hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

高田郁『残月』を読む

2013年07月18日 | 読書2

高田郁著『残月 みをつくし料理帖』(ハルキ(時代小説)文庫 た19-10、2013年6月角川春樹事務所発行)を読んだ。

「みをつくし料理帖」シリーズの第7弾。吉原の大火で「つる家」の助っ人料理人の又次が死ぬなど悲しみで終わった前作から、希望の芽が大きく育ちそうな最新作だ。謎のままだった芳の息子の佐兵衛が姿を見せ、その芳にも幸いが姿をみせる。

第1話:「残月-かのひとの面影膳」
又次をしのび、「三方よしの日」に出した精進料理が「面影膳」。そして、又次に助け出された摂津屋が「つる家」を訪れる

第2話:「彼岸まで-慰め海苔巻」
玄関番のふきが調理師見習いになり、りうが玄関番、兼巧みな呼び込みとなる。一柳の柳吾により、佐兵衛の消息がもたらされる。心配でたまらない芳に澪が作ったのが、江戸で初めて出会った海苔巻。

第3話:「みくじは吉-麗し鼈甲珠(べっこうだま)」
登龍楼の采女宗馬(ほとんど唯一となった悪役)は、澪を引き抜こうとし、吉原に相応しい料理を創作できるかと賭けに誘う。澪が期限ぎりぎりで出した作品は、玉子の黄身を味噌とみりん粕に漬け込んだ「鼈甲球」。

第4話:「寒中の麦-心ゆるす葛湯」
料亭「一柳」の柳吾の看護に望まれた芳は、大阪天満一兆庵のご寮さんだった実力を発揮し、店の者たちや、なんといっても柳吾に・・・。回復した柳吾が芳と澪を葛湯でもてなす。

巻末付録「澪の料理帖」の他に、特別収録として、「みをつくし瓦版」「秋麗の客」



私の評価としては、★★★★★(五つ星:是非読みたい)(最大は五つ星)

シリーズの途中で「五つ星:是非読みたい」と言われても今まで読んでいなかった人は困るだろうが、でも、今からでも読まないと、次回あたりで終わっちゃうかもよ。

前作に比べ、今回は明るい話題、兆しがあって、耐えた分、一気に突っ走る気配があり、ますます次回への期待がふくらむ。
私の予想では、次回は、芳と柳吾は当然のこととして、ふきは一人前となり「つる屋」の料理人となるだろう。では、肝心の澪は? 源斎と? 野江はどんなふうに助け出されて澪と会うのか? 佐兵衛が犯した料理人がやってはならないこととは何か? 
一代限りと決めた料亭「一柳」の後を佐兵衛が継ぎ、女将が芳で、料理人が澪では落ち着き過ぎ?
著者は、最後のシーンを頭に置いて書き進めていると聞くと、悔しく、気がせいて、もう次回が待ち遠しい。



高田郁(たかだ・かおる)は兵庫県宝塚市生れ。中央大学法学部卒。
1993年、川富士立夏の名前で漫画原作者としてデビュー。
2006年、短編「志乃の桜」
2007年、短編「出世花」
『みをつくし料理帖』シリーズ
2009年~2010年、『第1弾「八朔の雪」第2弾「花散らしの雨」第3弾「想い雲」
2010年『 第4弾「今朝の春」
2011年『 第5弾「小夜しぐれ」
第6弾「心星ひとつ」
2012年『 第7弾「夏天の虹」
みをつくし献立帖
その他、『銀二貫』『あい



又次の死を悲しんで泣くふきに種市が言う。
「この齢になってわかることだが、残された者が逝っちまった者のために出来ることは、そう多くは無ぇのさ。中でも大事なのは、心配をかけないってことだ」

娘のつるを亡くした種市だからこその言葉だろう。


コメント
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