はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊 part128 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第27譜

2019年07月27日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第27譜 指始図≫ 7三同銀まで

 指し手  ▲4一角


   [ミラーマン]
 朝焼けの光の中に立つ影は
 ミラーマン
 鏡の世界を通り抜け
 「今だ!キックを使え、目だ!」
 ミラーナイフが宙を切る
 戦え 僕らのミラーマン
  (『ミラーマンの唄』作詞:東京一 作曲・編曲:冬木透 唄・植木浩史、ハニー・ナイツ)




<第27譜 チャンスが来たか!?>



 これは、≪指始図≫の一手前の局面。ここで7五銀なら先手が苦しい。
 後手はこの一瞬、有利に運ぶチャンスを得たのだった。

 後手の手を待つ時間に、我々(終盤探検隊)は、自分の指した7三歩成が“悪手”だった、と自覚した。
 歯を食いしばって、次の状況に備えていた。どうやって、この危機を凌ごうか―――と。

 そして、後手(=≪亜空間の主(ぬし)≫)は、△7三同銀 を指した。

≪指始図≫ 7三同銀まで
 「これはチャンスが来たのではないか!?」―――と、この手を見て、我々(終盤探検隊)は思った。
 △7三同銀も“悪手”ではないか。直感的にそう感じたのだった。

 一手前の我々の指し手▲7三歩成が、たしかに失着であったことは前回に確認した。
 ▲7三歩成は、後手7五銀と出られると、「7三のと金」が有効に働かないと「一手パス」になってしまうし、7筋に歩が攻めに使えるようになったことも、後手にプラスになっている。
 我々はなぜかふらふらと▲7三歩成を指してしまったのである。(そのときの思考内容はすでに覚えていないが、瞬間的にこの手が良い手だと錯覚してしまったのだろう)
 予定の8七玉なら、先手が有利だったのに……。

 △7三同銀
 おそらく、これも“悪手”だろう。後手はチャンス(7五銀)を逃した。
 “悪手が悪手を呼んだ”のかもしれない。
 この局面の形勢はまだはっきりしない。ただ(感覚的に)△7三同銀が甘い手だったことはわかる。

 さあ、ここで踏ん張って(落ち着いて)正しく指すことが大事である。ここからが、勝負だ。「勝ち」があることを信じて、頑張ろう。浮足立ってもいけない。

 ここでは、「8七玉」と、「6七歩」と、それから「4一角」が有力手である。

 それ以外の手は、うまくいかない。まずそのことを確認しておこう。

2五香図1
 たとえばここで「2五香」(図)とする。
 それには、“7五桂”が後手の返し技である(次の図)

2五香図2
 次に6六とまでの“詰めろ”だ。7七玉と逃げても、6七と、8八玉、7六桂と追い詰められて先手勝てない。
 なのでここは8五歩とするが、それには6六と、8六玉、7四桂がピッタリの手で、以下9七玉、7七と、9八金、8五金となる(次の図)

2五香図3
 先に「2五香」を打っておいた効果で、ここで2六飛という攻防の手がある。
 しかし、2六飛、8六金、同飛、同桂、同玉、8四銀、同馬、同歩、7五玉、6四飛(次の図)

2五香図4
 2三香成から詰んでいればこの順で先手有望だったが、詰みはない。
 この図は、6六銀、8六玉、7五角までの三手詰になっており、後手勝勢である。
 この通り、「2五香」には、“7五桂”があって、先手が悪い。

≪指始図≫(再掲) 7三同銀まで
 同じく、ここで「5四歩」にもやはり、“7五桂”があって、あっさり先手不利になる。
 つまりここでは7六玉型のまま後手に“7五桂”と打たれる形を回避しなければいけない。それには、「8七玉」か、「6七歩」(7五桂と打たれても8五歩で後手の6六とがないので先手が良い)ということになる。
 さらに、ここで「4一角」もある。ただし、「4一角」は3二歩と受けられるが、そこでやはり先手は「8七玉」と「6七歩」の2手の選択に迫られる。
 つまり、ここでの先手の手順の選択肢は次の4通りということになる。
  (1)8七玉
  (2)6七歩
  (3)4一角、3二歩、8七玉
  (4)4一角、3二歩、6七歩


[調査研究:8七玉]

8七玉図(今回のテーマ図)
 今回の譜では、「(1)8七玉(図)でどうなるか」をテーマにしたいと思う。(この結論は簡単ではない)

 2手前の―――7三歩成、同銀を交換する前の―――8七玉は「先手良し」になった。(→第25譜
 それとはまた状況が変わってきている。後手の銀を7三に引かせたのは先手にとってプラス。しかし7筋に歩の攻めが利くようになったのは、マイナスになる。
 さて、ここでの「8七玉」で、先手良しになっているのかどうか。

 この図での後手の最善手は 7五桂 であるとして、以下の研究調査を進めていく。
 先手は「9七玉」(次の図)

9七玉図
 ここで後手の選択肢は2つ。
 「6六と」と、「7六歩、7八歩、6七と」(単に6七とだと先手7六歩があるので先に7六歩と打っておく)である。
 結論から言うと、「6六と」はわりと簡単に先手良しになる。よって後者の「7六歩、7八歩、6七と」が最善手順となる。

 まず「6六と」以下を見ておこう。

後手6六と基本図
 「6六と」(図)に対しては、先受けして、「8九香」とするのが良い(次の図)

後手6六と図01
 「8九香」(図)と受けた。
 ここで後手が先手に迫る手は、7六と7七と が有力だ。
 
 7六と には、4一角、3二歩、3三歩成、同銀、5二角成という、もう何度も見てきた攻めを敢行する(次の図)

後手6六と図02
 先手良し。5二同歩は3一飛だし、他に後手有効な手もない。8九香と先受けした効果で、先手玉に有効な詰めろがかからない(8七桂成、同香、7五桂は、7九桂で受かる)

 それでは、7六と に代えて、7七と ならどうか。

後手6六と図03
 7七と には、7六歩(図)がある。
 7六同とでは、先ほどと同じなので、後手6七桂成しかなさそうだが、それにもやはり4一角以下、同じ攻めで先手が優勢になる。

 このように、「6六と」には、「8九香」で、先手良しになるということがわかる。

6七と図
 そういうことで、後手の本筋の手は、「9七玉図」から、「7六歩、7八歩、6七と」(図)ということになる。
 ここで同じように、8九香と打つのは、今度は7八とが香取りになるので、これは後手良しとなる。「6七と」は、つまり先手の8九香を封じているのだ。
 そして後手は、先手の手を見て、次に“7八と”と指すか、“7七歩成、同歩、同と”で先手玉に詰めろをかけるかを選択できるという状況だ。

 先手の“次の手”が形勢を大きく左右する。さあ、何を指すか。
 最新ソフトはここで3筋に香車を打つ手を推奨してくる。まずそれから考えよう。

変化3九香基本図
 〔A〕3九香(図)。
 ここで後手7八となら、先手が勝ちになる。8四馬、同銀、3三金、同桂、同歩成、同銀、1一角、同玉、3一飛、2一合、2二金、同玉、3三香成以下、“詰み”
 なので、後手は7七歩成、同歩、同とと迫ってくる。
 先手は9八角とこれを受ける。後手は7六歩(次の図)

変化3九香図01
 ここで3四歩なら、8七と、同角、同桂成、同玉、7五桂、7六玉、5八角、7七玉、7六歩、8八玉、6六銀(次の図)

変化3九香図02
 こうなって、後手優勢。
 7八歩の受けには、7七歩成、同歩、7六歩と攻められて先手が勝てない。
 今の手順で、ポイントは5八角と打つところで、これによって、6六銀と出たときの先手の3三歩成、同銀、同香成、同玉、3六飛という両取りを消している。

変化3九香図03
 よって後手7六歩に、7八歩(図)と打つのが正着となる。
 これを同となら、3四歩が先手で入る。以下、3二歩には、3三歩成、同歩、3四歩、同歩、2六桂で、これは「3九香」作戦の理想的な展開になる。
 といって、先手7八歩に、後手8七とと行くのは、同角、同桂成、同玉となるが、先手に桂馬が入ると3四桂の攻めも生じ、これも先手ペースになる。
 したがって、先手7八歩には3四歩と受けるのが後手の最善手。これを同香とする攻めは後手としては恐くない。今度は8七と、同角、同桂成、同玉の攻めが有効になり、以下7五桂、9七玉に、9五歩で、これは後手優勢。

 先手はだから、この図から、7七歩、同歩成、7六歩とする。
 以下6七桂成で、後手の攻めを遅らせることができた。
 そこで4一飛と打って、どうか(次の図)

変化3九香図04
 4一飛(図)と先手は飛車を打った。
 後手はこれを2一桂と受けるのが良い。この桂は3三に利かせる意味もある(受けないと8四馬、同銀、2一金の寄せがある)
 先手はここで5四歩。これを同銀は5三歩で、4四銀または6四銀は6三金で、先手が勝勢になる。(3二玉は有力。しかし5三歩成以下先手良しの調査結果となった)
 よって後手は6二銀左。これが最善手。
 そこで先手6一竜という手が攻めの継続手。 後手は3二玉(次の図)

変化3九香図05
 3二玉(図)は、先手の狙いの5二竜、同歩、4二飛成を受けつつ、飛車取り。
 ここで先手は2二金。これに同玉なら、いまの5二竜以下の攻めが炸裂するが、先手は4一玉と応じる。飛車を取った。
 そこで先手8四馬(金を入手)だが、後手は詰めろを受けて、3一銀(次の図)

変化3九香図06
 3一銀(図)がうまい切り返しだった。後手に金が入ると、先手玉は8七金以下詰まされる。
 この図から、7五馬、6四歩、1二金が想定される。しかし、5八飛、8九香に、7八成桂と進んで、そこで先手からのよい攻めがないので、後手勝ちの判定になる。

変化3九香図07
 今の手順を途中まで戻り、4一飛と打つ手に代えて、3五歩としたのがこの図。
 3五同歩なら、そこで4一飛と打って、今度は3四歩があるので攻めの迫力が大分違う。
 しかし――――(次の図)

変化3九香図08
 先手3五歩を手抜きして、8七桂(図)が後手の速い攻めである。
 以下、同角、同と、同玉、6九角、9七玉、7七成桂、9八金、9五歩、同歩、7六成桂(次の図)

変化3九香図09
 後手勝勢である。(次の後手の狙いは9六歩、8八玉、6六銀。8七桂と受けても、9六歩、同玉、8七成桂、同金、7五桂)

 以上の検討により、〔A〕3九香(図)は、7七歩成以下後手良し、とわかった。




変化2五香基本図
 〔B〕2五香
 この手は、最新ソフトはあまり重視していなかったが、調べてみるとかなり有力で、先手が勝てそうな変化が多い。
 以下、7七歩成、同歩、同とに、9八金と受けることになる。
 そこで例えば後手が7六歩と攻めの手を指してくれば、その手は詰めろではないので、2六飛、3一桂、4五角で、先手有利になる。そうなると後手に受けが困難である。
 したがって、後手は3一桂と受けることになる。「2三」を先受けしたことで、先手2六飛には4四銀上を用意した。先手の4五角を消しながら次に後手3五銀から飛車を捕獲する手があって、先手2六飛の攻めはうまくいかない。
 先手は 7八歩 と打つ(次の図)

変化2五香図01
 この 7八歩(図)を同となら、7六歩、6七桂成、4五角(次の図)

変化2五香図02
 4五角(図)と打たれ、7七成桂なら、2三香成、同桂(同玉は3三歩成、同玉、1二角成)、2六飛で先手有利。
 後手9五歩で勝負。以下、2六飛、9六歩、同玉、9五歩、9七玉、8四馬(次の図)

変化2五香図03
 先手勝ちになった。 7八同となら、先手が良くなる。

変化2五香図04
 ということで、先手の7八歩に、後手は7六歩(図)と対応することになる。 

 すると、〔B〕2五香 は、千日手、が結論となるのか。
 仮に、この「最終一番勝負」が「千日手」となれば、次の参考図(=亜空間初形図)から、“先後を入れ代えて”のやり直し勝負となる。

参考図(亜空間入口図)
 しかしこの図は、もうずいぶんと調査が進んで、どうやらこの図は先手に勝ち筋があることがわかっている(はじめはそれが見つからず困っていたのだったが)
 そして、それはもう後手番の≪亜空間のぬし≫もわかっているはずである。
 それなら、“先後を入れ代えて”、後手番を持つことになるのは、限りなく負けに等しい。

 つまり、「千日手は先手不利に等しい」ということになるのである。「千日手」では、我々(終盤探検隊)は困る。

 千日手を打開する手は何かないか。

変化2五香図05
 ということで、7八歩 を打つところで、代えて、3七角(図)でどうか。
 これには6四銀上が常識的な対応だが、6五歩や5九角で、結局金か銀を取られてしまうので、それなら無理に受けず“6六銀”と攻めに銀を使う手が良い手になる。
 7三角成に、7六と。
 ここで2六飛と打って、7七銀成に7八銀と受ける手はある。しかし、同成銀に、7六飛、8九銀と進むと、どうやら後手が良い。
 先手8五歩という手が面白い手だ。これでどうなるか。8五歩(図)を同金は、8九飛と打つ意味で、こうなると先手ペースになりそう。
 だが、8五歩に、6三金が絶妙な切り返しである(次の図)

