はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊 part159 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第58譜

2020年08月26日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第58譜 指始図≫ 7七同歩成まで


    [the Red Knight and the White Knight]

 ここでアリスの考えごとはたちきられてしまった。「わあい、わあい、王手だ!」とわめきたてる声がして、まっかな鎧をまとったひとりの騎士が、大きな棍棒をふりまわしながらこっちへ突進してきたのだ。アリスの目のまえまでくると、馬はにわかにぴたっととまった。「やい、わしのとりこだぞう!」騎士は馬からころげおちながらどなってる。
 アリスはぎょっとしたものの、さしあたって自分のことより騎士のことが心配で、相手がまた馬にまたがるのをはらはらして見守った。ぶじ鞍におさまると、騎士はもう一度いいかけた。「やい、わしのとりこ――」と、そこまでいったところで、べつの「わあい、わあい、王手だ!」という声がわりこんできてね。アリスはおどろいて、新顔の敵はどこかとふりむいた。
 こんどは白の騎士だ。アリスのわきに馬をとめると、これまた赤の騎士同様、馬からころげおちてね。それからまた馬にまたがると、二人の騎士がしばし物もいわずにじっとにらみあっている。アリスはおろおろして二人をかわるがわるみつめた。
「この子はわがはいのとりこですぞ!」赤の騎士がついに口をきった。
「さよう。だが、さればこそわがはいが救いにきたのだ!」と白の騎士の答えだ。

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



 アリスは「7マス目」の森まできている。
 赤の騎士(ナイト)と白の騎士があらわれ、“決闘” をはじめた。アリスをめぐっての闘いだ。
 アリス自身は「白のポーン(歩兵)」なので、白のナイト(騎士)がアリスの味方だ。

 “決闘” の結果は、白のナイトの勝ち。 赤のナイトは負けを認め、去っていった。



<第58譜 吉祥A図を攻略せよ4>

 「吉祥A図」について徹底調査中。

吉祥A図
   【0】7八歩 = 実戦の指し手
   【1】3三歩成 → 後手良し
   【2】3三香 → 後手良し
   【3】8九香 → 先手良し
   【4】2五香 → 互角(形勢不明)
   【5】5四歩 → 先手良し
   【6】2六香 → 先手良し
   【7】2六飛 → 先手良し
   【8】2五飛 → 先手良し
   【9】3七桂 → 先手良し
   【10】3八香 → 後手良し
   【11】8一飛 → 互角(形勢不明)
   【12】1五歩

 今回は、【12】1五歩 を調べていく。



[調査研究 【12】1五歩]

1五歩図
 【12】1五歩(図)は遅いようにも見えるが、1筋を攻めるのはこの場合の急所の攻めである。
 次に1四歩、同歩、1三歩、同香、1二歩が狙い筋の攻めとなる。1二同玉には3二角成である。
 その攻めが来る前に、後手が何を指すか。

 <A>7五桂 が最有力だ(次の図)

研究1五歩図01(7五桂図)
 <A>7五桂(図)に、受けは2通り。〔昼〕9八金 と、〔夜〕8九香

研究1五歩図02(再掲 9八金図)
 〔昼〕9八金(図)と受けた場合。
 そこで〈1〉7六桂なら、8九香と受ける。
 後手の狙いの攻め筋は9五歩であるが、ここでの後手9五歩には8五歩として、8八桂成、同香、同と、同玉、6六銀に、5二角成、同歩、6一飛、7七角、8九玉で先手優勢である。
 なので、ここでは後手は6六銀とする(次の図)

研究1五歩図03
 次に9五歩や6七銀~7八銀不成が後手の狙いである。
 先手はここで、1四歩と攻める。1四同歩に、1三歩、同香、1二歩(次の図)

研究1五歩図04
 これが先手の狙いの攻めだ。次に1一歩成、同玉、3二角成となれば後手玉は受けが困難になる。
 したがって3一銀が考えられるが、1一歩成、同玉、3三歩成、同桂、5二角成で、先手勝勢となる。

