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昨日、友人から「保坂さんが『ル・モンド』に大きく出ているらしいよ」と聞いて、さっそくパリの飛幡祐規さんに連絡してみてもらった。すぐに、デジカメで撮った紙面と翻訳を送ってくれた。記事は、『日本、絞首台をめぐる論争┄┄クリスマスの死刑執行、約100人が死の廊下に待機』というもので、私は死刑廃止を推進する議員連盟事務局長としてインタビューに応じている。安倍総理が「基本的な価値観を共有している」と述べたフランスと日本では、死刑制度については180度相いれない価値観を持っている。テロ対策で刑事事件の犯人引き渡し協定を結ぼうにも、「日本の死刑制度」ことが協定の障害となっていることを安倍総理は知っているのだろうか。フセイン前大統領の処刑に続いて、イラクで旧フセイン政権の幹部がふたり処刑された。日本と同じ絞首刑であり、イラクでの絞首刑の映像は私たちの国でクリスマスに行われた処刑と同一形態である。

ル・モンド紙 2007年1月16日(火)付 (1月15日に発行)
3ページ目:「人権」のページ

大見出し:日本、絞首台をめぐる論争

小見出し:クリスマスの日に4人の死刑執行、約100人が死への廊下に待機(確定囚)…… 少数派の死刑廃止論者たちは、国際世論の働きかけによって彼らの主張を前進させようと頼っている。

 彼らは毎朝、廊下から響いてくる足音を数える。大勢の足音が聞こえたら、死刑執行が行われるのだ。誰が処刑されるのだろうか? 足音が止まる。各独房の前に、看守がひとりずつ。待つ死刑囚たちの目は、扉にくぎづけになる。やがて、そのうち一つの扉が開き、運命の台詞が告げられる。「さあ、時間です」。
 これが、死刑を免れることができた者たちによって語られた、約100人に及ぶ日本の死刑囚が毎朝耐えなくてはならない苦難である。そのうち50人ほどは請願・再審の可能性をすべて絶たれ、毎朝この強迫観念と共に生きている。20人ほどの死刑囚にとって、それはすでに10年、あるいは20年もつづいている。2006年12月25日、そのうちの4人にとって、待つ時間は終わった。4人の死刑囚(77歳の秋山芳光氏は1987年から、75歳の藤波芳夫氏は1993年から死刑を待っていた)の絞首刑は、日本と国外の死刑廃止論者たちを憤慨させた。
 クリスマスはたしかに日本では普通の日だが、世界中の多くの人間にとって象徴的な日である。死刑囚のひとり、1989年に獄中でキリスト教信者になった藤波氏にとってはとりわけ、そうであっただろう……。そのうえ彼は、両足不随の身だった。彼は兄弟にあてた最後の手紙で法務大臣を非難し、こう書いている。「あなたは、動くことのできない人間を処刑したのです」。

「拷問のひとつの形態」

 アメリカ合衆国と並び、先進国において唯一死刑を実行する国において、この4人の死刑執行は15か月つづいた事実上のモラトリアムの終わりを告げた。当局は、日本人の80%が死刑に賛成しているという世論調査の後ろに立てこもっている。死刑賛成の感情は、子どもに対する一連の殺人事件によって強化された。しかし、それよりインパクトの強かったのが、カルト集団オウム真理教による地下鉄サリンテロである(死者12人、被害者4000人)。教祖の麻原彰晃は12人のメンバーと共に死刑となった。
 最近、東京日仏会館で催されたセミナー、「死刑についてのヨーロッパの経験」では、日本人に死刑廃止論をアピールする難しさが明白となった。したがって、日本の死刑廃止論者は、国際的な圧力の増加に希望を託している。
 死刑執行の命令書に署名することを拒否する法務大臣は、稀である。前法務大臣の杉浦正健氏は弁護士であり、仏教徒としての信念から死刑に反対して、署名を拒否した。したがって、前回の処刑は2005年9月に遡る。しかし、彼の後任者の長勢法相は同じ価値観をもっていない。4人同時に死刑が執行されたのは、1997年以来はじめてである。
 日本の死刑廃止論者と国際的人権擁護組織はまた、死刑執行が秘密裏に行われる点も告発している。ほとんどの場合、国会での質問を避けるために、死刑は国会閉会時に行われる。クリスマスの執行のあと、社民党の党首で弁護士、そして100人ほどの死刑廃止議員グループのメンバーでもある福島瑞穂氏は、死刑についての国民的な議論を要求した。
 2003年の人権同盟世界連盟の報告書は、日本の死刑執行を「近代民主主義の資格をもたない」と形容した。報告書は、死刑囚の拘留条件を告発している。絶対的隔離、常時の監視、いつ処刑されるかわからない毎日の恐怖。これらの状況は「文明の発達した社会の基準と相容れない拷問の形態であり、いかなる重大な罪も正当化できない処罰である」。
 日本の約60の刑務所のうち、7つに死刑執行室がある。かつて看守を勤めた人によれば、13の階段を上がった中二階になっているという。中二階の部屋はふたつにカーテンで仕切られている。一方には小さな仏壇と仏像がある。もう一方には絞首刑のロープがある。執行人は上司が5人の看守を選ぶ。僧につきそわれてお経を唱えてから、死刑囚は目隠しされ、両手を縛られる。それからロープが首にかけられる。揚げ板を引く装置にはボタンが5つあり、5人の執行人は同時にボタンを押す。そのうちひとつのボタンは機能しないようになっていて、執行人たちが「自分が殺したのではない」と期待できるしくみだ。
 死刑囚の家族は、翌日にならないと処刑を知らされない。こうして1995年のある日、刑務所に息子に会いにきた母親は、その朝彼が処刑されたことを知った……。
 訴訟が遅いことに、死刑執行をためらう法務大臣がいることが加わって、死刑への廊下は「ラッシュ」になっている。10年ほど前まで、日本の死刑確定囚は50〜60人だった。しかし、処刑数が減ったため、以後は死刑囚の数が増えている。おまけに、死刑判決が増加しているのだ。2003年までは毎年2〜7件だった死刑判決は、2006年には20にも達した。日刊紙の朝日新聞によると、法務大臣は死刑囚の過剰を減らそうと考えているようだ。「2007年は、死刑を執行しない記録を更新しない」とある高級官僚は述べた。前年、14年ぶりに、死刑のない1年間がすぎたのだが。
 死刑賛成派は、死刑が刑法に記されている限り、執行しないと刑法システムが弱体化してしまうと主張する。廃止論者たちは、2009年日本に取り入れられる陪審(裁判員)制度によって、死刑判決が減ることを期待している。廃止論者の議員たちは、2年間執行を避けるモラトリアム期間を設け、その間に、30年間保安期間のある終身刑をつくると同時に、死刑を廃止する法案を練ることを提案している。

