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広報活動費も「振替」

 私は外務省の担当官に何度も質問し、一目で分かるような資料を提出するよう求めた。が、言を左右にして持ってこない。数カ月待っただろうか。
 「東京国連広報センターへの拠出」という一枚の図表を持ってきた。これを予算資料などと照らし合わせて、ようやく疑問が解けた。

 「広報活動信託基金」と「開発協力信託基金」の二つには、当初から特殊な関係があったのだ。「広報活動信託基金」は設立後十七年間も、予算上の独立した費目として計上されていなかった。
 一方の「開発協力信託基金」は計上されていた。その名称は「開発協力信託基金拠出金」(以下、「同拠出金」と呼ぶ)というもので、設立の八三年度から〇二年度まで毎年、少ない時で約四千万円、多い時には約一億五千万円の予算がつけられていた。広報活動費は、この「同拠出金」の中に潜り込ませてあったのだ。

 資金の流れを見ると分かりやすい。「同拠出金」は年一回、外務省指示→日銀→UNICの口座、というルートで送金される。UNICの口座に入るときに、「同拠出金」は二つに分かれる。「広報活動費」の分は、円で普通預金口座に入る。「開発協力信託基金」の分は、ドル建ての当座預金口座に入り(ここでドルを買うことになる)、UNICの経理担当職員が国連本部の口座に送金するのだ。

 しかし、〇一年に「国際機関に対する外貨拠出に関する方針変更」(西村外務政務官による今年三月十三日の衆議院外務委員会答弁)があり、UNICの口座を通す海外送金がストップされた。
 同時に、「開発協力信託基金」への拠出も〇二年度で中止された。だが、同基金に余剰金があった。それを〇三年~〇四年度に「広報活動費」に回した。つまり、信託基金の「振替」をしたのだ。
 そして〇五年度からは、予算編成にあたって本来の姿である「東京国連広報センター拠出金」という費目を新たに立て、「広報活動費」を再びUNICの普通口座に送金し始めたのだった。

 したがって、同じ「広報活動費」でも、八七年度~〇二年度と、〇五年度以降は性格が異なる。それで前者を網がけ、後者を網なしの棒グラフで示した。
 外務省はこれまで二つの信託基金の関係について全く公表してこなかった。
 「説明責任」という概念が欠如しているのだ。質問をすると、サラミソーセージを薄く切るように、情報を小出しに開示する。ときには煙幕も張る。追及するこちらは、まるでミステリー小説の謎を追うような気分にさせられる。

外務省が外国為替で投機?

 「いろいろ理由があったと思いますけれども、確かに非常にわかりにくい。私もなかなか理解しがたい」
 中曽根外相がそう答弁して笑わせたほど、三月十三日の外務委員会の政府説明は複雑を極めた。
 〇一年に「国際機関に対する外貨拠出に関する方針変更」(西村政務官)があったというのだが、その変更の内容がよくわからない。

 そこで外務省に資料要求を出した。
 「この方針変更は何年何月何日にどのような形で行われたのか。方針変更の詳細を取り決めた文書を提出されたい」
 すると、こんな回答が返ってきた。(注 太字は筆者)



 「国際機関に対する外貨拠出に関する方針変更」については、平成十三年四月に次の通り方針が変更された。

1.方針変更までの経緯

(1)国際機関の分担金・拠出金は予算上、外貨所要額を基礎にこれを邦貨に換算して予算計上されているが、その支払に当たっては、支出官レート払い、実勢レート払いの二つの方式があり、両者は基本的に外国送金か国内送金かという送金先の違いによって生ずるものである。即ち外国送金の場合は支出官レート払い、国内送金の場合は実勢レート払いになる。

(2)国際機関への送金に当たり、国際機関側がどこに口座を開設するかについては、あくまでも国際機関側が決定することであるが、他方、長らく円高傾向が続いていた期間において、実勢レート払い方式は外務省予算の節約の観点からも有利な方式であった

2.平成十三年当時の円安傾向による実勢レート払いのメリット消失と右を踏まえた対処方針

(1)予算編成時点の支出官レートより、実際に資金を拠出する時点の実勢レートが円安方向に動いている場合、実勢レート払い方式をとれば、邦貨予算額が不足することとなる。この不足分は、予算の流用や補正予算、予備費などによって措置しなければならず、当時数年の円安傾向を受け、分担金・拠出金の支払については、ほぼ毎年恒常的に外務省予算の不足分について手当が必要という状況になっていた。

(2)このように、実勢レートによる分担金・拠出金の支払は、支出官レートによる支払に比べ外務省の予算執行に不確実性を与え、特にレートの変動が分担金・拠出金の支払のタイミングに大きな影響を与えていた。また、補正予算や予備費による不足分の手当を行うことは、大きな事務負担となっていた。

(3)上記を踏まえ、各国際機関を主管する各課より国際機関側に対し、分担金・拠出金の支出にあたっては、可能な限り外国口座への送金が可能となるよう求めることとし、これに理解を示した国際機関から、順次、支出官レート払いに支払方法を変更することとした。