研究1五歩図05(6六銀図)
 〔昼〕9八金 に〈2〉6六銀(図)が後手の有力手。
 〔p〕1四歩と攻めていこう。
 同歩 に、1三歩、同香、1二歩―――(次の図)

研究1五歩図06
 7六歩(図)で、先手玉への“詰めろ”になって、これは大変な勝負。
 歩を使い果たしてしまったので7八香と香車を使って受けるしかない(7九香は6九金がある。また8九香は8七と、同香、7七歩成で後手良し)
 7八香を同となら、1一歩成、同玉、3二角成、2二香、3三歩成、同銀、3一飛で先手勝ちになる。
 〔後日注: その後の研究で7八香に6二金なら形勢不明とわかった〕
 よって、後手は8七と。以下同金、同桂成、同玉と進む(次の図)

研究1五歩図07
 どちらが勝っているか。
 ここで1二玉(3二角成なら2二金がある)は、3五桂と打って、次に3二角成を狙って先手良し。
 また、7七歩成、同香、7六歩は、同香、同桂、3三歩成、同銀(代えて同玉には3六飛で先手良し)、5二角成、7五香、7八歩で、先手良し。

 7五金で、どうなるか。
 その手には、6七歩がある。以下7七歩成、同香、7六金打(次の図) 

研究1五歩図08
 7六同香、同金、9七玉、7七銀成、9八金、8四香、同馬、同銀、1一歩成(次の図)

研究1五歩図09
 これで先手良し。
 図以下、1一同玉、3二角成、7九角、8八香、8七成銀、同金、同金、同玉、2二金が予想されるが、3三銀と打って、3二金、同銀成、4四角、7八金で、先手勝勢である。

研究1五歩図10
 〔p〕1四歩8七と(図)の変化がある。
 8七同金、同桂成、同玉に、7五金。
 以下1三歩成、同香、同香成(代えて1四歩は7六金以下先手負け)、同玉と進む(次の図)

研究1五歩図11
 ここで受けるなら7九香だが、それは8四銀で後手良し。
 9七玉も考えられる。以下8四銀、9四馬、7七銀成、8九香、9三歩、8三馬、8八歩と進むと、これも後手良し。

 したがってここは非常手段で、7五馬、同銀、1五飛、1四歩、7五飛でどうか。“二枚替え”で後手の要の金銀を消した。
 しかし、そこで後手7六金がある。同飛、同桂に、8九金、6八桂成(次の図)

研究1五歩図12
 実戦的にはまだこれからの勝負だが、形勢はやや後手良しだ。

研究1五歩図05(再掲 6六銀図)
 〔p〕1四歩 は、8七と 以下、後手良しになった。
 他に考えられる手は、〔q〕2六飛 だ(次の図)

研究1五歩図13
 〔q〕2六飛(図)と攻防に飛車を打つ。6七銀不成なら、2五香と打って、先手勝ちになる。
 よって後手は6二金とする。
 それでも2五香は3一玉で角を取られて先手負けになるし、6六飛と銀を取るのも3一玉で先手が悪い。6三歩と打つのも3一玉で後手優勢。
 また5二歩は、6一歩と受けられ、以下6三歩に、6七銀不成、6二歩成、7八銀不成で後手勝勢になる。
 ここは3三香と打ちこむのが先手唯一の手段のようだ。以下同桂、同歩成、同銀、6六飛と進む。
 以下、6一歩、2五桂、4二銀右(次の図)

研究1五歩図14
 後手からは次に9五歩の攻めと、7六桂の攻めがありどちらも厳しい攻めである。
 先手は6三歩が指したい手だが、7六桂、6二歩成、8八桂成と進むと、先手玉が寄せられてしまう。

 ここはしかし、3四歩という手がある。以下同銀なら、3三歩、同銀、2一銀で後手玉を寄せることができるのだ!
 しかし、3四歩に2四銀とかわされると、残念ながら、先手の攻めが続かない
 以下6三歩には、2五銀と桂を取られ、6二歩成に、7六香で―――(次の図)

