知らせようとしないのです。

 自分の子供たちは成人しており、忍耐強く、また理解があります。彼らは私の障害の深刻な本質や複雑さ、およびそれに伴う危険性を十分理解しています。彼らはそれを軽んじることなく、私が旅行するときには頻回に到着を報告するように求めてきます。

 DTD には治療法はありませんが研究は進行中です。他の DTD の人たち、特にその障害を持ちながら診断名が存在することに気付いていない人たちに手がさしのべられることを願って私は自分の話を広く共有できるようにしています。自分の障害について医学用語や診断名があること、そして必要性の高い研究の的となっていることに安らぎを覚えています。人に認知されることによって、私たちは、孤立、不安、自身喪失、絶望などの感覚から開放されるのです。

 いまのところ、人生をナビゲートするのと全く同じように道路をナビゲートしていくつもりです:シンプルに、そして率直に生き、常に代替の策を用意するようにと…。

 

明らかな意識障害、健忘症候群、認知症や

半側空間無視のような神経症状がないにもかかわらず

住み慣れた町で道に迷う症状を地誌的見当識障害という。

この障害には複雑な要因が関与しているが、

大きく分けると、街並失認と道順障害がある。

街並失認は視覚性失認の一つで、

目にする建物や風景が何であるかは理解できるが親近感がなく、

どこにあるものかがわからない障害である。

一方、道順障害は視空間失認の一つで、

目印となる建物は認識できるが、

自分との位置関係が認識できないため

そこからどの方向に進んでよいかわからない障害である。

前者は右海馬傍回の後部、舌状回、紡錘状回が、

後者は右後頭頭頂葉(特に脳梁膨大後皮質・後帯状皮質)が、

それぞれ責任病巣と考えられている。

いずれにしてもこのような障害を抱えて社会活動を行うことには

多くの困難を伴うと推察される。

今クールのドラマ 『視覚探偵』 ではないが、

そのような人たちには残された

機能(たとえば言語機能など)で

辛い症状を代償する訓練が必要である。

一方、私たちには、

この障害に対する十分な理解と協力が求められるのである。

コメント
この記事をはてなブックマークに追加