変化2五香図06
 6三同馬と取らせて、7七銀成で後手良しという狙い。(6二金もあるが、4六馬と引かれたとき、以下7七銀成、5五馬、4四歩という展開になったとき、6三のほうがより働きが良い)
 6三金に、先手は3三歩成を利かす。同銀に、5一馬と入る。後手玉は、3二飛以下の“詰めろ”だ。
 なので後手は4二銀右と受ける。4一馬に、7七銀成(次の図)

変化2五香図07
 後手優勢である。

変化2五香図08
 もう一つの手は、先手7八歩 に、後手が7六歩とした場面で、そこで「3七角」(図)とする手。
 今度は6六銀、7三角成の展開は先手が得だ(後手の攻めが渋滞している)
 なので後手6四銀右と受け、先手は6五歩。以下、6六歩、6四歩、6七歩成。
 そこで8五歩、同金を入れてから、5五角が先手の工夫。
 4四銀に、8六銀(次の図)

変化2五香図09
 5五角、4四銀に、角を逃げていては勝負にならないので、8六銀(図)と打った。 同金、同玉なら、先手が良い。
 なので、5五銀、8五銀と進み、そこで7六銀打で頑張る。
 以下、7四歩(次の図)

変化2五香図10
 9四馬、9三歩、同竜、8七桂成、同金、同と、同銀、7七と、9八銀、7五角(次の図)

変化2五香図11
 8六金、9三角、同馬、8八金(好手)、9五歩、9九金、8七銀、8四香、同銀、同歩、同馬、7八銀(次の図)

変化2五香図12
 この図は後手良し。
 ただし、この変化は、勝負的には「互角」に近く、一手でも後手が間違えると先手が勝てそうなところはある。しかし調査研究の結果は、とりあえず「後手良し」とする。

 以上の調査により、〔B〕2五香 は後手良し、が結論となる。
 (「千日手」に持ち込むことはできるが、それは先手不利の「亜空間初形図」の後手番になるのでつまらない)


6七と図(再掲)
  〔A〕3九香 → 後手良し
  〔B〕2五香 → 後手良し(または千日手)
  〔C〕8八金
  〔D〕4一角

 〔C〕8八金 は、先手勝てない。
 〔C〕8八金に、6六銀とされ、この2手の交換は、先手に攻める駒が少なくなった分、先手が損をしている。
 よって、
  〔C〕8八金 → 後手良し
 となり、先手番の勝利への希望は、〔D〕4一角 に託されることなるわけである。


変化4一角基本図
 〔D〕4一角 には、後手3二歩。
 そこで先手の攻めは2種類ある。
 「3三歩成、同銀、5二角成」 と、「3三香」 である。

変化4一角図01
 「3三歩成(図)、同銀、5二角成」 は、5二同歩なら、3一飛で先手が良し。
 しかしそうは進まない。7七歩成、同歩、同ととなり、先手玉が“詰めろ”である。
 そこで先手は4三馬がある。
 しかしこの場合、以前に見てきた場合と異なるのは、そこで後手に“7六歩”という手があることだ(次の図)

変化4一角図02
 これには、8九香と受けるしかないが、そこで後手は4二銀左(4二銀右は5四馬で先手がやや指しやすい形勢)、2五馬、8七と、同香、7七歩成(7六歩の効果でこの攻めがある)、9八金(次の図)

変化4一角図03
 金で受けるしかないが、8七と、同金、同桂成、同玉、7五桂と、休まず攻め続けられ、7七玉に、6六歩、6八歩、6四香、3四桂、3三玉(次の図)

変化4一角図04
 後手勝勢の図である。
 「3三歩成、同銀、5二角成」 の攻めは先手に勝ち筋がなかった。

変化4一角図05
 「3三香」(図)が、“最後の手段”である。
 「3三香」 には、3一銀が後手の最善の受け。
 以下、5二角成、7七歩成、同歩、同と、4三馬と同じように進む(次の図)

変化4一角図06
 「3三香」が刺さっているところが先ほどと大きな違いで、3二香成、同銀、3三金からの“詰めろ”なので、今度は後手7六歩は利かない。またここで4二銀右も、3二香成、同銀、3三金から詰む。
 よって、この図では、後手は8七桂成から馬を消す手段に出るしかない。8七桂成、同馬、同と、同玉。
 さらに、7五桂、9七玉、6九角、8八金、9五歩と進行しそうだ(次の図)

変化4一角図07
 後手に持駒が歩しかないので、先手が良さそうに見えるが、実はそうでもない。7筋に歩も使えるし、形勢は予断を許さない(つまり「互角」だ)
 もう少し先まで、調べよう。
 ここは先手9八玉が最善手とみる。
 攻める手は5一竜だが、ここで5一竜は、6二銀右と応じられると、6一竜、5一歩のような展開になり、これは後手ペース。5一竜に、“4一竜”としたいのだが、9六角成が王手竜取りになっている。
 だから9八玉なのだが、9八玉に、後手6二銀右のような手なら、5七飛の“両取り”があって先手が良い。また7七歩は6八金でこれも先手良し。
 なので後手は9六歩だが、そこで先手は5一竜とする。
 (代えて5七飛はここでは遅い。3三桂から9七香の後手の攻めが早い。また、4一飛も、9七歩成、同玉、4二銀右、4三歩、3三桂以下、後手良し) 

変化4一角図08
 5一竜(図)と待望の手を指せた。
 ここで後手が何を指すか。6二銀右は、今度は4一竜があって無効。4二銀引も、3二香成、同玉、5二飛という手で、後手玉が寄る。
 なので、後手は9七歩成、同玉と、細工をしておいてから、4二銀引。これなら、先手は香車を渡せないので、5五竜と銀を取っておくことになる(次の図)

変化4一角図09
 5五竜(図)として、駒得をしたし、竜も使えそうだしで、先手が優勢になったと思いたいが、実はまだ形勢がはっきりせず、「互角」というしかない。
 ここで後手は3三歩または、3三桂が有力手となる(香車を取って9六香と打つ狙い)
 3三歩、同歩成、同銀、7八歩、9六歩、9八玉、9七香という展開が予想される。
 この後手の攻めは簡単には切れず、まだまだ厳しい戦いが続く。

 ここまでで調査を打ち切り、「形勢不明(互角)」としたい。
 すなわち、〔D〕4一角 は、3二歩、3三香以下、「形勢不明(互角)」


6七と図(再掲)
  〔A〕3九香 → 後手良し
  〔B〕2五香 → 後手良し
  〔C〕5八金 → 後手良し
  〔D〕4一角 → 形勢不明(互角)

 つまり、まとめるとこのような調査結果である。
 ≪指始図≫で、先手が「8七玉」の手を選ぶと、どうやらこの 〔D〕4一角 の「形勢不明」の変化に飛び込むことになりそうだ。


変化後手7六歩基本図
 さて、「8七玉図」から、7五桂 以下を調査研究してきたのだが、「7五桂」を打たない手段が後手にあるかどうかを確認しておきたい。

 他の手を指すとすれば、7六歩 だ。
 以下、7八歩、6七とで、次の図となる。

変化後手7六歩図1
 後手としては「7五桂」と打てば、いつでも先ほどの順に戻すこともできるので、打たないで置いたほうが手が広いということは言える。
 もしもここで、先手9七玉ならどうなるだろう?

変化後手7六歩図2
 後手7八と(図)。 後手が「7五桂」を打たない変化を追求するならこの手になる。
 この図はどちらがよいのか。
 先手は、後手の7七歩成が来る前に攻めたいところ。とはいえ、角を渡せない状況なので、どう攻めるか難しい。
 4一角、3二歩、3六飛でどうか(次の図)

変化後手7六歩図3
 3六飛(図)は後手玉への詰めろではないが、7七歩成なら、3三香と打って、先手が攻め勝つ。4四銀引と受ければ、7六飛だ(先手良し)
 3一銀と受けるのが後手のベストな手で、それでも3三香なら、4二金と受けて、受かっている。それははっきり後手良し。
 だから先手は2六香と打って、2三香成、同玉、3三金の寄せを狙う。後手はそれを1一桂と受ける(2六香と1一桂の交換は少し先手が得)
 そこで7六飛とする。これで先手良さそうに見えるが、まだはっきりしない。
 6二銀引、7八飛、4二金(次の図)

変化後手7六歩図4
 3一銀と引いた効果で、ここで4二金(図)が指せる。
 これで先手の角は行き場がなく、7四角成、同金、同飛となりそうだが、そこで6六歩として、どうやらわずかながら「後手良し」なのである。(最新ソフト「dolphin1/Kristallweizen」評価値は-312)

変化後手7六歩図5
 9七玉で先手不満となれば、先手は他の手をさがす必要がある。
 ということであれば、4一角からここで攻めていくか。試しに、やってみよう。
 4一角、3二歩、3三香、3一銀、5二角成(次の図)

変化後手7六歩図6
 ここで「7五桂」は、上の変化に合流する(「形勢不明」の結果になった)
 それを後手が“もっとよくしたい”ということであれば、ここで7七歩成、同歩、5二歩と取ってどうか。
 以下、4一飛(4二銀と応じる手は同飛成で無効)に、5四角(次の図)

変化後手7六歩図7
 9七玉に、8一桂だ。
 これには同竜。以下、同角、同飛成、4二銀引に、3二香成。
 3二香成を同玉は、2四桂以下“詰み”
 なので3二同銀だが、先手は5四桂(次の図)

変化後手7六歩図8
 5四桂(図)は3一角以下“詰めろ”なので7七とは間に合わない。
 ここで3一飛と受けるのが最強のがんばりだが、4二桂成、8一飛に、3六角と打つ手が、次に3二成桂、同玉、3三銀以下の“詰めろ”になっている。
 先手勝勢である。

 ということで、後手は結局、「7五桂」と打つ形にするのが“最善”で、それ以外の手は負けになるとわかった。すぐに「7五桂」を打つ必要もなさそうだが、結局その形に戻ることになるようである。


6七歩図
 さて、もう一つ、(2)6七歩(図)がある。 今調べた (1)8七玉 と並んで有力な候補手である。
 ただし、これは今回は調査しない。

 そして我々終盤探検隊が選択して指した手は、このどちらでもない、“第3の手”だった。



≪最終一番勝負 第27譜 指了図≫

 ▲4一角 である。

 我々は―――終盤探検隊は―――この手をずっと指したいと思っていた。



第28譜につづく
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終盤探検隊 part127 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第26譜

2019年07月19日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第26譜 指始図≫ 7三歩成まで

 指し手  △7三同銀


    [『Fire-ball』の扉絵 ]
男A「とにかく今度の蜂起では必ずATOMの存在を確認しないと」
ひげの男「そうだな。ATOMの存在の確証さえつかめば市民も我々に着くことは必至だ」
大沢ひかる「アトム…?」
   (中略)
ひげの男「急ぐんだ。捕まった幹部が口を割らされたらしい」
大沢ひかる「クスリですね」
ひげの男「ATOM計画は我々が考えているよりすすんでいるようだ。あれができちまったらアウトだからな」
ひげの男「それに我々のスパイがやられた……。もう情報が入らん。」
ひげの男「ヤツの情報によると今ATOMを使って人体実験をしているらしいんだ……。これを公表出来たらスゴイぞ」
大沢ひかる「人体実験…?」
ひげの男「ああ、機動隊の隊員で超能力を持っている男だそうだ…」
ひげの男「決行は一週間後に……? どうかしたのか……」
   (大友克洋作 漫画『Fire-ball』)



 大友克洋作『AKIRA』は有名だが、漫画『Fire-ball』はその原型となる作品で、1978年暮れに双葉社「アクションデラックス」誌に発表されたもの。
 巨大コンピューターATOMと、超能力兄弟(大沢晃と大沢ひかる)とが闘う話である。内容的には、その闘いが始まったところで、話が終わっている。

 いま読むと、『Fire-ball』は、『AKIRA』と較べると、メインキャラの風貌が“地味な”ところが決定的な違いで、そこがとても面白い。兄弟と対決するコンピューターATOM計画を強力に押し進めるリーダー役は、小太りで眼鏡のこれまた“平凡顔”のおばちゃんである。(『AKIRA』では強そうなモヒカンの大佐に代わっていた)
 もともとこれ―――主人公の風貌の平凡さ、地味さ―――が大友克洋漫画作品の個性だった。
 そして、近未来なのに、携帯電話をだれも使っていないところがまた異世界のようでおもしろい(映画『ブレードランナー』もそうだった)

 大友克洋の初期作品には、『鏡』というタイトルの短編もあり、また江戸川乱歩の小説『鏡地獄』を漫画化したものもある。どちらも“狂気的な”風味の作品である。
 この『Fire-ball』のタイトルページ(扉絵)は、「ボール型の鏡」に映ってゆがんでみえる部屋を描いている。その部屋の中には分解された(あるいは作りかけの)頭のない人間型ロボットが映っている。
 ――――よく見ると、「ボール型の鏡」と思っていたものは、このロボットの頭だった。
 (この絵の元ネタは、画家エッシャーの「球面鏡に写る自画像」の絵)