研究1五歩図15
 これで先手玉に“詰めろ”(8七と、同金、同桂成、同玉、7五桂以下)が掛かって、後手優勢。

研究1五歩図02(再掲 9八金図)
 これで、<A>7五桂 に、〔昼〕9八金 と受けるのは「後手良し」と確定した。
 (後手〈2〉6六銀に対し、〔p〕1四歩〔q〕2六飛 以上に有望な手はなさそう)


研究1五歩図16(8九香図)
 <A>7五桂 に、〔夜〕8九香(図)はどうだろうか。
 ここで「7六歩」も有力だが、我々終盤探検隊の研究では、「7八歩」(図)を最善手とみる(次の図)

研究1五歩図17
 「7八歩」(図)と打てば、先手に受けはないので、攻めるしかない。
 1四歩だ。
 1四同歩なら、1三歩、同香、1二歩で、先手優勢になる。
 したがって、後手は7九歩成。以下、1三歩成、同香、同香成、同桂、5二角成、8九と、4三馬まで、必然の手順となる(次の図)

研究1五歩図18
 4三同銀なら、2一金、同玉、5一竜以下、後手玉が詰む。
 ここは、8七と、同馬、同桂成、同玉と進む。
 以下我々の研究では、以下、「1四歩、2六桂」が最善の手順ということになった(次の図)

研究1五歩図19
 ここで(ア)2一香が、我々の調査研究では最善手と見なされた手だが、この図を一見すると、後手(イ)6九角がぴったりの手(先手1四桂も防いでいる)に思える。
 (イ)6九角以下、7八歩に、7六桂の攻めで決まっているようにも思えるからだ。
 しかし、4一飛、2一香に、そこで7一馬の好手がある(次の図)

研究1五歩図20
 7一馬(図)で9筋を竜で守り、5三馬の攻めを狙う。たとえば8八桂成、9七玉、9五歩なら5三馬で先手勝ちになる。図で7五金(7八角成、同玉、8八と以下詰めろ)なら、1四桂、同角成、5三馬でやはり先手勝ち。
 よって、この図では6二歩と受ける手が最善手と思われるが、1五歩以下やはり先手ペースの将棋となる。

研究1五歩図21(2一香図)
 戻って、「1四歩、2六桂」に、(ア)2一香(図)と進めるのが最善の手順と思われるのである。
 ここから、〔U〕4一飛〔V〕1四桂 を見ていく。

 まず 〔U〕4一飛 。この手は1四桂以下後手玉への“詰めろ”である。
 だから“6九角”と打ちたくなるのだが、それは7八歩、7六桂、7一馬で、上で示した変化に合流してしまう。先手良しである。
 といって“3一香”と受けるのは、4三歩で、以下7六角、7八玉、4三角はまだ互角に近いが、先手ペースの戦いである。
 “1二玉”は有力だが、2二香の好手があり、6九角、7八歩、2二玉、1五歩で、やはり先手ペースか。
 
 〔U〕4一飛 には、“2五桂”が、どうやら最善手と目される手である(次の図)

研究1五歩図22
 “2五桂”(図)と桂をはねて、後手玉に掛かっていた“詰めろ”を解除した。
 以下1四桂、1三玉、2一飛成、1四玉(次の図)

研究1五歩図23
 1四玉(図)で後手は桂馬を入手した。このことが大きく、先手玉に逆に後手7五桂以下の“詰めろ”が掛かっているのである。
 この図は後手良しになっているようだ。
 とはいっても、実戦的にはまだ互角に近い(「dolphin1/orqha1018」評価値は -265)
 もう少し手を続けてみよう。
 この図では7九香と打つ手がある。これを同とは、先手玉の詰めろが解除され、2六金で先手良しになる。
 7九香には、6六角と打つ。
 以下変化の一例は、9八金、7六歩(8八と、同金、7五桂以下詰めろ)、7五歩、9五桂(次の図)

研究1五歩図24
 9五同歩、7九と、9四馬、同金、9六玉、9三歩(好手)、8七桂、7七角成(次の図)

