はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊208 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第107譜

2021年02月15日 | しょうぎ
最終一番勝負93手目



   [あのこたちはふしぎの国にねそべり]

あのこたちはふしぎの国にねそべり
夢のうちにあけくれている
夢のうちに 夏はあまたたびめぐり――

  (『鏡の国のアリス』巻末の詩から  ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 )



「あまたたび」= 何度も。たびたび。(古文に現れる言葉)




<戦後研究:何が勝負を分けたのか(4)>

5三香成図(一番勝負93手目)
 
 【これが勝因か? その4】 5三香成


 この図での後手の次の手 △5三同馬 が、この戦いの “敗着” かもしれない。

 【後手の失敗 その5】 ここで5三同歩を逃したこと


 以下、「5三同歩」の変化を研究する。

変化5三同歩図00(5三同歩図)
 〔一〕7五金〔二〕6七金〔三〕5五金〔四〕5六金〔五〕6五金打〔六〕4二歩 が、この図での後手の候補手となる。
 
 この「5三同歩図」の最新ソフト「水匠2/やねうら王」評価値は -328 となっている(最善手7五金)

変化5三同歩図01
 〔一〕7五金、9五金、8五金打と進んで、この図になる。
 以下7七歩成、同玉、8五金。
 対して、【A】8五同歩 と、【B】8五同金 とがある。

 【A】8五同歩 に、6六金(次の図)

変化5三同歩図02
 【A】8五同歩 に、6六金(図)が最善手。
 (代えて7六歩、同金、6四銀も有力だが、4二歩、7五歩、同金、同銀、同馬、6六金、同馬、同桂、4一歩成は先手良し)
 6六金には6八玉と逃げるが、7七歩、同銀、8七香という手があった。
 以下6六銀、8九香成、9二竜(次の図)

変化5三同歩図03
 9二竜に代えて4二歩もあったが、7九成香、4一歩成、1四歩で後手良し。
 9二竜(図)は4二金をねらっている。それを防いで6二飛。以下同竜、同銀と進む。

 そこで〈p〉8九金 と成香を取るか、〈q〉7四金 と桂を取るか。

変化5三同歩図04
 〈p〉8九金(図)は、6六桂、6七銀、9七歩成、同香、9六歩、同香、9七飛(次の図)

変化5三同歩図05
 まだまだこれからの将棋だが、形勢は後手良し(「水匠2/やねうら王」評価値 -700 くらい)

変化5三同歩図06
 〈q〉7四金(図)のときは、7九成香、5五桂が想定される手(5五桂に代えて7二飛は4七飛で後手優勢)
 研究の結果、そこで7六馬が最善手とわかった(次の図)

変化5三同歩図07
 7六馬(図)と飛び出して、これで後手陣が薄くなった。後手としても6七に金や銀で受けられたときのその先が読めていないと指せない手である。
 しかしどうやら “これで先手玉は寄っている” と調査してわかった。
 6七銀 と受けるか 6七金 と受けるかの二択だが「6七銀 には4八飛」、「6七金 には3八飛」と飛車を打つのが正しい寄せになる(次の図)

変化5三同歩図08
 6七銀 には4八飛(図)
 5八歩なら6九成香、同玉、6七馬で“寄り”。5八飛なら7八成香以下 “詰み”。
 というわけで5八金合だが、6九成香、5七玉、4七金、同金、6八飛成(次の図)

変化5三同歩図09
 これで “寄り”。

変化5三同歩図10
 戻って、6七金 には3八飛(図)とここに打つ。
 5八歩合なら、6九成香、5七玉に、4六金と捨て、同玉に6七馬。このときに3八飛が好位置だとわかる。
 5八銀合または5八金合の場合は、7八成香、5七玉に、5六金と打つ。同玉に、5八飛成、5七金、4五銀(金)で “詰み”
 5八飛合なら詰まないが、同じように、7八成香、5七玉に、5六金と攻める(次の図)