<第26譜 悪手は悪手を呼ぶ>

≪指始図≫ 7三歩成まで

 「亜空間戦争一番勝負」、先手の終盤探検隊が ▲7三歩成 と指したところ。

 悪手であった。 ▲8七玉が予定だったのに―――そしてそう指せば実際先手有望だったのに―――なぜか、▲7三歩成を選んだのである。“魔物のしわざ”だとしか言いようがない。
 (指した瞬間はしかしこれがベストだと思って指していたはずだが)

 指した後、後手の≪亜空間の主(ぬし)≫の手を待っている間に、7三歩成が悪手だと気づいた。
 ここで後手7五銀と指されて―――――負けそうだ。

 嗚呼―――――。


5六と図
 その一手前の局面。後手が「△5六と」としたところ。
  【子】3三歩成 → 後手良し
  【丑】2五香  → (互角に近いが)後手良し
  【寅】2六香  → 後手良し
  【卯】4一角  → 先手良し
  【辰】5四歩  → 後手良し
  【巳】6七歩  → 「互角」(持将棋の可能性あり)
  【午】8七玉  → 先手良し
  【未】7三歩成

 先手良しとなっている 【午】8七玉【卯】4一角 とは、実質同じもので、8七玉から9七玉と玉を先逃げしておいて、4一角から攻めていくという意味。つまりこの場合“手順前後”が成立して、どちらが先でもよいのである。

 そして、「【未】7三歩成 → 後手良し 」である。

≪指始図≫(再掲)7三歩成まで
 ほんとうに、この図はすでに「先手が悪い」のだろうか。 
 今回の報告では、それを検証していく。
 ここから、「7五銀、8七玉、6六と」が我々(終盤探検隊=先手)の恐れている手順である。
 (他に「6六と、8七玉、7五桂」もある。選択権は後手にある)

7五銀基本図
 ここで攻める手は先手勝てない。
 “4一角”が先手期待の攻め筋だが、“4一角”、3二歩、3三歩成、同銀、5二角成、同歩の後、次の攻めがない。6一飛のように飛車を打ちたいが、8一桂(同竜は5四角の王手竜取り)があって、後手良し。先手の「8七玉」の位置が悪いのだ。
 それなら、ここで5四歩はどうだろう。これならいまの“後手5四角”の手がない。
 しかし5四歩は、手抜きして攻められる。5四歩、7六銀、9七玉、7七と、8九香、7五桂(次の図)、

変化4一角図
 図以下、9八角(金で受けるのは8七桂成以下全部清算して再度7五桂と打たれて寄り)、8七桂成、同香、7五桂、7九桂に、7八歩となって、後手の勝ち将棋。
 5三歩成の余裕がない。

7五銀基本図(再掲)
 ここで“6三と”も、同じことだ。7六銀以下攻められて先手負け。
 つまり、この図で攻めの手はうまくいかない。

 この図での先手の候補手は、〔a〕9七玉〔b〕8九香〔c〕9八玉 の3つ。
 順に見ていく。


変化9七玉図01
 〔a〕9七玉(図)と玉を早逃げして、4一角や6三との攻めのチャンスを窺う。
 しかし、7六と、8八香に、8六銀(次の図)

変化9七玉図02
 8六銀(図)と、休まず攻めたててくる。
 8六同香、8五桂、同香、同金、8七歩、7五桂、9八銀、8四香、8八玉、8六金(次の図)

変化9七玉図03
 速い攻めで寄せられてしまった。


変化8九香図01
 〔b〕8九香(図)
 ここは、後手も 「7六銀」「7六と」 とで、手の選択に迷うところ。
 「7六銀」には、9八玉(次の図)

変化8九香図02
 ここで 7七と7五桂 がある。
 7五桂 はしかし、そこで7四とがあって、同金に、7八歩、7七歩、7五馬(次の図)

変化8九香図03
 7五で取った桂馬を3三桂と打ちこんで、こうなると先手優勢になっている。

変化8九香図04
 だから後手は 7七と(図)を選ぶことになる。
 これに対しても、ここで7四とがある(次の図)

変化8九香図05
 先手としては、7三歩成でつくった「と金」を、このように有効に働かせる展開になることが望ましい。
 この7四と(図)を同金は、先手が良くなる(4一角、3二歩、5二角成)
 他に手がなければ先手良しで確定するが、ここで“8七桂”があった。以下、7八歩、9九桂成、9七玉(次の図)

変化8九香図06
 ここで7八となら、5四歩と打って先手が勝てる展開になる(5四同銀には3三歩成、同銀、7二飛、3二歩、8四と)
 8九成桂が後手としては最善で、以下7七歩、同銀不成、7八歩、8八銀不成、8七玉、7四金、7二飛と進んで―――(次の図)

変化8九香図07
 形勢不明である。以下は、6二桂、6三歩、7三香、6二歩成、同銀、4一角の進行が予想される。
 このように、「7六銀」 では「互角」になって、後手としてははっきり良くなる順を求めたいところなので、おもしろくない分かれである。

変化8九香図08
 後手の“本筋”は、「7六と」(図)である。
 以下、9八玉に、8六銀(次の図)

変化8九香図09
 「8六同香」と「8七歩」が考えられる手。
 「8六同香」には、7五桂と打つ。以下9七金(代えて8八歩では8六とで後手良し)、6六銀、6三と、8五桂、同香、同金、8八歩、8六と(次の図)

変化8九香図10
 後手の攻めがほどけない。後手優勢。

変化8九香図11
 「8七歩」(図)と受けた場合。
 ここで後手に攻めの継続手がなければ、先手が良くなる。図で7七銀成なら、7八歩、同成銀、6三とで先手良しである。
 ところが、“9七桂”という妙手がある。8八香なら、今度は7七銀成とし、7八歩にも同成銀で次に7七とが狙いとなって後手が良い。
 “9七桂”に、8六歩、8九桂成、同玉、8七と、7八銀、7五桂と進んで―――(次の図)

変化8九香図12
 後手の攻めが切れない。次に後手7七歩があって、先手玉は助からない。
 
 〔b〕8九香 は、後手良しがはっきりした。


変化9八玉図01
 ということで、〔c〕9八玉(図)が、先手“最後の手”になる。
 この手が一番手が広くて闘える可能性がある。相手の手を見て、持駒の「香」を攻めと受けとの使い分けができるからだ。
 ここで後手 (1)7六銀 には、先手8九香と打って、それは先ほど調べた「形勢不明」の変化に合流する。
 後手としては、他の手でもっとよくできるか、という問題になる。

 しかしここは、(2)7六と でも、先手にうまい攻めがあって、先手良しになるのである。
 (2)7六と に、4一角、3二歩、3三香と攻める。これには3一銀が最善の対応だが、そこで3七飛と打つ。(次の図)

変化9八玉図02
 後手玉は、“詰めろ”がかかっている。それを受ける必要があるが、4二金は、5一竜、4一金、同竜で、以下8六銀には3一竜、同玉、3二香成、同玉、3三銀、4一玉、4二歩以下、後手玉詰み。
 4二銀引には5三歩がある。5三同金に、8四馬と金を取り、その手がやはり“詰めろ”になる。これも先手良し。
 4四銀引には5二角成である(5二同歩は3一竜以下詰み)

 これはどうやら、先手が勝てる図になっている。
 「7六と」の形が、角を手にしてもすぐに先手玉を詰ませられない形になっているので、先手のこの攻めが後手に届いたのである。

変化9八玉図03
 ということで、第3の手、(3)7七と(図)。
 今度は、後手は角を持てば、8七角から先手玉を詰ませることができる。
 すなわち、“4一角”、3二歩、3三香、3一銀、3七飛には、4二金と対応する(次の図)

変化9八玉図04
 先手は7七の「と金」を払いたいが、ここで7七飛は4一金と角を取られて先手が悪い。
 だからといって、6三角成では、7六銀で後手が勝ち。

 図以下、8四馬(同歩なら後手玉に詰みがある)、4一金、7五馬、8七角(次の図)

変化9八玉図05
 先手は8四馬~7五馬で、上部の金銀をさらったので、8七角(図)は詰みにはならないが、9七玉、7八角成、8九香に、6四銀上、7四馬、7五桂で、やはり後手が勝ちになる。

 “4一角” では先手勝てない。 (3)7七と には、次に示す手が先手の最善手であろう。

変化9八玉図06
 “7八歩”(図)と打つ。
 同となら6三とが利く。同金に、今度こそ4一角~3三香が有効になって、先手が勝てる。
 7八歩に、7六とでも、先手玉がすこし安全になるので、やはり6三とが利いて先手良しになる。
 7八歩に、後手の最善手は8六銀である。以下、7七歩に、8五桂と進む。
 そこで4一角、3二歩、3三香でどうなるか(次の図)

変化9八玉図07
 後手3一銀に、そこで「8七金」と受ける。
 「8七金」には、同銀成もあるが、できるだけ中段玉にはしたくないので、「7七銀不成」とする(次の図)

変化9八玉図08(7七銀不成図)
 「7七銀不成」(図)として、次の後手の狙いの手は8六桂である。
 なので、ここで先手は 8六歩 と打つのが自然であろう。(他に候補手として 3七飛 があり後述する)
 対して、後手は「7五桂」と桂を打つ(次の図)

変化9八玉図09
 ここで、7六金 と、8五歩 がある。
 まず、7六金 には、後手4二金とし、6三角成に、6六銀成。
 以下8五金、7七成銀(次の図)

変化9八玉図10
 8五金の質駒もあり、後手の攻めは切れない。後手勝勢。

変化9八玉図11
 8五歩 の場合。
 8七桂成、同玉、8六金、9八玉、6六銀上、8九桂、7六歩(次の図)

変化9八玉図12
 5一竜、7八銀不成、8八飛、8七銀成、同飛、同金、同玉、5七飛、9八玉、7七歩成(次の図)

変化9八玉図13
 先手玉に受けがなく、後手玉に詰みはない。 後手勝勢。

変化9八玉図14
 後手「7七銀不成」の局面まで戻って、3七飛(図)
 これは、先手に金か銀が一枚入れば、後手玉への“詰めろ”になる。
 後手は予定の“8六桂”。 以下、同金、同銀成、8四馬(この瞬間後手玉に“詰めろ”がかかった)、9七桂成(次の図)

変化9八玉図15
 9七同飛、8四歩、3七飛、4二金(詰めろを受けた)、3二香成、同銀、2五桂(3三歩成以下の詰めろ)、7六角、8九玉、1一玉(次の図)

変化9八玉図16
 1一玉(図)で、後手は“詰めろ”を解除した。先手はこれで、困った。後手玉に迫るにはどうしても何か駒を渡すことになる。そうすると先手玉が即詰みに打ち取られてしまう。
 どうやら「後手勝ち」で決したようである。
 たとえばここから、3三歩成、同銀、同桂成は、同金と取られ、5一竜に、8七香、8八歩、6七角成(次の図)

変化9八玉図17
 6七同飛に、8八香成、同玉、7六桂から、きれいな詰みである。

 〔c〕9八玉 には、(3)7七と で後手良し、とわかった。


7五銀基本図(再掲)
 よって、この図は「後手良し」が結論となる。


≪指始図≫(再掲) 7三歩成まで
 つまり、▲7三歩成とした図は、すでに先手が悪いことが確定した。
 ▲7三歩成は「悪手」だったと、はっきりと証明されたわけである。(その一手前の図では先手に勝ち筋があったのだから)

 ところで、この図からまず「6六と」として、「8七玉」に、そこで「7五桂」とする後手の攻め方もある。
 これについても調査したので、簡単に結果を示しておく。

7五桂基本図
 以下、「9七玉」とするが、そこで 「7六と」 と、「7七と」 とがある。(この場合、どちらが良いか選択が難しい判断になる)

7五桂図01
 「7七と」(図)には、8九香と受け、以下6五銀、9八金、7六銀と進め、そこで先手7四と(=好手、7三歩成でつくったと金が働くのは先手としてはうれしい)がある。
 以下、7四同金に、7二飛(次の図)

7五桂図02
 この図は、「形勢不明」の図になっている。
 以下、6二桂、6三歩、7三香、6二歩成、同銀、4一角の展開が予想される。

7五桂図03
 いまの進行を後手が不満と見れば、「7六と」(図)を選ぶことになる。
 8八香、6六銀、7八歩(次の図)

7五桂図04
 ここで後手に3つの攻め手が考えられる。我々の戦後研究では、次のような結果になっている。
  〔イ〕7七歩 → 先手良し
  〔ロ〕8七桂成 → 後手良し
  〔ハ〕6七銀不成 → 互角(形勢不明)

 以下、〔ロ〕8七桂成 を見ていく。
 〔ロ〕8七桂成、同香、7五桂、7九桂、6九金(次の図)

7五桂図05
 我々は、ここで“7四と”があって、この変化は「先手良し」と考えていた。すなわち、7四と、同金、4一角、3二歩、3三歩成、同銀、5二角成、7九金、7五馬(先手玉の詰みを解除した)、同金、5一竜――――この変化はギリギリだが先手が勝ちとなる。
 ところが、この手順中、4一角に対して、「3一歩」が有効とわかり、結論が逆になった(次の図)