研究1五歩図25
 以下9四歩には8七馬以下“詰み”。後手勝ち。

 以上、〔U〕4一飛 には、“2五桂”があって、後手良し、というのが我々の研究である。

研究1五歩図26
 というわけで、「2一香」に、〔V〕1四桂(図)ならどうか、というのがここからの調査である。
 1二玉に、そこで4一飛。
 対して、6九角、9七玉、1四角成が見えるが、それは3三歩成、同歩、3二金、3一香、2二金打、同香、4二飛成で、先手勝ちになる。
 したがって、4一飛には、3一香と受ける。

 そこで4三歩は、6九角、7八歩、7七歩、同玉、7九とで、後手優勢。
 ここは5一竜しかなさそう。その手には後手1一歩と受ける(次の図)

研究1五歩図27(1一歩図)
 5一竜を同銀と取ると、1一金、同玉、2二金、同香、3一飛成以下、後手玉は詰まされていた。
 なので後手は1一歩(図)と打って、その“詰み筋”を消した。
 この図の「dolphin1/orqha1018」評価値は[ -5 互角]
 先手はどうするか。このままなら今度は5一銀と竜を取られる手がある。
 [花]3三歩成と [風]7一竜 が考えられる手。

 [花]3三歩成、同歩で、次の図。

研究1五歩図28
 ここで攻めの継続手段は2つ。(1)4二竜 と(2)3二歩。

 (1)4二竜、同銀、同飛成、3二角(次の図)

研究1五歩図29
 3二角(図)で逆王手が掛かった。よって先手は4三歩とするが、このとき、先手は「金金銀銀香歩七」と沢山の持駒を持っているが、それでも 後手玉への詰めろになっていない。4三銀なら詰めろになっているのだが、それだと4七飛、7七歩、4三飛成で、打った銀を取られてしまう。
 なので4三歩だが、後手6六銀が、逆に先手玉への“詰めろ”だ。
 これを7八歩と受けるのは、8八飛、9七玉、7八飛成でダメなので、7八金と受けるが―――
 以下4七飛、5七歩、同飛成、9八玉、7七銀成(次の図)

研究1五歩図30
 後手勝ち。(1)4二竜は後手の勝ちとなった。

研究1五歩図31
 戻って、(2)3二歩(図)。この手は詰めろ(2二金以下)だし、後手5一銀としても、2二金以下詰む。
 7六角があるが、7八玉、3二角、8九玉は、先手良し。
 そうすると3二歩で先手良しかと見えるが、後手に好手があった。2四歩である(次の図)

研究1五歩図32
 2四歩(図)で、脱出路を開けた。
 3一歩成は5一銀で、後手良しがはっきりする。
 よって先手はしかたなく7一竜と竜を逃げておくが、6九角、7八歩、7七歩、同玉、1四角成となって―――(次の図)

研究1五歩図33
 後手勝勢。3一歩成なら、4一馬、同竜に、7六歩、8七玉、7五桂以下、先手玉が詰む。
 7三竜には、7六歩、8七玉、3二馬だ。

研究1五歩図34
 1一歩図(研究1五歩図27)から、[風]7一竜(図)の変化。
 これには6九角と打つ。以下7八歩、7七歩、同玉に、7九と(次の図)

研究1五歩図35
 6八金と受けても、7八と、同金、7六歩以下寄ってしまう。
 したがって、6八玉で勝負する。しかし以下5八金、7九玉に、7六桂があった(次の図)

研究1五歩図36
 どうやらこれで後手優勢である。
 6七金の受けには、6六銀がある。以下3三歩成、同歩、3二歩で後手玉に先に詰めろが掛かるが、6八金、同金、同桂成、同玉、1四角成が“詰めろ逃れの詰めろ”になっており、後手勝ちになる。
 他に、8九玉、6八金、7九香と頑張る手段があるが、1四角成として、次に6九馬を狙っていけばよい。

研究1五歩図21(再掲 2一香図)
 以上の検討から、これでこの図は「後手良し」が明らかになったようだ。
 もう少し前に戻って、あと一つ、“気になる変化” があるのでそれを片付けたい。

