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電子政府化の掛け声のもとで、とんでもない無駄遣いが明らかになった。8月26日の読売新聞によると外務省が「旅券電子申請システム」を年内に廃止することを決めたという。以前から、このブログでも指摘していたが、アメリカ政府のリクエスト通りに唯々諾々として日本が進めてきた「電子政府化」という落し穴のひどさが、ここで明らかになった。

旅券(パスポート)を電子申請するシステムは04年から始まったが、その利用者は05年末までに133人しかいない。一方で、投下した費用は05年末までに21億3300万円と巨額で、ひとりあたりで割るとなんとパスポート一冊発行に1600万円かかるというから驚きだ。このシステムに対応しているのが12都道府県と少なく、また手続きも複雑であることから利用が伸びていないために、07年度の予算要求から外して同シテムの廃止を決めたという。

外務省旅券課に確認してみた。すると、システムを受注・開発したのはNTTコミュニケーションズで、2001年~04年まででシステム開発・実証実験などで、約20億円が投じられていることが判明した。運用が始まってからは、04年12億4500万円、05年8億8800万円、06年8億6200万円と合計で29億9500万円のランニングコストがかかっている。読売新聞の記事にある「1600万円」は、04年~05年の2年間の運用経費(12億4500万円+8億8800万円=21億3300万円)をパスポート発行人数で割った数値なので、さらに開発経費約20億円を加算すると、20億円+21億3300万円で41億3300万円と、05年末までのひとりあたりのコストは3000万円に倍増する可能性もある。

さらに、だ。「途中で止まれない」のが電子政府でありシステム契約だ。契約書を取り寄せて点検したいのだが、3年間で運用中止では業者側からペナルティ(残債)を要求されることになる。コピー機のリース中に、契約・使用から2年で事業縮小のためにリース契約解除しようとすると、多くの場合にリース期間は5年なので、残り3年分の月々の支払額×36カ月の残債の精算を請求されるのと同じ理屈だ。ここは、発注者である外務省と業者の交渉がどうなるのか。その費用も想定しておかなければならない。ひとりあたり「1600万円」で驚いたが、それが倍になり、さらに膨れ上がるかもしれない時に、損失額の確定とシステム破綻原因の徹底究明が必要である。

こうした無用の長物は外務省の電子申請旅券システムだけではないことを、今日は指摘しておこう。この件については続報で伝えることを予定しておく。



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