7五桂図06
 「3一歩」(図)は、先手の3三歩成、同銀、5二角成に対応しており、この場合5二同歩で後手良しになる(さらに3二歩には4二銀右)
 その代わり、「3一歩」だと、「2三」に角の利きが直射しているので、2五飛などが気になるところ。すなわち、2五飛、3二歩、7五馬、同銀上、1五桂の攻め筋だが、8七と、同桂、2四香、同飛、7九角、8八金、2四角成で、後手が良いようだ。
 また、この図で、3三歩成、同銀、3二歩の攻めもあるが、7九金で、これも後手良し。

 ということで、「7三歩成図」(指始図)から、「6六と、8七玉、7五桂」も、後手良しという結論となっている。


≪指始図≫(再掲) 7三歩成まで
 ▲8七玉~9七玉で戦おうという考えは間違っていなかった。それを貫くべきだった。
 それなのに、▲7三歩成(図)と指して、「負け」の局面にしてしまった。なんということだ。

 ここで、思った。 「後手(=≪ぬし≫)が、7三同銀と応じてくれればいいのに。それならチャンスがあるのだが」と。
 しかし、そんな手を―――こちらにとって都合の良いそんな手を期待するのは無駄だろう。
 我々は、不利を自覚して、どう頑張るか、どう逆転するかを考え始めていた。



 ≪最終一番勝負 第26譜 指了図≫ 7三同銀まで

 ところが、≪ぬし≫は、△7三同銀 と指したのである。 



第27譜につづく
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終盤探検隊 part126 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第25譜

2019年07月09日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第25譜 指始図≫ 5六とまで

 指し手  ▲7三歩成


    [剃刀研ぎと鏡研ぎが酒を飲んだ十九日の夜に]
「まあ何にしろ変な訳さ。今に見ねえ、今日もきっと誰方どなたか取りにござる。いや作平(さくべい)さん、狐千年を経(ふ)れば怪をなす、私(わっし)が剃刀研(かみそりとぎ)なんざ、商売往来にも目立たねえ古物(こぶつ)だからね、こんな場所がらじゃアあるし、魔がさすと見えます。
 そういやあ作平さん、お前さんの鏡研(かがみとぎ)も時代なものさ、お互(たげえ)に久しいものだが、どうだ、御無事かね。二階から白井権八の顔でもうつりませんかい。」(注:白井権八は江戸時代の歌舞伎作品中の有名なキャラクター)
 その箱と盥(たらい)とを荷(にな)った、痩(やせ)さらぼいたる作平は、蓋(けだ)し江戸市中世渡(よわたり)ぐさに俤(おもかげ)を残した、鏡を研いで活業(なりわい)とする爺(じじい)であった。
   (『註文帳』泉鏡花著 より)


 時は明治時代。場所は吉原。東京(江戸)の遊里である。
 この話の中心にいる人物は、研屋(とぎや)の五助である。吉原の揚屋町(あげやまち)で剃刀研ぎ(かみそりとぎ)の仕事を引き受けている。吉原の遊女の「剃刀」を預かって研いで返す仕事であるが、その「剃刀」がこの怪異な話の主役である。

 その日はたいへんに寒い日で、如月(きさらぎ)の「十九日」だった。
 五助のところに捨吉という男が剃刀を急ぎで欲しいとやってきた。五助は断った。理由はその日が「十九日だから」という理由である。五助は毎月十九日は仕事をしないと決めていたのだ。
 そのわけを五助は捨吉に話す。五助の仕事は遊女から預かった「剃刀」を研ぐことだが、四、五年前から、仕事中にその「剃刀」が紛失するということが月に一度起こった。それが決まって「十九日」なのである。その消えた「剃刀」は、依頼した遊女の鏡台の上に置いてあったりした。それだけならまだしも、変なところに置いてあってだれかがそれで怪我をしてしまうというようなこともあった。
 そういうことがあって、五助は「十九日は仕事をしない」と決めたのである。

 捨吉は帰り、入れかわりに鏡研ぎ職人の作平(さくべい、六十歳くらい)が入ってきた。通りかかったとき、五助と捨吉の会話の「十九日」と「剃刀」の言葉を耳にして気になって入ってきたのであった。
 作平は、自分が最近受けた仕事の話を始めた。それは麹町(こうじまち)辺りのある家の家宝として大切にしている「八寸の鏡」を研ぐ仕事だった。
 その「鏡」というのは、何年か前のある日吉原で起こった「心中事件」に関係している。客である男に対してある遊女がその男を殺して自分も死のうと「無理心中」を計った。結果、男は命を取りとめ、遊女は死んだ。遊女は、その男のノドを「剃刀」で突き、返す刀で自分を突いたのだった。もともとその女は武術の心得があったのだという。
 ところが男はたまたま女が使っていた「鏡」を持っていて、それが偶然に命を救ったというのだ。女は「心中」が失敗に終わったことがわかって「口惜しい口惜しい」といいながら死んでいった。
 その「心中未遂事件」が起こったのが、明治八年霜月のやはり「十九日」だったというのである。作平が五助の「十九日」の話に気をひかれて足を止めたのは、そういう心中未遂話を聞いていたからなのだった。
 その男は、これに懲りて、以来、吉原通いをやめたという。
 男の命を救ったその「鏡」は、その後その家の家宝となった。そして時を経て、それを「特別に念入りに研いでほしい」という依頼で、先日作平のところに持ち込まれたというわけである。

 その作平の話を聞きながら、五助はふと分厚い註文帳を開き、なぜか剃刀研ぎの仕事を一件はじめる気になった。急ぎではないが特別に念入りに研ぎたい「剃刀」があった。本来は十九日は仕事をしないはずだったが、「不浄除よけの別火(けがれを浄化すること)にして、お若さんのを研ごうと思って」といい、また「この剃刀の持ちぬしは遊女ではないし廓内(くるわうち)に住んでいないから大丈夫だろう」というような理由をつけて。
 それは、吉原の紅梅屋敷という屋敷に住んでいる十八歳の器量よしの娘お若の「剃刀」だった。

 ところが、その「お若の剃刀」がやはりなくなってしまう。
 「剃刀」をさがす五助の前に、女の幽霊が現れる―――。
 幻のその女は、「これでしょう」と言う。 その手に、「お若の剃刀」があった。
 外は雪が降りはじめていた。
 
 そして――――
 その日(十九日)の深夜、「心中事件」が起こったのである。紅梅屋敷で。
 女はお若である。
 相手の男は欽之助という名の若者だったが、吉原に客として遊びに来たわけではなかった。
 欽之助はその日、四谷で、彼をドイツ留学に送るための宴会が開かれたが、帰りの人力車が横転したりといろいろあって、気づくとなぜか吉原に一人で来てしまっていたのであった。欽之助も酔っていてしっかりとはおぼえていないが、次につかまえて乗った人力車の車夫が、欽之助の言葉を聞き間違えたか何かで吉原へ運ばれたようだ。気がつくと雪景色の夜の吉原。車夫に四谷に戻してくれといっても、雪は降っているし、もうへとへとに疲れて動けないという。
 他の車はないかと欽之助は吉原を歩くが、どうにもならず。寒いし、道はわからない。
 そこに女(遊女の幽霊)が現れて、その女もなにやら困っている様子にみえたので欽之助が声をかけると、女は「これを紅梅屋敷に届けてくれないか」という。(紙に包んだ“これ”の中身はあの「お若の剃刀」であった)
 紅梅屋敷の門を叩いた若者は招き入れられ、こたつに入って、若者のこの日に起こった事情を聞いて、同情したお若と家の者は、欽之助に泊っていくよう勧める。
 やがて、この初対面の男女―――欽之助とお若(美男と美女であった)―――が突然に「心中事件」を起こす結末にとなったのである。
 自分の「剃刀」を手にした途端、娘が、突然にこの顔の美しい若者に恋心を燃やし、永遠に自分のものにしたいと、その「剃刀」を手にもって眠っている若者に襲いかかったのであった。
 もし欽之助があの「鏡」を持っていたなら、彼は死なずにすんだかもしれない。「送迎会で友人たちに吉原に行こうというようなノリになったらまずい」と心配した欽之助の叔母が、家宝の「鏡」をなんとか欽之助に持たせようとしたのだが、(彼はその「鏡」にまつわる因縁話を叔母から聞いて知ってはいたが)それを持って行かなかったのだった。欽之助は吉原に行くつもりなどまったくなかったので、「鏡」は必要ないと思ったのだろう。
 この若者は、作平の話の中の、あの「吉原心中未遂事件」で遊女に刺された男の甥だったのである。

 五助と作平は酒を飲んで眠っていたが、五助が「お若が男を剃刀で刺す夢」を見て飛び起きた。夜中の二時であった。五助と作平、あわてて紅梅屋敷へと駆けつけたが、時すでに遅し。
 「心中」は遂げられていたのであった。
 お若は即死。しかし深手を負った若者欽之助は、まだしばしの時間息があった。その命が尽きる前に、お若を娶ることを決め、二人は夫婦として死んでいくのである。
 五助と作平、二人の職人は泣きながら、「おめでてえな」「お若さん喜びねえ」と祝福するのであった。


 以上が泉鏡花『註文帳』のあらすじである。この作品の初出は明治34年(1901年)
 構成の面白い話だと思うが、それにしても、“註文帳” のタイトルは渋すぎるのではないか。 “十九日” とか “失せる剃刀” のほうがわかりやすくてよい気がするが、どうだろうか。現代なら“吉原剃刀心中事件”か。
 ところで、欽之助は23、4の年齢とあるが、この小説の中ではたびたび「少年」と書かれている。「少年」の定義が今と感覚的に違うようだ。(このあらすじでは「若者」と書き直した)

 なお、泉鏡花の「鏡」の字は、「鏡」に何かこだわりがあってのペンネームかと思いきや、単に本名が泉鏡太郎だからなのであった。




<第25譜 逢魔が時間>

指始図 5六とまで
 さて、「亜空間戦争一番勝負」、後手≪亜空間の主(ぬし)≫の△5六とに、先手の我々の予定は▲8七玉であった。
 その前に▲8六歩とした手を生かすためにも、それが自然と思えたし、とりあえず「9七」まで玉を移動させてから攻める―――というのが、先手番をもつ我々終盤探検隊のビジョンであった。

 それなのに、我々はなぜか、ここで“▲8七玉”を指さなかったのである!!!!
 
 それはなぜか――――ということを答えたいと思うのだが、我々は(戦いを終えたいまも)その理由を説明できないのである。
 なぜなら、“覚えていない”からだ。
 この局面で、我々自身が何を考え、何を思って「別の手」を選択してそれを指したのか、思い出せないのである。
 
 覚えていることは、この局面になる前から、そしてこの局面になった瞬間まで、「8七玉と指そう」と考えていたこと。たしかにそう考えていたのだ。


 とりあえず、この図についての“調査報告”を最後まで終えるとしよう。

≪指始図≫5六とまで
 今回の調査の進捗状況は、この通り。
  【子】3三歩成 → 後手良し
  【丑】2五香  → (互角に近いが)後手良し
  【寅】2六香  → 後手良し
  【卯】4一角  → 結論保留(調査中)
  【辰】5四歩  → 後手良し
  【巳】6七歩  → 「互角」(持将棋の可能性あり)
  【午】8七玉  → これから調査
  【未】7三歩成


8七玉図
 【午】8七玉(図)が今回の調査テーマである。

 ここで、≪A≫6六と が想定される手。 ほかに ≪B≫6六銀 がある。

A6六と図
 ≪A≫6六と(図)。
 ここで本命は“早逃げ”の「9七玉」である。
 (他には、「7八香」も有力な手だが、検討の結果、難しいところは多いが、7五桂以下「後手良し」が結論となった。その解説は省略する)

A9七玉図
 「9七玉」まで逃げておいて、ここからさあ戦おうということである。
 ここで後手が何を指すか。 考えられるのは、次の3候補手である。
  [E]7五桂
  [F]7六と
  [G]7七と

A7五桂図
 [E]7五桂(図)
 4一角と打っていく。 以下3二歩に、3三歩成から攻める(代えて3三香はこの場合は3一銀、5二角成、7六とで後手良しになる)
 3三同銀に、5二角成(次の図)

変化7五桂図01(5二角成図)
 ここで後手の対応手が問われるところ。次の6つの手が考えられる。
 (1)5二同歩、(2)4二銀左、(3)4二銀右、(4)8一桂、(5)7六と、(6)7七と

 まず(1)5二同歩から。 その手には、3一飛と打つ(次の図)

変化7五桂図02
 「3一」に打って、3四銀には4一竜を用意した。
 後手は8一桂(これしか受けがない)。
 同竜、8七桂成、同玉、5四角(次の図)

変化7五桂図03
 これで王手竜取りだが、実質後手の「角桂桂」と、先手の「飛」との交換になり、後手は二枚の桂を使い果たしてしまった。
 8八玉、3八飛、7八香(次の図)

変化7五桂図04
 6七ととしても、詰めろではないので、3一金として先手勝ち。
 受けるなら4二銀右だが、先手3四歩と打って、同飛成なら2六桂、4四銀なら1五桂が着実な寄せとなる。
 (1)5二同歩は先手良しとわかった。

変化7五桂図05
 (2)4二銀左には、4一馬(図)と潜りこんでおく。
 以下、7六と、8八香、8七桂成、同香、7五桂、7九桂、6六銀、3三歩(次の図)