変化5三同歩図11
 以下5六同玉に、5八飛成、5七金、6七馬、6五玉、5七竜(同銀は6四金以下先手玉詰み)で、後手勝ち。

変化5三同歩図12
 【B】8五同金(図)の場合。
 これには7六香がある。
 そこで「6七玉」と「6八玉」があるが「6七玉」を本筋と見て以下を進めていく
 (「6八玉」には7八香成、同金、7七歩、同金、7六歩、8七金、5六銀のよう上から押さえる手が有効になる)

 「6七玉」以下、7八香成、同金に、6五馬が想定される(次の図)

変化5三同歩図13
 この6五馬(図)は後手としても勇気のある飛び出しである。後手陣はうすくなった。先手としてはそれを誘って「6七玉」としたという意味もある。
 先手は7六金と受け、後手は「6六歩」(次の図)

変化5三同歩図14
 ここで〔1〕6六同金は、同桂、同馬、5六銀がある(次の図)

変化5三同歩図15
 これで先手玉は寄っている。
 以下5六同馬は、同馬、同玉、4五角。7七玉は7六歩、同馬、同馬、同玉、5四角で。

変化5三同歩図16
 というわけで、後手「6六歩」に、〔2〕7七玉と逃げてどうか。
 これには、6七銀(次の図)

変化5三同歩図17(6七銀図)
 ここで、[紅]8七銀打 と[白]6七同金 の応手がある。

 [紅]8七銀打には、5六馬としたいのだが、それは5七歩で「互角」の変化になる。
 2九馬と桂を取る手が優る(次の図)

変化5三同歩図18
 次に5六馬として、今度5七歩なら6五桂があるので先手玉はそれで寄る。
 ここで先手が何を指すかだが、ここで5七歩(後手5六馬を防ぐ)なら6五桂があり、8八玉、7八銀成、同銀、7七歩で後手の攻めは続く。
 7五馬(後手に6五桂を打たせない)は、6三桂があっていけない。以下6五馬は同馬、同金、5六角。6三桂に9三馬と戻れば、7五歩、同金寄、同桂、同馬、8四銀でいずれも後手勝勢だ。
 6八歩と受けるのは、6五桂、同金、7八銀成、同銀、6五馬、7六銀打、5五馬、8七玉、8四歩でこれも後手優勢での戦いが続く。

 だからここで4三歩で攻め合ってどうか。
 以下5六馬、4二歩成、9七金、3二と、同玉(次の図)

変化5三同歩図19
 先手玉は “詰めろ” が掛かっている(7八銀成、同銀、6七金以下)が、この詰めろをほどくのも困難。6八歩と受けても、6五桂、同金、7六歩、同銀、7八銀成で詰み。6六馬という手はあるが、7六銀成、同馬、6五桂、同馬、同馬で、“寄り”
 受けがないのなら後手玉を詰ますしかないが、4三銀、同玉、4一竜に、4二銀(桂を残しておくほうがよい)と受けて、後手玉に詰みはなく、したがって先手勝勢である。 

変化5三同歩図17(再掲 6七銀図)
 この図まで戻って、[白]6七同金 の変化を見ていく。
 同歩成、同玉、6六歩、7七玉、5六馬(次の図)

変化5三同歩図20
 8七玉、9七金、同香、同歩成、同玉、8九馬(次の図)

変化5三同歩図21
 9六玉なら9七金以下詰まされる。8七銀と受けても、9九飛、9八歩、同馬、同銀、9六香以下詰み。
 よってここは9九香と犠打を打って、同馬に、8七銀と工夫して受ける。これなら後手9九飛が打てない。
 しかしそこで後手8四銀が好手である。同金なら9五飛(9六歩に9三飛、同竜、8八角)があるというわけだ。
 8二竜(後手玉詰めろ)には、3一金(次の図)

変化5三同歩図22
 これで後手が勝てる。やはり8四金には9五飛が有効(以下9六歩、9三飛、9八金、同馬、同玉、6七歩成)
 9八金は、同馬、同銀、9五歩。9六玉は8一香、同竜、9三銀で、後手勝勢である。
 なお、後手3一金と受けるところで3一香とすると4二銀がまた詰めろになるのでまた受けなければならない。3一金が優る。

