hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

穂村弘『整形前夜』を読む

2011年12月26日 | 読書2
穂村弘著『整形前夜』2009年4月講談社発行、を読んだ。

2005年から2008年にかけてさまざまなメディアに発表されたエッセイを集めている。
女性誌「FRaU」連載分は、女性への驚きをユーモアで語る。
「本の雑誌」連載分は、歌人穂村が表現者として文章と言葉や本について語る。
その他、さまざまな内容の単発エッセイの中では、若い頃の思い出話が多く、笑えて、切ない。
各エッセイにはテーマに関連する穂村さんやお仲間の歌が挿入されている。

「共感と驚異」は3回に分けて真剣な調子で書かれている。
詩歌が読まれないのはたぶん「わからない」からだろう。そもそも近代以降の詩歌とは、どんなに「わかる」ひとにも半分くらいしか「わからない」ジャンルなのだ。例えば、私の場合、20年以上詠みまた読み続けている短歌でも、「わかる」のは、全体の60%くらいである。俳句が25%、現代詩では10%くらいだろう。


エンタテインメント小説を求める人は共感(シンパシー)を求め、詩歌は驚異(ワンダー)と親和性が高い。加齢と共に「驚異」を「驚異」のままキャッチする能力が衰えて「共感」に変換して味わうようになるのではないか。

「引越しと結婚と古本屋」
穂村さんは司書の方と結婚して古本屋巡りを楽しんでいる。毎晩、夜御飯を食べた後で、奥さんと散歩をしながら何軒もの古本屋を回っている。



穂村弘 ほむら・ひろし
1962年5月北海道生れ、名古屋育ち。北大入学し、すぐ退学し、上智大学入学。卒業後、SEとして就職。
1989年第1歌集刊行。
2002年初エッセイ『世界音痴』
2005年『現実入門』
2008年結婚、『短歌の友人』で伊藤整文学賞受賞
2009年『整形前夜』



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

相変わらずのヘタレ男の穂村さんも47歳。「あるある、同じようなことが私にもある。だけど、ここまで惨めじゃないけど」と、笑いながら、安心させてくれる。
それにしても、「共感と驚異」はマジだった。

「愛し合える身体」
「男の側からすると、つるつるすべすべいい匂いの相手と抱き合えるわけだから、それはうれしいけど、女性からみると、いつも自分よりごつごつざらざらしたものと抱き合うことになって、それは『損』なんじゃないの?」
「それがいいのよ」・・・「ああ、私って女だ、って実感できるから」
・・・
ほろびる、としずかに声に出してみるボディソープを泡立てながら
                              富樫由美子





以下私のメモ

「普通列車「絶望」行き」
著者がSEだった頃、少し前を歩いていた先輩が突然しゃがみこみ、数秒間、じーっとしゃがみこんでいた。それから、ふらりと立ち上がって、何もなかったかのように歩き出した。
穂村さんは、会社を「休む」のではなく、どこかに「逃げる」のでもなく、通勤の途上でただ「しゃがむ」というところが、悲しくて怖かった。

「整形前夜」
マリリン・モンローが兵士を慰問する「雪が顔にかかりながら、大歓声をあげている兵士たちの前に立ったとき、生まれて初めて何も恐怖を感じなかった」と言った。彼女はいつも孤独だったのだろう。


コメント
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