 これを一読理解できる人は天才だろう。実のところ、財務省の現役やOBの専門家にも読んでもらったが、みな何度も繰り返し読んで、けげんな顔をした。
 なぜか? 理解できないように書いているからだ。都合の悪いことを隠そうとしているとしか思えない。
 具体的なケースに基づいて、この文章を解読してみよう。

 国連の通常予算の分担金は、ドル建てだ。毎年十二月、事務総長から各国政府に支払要請の通知が来る。日本の場合は数億ドルだ。日銀から政府の銀行口座を通じて国連本部の口座にドルを送金する。だが、予算編成は円で計上するので、財務省の決める「支出官レート」で仮の計算をする。実際にドルで送金するときに、予算編成時よりも円高になれば差額が余るし、円安になれば不足する。余れば国庫に戻し、足らなければ補正する。本来は、それですむ話だ。

 だが、外務省は「国内送金」という複雑な送金ルートを使い、独自に外国為替の運用をしていたのだ。〇一年春まで国連の通常分担金がどのように送金されていたのかを図示してみた。(図1=下図)



 外務省は円ドルレートの推移を見ながら、最も円高になったと見られるときに、巨額の分担金をUNICのドル建て当座預金の口座に送る(この時点で、銀行からドルを買うことになる)。といっても、外務省にそんな外国為替運用の専門担当官はいないから、送金のタイミングは実際のところ、銀行のプロに相談していたのではないか。銀行からUNICの経理担当者に「二日後に送金される」などの連絡が入る。すると、経理担当者はこのドルを国連本部の口座に電信送金する依頼書を銀行に出し、国連本部に連絡するのだ。

 外務省はこの送金方式で相当に甘い汁を吸ったのではないか。
 毎年の決算報告書から、それがうかがえる。プラザ合意で急激な円高になった翌年の八六年度から送金方式が変わる〇一年度まで、国連の通常分担金がかなりの部分を占める「経済協力国際機関分担金」を見てみた。

 「不用額」として国庫に返納する額は小さく、各種の信託基金などに「流用」するケース、額の多いことが目立つ。特に八九年度から九五年度までの七年間は連続してそうだ。毎年の流用額は約四億円~三十四億円。流用先は「経済協力国際機関等拠出金」「赤十字社連盟」「国連ソマリア活動分担金」「国連開発計画ボスニア信託基金等」などとなっている。

 この「流用」も「振替」と同じように、国会審議を経ないで行われていたわけだ。決算書は通り一遍の事後報告である。
 これが「外務省予算の節約の観点からも有利な方式」(外務省回答傍線部)の実質的な意味なのであった。
 しかも、この為替運用をめぐって、外務省だけでなく、銀行やUNICも利益を得ていたらしい。

 その証拠となるFAXが、〇一年十一月九日付で、当時のUNIC所長から国連本部の財務管理担当官に送られている。
 このFAXは、それまで日本政府からUNICの口座を通じて国連本部に送られてきた通常分担金のカネが、この年秋から突然、UNICの口座を経ないで直接国連本部に送られたことを知って、国連本部に経緯を質したものだ。そのなかでこう指摘している。

 「私達は国連財務部とQ銀行の間で、UNICの日々の業務におけるQ銀行での送金などの手数料を無料にする合意があると理解しています。これは日本政府がニューヨークの国連本部の口座に送金する際の円ドル交換の手数料によって可能になっていました。私達は今回の直接送金が現状のUNICとQ銀行の取り決めに影響を与えるかもしれないと思っています。(もしもUNICが銀行手数料を払わなければならなくなると、年間予算に一万五千ドルから二万ドルを上乗せしなければなりません)」(注 「Q銀行」は実在の銀行名が書かれているのを、筆者が匿名に換えた)

 この円ドル交換の銀行手数料はいくらだったのだろうか。UNICの内部には「一ドルにつき一円だった」と言う証言もあるようだが、外務省は、「〇〇年三月の記録だけあるが、それは一ドルにつき三〇銭だった」という。三億ドルを送金すると、前者で三億円、後者でも九千万円が銀行に入る。大口の交換手数料としては極めて高い額だ。

 外務省がこうした為替運用のための送金に国連本部の下部組織であるUNICを巻き込んでいたことも、問題があると言わざるを得ない。
 この送金方法は〇一年四月に変更され、財務省の管轄による比較的透明な海外送金に変わった。

 外務省回答は「当時の円安傾向」を理由にしているが、むしろ、外務省設置法にも明記されてない不透明な外国為替運用を続けることによって、その実態が表面化することを恐れたのではないか。

 〇一年と言えば、外務省の要人外国訪問支援室長による巨額の公金横領事件を皮切りに同省全体にわたってホテル、ハイヤー、旅行業などの水増し請求による「裏金」が発覚して、蜂の巣をつついたような騒ぎになった年である。
 外務省は同年四月に有識者による「機構改革会議」の提言を受け、「国民の信頼回復」のために報償費のチェック体制見直しなど、さまざまな措置を取り始めた。
 海外送金の方針変更は、その渦中での「秘められた措置」だったのだろう。
 
 国民の監視を逃れて、制度やカネを融通無碍に使おうとすれば、どうしても腐敗を呼ぶことになる。外務省は思いきって、過去の不透明な資金管理の全容を表に出したらどうか。
 それが真の「国民の信頼」を得るための第一歩である。

(了)


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