 これで結論が出た。〔一〕7五金 は 後手良しである。


変化5三同歩図00(再掲 5三同歩図)
  〔一〕7五金  → 後手良し
  〔二〕6七金
  〔三〕5五金
  〔四〕5六金
  〔五〕6五金打
  〔六〕4二歩

 最新ソフト(水匠2/やねうら王)が最有力と見ている手が〔一〕7五金だったが、これが「後手良し」とわかった。

 次に〔五〕6五金打を見ていく。


変化5三同歩図23
 〔五〕6五金打(図)
 6六桂、同金、7四香、7五歩、同香、同金、9七金(次の図)

変化5三同歩図24
 9七同香、同歩成、同玉、9六歩、8七玉、7五金(次の図)

変化5三同歩図25
 後手勝勢。


変化5三同歩図26
 〔二〕6七金(図)はどうなるだろうか。
 後手は6六歩と打つ。
 以下5七金に、8六桂(次の図)

変化5三同歩図27
 6六金、8五香、8八銀、9八桂成(次の図)

変化5三同歩図28
 9八同玉は7七歩成、7六歩、7八と、同金、9七銀でダメ。
 よって8六歩、8九成香、同銀、8六香、7八玉、2八飛と進む(次の図)

変化5三同歩図29
 6八金、2九飛成、8七歩、7四桂、5六金、1九竜、5一竜、6四香(次の図)

変化5三同歩図30
 4二金で勝負する(代えて3五桂は3四馬がある)が、6八香成、同玉、4九竜(5八金以下詰めろ)、5八香、7七金(次の図)  

変化5三同歩図31
 7七同銀、同歩成、同玉は、8七馬以下先手玉 “詰み”
 5七玉と逃げれば詰まないが、4二馬がある。
 後手勝ち。


変化5三同歩図32
 〔三〕5五金(図)には、「8六桂」が早い攻めとなる。
 そこで、先手〔ア〕4二歩の勝負手(ソフトの示す最善手。同玉なら7六玉と右辺に逃げられる)があるが―――(次の図)

変化5三同歩図33
 しかし、7八桂成、同玉、6六銀がある。以下6八玉、7七歩成(次の図)

変化5三同歩図34
 5九玉、5五銀、4一歩成、1四歩(次の図)

変化5三同歩図35
 1四歩(図)の奥の手をくり出して、後手勝勢。3一となら4六香だし、4八玉と逃げても6五馬で先手負け。

変化5三同歩図36
 ということで、「8六桂」に〔イ〕6七銀(図)と応じてみよう。
 これには8五香がある。
 そこで4二歩とするが、9八桂成(次の図)

変化5三同歩図37
 7八玉、8九成桂、4一歩成、2八飛、5八桂、7九成桂、6八玉、1四歩(次の図)

変化5三同歩図38
 後手勝勢。3一となら4八飛成で、先手 “受けなし”

 〔三〕5五金 は 8六桂 で後手良し。


変化5三同歩図39
 〔四〕5六金(図)の変化。
 この場合8六桂は、4二歩、7八桂成、同玉と進んだときに、今度は6六銀と打つ手がないので接近した形勢になる。
 その手(8六桂)よりも、この場合は9五金と攻めるほうが優る。
 先手は7五馬と守る(代えて7五銀は8四香と足されて後手勝勢)
 7五馬に8四香なら9五竜があるということだ。
 なので、後手は8六金とする(次の図)

変化5三同歩図40
 8六同馬、同桂、同玉、8四銀(次の図)

変化5三同歩図41
 そこで〔u〕5五桂が有力だが、後手6四角がある(次の図)

