外務省はいったい何を考えているのだろうか。10月5日付の『どこどこ日記』に、「共謀罪、アメリカの留保はなぜ?」に記したように、外務省総合外交政策局人権人道課国際組織犯罪対策室に1週間前にヒアリングを行った。アメリカが留保した理由は分かったが、その留保によって局地的にローカルな州内の「どのような行為(共謀)」が犯罪化されないのか。条約批准時に、留保したことで、枠外にはみ出してしまう州内的な行為類型とは、いったい何なのか。ぜひ、調べていただきたいとお願いしておいた。そろそろ1週間、他ならぬアメリカのことだから、何か調査が進んだのかと思って説明をしてもらいたいと依頼した。すると、意外なことに外務省のホームページに昨日、「米国の留保についての政府の考え方」という文書を提示していたことが分かった。短いものなので全文引用すると、
[米国の留保についての政府の考え方]
国際組織犯罪防止条約に関し、最近、「米国は一部の州では極めて限定された共謀罪の法制しかないことを理由に留保を付して条約を批准している」との報道が行われています。
この米国の留保についての政府の考え方は、以下の通りです。
(1)米国は連邦制をとっており、条約締結に当たり、憲法上の連邦と州との間の権限関係と整合性をもたせるとの観点から、留保・宣言を行っています。
(2)米国政府より、本条約で犯罪化が求められている行為について、連邦法によっても州法によっても犯罪とされていない部分はほとんどないという回答を得ています。
(3)このようなことから、米国の留保は本条約の趣旨、目的に反するものではないと理解しています。
これに対し、「重大な犯罪」を限定する旨の留保や「国際性」の要件を付す旨の留保は、「重大な犯罪」の定義を定める条約第2条や、国際性を要件としてはならないと定める条約第34条2の規定に明らかに反するものです。
これは、上記1.のような、米国が憲法上の連邦と州との間の権限関係と整合性をもたせるとの観点から行った留保とは性格が全く異なります。
「重大な犯罪」を限定する旨の留保や「国際性」の要件を付す旨の留保を付すことは本条約の趣旨、目的に反するため許されないことは、これまで政府が繰り返し答弁してきたとおりです。
この外務省・政府見解で語られていない点は、1-(2)「米国政府より、本条約で犯罪化が求められている行為について、連邦法によっても州法によっても犯罪とされていない部分はほとんどないという回答を得ています」の中の、「ほとんどない」ということの中身である。「ほとんどない」と「まったくない」は似たような響きがある言葉だが、あえて意味内容を問うてふるいにかけると「ある」と「ない」に分かれる。「ほとんどない」は「少しはある」ということを意味していて、具体的にその「少しはある」が何を指しているものなのかが論点となる。「まったくない」のではあれば、そもそもアメリカ政府が国際組織犯罪防止条約の批准を留保する必要はないのではないか。
アメリカの留保は、条約の趣旨・目的に反しないと断言する一方で、私たち野党が、条約批准にあたって「留保」や「解釈宣言」が出来るはずだと指摘してきたことを踏まえて、「重大な犯罪」や「国際性」についての留保はこの条約の趣旨・目的と異なるから許されないという政府見解を繰り返している。アメリカ国内で、どのような州法の現実があるのか。また、アメリカから届いた「回答」とはいかなるものだったのか。
明日は、月例のネイキッド・ロフトのトーク・ライブでこの点を『共謀罪とは何か』の共著者である海渡雄一弁護士と掘り下げて議論してみたい。
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