hiyamizu's blog

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篠田節子『銀婚式』を読む

2012年02月20日 | 読書2

篠田節子著『銀婚式』2011年12月毎日新聞発行、を読んだ。

証券会社に入社した高澤修平は、社内留学でMBAを取得し、初恋の人、妻の由貴子と6歳の息子、翔を連れて36歳でニューヨークに渡る。しかし、彼は家庭を顧みず、由貴子は現地の生活になじめないで体調を崩し、ある日息子を連れて日本に帰り離婚することとなる。
さらに、突然、会社が破綻する。ただちに再就職する同僚達の中で、彼は残務整理を完遂したが、そのときは倒産後2年経っていた。
40過ぎて再就職した昔風の穏やかな中堅損保会社で周囲から浮きながら活躍するが、・・・。
仙台の新設大学の講師の職を得るが、やる気のない学生と、醜い教授間の派閥争いに・・・。そして、年の離れた女性との恋、息子の受験、元妻は彼女の両親の介護をして・・・

高澤高度成長期に育ち、頑張り屋の男の会社流転の物語でもあるが、人情の機微に疎く、女性の心が分からない男の家族の物語でもある。



篠田節子の略歴と既読本リスト
1
私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

300ページを超える本だが、一気に読んでしまった。久しぶりにストーリーのはっきりした、昔ながらの小説を読んだ。真面目で不器用で人の心が分からない男の苦労話に、私とは優秀で頑張り屋の点が異なるのだが、我が事のように引きつけられてしまった。
女性が読んでも、そのずれぶりにいらいらしたり、わが夫と全く同じねとあきれたり、面白く読めるのではないだろうか。


「Chunichi BookWeb」の自著を語るに篠田さんが書いている。

・・・高度成長の尻尾を持つ、誠実一路、努力、根性、文武両道の中年男など、もはやもてはやされることはない。優しさと共感力が至上の価値とされる時代に、割を食い、ないがしろにされる人物に光を当てたい。・・・
そう、責任と義務に生きる我が主人公は、人情の機微に疎い朴念仁である。女たちがその微笑や思いやりある行動の裏側で抱いている不信感や迷いに気づかず、その決断に慌て、混乱する。噛(か)み合わない会話や小さなエピソードに封じ込めた女心の謎を、経験豊かな読者に読み解いていただけたらうれしい。・・・




母親の介護を引き受けた弟が葬式の時にけろりとして言った言葉を、兄(主人公)が非難すると、
「兄貴さ、看取るまでの苦労で流した汗と、葬式で流す涙の量っては、反比例するものなんだよ」
確かに、母が死んだ後も、ただただ慌ただしく、じっくり悲しむ時間もなかった(母(7)死)。




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1 コメント

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Unknown (たま)
2012-11-23 12:07:51
篠田節子さんの小説が好きで、図書館にあるものは読んでしまいました。 今度何を読もうかと思ってネットで検索しているうちに、こちらさまのブログにひっかかりました。 へえー、うちの旦那と同じくらいの年か、もうちょっと上の方なのだと思いつつ、あちこち拾い読みしてしまいました。 また、読ませていただきます。 楽しそうです。
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