変化5三同歩図42
 6四角(図)と打てるのがこの(9五金以下の)変化を選んだ理由(5五金型に対してはこの角は打てなかった)
 なお、〔u〕5五桂に代えて〔v〕3五桂と打っていれば、6四角、9六玉のときに5二馬があって後手勝勢だった。5五に桂を打っておけば5二馬に6三銀と打てるということ。
 6四角(図)に、9六玉と逃げ、後手は9五歩とする。以下8七玉、8五香、9八玉と進む。
 そこで5五角と桂を食いちぎる(次の図)

変化5三同歩図43
 5五角(図)と桂馬を取る手が正しく(代えて9一角と竜を取っていると4三桂不成で先手良し)、以下5五同金に、7七歩成、5四歩、8九香成で、後手勝勢である。

変化5三同歩図44
 「変化5三同歩図41」に戻って、〔w〕7五金(図)としてみる。同銀、同玉と進めば先手有望となる。
 しかしこの手には、6四角、同金、8五香が鋭い切り返し(次の図) 

変化5三同歩図45
 9六玉、9五歩、9七玉、8九香成、4二銀(次の図)

変化5三同歩図46
 4二銀(図)は非常手段。同馬と取らせて馬筋をはずして、8九金と手を戻す。
 後手は7七銀(先手玉を8八玉と逃げさせない)
 先手6三角(後手8五銀や5二馬を防ぎつつ攻めにも利かす)に、5八飛(次の図)

変化5三同歩図47
 これで後手勝勢。4三歩なら7八飛成、同金、8六銀打、9八玉、7八銀不成。
 6八桂と受けても、5六飛成、同桂、8六金、9八玉、7八銀不成、同金、7七歩成で、後手勝ちとなる。


変化5三同歩図00(再掲 5三同歩図)
  〔一〕7五金  → 後手良し
  〔二〕6七金  → 後手良し
  〔三〕5五金  → 後手良し
  〔四〕5六金  → 後手良し
  〔五〕6五金打 → 後手良し
  〔六〕4二歩


変化5三同歩図48
 最後の候補手は〔六〕4二歩(図)
 4二同馬なら、7六金で、これは先手良し。
 しかし6六桂と金を取られ、4一歩成、1四歩と進んで、どうやら後手が良い。
 3一となら、7四香(詰めろ)、3二と、同馬で、後手勝勢。
 1五歩には、9五香(次の図)

変化5三同歩図49
 9五香のところ、代えて7四香でも後手が良いが8四馬、同銀、3一銀、1三玉、9四金、7七歩成、9六玉と頑張る手段がある。だから9五香(図)のほうがよい。
 9七金以下の “詰めろ”。受けが難しい。
 8八銀と受けても、7八桂成、同玉(代えて同金には6六銀が決め手)、3四馬、で後手勝ち。



変化5三同歩図00(再掲 5三同歩図)
  〔一〕7五金  → 後手良し
  〔二〕6七金  → 後手良し 
  〔三〕5五金  → 後手良し
  〔四〕5六金  → 後手良し
  〔五〕6五金打 → 後手良し
  〔六〕4二歩  → 後手良し

 つまりこの「5三歩図」では、先手には勝つ道がないということになる。


 すなわち、「5三同歩」を後手が選択していたら、おそらく、後手が勝利していただろう―――という結論になる。

 この変化を選んでいれば、その前に指した「△9六歩」の手も有効手になったいたことが、上の研究内容からもわかった。9五金と出る手や9七金と打つ手が有効手となった。
 「△9六歩」の手を生かすためにも、後手は「5三同歩」と取るべきだったのである。


 【後手の失敗 その5】5三同歩を逃したこと



5三香成図(一番勝負93手目)
 
 【これが勝因か? その4】 5三香成

 つまり、先手が ▲5九香と打ち、△7四桂に、▲5三香成(図)としたことが、先手の「勝因」になったのである。“後手に対応を間違わせた” という意味も含んで。



5三同馬図(一番勝負94手目)

 実戦は、▲5三香成(図)を、△同馬と取った。



次譜[戦後研究:何が勝負を分けたのか(5)]につづく
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