変化7五桂図06
 3三歩(図)で、後手“受けなし”。
 3三同玉なら、3五飛。 3三同桂には、5一竜。

変化7五桂図07
 (3)4二銀右には、3四歩(図)で、先手良しだ。

変化7五桂図08
 このタイミングで(4)8一桂(図)とする手もある。これを同竜は、あやしくなる。
 この手には4一馬で先手が良い。
 以下7七とには9八金としっかり受ける(8九香と受けるのは9三桂で角を取った手が先手玉の詰めろなので逆転する)
 9三桂に、3一飛(次の図)

変化7五桂図09
 先手勝ち。


 (5)7六とには、8八香と受ける(8九香には7七桂があるので8八に打った)
 以下8七桂成、同香、7五桂、7九桂、8七桂成、同桂。
 そこで5二歩。先手はやはり3一飛。
 後手8一香(次の図)

変化7五桂図10
 8一同竜がわかりやすい。以下、8七と、同玉、5四角、6五歩、8一角、同飛成。
 このケースは、後手の盤上にいた「と金」が桂馬と交換になり、後手の攻め駒が「飛桂」になる。
 5七飛、9八玉、5八飛成、8八香、7六桂、8七金(次の図)

変化7五桂図11
 後手の攻めは止まり、先手優勢がはっきりした。
 このままなら先手3一金があるので、ここは後手8八桂成、同金、4二銀右が予想されるが、1五桂と打てば後手は適当な受けがない。
 (5)7六とは8八香で先手良しになった。

変化7五桂図12
 (6)7七と(図)
 この手に8九香と受けるのは、先手負けになる。5二歩と角を取って、先手玉に8七桂成、同香、7九角から詰みがあるからだ。つまり8九香は受けになっていないのだ。
 といって、9八金と受けても、8七桂成、同金、同と、同玉、7五桂以下、良いタイミングで5二歩と角を取られて先手が勝てない。
 そうするとここは受けがないようにも思えるが、4三馬があった(次の図)

変化7五桂図13
 (6)7七とには、奇跡的にこの4三馬(図)があった!
 6五歩なら、8九香と受けておく。以下、4二銀右、5四馬となるが、そこから後手の有効な攻め手がないので、先手が優勢。先手のほうは9二竜や3七桂など有効手が多い。
 よって後手は、この図から、4二銀右、9八馬の後、8七桂成から清算して馬を消しに来る。
 8七桂成、同馬、同と、同玉、7五桂、9七玉(次の図)

変化7五桂図14
 さて、ここでどっちの形勢が良いのか。
 ここは後手の候補手が多い。(9五歩、6五角、6九角、6六銀など)
 6五角、8八金(6六銀に対しても8八金と受ける)、9五歩、4三歩(次の図)

変化7五桂図15
 4三同銀、5一竜、9六歩、同玉、2九角成(次の図)

変化7五桂図16
 8四馬、同歩、7一飛、4一歩(次の図)

変化7五桂図17
 4一同竜は7四馬がある。
 7三歩成、9四歩、7四と(次の図)

変化7五桂図18
 形勢は先手良し。

変化7五桂図14(再掲)
 少し戻って、後手7五桂に9七玉の場面。最新ソフトの評価値は[-112 互角]を示している。
 ここは“6五角”以外にも後手の有力手がある。
 “6六銀”には、8八金と受ける。以下9五歩に、4三歩で先手が良さそうだ。
 “9五歩”、4三歩、6九角、8八金、9六歩、9八玉という展開もある。以下9七歩成、同玉、9五金には、7五馬があって先手が良い。
 この図は(先手が悪くなる順が見つからないので)「先手良し」としておく。

 よって、(6)7七とも4三馬があって、先手良し、という結論になる。

変化7五桂図01(再掲5二角成図)
 これでこの「5二角成図」は「先手良し」が確定した。

 つまり、[E]7五桂 には、4一角、3二歩、3三歩成、同銀、5二角成と攻めて先手良しである。


変化7六と図01
 [F]7六と(図)
 この手にも、同じように攻めていく。
 4一角、3二歩、3三歩成、同銀、5二角成までは進む。
 そこで7五桂では、上と同じになる。(それは先手良し) なので、他の手があるかどうか。

変化7六と図02
 7五金(図)でどうか。
 この手は8六金以下詰めろなので、先手は受けることになる。

変化7六と図03
 8九香(図)と受けて、どうやら先手良し。
 5二歩には、3一飛。そこで7九角には、9八玉と逃げておけばよい。


変化7六と図04
 [G]7七と(図)
 今度は、いままでの場合と事情が異なる。同じように攻めていくと先手失敗に終わる。すなわち、4一角、3二歩、3三歩成、同銀、5二角成、同歩、3一飛だと、7九角から詰まされてしまう。
 だからといってここで8九香と受けても、7五桂と打たれると、同じように進んだ時、8七桂成、同香、7九角があるので、やはり攻めていけない。

 そうすると、「別の攻め」があるかどうかだが―――。
 見つかった!! 「4一角、3二歩」まで決めて、「3七飛」と打つ(次の図)

変化7六と図05
 「3七飛」(図)は攻防の飛車打ちである。後手6六銀なら―――(次の図)

変化7六と図06
 3三香(図)で先手優勢になる。
 3三同桂に、そこで8四馬と金を取る。
 8四同歩に3三歩成、同銀、3二角成、同玉、3一金(次の図)


 後手玉が詰んだ。

 このように、後手[G]7七と の手には、「4一角、3二歩、3七飛」が有効なのだが、この手順の発見はそう簡単ではなかった(最新ソフトも示していない手順である)
 なお、最初の「4一角、3二歩」を入れずに“単に3七飛”では、6六銀で先手苦戦となる。そこで4一角は3一歩と変化して受けられる。
 「4一角、3二歩、3七飛」の手順が大事なのである。

変化7六と図07
 「3七飛」に、4四銀上のような受けだけの手では、7七飛と「と金」を払われて後手は希望がない。
 そこで7五桂(図)が後手の工夫の手。
 7七飛と「と金」を取る手に、6七歩(代えて6六銀では3七飛と戻って後手がまずい)
 そこで7九飛(5九の金取り)なら、6六銀で後手が良い―――これが後手の狙いだが―――
 しかし7六飛がある(次の図)

変化7六と図08
 7六飛と飛車を一つ浮けば、いつでも3筋に飛車を戻せるし、2筋の攻めも狙える。
 6八歩成に、2六飛、7八と、2五香と進めば、1一桂に、2三香成、同桂、2四金で、先手勝勢となる。
 図で6六桂には、2六香と打っておき、次に7五飛と桂馬を取って1五桂と打つ手を狙いにする。

 [G]7七と には、「4一角、3二歩、3七飛」で先手良し。
 そうなれば先手が良いとわかったのだが、しかし、後手に途中で「変化」する手がある。

変化7七と図01
 最初の4一角に、「3一歩」(図)とする手があるのだ。
 これにも3七飛でよさそうに思えるが、以下6七歩、3六香、4四銀引となると、形勢不明である。
 この図での正着は、「7三歩成」である。

変化7七と図02
 「7三歩成」(図)の具体的なねらいは、7八歩、同と、6三とのような筋である。
 「7三歩成」を、同銀 なら、2五飛、3二歩、5五飛で先手が良い。
 ここで後手の有力手は、7五桂7五銀

 7五桂、8九香に、「7六歩」。
 ここで6三とは、8七と、同香、7七歩成で、後手の攻めが早く、先手が負ける。
 「7八歩」が正着(次の図)

変化7七と図03
 7八同とに、6三とではやはり7七歩成で後手の攻めが厚く、先手勝てない。
 ここは8三とが正解手。
 以下、7四金に、9五歩(次の図)

変化7七と図04
 8九となら、9六玉。 9五同歩には、8五歩と突いて、次に8六玉~9五玉の“入玉”狙い。
 この図は、先手優勢。
 (入玉を阻止するため9五同歩、8五歩に、7三桂と打つのは、同と、同銀、2六飛、3二歩、1五桂で、先手勝ち)
 「7八歩、同と、8三と」が好手順であった。

変化7七と図05
 後手の工夫。「7五桂、8九香」に、「6五銀」(図)
 ここで2五飛と打ちたくなる。しかしそれは3二歩、5五飛、7六銀で、後手が良い。これは先手が後手の“わな”に嵌まったパターン。
 ここは「2六飛、3二歩、7八歩」が正解手順になる(次の図)

変化7七と図06
 2六飛と打ったのは、7八とを同とと取らせた後、後手の7六銀を指させないという意味である。(“7六に銀を出させない”というのがここは急所なのだ)
 「7八同と」なら、先ほどと同じように、8三と、7四金、9五歩の“入玉”狙いで先手良し。
 ここは7八歩に、「7六と」を見ていこう。
 「7六と」と引かせ、後手の銀は7六に出てこれないようになった。それが7八歩を打った効果である。
 ここで6三とを決行する。
 8七桂成、同香、7五桂、9八金(次の図)

変化7七と図07
 こうなると先手には5二との攻めに加えて、3五桂もある。
 なので、8七と、同金、同桂成、同玉、3五金のような展開になりそうだが、5二と、2六金、5三とは、先手優勢である。

変化7七と図08
 「7三歩成」に、7五銀(図)
 銀が出てきた場合は、ここでも2六飛と打っておくのがよい。以下、3二歩に、「8九香」(次の図)

変化7七と図09
 ここで7六銀は7八歩で先手良し。
 後手 8七桂 という手がある。同香なら、7六銀と出ようという意味で、そうなると後手の調子が良い。
 8七桂は放置して、6三とと攻めあう。以下、9九桂成、5二と、9五歩(同歩なら9四歩から香車を打つ攻めを狙う)
 そこで8四馬がある(次の図)

変化7七と図10
 8四同銀に、3三金、同銀(同桂は2一金から詰み)、同歩成、同玉、3二角成(次の図)

変化7七と図11
 後手玉は詰んでいる。3二同玉には、3六飛から。4四玉には、3四金(同玉には2三馬、5四玉には4三馬以下)で。

変化7七と図12
 「8九香」のところまで戻って、6六銀左 もある。
 この手は、次に7六ととして、7七銀成から銀を使うねらいである。
 先手は6三と。
 後手の7六とに、7八歩。銀の進出を防ぐ。
 そこで7七歩なら、5二と、7八歩成、5三と(3三銀からの詰めろ)で、先手良しになるが―――(次の図)

変化7七と図13
 7七桂(図)という手がある。
 これを同歩と取って、同銀成に、9八桂と受ける手はあるが、6六桂が好手(次に8七と、同香、7六銀をねらう)で、後手が勝つ。
 ここは8八香が最善の対応で、以下8九桂成に、5二と。
 6三と~5二との攻めで認識しておきたいのは、このときに「金金」ではまだ駒が足らないが、これに「銀」が加わると、5二とのときに、後手玉は3二角成、同銀、4一銀以下の“詰めろ”になるということである。つまり今は「銀」が足らないが、その銀は6六にある。
 8八香、8九桂成、5二との後、8八成桂、同玉、7七歩と進み、先手玉はほぼ“受けなし”の状況に追い込まれるが―――(次の図)

変化7七と図14
 6六飛(図)と銀を取って、“詰めろ逃れの詰めろ”である。先手勝ち。

 [G]7七と は4一角以下先手良し、が結論となる。


A9七玉図
  [E]7五桂 → 先手良し
  [F]7六と → 先手良し
  [G]7七と → 先手良し

 先手は、後手のこの3つの手にたいして、勝ち筋があることがわかった。

 よって、【午】8七玉 に、6六と9七玉 と進んだこの図は、先手良し。


B6六銀基本図
 次に、先手の 【午】8七玉 に、 ≪B≫6六銀(図)を考えたい。
 感覚的には、6六銀よりも6六とのほうが勝る手に思えるが、実際に調べると、6六銀のほうがよいケースもあるということがわかってくる。「たぶん勝てるだろう」という楽観の読みの隙間に、敵の妙手が潜んでいることだって、将棋にはよくあることなのだ。

 6六銀にも、「9七玉」 と早逃げする(次の図)

B9七玉図
 ここから考えられる候補手は、次の3つ。
  〔U〕7五銀上
  〔V〕7五桂
  〔W〕7七銀成

 まず、〔U〕7五銀上 を見ていく。
 やはり4一角からの攻めで勝てるだろうか。
 4一角、3二歩、3三歩成、同銀、5二角成、同歩、3一飛、8六銀(次の図)

変化6六銀図01
 8六同玉に、6八角。以下、9七玉に、7九角成、8七玉(次の図)

変化6六銀図02
 対応を誤ると一気に負けになってしまいそうな形だが、正しく応じれば先手に詰みはなく、先手が勝てるようだ。

変化6六銀図03
 先手の4一角に、3一歩と後手が受けた場合。それには、3七飛(図)と打つ。
 この飛車打ちは、後手の7七銀成を簡単には指させないという意味がある(3六飛や3八飛では7七銀成~7六銀で後手良しになる)
 7六銀(次に7七銀左成または7五桂の狙い)に、3六香と打つ。この手は、2三角成、同玉、3三歩成、同桂、3四金以下の“詰めろ”なので、後手は対応しなければいけない。
 しかし、3二歩では、3三歩成、同桂、3四歩で、先手はっきり優勢。
 なので4四銀と受ける。
 そこで先手5二角成(次の図)