東京特派員 フィリップ・ポンス

二つの不審な判決

 2006年12月26日、名古屋高裁は、証拠不十分であるにもかかわらず死刑判決を受けた囚人の再審請求をとりさげた。彼は45年前、5人の女性を毒殺したと自白したが、その後自白を撤回した。現在80歳になる奥西勝は、なんと1972年から死刑囚として服役している。高裁は、再審審査中に与えられる執行猶予を取り消した。この囚人はこれで7度目の再審請求を出している。
 人権同盟国際連盟は2003年の報告書の中で、日本の未決勾留の条件を批判し、数多くの誤審が「その不当な性質を証明している」と指摘する。裁判官は容疑者の言明よりも、警察が容疑者から得た自白に重きをおく傾向が強い。容疑者は警察での自白の後、あるいは訴訟中にしばしばそれを撤回する。
 有名な例が、32年拘留され、そのうち10年を死刑囚として服役した石川一雄氏だ。1964年に死刑判決を受け、74年に無期懲役となった。1994年に釈放されたが、無実となったのではない。石川氏のケースを研究した社会学者、CNRS(国立科学研究所)の学者ジャン=フランソワ・サブレ氏は、「彼はまさに誤審の典型例だ」と評する。石川氏が安易に死刑判決を受けたのは、彼の出身に対する偏見のせいだとサブレ氏は考える。石川氏は300万人の差別を受けやすい「部落民」(かつて「穢れたカースト」とみられていた肉屋、なめし工、と殺人などの子孫)の出身だからだ。差別は1872年に廃止されたが、実際には隠れた差別がつづいた。
 石川一雄氏は、16歳の高校生の強姦・殺人と身代金要求の容疑で有罪になった。「土木工の彼は、警察に殺人を認めよと説得されたのです。警察は彼の兄が犯人だとわかっていたようです。だが、兄には家族がいたので、その身代わりになれと言った。それから奇想天外な演出が始まりました。石川氏は読み書きができなかったのですが、警察は彼に自白書を書くよう練習させた。身代金要求の手紙の字に似せて書くようにね」と、サブレ氏は語る。
 石川氏は判決が下ってから初めて、弁護士に何がおきたかを語った。10年間死刑への廊下で服役してからふつうの監房に戻り、それから22年後に条件つき釈放となった。しかし、何度も再審を求めたにもかかわらず、再審は行われなかった。

(以上、仮訳は飛幡祐規さん=パリ在住)

今、発売中の『SPA』1月23日号も『ニッポンの「死刑」の真実」と題して4ページで死刑問題を取り上げている。先週、同編集部から私にインタビューがあり、東京拘置所の刑場を4年前に視察した刑場の様子を語っている。全体として読みごたえのある特集だが、今日は私の部分だけ再録しておく。

死刑囚はどのように殺される?
東京拘置所・執行室視察リポート(保坂展人)

‘06年12月の死刑執行では、新しくなった東京拘置所の執行室が初めて使用された。法務省は死刑の情報公開に消極的で、内部の状況を知る人は少ない。‘03年7月に、この死刑執行室を視察した保坂展人議員に、中の様子をリポートしてもらった。
「法務省によると、過去に国会議員など部外者が死刑執行室を視察した記録はないという。写真撮影は禁止されました。
執行室に入ると、死刑囚側の部屋には祭壇があり、観音像が置いてありました。ここで遺書を書いたりするようです(死刑囚の宗教によって変更される)。床は藤色のカーペットでした。同行した議員が不謹慎にも『ここでパーティができる』と言ったほどの広い空間です。アコーディオンカーテンの仕切りの向こう側の床中央に、死刑囚が立つ1m四方ほどの四角い枠線があります。執行の際は油圧システムでこの部分が開き、床下の部屋に4mほど落下する。階段を登る『絞首台』でないのは、死刑囚が暴れないようにするためでしょう。絞首といっても窒息死させるのではなく、落下の勢いと死刑囚の体重によって頸椎骨折と延髄損傷で即死させるため、落下直後に意識はなくなるとのことです。鼻や口から息が漏れる音が聞こえてきますが息を吸うことはできず、血が逆流してものすごい顔になるといわれます。
死刑囚が吊られる真下に、排水溝があります。執行後しばらく痙攣を起こした後、筋肉硬直が解けて糞尿を垂れ流すので、遺体を洗うためにあるのでしょう。その後、医官が階下に降りて死亡を確認し、確認後5分以上たってから遺体を処分する。こうして死刑は終了します」



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