変化6六銀図04
 5二同歩には、3三金から後手玉“詰み”。
 しかしこの瞬間が甘く、後手は7七銀左成。“詰めろ”だ。
 これを9八金と受けるようでは、5二歩で後手勝ちになる(金一枚では後手玉は詰まない)
 だが、4三馬が―――(次の図)

変化6六銀図05
 “詰めろ逃れの詰めろ”。 以下、8七成銀、同飛、4三銀、3七飛が予想される。 
 先手が良い形勢のようだ。

 〔U〕7五銀上 は、4一角で先手良し。


B7五桂図
 〔V〕7五桂(図)
 「6六と」の場合と同じように攻めてみる(これで問題なく勝てそうな気がするが……) 
 4一角、3二歩、3三歩成、同銀、5二角成、7七銀成、4三馬(次の図) 

変化6六銀図06
 4二銀右、9八馬、8七桂成、同馬、同成銀、同玉、7五桂、9七玉(次の図)

変化6六銀図07
 この図は、下の参考図の先手良しだった変化と比べると、先手の持駒に「銀」がプラスされている。だからこの図も先手が良いだろう―――と簡単に判断を下してしまいそうになるところである。
 ところが、実は逆で、この図はどうやら「後手良し」なのである。それは手を進めてみれば明らかになる。
 6七と、3四歩、9五歩、8八金、9六歩、同玉、6九角(手順中、後手9六歩に9八玉は7六角、8九玉、8七桂成で後手良し)

参考図(再掲 変化7五桂図14) 
 (6六と型から後手7五桂に4一角以下攻めた時の変化。と金は消えて5五銀が残っている→先手良し)

変化6六銀図08 
 6七の「と金」の存在が大きい。
 9七玉は、9六歩、9八玉、7八と―――先手負け。
 7八銀合(攻めに使うために桂を残した)も、9五歩、9七玉、7八と、3三歩成、同歩。以下後手玉は詰まないので、先手の負け。
 
 つまり、〔V〕7五桂 に、4一角、3二歩、3三歩成、同銀、5二角成の攻めは、「後手良し」になった。

 すると、先手は勝つためには「別の攻め」を探さなければならない。(それがなければ「後手良し」が今回の『8七玉の研究』の最終結論になる)
 勝ちにつながる「別の攻め」は、あるのだろうか。

変化6六銀図09
 あった!! 「4一角、3二歩」まで同じで、そこで「3三香」(図)と打つ。
 この場合は3三歩成、同銀、5二角成ではなく、「3三香」で先手が勝てるのである。
 この攻め筋は、「6六と型」の時には、うまくいかない。それは3一銀、5二角成と進んだ時に、7六とがあるからである。
 ところが、今回の「6六銀型」の場合、銀なので「7六」には行けない。だから「3三香」の攻めで先手が良くなる、というリクツだ。
 先を進めてみよう。
 3一銀(受けはこれが最善)、5二角成(同歩なら3一飛で先手良し)、7七銀成、4三馬(次の図)

変化6六銀図10
 「7六」ではなく、「7七」に後手の成銀が居るので、この4三馬の受けが利く。
 そしてこの場合、「3三香」がすでに刺さっている状態なので、ここで後手に4二銀右という手がないのも大きい(4二銀右は3二香成、同銀、3三金から詰み)
 図以下は、8七桂成、同馬、同成銀、同玉、7五桂、9七玉、6九角、9八金と進みそう(次の図)

変化6六銀図11
 この図は、まだ予断を許さない場面だが、正しく指せば先手が勝てる。
 6七と、5一竜(詰めろ、4二銀引でも3二香成で詰む)、1四歩、4三銀、7七と、3一竜、1三玉、8九飛(次の図)

変化6六銀図12
 7九桂のような平凡な受けでは、9五歩で後手勝ちになっていたところだが、8九飛(図)があった。
 9五歩には、6九飛から角を取って、3五へ打てば後手玉は詰み。7八角成は3六桂で後手“受けなし”
 先手の勝ちがはっきりした。

 〔V〕7五桂 は、4一角、3二歩、3三香以下、先手良し。


B7七銀成図
 〔W〕7七銀成 には、角を渡す攻めはできない。
 「6六と型」での7七とに学んだように、「4一角、3二歩、3七飛」がここでも正解手になる。
 後の変化を確認しておこう。

変化6六銀図13
 6七とでは3三香で先手良し。
 ここは7五桂以下を見ておこう。7五桂、7七飛、6七と、7九飛、6五桂。
 そこで3三香と放り込む(次の図)

変化6六銀図14
 3三同桂、同歩成、同玉(同銀は5二角成)、5九飛、7七桂成、3四歩、2四玉、9八銀
(次の図)
変化6六銀図15
 先手勝ち。

変化6六銀図16
 さあ、これが本日の“最後の問題”である。
 先手4一角に、3一歩(図)の場合。
 ここは、2六飛、3二歩、7三歩成が有効な指し手。

変化6六銀図17(7三歩成図) 
 ここから後手には手がいろいろあるが、「7五銀~6六と」という攻めが最有力と見てそれを解説していく。
 7五銀、8九香、6六と、7八歩(次の図)

変化6六銀図18
 「7八歩」(図)が重要な手。これを同成銀とするか7六成銀とするかで、先手の指し方が変わる。
 7六成銀 または7六歩なら、6三とからの攻めが間に合うと先手は見ている(7六成銀 は後で解説)

 では、7八同成銀 にはどうするか。
 それには3三歩成、同銀に、5二角成と攻める手が成立する。 5二同歩に、3一金(次の図)

変化6六銀図19
 この5二角成の攻めは、角を渡す攻めなので、それでも自玉が大丈夫かの見極めが重要である。この場合は、7九角には9八玉で良いし、8六銀、同玉、7五角にも、8七玉で逃れている。
 3四銀、4一飛成、3三玉、4五歩(次の図)

変化6六銀図20
 4五歩を同銀は、2三飛成、4四玉、4三竜右以下“詰み”
 先手勝勢になった。

変化6六銀図21 
 今の手順の途中5二角成に、4二銀右(図)とした場合。 先手は4一馬とする。
 8九成銀では3四歩(詰めろ)で後手いけない。
 なのでここは「3四桂」と3四に“先着”で飛車取りに打つ(飛車が逃げれば8九成銀→後手良し)
 先手は飛車を逃げずに、5一竜(次の図)

変化6六銀図22
 5一竜(図)で、先手優勢になっている。
 5一同銀は3一金。2六桂も3一金だ。
 だから図では3一桂とすることになるが、4二竜、同銀、同馬(次の図)

変化6六銀図23
 次に2三飛成から簡単な詰みがあるが、それを2六桂で防いでもそれでも詰みがあるのだ。
 これは気づきにくい詰みだが、これがわかっていないとこの順には踏み込めないところだった。3三銀と打ち、同桂に、3一馬と桂馬を取り、同玉に、2二銀。これを同玉は3四桂から簡単なので、4二玉と逃げるが、そこで5二金と打ち捨て、同玉、6三金、4一玉、4二歩以下の詰みである。
 したがって、この図で6七飛などでは9八玉で先手が勝つ。
 よってここは「5七飛」と打つ。これならいま示した詰み筋を防いでいる。
 5七飛には、「8七金」と受けるのが正しい応手。
 後手はそこで「2六桂」と飛車を取るが、先手「3三歩」が決め手となる(次の図)

変化6六銀図24
 先手玉は詰まないので、後手は「3三歩」(図)に応接しなければいけないが、3三同桂に、4一銀で先手の勝ち。

変化6六銀図25
 戻って、「7八歩」に 7六成銀(図)の場合。
 これには6三と。そこで7七桂がある(次の図)

変化6六銀図26
 よく似た形が上で出てきたが、その時とは後手の攻め駒の並びがわずかに違う。
 この場合は8八香では、8九桂成、5二と、8八成桂、同玉、7七歩で、先手負け(銀の質駒がないから5二とが間に合わない)
 ここでは、7七同歩が正解となる。同とに、9八桂と受ける(次の図)

変化6六銀図27(9八桂図)
 ここで後手に色々な手があって、実戦的には「互角」にちかい勝負となる。しかし正確に対応すれば、後手のどの攻めも「先手勝ち」になるようだ。先手に「銀」が入ると5二とが後手玉の“詰めろ”になるので、後手が工夫して攻めても、なにかしら先手に勝ち筋が出てくるのだ。
 この図で、先手は「5二と+4二と」の2手で後手玉に届く攻めになるが、後手はそれまでに先手玉を攻略したい(6三金、同角成は後手面白くない)

 “6六銀”以下の攻防を、以下見ていく。
 “6六銀”の狙いは、次に7五桂と打つこと(5二となら7五桂で後手良し)
 だから先手は「敵の打ちたいところに打て」で、7五歩(=最善手)と打つ
 それではと後手は6五桂とこちらに打つ(次の図)

変化6六銀図28
 やはり5二とは8七と、同香、7七桂成で後手良しになる。
 (単に6五桂だと先手に7八歩という手があったが、「6六銀、7五歩」の後では歩が使えない)
 先手どうするか。
 6六飛と飛車切りが最善手。同成銀で、後手の攻めを遅らせて、5二と。
 銀が手に入ったので、5二とは3二角成、同玉、4一銀からの“詰めろ”になっている。
 後手は1四歩で、詰めろを消す。4二と、同銀。
 そこで8二馬(次の図)

変化6六銀図29
 5五馬が狙い。
 それを許せない後手は、5七飛と打つ。 先手玉への“詰めろ”になっている(8八と以下)
 先手は4八金と打って、飛車を追う。5六飛成に、1一銀(次の図)

変化6六銀図30
 1一同玉に、3二角成。
 以下、2二銀に、3三銀打(代えて4二馬では先手負け)
 後手は8七とで、最後の勝負(次の図)

変化6六銀図31
 8七同香、3三銀右、同歩成、8八銀、同玉、7七桂成、8九玉(次の図)

変化6六銀図32
 8九玉(図)で逃れている。3三銀には3一金と打って、後手玉は“必至”
 先手勝ち。

変化6六銀図27(再掲9八桂図)
 もう一度この図まで戻り、後手の攻めをもう一つ紹介しておこう。
 ここから“8六銀”と捨て、同桂に、8五金と出る(次の図)

変化6六銀図33
 ここで8七歩が常識的な手だが、それには8四桂と打たれて後手が優勢だ。
 しかし6六馬という絶妙手があった(次の図)

変化6六銀図34
 陰から突然現れたような6六馬(図)の“王手”で、先手良しになっている。
 同成銀なら、先手玉の詰めろが消えて、逆に5二とで後手玉に“詰めろ”がかかって先手良い、という仕組みだ。
 4四桂(4四歩でもだいたい同じ)以下が面白いのでそれを見ておくと、4四桂には、3三銀と打ちこむ。これを同銀は、同歩成、同玉、3四銀、同玉、3五歩、同玉、5七馬以下、“詰み”がある。
 なので3三同桂だが、そこで7六馬(次の図)

変化6六銀図35
 銀を補充した。これで後手玉に、2一金、同玉、2三飛成、1一玉、2二銀までの“詰み”があるというわけだ。
 それを防いでも、8五馬や5三とで、これはもう先手勝ちで決まりである。

 〔W〕7七銀成 は、4一角以下先手が勝てる。
 (4一角に3二歩には3七飛、3一歩には2六飛、3二歩、7三歩成)


B9七玉図
 〔U〕7五銀上 → 先手良し
 〔V〕7五桂  → 先手良し
 〔W〕7七銀成 → 先手良し

 よって、≪B≫6六銀 には、「9七玉」で、先手良し。

 
 以上の結果をまとめると

8七玉図
 【午】8七玉 としたこの図は、≪A≫6六と≪B≫6六銀、どちらの手に対しても、「9七玉」として、先手良し、が結論となる。


≪指始図≫5六とまで
 その結果、こうなった。
  【子】3三歩成 → 後手良し
  【丑】2五香  → (互角に近いが)後手良し
  【寅】2六香  → 後手良し
  【卯】4一角  → 先手良し
  【辰】5四歩  → 後手良し
  【巳】6七歩  → 「互角」(持将棋の可能性あり)
  【午】8七玉  → 先手良し
  【未】7三歩成

 【卯】4一角【午】8七玉 とは、先手が手順を尽くせば、結局同じ図に合流することになるので、結果も連動して「先手良し」である。
 「8七玉~9七玉」の手と、「4一角」を組み合わせる手で、先手に勝ち筋が存在していたということである。


 つまり、最初の予定通り、▲8七玉 と指していれば、(正確に指して勝ち切れたかどうかはともかく)先手の勝ち筋のある道へと進めたはずなのである。
 直感の通りに、そう進めていれば……。 9七玉と4一角の組み合わせは、見えていたのだ!!

 ところが―――――



≪最終一番勝負 第25譜 指了図≫ 7三歩成まで

 我々(終盤探検隊)は、指す予定ではなかった手、△7三歩成 を選んで指したのである。
 理由は、説明できない。

 “魔が差した”としか表現のしようがない。(▲8七玉なら先手良しだったのに……)


 泉鏡花『註文帳』で剃刀研ぎ師の五助が、「19日は仕事をしない」と決めていたのに、なぜか註文帳を開いて一件の仕事を始めてしまった。それが“怪異な事件”をもたらした。
 なぜ五助はその仕事(お若の剃刀を研ぐ)を始めてしまったのか。
 それは、本人にも説明のしようのないことなのだ。


第26譜につづく
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終盤探検隊 part125 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第24譜

2019年07月05日 | しょうぎ
≪亜空間最終一番勝負 第24譜 指始図≫ 5六とまで



    [妖怪・雲外鏡]
照魔鏡と言へるハ、もろもろの怪しき物の形をうつすよしなれハ、その影のうつれるにやとおもひしに、動出るまゝに、此かゞみの妖怪なりと夢の中におもひぬ
    (鳥山石燕著『百器徒然袋』(1784年)より)

ねずみ男「おいしそうなもちだなあ」
鬼太郎「おいしいにきまってるよ。妖怪もちだもの」
ねずみ男「どうだいこの鏡ととりかえんかい?」
   (中略)
女の子「そのころわたしの家にどろぼうが入り、鏡を盗んでどこかへいってしまったのです」
砂かけ婆「おまえのしわざだな」
子哭き爺「こんなやつがいるから妖怪の信用がなくなるんだ」
ねずみ男「とんでもない! ぼかあ女の子をたすけようとおもって、鏡を鬼太郎のところに運んだにすぎないのだ。どろぼうのふりしてよいおこないをしたのだ」
   (中略)
女の子「鬼太郎さえいなければこれからはしたいことができるのよ。おほほほほ。ねずみ男、川へ洗濯にいってくるから、鏡を穴に埋めといて」
    (水木しげる作『ゲゲゲの鬼太郎 鏡合戦』(1968年)より)


 中国から伝わるという「照魔鏡(しょうまきょう)」という鏡は、魔物の正体を明らかにするといわれている。
 「鏡」に妖怪の姿がうつっているので、この「鏡」はそのうわさに聞く「照魔鏡」なのかと思いきや、この「鏡」そのものが妖怪だったでござる――――というのが、鳥山石燕による「妖怪・雲外鏡(うんがいきょう)」の説明。
 鳥山石燕(とりやませきえん)は江戸中期の人物で、妖怪画をたくさん描いた。「妖怪・雲外鏡」は石燕の創作といわれている。

 この鳥山石燕の妖怪画集をタネ本として、昭和時代にたくさんの妖怪漫画を描いたのが水木しげる。
 『ゲゲゲの鬼太郎 鏡合戦』の中に登場する「妖怪・雲外鏡」は、ねずみ男を手下にして使い、「鏡の中に捕らえられた女の子(学校の制服姿)」のふりをして鬼太郎たちに近づいて、同情を誘い罠にかけて、「鏡」の中に逆に鬼太郎を閉じ込めてしまう。
 しかし、「ねずみ男、川へ洗濯にいってくるから、鏡を穴に埋めといて」という行動が油断であった。
 そのすきに目玉おやじが「照魔鏡」をもってきて、「鏡」の中の鬼太郎を救出。
 そして鬼太郎たちと「雲外鏡」の戦いが始まった。女の子に化けていた「雲外鏡」は、「照魔鏡」の光を当てられて本当の姿を現す。おそろしい顔の化け物だ(鳥山石燕が描いた通りの姿)
 鬼太郎は塩水をつかって、この妖怪を退治したのであった(古い鏡は銅でできているから塩水に弱いというリクツである)



<第24譜 予定は8七玉だった>

 「亜空間戦争最終一番勝負」が進行中。 いよいよ勝負所をむかえている。


≪最終一番勝負 第24譜 指始図≫ 5六とまで
 後手――≪亜空間の主(ぬし)≫――の指し手は △5六と(予想通り)

 さて、手番は先手の我々――終盤探検隊――だ。
 次のとおりの候補手がある。
  【子】3三歩成 
  【丑】2五香
  【寅】2六香
  【卯】4一角
  【辰】5四歩
  【巳】6七歩
  【午】8七玉
  【未】7三歩成

 以下に記す調査報告は、この図における“戦後調査”による結果である。一つ一つ解説していく。


3三歩成基本図
 【子】3三歩成(図)
 この手は、一手前、後手5六とに代えて7五銀~6六銀に対しては有効だった。 ところがこの場合はうまくいかない。
 3三同銀に、3九香と打つのが先手の継続手だが―――(次の図)

3三歩成図01
 そこで6六と(図)。 以下8七玉に、3四歩と受ける。
 そこで4一飛がこの場合の先手の期待の攻めなのだが、7五桂、9七玉、7七ととされて―――(次の図)

3三歩成図02
 先手玉に“詰めろ”がかかった。それが大きい。(もし詰めろでなかったら、3一角、1一玉、3二金で先手が勝てたところだったが)
 “詰めろ”を受けるために先手は持駒の金か角を使うしかない。しかしそれでは先手が勝てない。(たとえば9八角には4二銀右で先手は困っている。次に後手3二玉から飛車を取りにいく手がある)
 後手勝勢。


2五香基本図
 【丑】2五香(図)
 この香打ちの狙いは、「2六飛」と打つ手と、「2三香成、同玉、4五角」という寄せである。
 【丑】2五香 には、6六と、8七玉と進む(先手に6七歩などの受けの余地をつくらないために6六とを決めておく)
 そこで後手が何を指すのが正解か(次の図)

2五香図01
 候補手は、次の5つ。
 (1)7五銀、(2)7五金、(3)3一桂(1一桂)、(4)7五桂、(5)3一銀 

2五香図02
 (1)7五銀に、「2六飛」(図)でどうなるか。
 3一桂、2三香成、同桂、4一角、3二歩、2四金、3一桂、2三金(次の図)

2五香図03
 2三同桂に、1五桂で、後手はもう受けがない。
 なので、8六銀から反撃するが、9八玉と逃げる(次の図)

2五香図04
 この図の先手玉は、詰まない。
 「金香」を後手に渡しても先手玉は詰まない、ということで(1)7五銀には、2六飛以下の攻めで、先手が勝っているという結論となる。

2五香図05
 (1)7五銀には、「2三香成」(図)でも、先手が勝てる。
 2三同玉に、4五角と打つ。次に3三歩成、同玉、3四飛以下の“詰めろ”なので、後手はそれを2二桂と打って受けるが、そこで8四馬と金を取る手がある。
 8四同歩に、3三歩成、同玉、3二飛(次の図)

2五香図06
 鮮やかに寄せて、先手の勝ち。

2五香図07
 (2)7五金(図)。
 この手は、先手がここで「2三香成、同玉、4五角」の攻めを敢行してきたときに、いまの(1)7五銀の手との違いが出る。そこで7六金、9七玉(9八玉)となれば、先ほどは“質駒”だった金が7六まで移動してきている。だからそこで2二桂と受けると、難しい勝負となる。
 しかしこの(2)7五金は、「2六飛」に対しては対応できていない(次の図)

2五香図08
 「2六飛」(図)と打って、3一桂に、やはり2三香成、同桂、4一角、3二歩、2四金の攻め筋で、先手が勝てる。

2五香図09
 (3)3一桂(図)とあらかじめ受ける手はどうか。
 先手2六飛に、(7五銀や7五金では先ほどと同じなので)さらに1一桂と先受けする。
 そこで先手の手番になる。先手の次の手を見てから、後手はそれに対応しようということだ。
 2三香成、同桂、2四金と攻めていくと、7五香と打たれ、金を渡すと先手玉が詰まされるという状態になって、先手が悪い。
 ではどうするか(次の図)

2五香図10
 7三歩成(図)がよい。7五銀なら、6三とで先手良し(6三同金には4一角)
 7三同銀なら、後手の攻めが遅れるので、1五歩でも先手の攻めが間に合う(以下7四銀に、1四歩、同歩、1三歩、同香、4一角、3二歩、1二歩の要領)
 7五銀ではだめなので、後手は7五金とする。7五金に6三とは、同金、4一角、3二歩、6三角成、7六金、9七玉、7五銀で、これは先手金得して馬もつくったが、形勢不明、つまり「互角」の勝負となる。
 7五金には、9五歩が正着手(次の図)

2五香図11
 9五同歩、同香となって、「9六」に逃げる空間があれば、後手は7六金とは出てこれない。このままなら今度こそ6三とが間に合う。
 なので後手は7六と。以下、同飛、同金、同玉、7三銀、8五玉(次の図)

2五香図12
 先手優勢。 (図で後手8四飛には、同馬でも、9六玉でも、どちらでも先手が良い)

2五香図13
 (4)7五桂(図)。 これがおそらく後手の最善手であろう。我々の調査ではそう結論している。
 この手に対しては、8八玉と逃げる(9七玉だと7七とですぐ詰めろがかかるが8八玉なら詰めろが掛けにくい)
 以下、7六桂、9七玉、7七と、9八金(次の図)

2五香図14
 後手は桂馬を二枚投入して先手玉に“詰めろ”を掛け、先手はそれを9八金(図)と受けた。
 これで後手は攻め足が止まると、先手2六飛と打たれるだけで“受けなし”だ。
 だから8八桂成、とゆるまず攻める。同金、同と、同玉、8七金、8九玉、6七桂成、4五角(次の図)

2五香図15
 後手は“詰めろ”で先手玉に迫らなければいけないので、このあたりは“必然の応酬”である。
 後手の6七桂成に、先手受けがなければ後手勝ちになるところだが、4五角(図)があった。しかもこの4五角は、3三歩成、同玉、3四飛、2二玉、2三香成、同玉、3一飛成以下の、“詰めろ”にもなっている。
 したがって、後手はこの図では、7八成桂とするしかない。以下、同角、同金、同玉。
 そこで6九角(=王手香取り)があった。
 以下、8八玉、2五角成、4五桂、3四馬、3七桂(次の図)

2五香図16
 先手は3七桂(図)と桂をはねたところ(この手に代えて単純に5三桂成は同銀引で先手面白くないとみた)
 ここで後手6六銀なら、5三桂成、同銀引、4五銀、3三玉、2五桂と攻めて先手がやれそうというのが、3七桂の意味。
 しかし、後手4六銀が好手か(3七の桂馬を取るねらい)
 以下、4五金、3三馬、4四歩、3七銀不成(次の図)

2五香図17
 4一銀、3一歩、3四桂、1一玉、5二銀成、同歩(次の図)

2五香図18
 図以下、4二桂成は同銀で、3二歩には7六桂、7八玉、4四銀で、先手が攻め切れない。
 先手、少し苦しい形勢である。


2五香図19
 戻って、後手(5)3一銀(図)もある。
 これは受けに銀を使う用意をした手。ここで先手2六飛には、1一桂と受ける。
 図で3三歩成もありそうだが、同玉でその後がはっきりしない。
 ソフトの評価値による形勢判断は「互角」だが、先手のこの後の良い手順がみつからない。
 とすれば、後手としてはこれも有力な選択肢の一つとなりえる。

 以上の調査から、【丑】2五香 は、6六と、8七玉、7五桂以下、後手良しとする。


2六香基本図
 【寅】2六香(図)ならどう変わるか。
 (ここに香を打てば、今の6九角~2五角成という“王手香取り”の筋はなくなるわけだ)
 これには、6六と、8七玉の後、〔1〕7五金と、〔2〕7五桂を、有力候補手とみて調べていく。(7五銀は2三香成~4五角で先手良し)

2六香図01
 〔1〕7五金(図)には、2三香成と攻めていく。同玉に、4五角。
 これに対しては、7六金。(これで金を質駒として取られることがなくなった)

2六香図02
 7六金(図)には、9七玉と9八玉とどちらもありそう。
 ここでは9七玉を見ていく。
 後手は2二桂と受ける(これしか受けがない。3一桂は1一飛で先手勝勢)

2六香図03
 ここでの最新ソフトの評価値はほぼゼロの「互角」である。厳密にはどっちが勝ちなのか。
 ここで1一飛は、7五桂、1二飛成、2四玉以下、後手が良い。
 また2六飛、2四歩、3六飛は、3五歩、同飛、3二玉と対応され、これも後手良し。
 しかし、もう一つの有力手がある――――(次の図)

2六香図04
 3七桂(図)が好手となる。そして、どうやらこれで「先手良し」が確定のようだ。後手によい対応手順がない。
 この桂跳ねで、後手玉は次に、3三歩成、同玉、2四金、同玉、2五飛から、“詰めろ”になっている。
 3一桂と打つか、4四歩と空間をつくれば、その詰みはなくなるが、3三歩成、同玉、1二角成で、やはり先手がリードしている。

2六香図05
 〔2〕7五桂(図)。 この手は、【丑】2五香 のときには「後手良し」になったが、【寅】2六香 でどう変わるか。
 〔2〕7五桂には、先手玉が詰めろに簡単にならないようやはり8八玉と逃げる。
 そこで5六銀が後手の好手となる(次の図)

2六香図06
 【丑】2五香 のときには、8八玉に、7六桂と攻めていったが、この場合はここで、5六銀(図)と行くのが正解である。
 この5六銀は、先手の4五角を消している。そしてこの図は後手玉に“詰めろをかけにくい図”になっている(2五香型なら2六飛が打てた。そして3一桂に、2三香成、同桂、2四金で簡単に先手が勝てるところだった)
 どうやらこれで「後手有利」の図になっている。次は6七銀成が“受けにくい詰めろ”になる。それを6八歩と打って先に阻止しても、7六とから8七桂成の攻めを狙って、後手良しである。

 【寅】2六香 は、6六と、8七玉、7五桂以下、後手良し。

4一角基本図
 【卯】4一角(図)には、3二歩(次の図)

4一角図01
 そこで(あ)3三香、(い)3三歩成(同銀、5二角成)が有力な攻め筋で、他に(う)8七玉がある。

4一角図02
 (あ)3三香と攻めてみる。以下、6六と、8七玉、7五桂、9七玉まで決めて、3一銀と受ける(次の図)

4一角図03
 ここで先手に攻めがあるか。
 3七桂(次に4五桂)では間に合わない。
 5二角成 でどうなるか。5二同歩なら、4一飛で先手良し(4二銀引なら同飛成)

4一角図04
 しかし角成を放置して、7六と(図)が正着で、後手良しとなる。
 この7六とで、うっかり7七とは、先手4三馬という攻防の手があって、先手が有望な戦いとなる。(7六とに4三馬は8七桂成で一手詰め)
 7六とに、ここは金を使って受けるしかない。8八金。
 そこで5二歩と後手は角(馬)を取る。
 以下、4一飛、6九角、7八金打、4二銀引(次の図)

4一角図05
 先手に持駒の金二枚を使わされたのが痛く、先手が勝てない図になっている。
 ここで8四馬で金を補充しても、後手玉はまだ詰まないので、7八角成で、後手勝ちである。
 5二角成 は、その瞬間が甘く、先手勝てなかった。

4一角図06
 代えて、3六飛(図)。 この手は後手玉への“詰めろ”になっている。
 しかし4二金寄と強気に受けて後手が良い。
 6三角成では7七と、9八金、6五銀で先手勝てないのがはっきりするので、5一竜と勝負するが――
 以下、4一金、同竜に、8七桂成(次の図)

4一角図07
 8七同玉に、6九角の“王手飛車取り”がある。後手良し。

4一角図08
 3六に飛車を打つと王手飛車取りにかかってしまった。
 ということで、修正して 3七飛(図)ならどうか。
 これには、後手は4二銀引と受けるのが手堅い。
 先手は5三歩が“手筋”の一着(次の図)

4一角図09
 “5三同銀引”と後手が応じると、次の手があって、先手が勝ちになるのである(次の図)

4一角図10
 8四馬(図)と金を補充して、同歩なら、後手玉は詰んでしまうのだ。詰手順は、3二角成、同銀、同香成、同玉、3三銀、同桂、同歩成、同銀、3一金以下。(5三同銀で後手は玉の逃げ道を自ら塞いでしまった)
 そうかといって、詰めろを消す3三歩では、7五馬で攻めの要の桂馬を取られ、やはり先手勝ち。

4一角図11
 だから先手の5三歩に対しての後手の応手は、“同金”が正しい。
 以下、5四歩、同金(5二金は8四馬以下形勢不明)、8二竜、5二桂と進んで、この図になった。
 ここから先手後手どちらの攻めが早いのかという勝負になる(8四馬で金を取っても後手玉はまだ詰まない)
 予想手順の一例は、7三歩成、4六銀、3八飛、7六と、8八金、6七桂成、6三と、7五銀(次の図)

4一角図12
 5二とは、8六銀、9八玉、7七成桂で―――どうやら後手の攻めのほうが早い。
 したがって後手優勢である。

 以上の調査から、(あ)3三香 は後手良しが結論になる。

4一角図01(再掲)
 「4一角、3二歩」の場面まで戻る。(い)3三歩成(同銀、5二角成)ではどうだろうか。
 5二同歩に、3一飛。 3一に打ったのは、後手3四銀なら4一竜を用意した意味(その順は先手優勢)
 しかし、8一桂という返し技があった。(次の図)

4一角図13
 8一同竜に、5四角が“王手竜取り”。
 以下、7七玉、8一角、同飛成、5七飛、7八玉、6七飛成、8九玉、8七竜、7九玉、6七と(次の図)

4一角図14
 後手玉に詰みがないので、後手勝ちが確定した。
 (い)3三歩成(同銀、5二角成)も、先手勝ちがないとわかった。
 (なお先手5二角成を放置して7六ともあり、それでも後手優勢になる)

4一角図15
 しかしまだ、第3の手、(う)8七玉(図)がある。
 この手の狙いは、次に9七玉と“早逃げ”して、それから攻める狙いである。
 6六と、9七玉と進んで―――(次の図)

4一角図16
 ここで次に「3三歩成、同銀、5二角成」の攻めを狙いにしてどうだ、ということである。(これなら、後手8一桂~5四角の王手飛車の筋を未然に避けている)
 この図は、実は、後で解説する 【午】8七玉 の変化と合流する。よって、この図の検討と形勢判断は、そこで行うこととしたい。
 
 ということで、【卯】4一角 についての結論は、ひとまず「保留」としたい。


5四歩基本図
 【辰】5四歩(図)は、同銀と取らせて後手陣を弱体化する狙い。
 しかしこの手を相手にせず、6六と、8七玉、7五桂、9七玉、7六とと攻められて―――(次の図)

5四歩図01
 8八香(8九香は7七桂がある)、6六銀、5三歩成、7七銀成、9八金、5三銀引(次の図)

5四歩図02
 こう進んで、先手に速い攻めがなく、後手優勢の図になっている。
 ここで先手3七桂と力をためるくらいだが、以下、9五歩、同歩、8八成銀、同玉(同金なら9五金)、9六香(次の図)

5四歩図03
 後手の寄せが決まった。
 【辰】5四歩 は後手良し。


6七歩基本図
 【巳】6七歩(図)には、「6六歩」が本筋であるが、その前に「7五銀」の手について触れておく。

 ここで後手「7五銀」は、8七玉、6七歩成に、3三歩成、同銀、3九香となって―――(次の図)

6七歩図01
 これは、すでに調査済みの下の「参考図」(先手良し)と近い図になる。大きな違いは、後手が「歩」を一歩得している(つまり先手の持ち歩が一枚少ない)という点であるが、それによって形勢が変わるのかどうかが注目点となる。

 結論を言えば、「先手良し」で、変わらない。
 つまり、6六銀左なら3三香成、同桂、6一竜で、また3四歩には、4一飛、3一桂、6一角で、先手がリードできる(解説は省略)

参考図
 (後手5六とに代えて7五銀~6六銀左とした図。前譜で解説し「先手良し」と結論した)

6七歩図02
 後手「6六歩」(図)を本筋の手として、以下の変化を調査していく。
 この「6六歩」に対しては、やはり「3三歩成、同銀、3九香」が、先手期待の攻めとなる。(他の有力手では4一角があるが、届かない)

6七歩図03
 この「3三歩成~3九香」の攻めは、先手6七歩と後手6六歩の手の交換をする前だと、6六とで「後手良し」となった。(上の【子】3三歩成以下の解説を参照)
 しかし「6七歩、6六歩」の交換をしたこの瞬間は、6筋が渋滞し後手6六とが指せない状況になっている。だから「3三歩成~3九香」のほうが速い攻めとなりえるのである。
 「3九香」に、〔P〕3四歩が考えられる応手だが、他に有力なのは、〔Q〕7五銀、8七玉、4四銀引という指し方である。

 先に、〔Q〕7五銀、8七玉、4四銀引 から見ていこう(次の図)

6七歩図04
 後手は歩で受けずに、4四銀引と応じた。3三香成には、同銀と応じて、香車を持駒にして攻めに使えるという意味と、先手の4一飛には、3一歩と歩で受けられるという意味がある。
 実際、すぐに3三香成では先手攻め切れないようだ(調査研究では千日手が結論となった)
 先手ここは、8二飛と打つのが良い。

6七歩図05
 8二飛(図)と打ったところ。
 対して後手は6二桂と受けるしかない。(代えて3二歩は5二飛成、同歩、3一角以下詰んでしまうし、4二銀右と受けるのも、5二飛成で、同歩、8四馬で、後手玉に詰めろがかかって先手が良い)
 6二桂に、7三歩成。以下、6七歩成、6二と(次の図)

6七歩図06
 先手の攻めのほうが速いようだ。6二同銀なら、同竜、同金、3一銀(次の図)

6七歩図07
 後手玉は“詰み”。

 〔Q〕7五銀、8七玉、4四銀引 は、8二飛以下、先手が勝てそう、とわかった。

6七歩図08
 「3九香」に、〔P〕3四歩(図)。 これが本線となる。
 これには、4一飛と打つ。
 対して後手が 3一桂 なら、6一角(次の図)

6七歩図09
 これは前譜(第23譜)で解説した攻めと同じで、それに比べると後手の攻めが6六歩の形でむしろ遅くなっていて、この図は「先手良し」である。 4二銀右には3四香、4二銀左には3二歩で、先手が勝てる。

 しかし、結論はまだ早い。 このケースの場合、後手に“修正案”がある。

6七歩図10
 「4一飛」と打った手に対して、(3一桂 ではなく)4二銀引(図)がある。
 前譜(第23譜)のときには後手が「7五銀」と出た形だったので、この4二銀右に対してはここで先手5三歩があって後手がまずかった。しかしこの場合、銀が6四に居るので、5三歩は、“同銀引”と取れる。
 しかしそれでも、ここは5三歩と行くのが最善手と思われる。銀を引かせれば先手玉への圧力が減る。
 5三歩、同銀引、8五歩、7四金、6一角(次の図)

6七歩図11
 やはり6一角(図)と打つ。
 6二金、8三角成、8四歩、9四馬左、9三歩、同馬右、8四桂(次の図)

6七歩図12
 先手玉を“入玉”させたくない後手は技を駆使して阻止してくる。
 8四同馬引、6四桂、8七玉、8四金、同馬、3二角(次の図)

6七歩図13
 先手の飛車が捕まった。
 ここは、(1)4二飛成、(2)8五馬、2つの選択肢がある。(5一飛成は、同銀、同竜、4四歩で、後手勝勢)
 
 (1)4二飛成がより良い手のように思えるが、以下同銀右引、8五馬、8四歩、9四馬(8四同馬は7六飛で先手悪い)、8五飛(好手)、8六銀、4一角と進んでみると―――(次の図)

6七歩図14
 8五銀、同角、8六玉、9四角、9五玉とすれば“入玉”はできそうだ。しかし9三歩、同竜、6七角成、8四玉、7二金で、先手が悪い。

6七歩図15
 よって、「3二角」には、(2)8五馬(図)のほうが優るようだ。
 しかしそこで8四歩があり、9四馬に、4一角と、飛車をタダ取りされる。
 以下、8六玉に、7九飛(次の図)

6七歩図16
 ここで先手8五歩とし、以下8五同角、同馬、8九飛成、8七歩、8五歩、9五玉、9九飛成、8二金という進行が予想される。
 最新ソフトの評価値は「互角」。 そして、先手玉は“入玉”はできそう。すると負けはなさそうだ。
 しかし、先手にとって面白い進行とは思えない。「勝てるか?」といえば、それは疑問で、後手玉を攻略できる自信はない。
 そして、後手の“入玉”を阻止するのも難しそうにみえる。 4枚持っていた大駒のうち、2枚を後手に渡してしまったので、“相入玉”の持将棋に持ち込まれた場合、「引き分け」が濃厚と思われる。

 よって、結論はこうなる。
 【巳】6七歩 は、6六歩、3三歩成、同銀、3九香以下、「互角」。(持将棋の可能性あり)


8七玉基本図
 【午】8七玉(図)は、我々終盤探検隊が最有力と考えていた手である。しかし、読み切ってそう思っていたわけではなく、半分は「勘」である。
 実際のところ、どうなのだろうか。

 【午】8七玉 には、後手は6六とであろう。
 そこでさらに先手は、9七玉と玉を動かす。 “早逃げ”だ(次の図)

8七玉図01
 玉を9七まで逃げておけば、次に4一角、3二歩、3三歩成、同銀、5二角成、同歩、3一飛と攻めていくとき、後手8一桂と打って同竜に5四角で“王手竜取り”という筋がない―――というのが、9七玉の具体的なメリットだ。
 ただし5二角成を同歩と取らない可能性もあるし、そもそもこの局面、“手番は後手”だ。
 (なお、この図で「先手4一角と後手3二歩」の手を交換すれば、上の「4一角図16」と合流する)

 今回の調査報告はここまでとする。続きは次回に。


≪指始図≫5六とまで
 今回の調査の進捗状況は、この通り。
  【子】3三歩成 → 後手良し
  【丑】2五香  → (互角に近いが)後手良し
  【寅】2六香  → 後手良し
  【卯】4一角  → 結論保留(調査中)
  【辰】5四歩  → 後手良し
  【巳】6七歩  → 「互角」(持将棋の可能性あり)
  【午】8七玉  → これから調査
  【未】7三歩成


 すでに書いたが、我々終盤探検隊(=先手番)は、▲8七玉が予定だった。

 しかし結局、我々が選んで指したのは“他の手”であった。



第25譜につづく
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