研究1五歩図37
 この図は、後手の7八歩に、先手が1四歩と突き、以下7九歩成と進んだところ。
 ここで1三歩成以下を調査してきたが、ここで「3三歩成」とするのが、“気になる変化” である。「3三歩成」には、同銀だが、それでなにが変わってくるか。

 「3三歩成」、同銀、1三歩成、同香、同香成、同桂、5二角成(次の図)

研究1五歩図38
 「3三歩成、同銀」が入っているのが、これまでとの違い。
  図以下、4二銀左、3七香、8九と、4三馬が想定される手順。さらに、8七と、同馬、同桂成、同玉と進む。
 そこで3三歩が、後手の好手(次の図)

研究1五歩図39
 3三歩(図)と歩を一つ進めることで、後手玉は3二~4三の空間が開け、先手の狙いの1四桂や1四歩の効果をうすくした。どうやらこれで後手良しの形勢のようだ(「dolphin1/orqha1018」評価値は +82 互角 だが、調査を進めると後手良しにしかならない)
 以下、4四歩(1四桂以下詰めろ)、同銀引、4三歩(同銀と取ると1四桂以下詰む)、7六角(次の図)

研究1五歩図40
 7六角(図)と打てば、後手優勢がはっきりする。
 9七玉なら、9五香で。
 7八玉なら、7七歩、同玉、5八角成で。


研究1五歩図17(再掲)
 これで、<A>7五桂 に、〔夜〕8九香(図)は、7八歩(図)で後手良しが結論となった。

 というわけで―――

研究1五歩図01(7五桂図)
 <A>7五桂(図)と打てば、〔昼〕9八金 でも、〔夜〕8九香 でも後手良しとなると出た。

 したがって―――

1五歩図(再掲)
 【12】1五歩 は後手良し である。

 今回の調査の結論はこれで出たのだが、<A>7五桂 以外の手について、すこし触れておこう。

 すなわち、この図から、<B>6六銀、および、<C>7六歩 の手についてである。


研究1五歩図41
 <B>6六銀(図)には、1四歩とすぐに攻めて、先手良しになる。
 以下、1四同歩に、1三歩、同香、1二歩、7五桂、8九香、8七と、同香、7七銀成、9八金(次の図)

研究1五歩図42
 これで先手良し。
 1四歩に、手抜きして7五桂の変化もあるが、1三歩成、同香、同香成、同桂(同玉)、8九香と進めて、やはり先手良しである。


研究1五歩図43
 <C>7六歩(図)には、「7八歩」が最善手となる。
 他に「2六香」や「2五香」も考えられる手だが、「2六香」は6六銀、2五飛に2四桂と受けて後手良し。また「2五香」は、7五桂、9八金、6二金で、これも後手良し。

研究1五歩図44
 ということで「7八歩」(図)だが、以下6六銀なら1四歩以下、先手良しになる。
 よって、7五桂とするが、ここでは9八金と金で受ける(ここがポイント)
 そこで7八とは、2五飛、6二金、3三香以下、先手良し。
 なので後手は6六銀とする。
 そこで2六飛(次の図)

研究1五歩図45
 これは上で研究した「研究1五歩図13」とほぼ同じ図だが、「7六歩、7八歩」が入っているところが違う。この “違い” が、この場合、形勢に大きく影響するのだ。
 以下6二金、3三香、同桂、同歩成、同銀、6六飛、6一歩、2五桂、4二銀右と上の研究変化と同じ手順で進んだとき、6三歩と打って―――(次の図)

研究1五歩図46
 6三歩(図)と打ったこの場面が、今度は「先手良し」となるのである。
 「7六歩、7八歩」が入っていない場合には、6三歩に7六桂で後手良しになっていた。ところがこの場合はその7六桂がないので、後手は5二金や5三金と指すことになる。その変化がいずれも先手有望の変化になるのである。また後手の7六歩が入っていると8五歩~8六玉のような展開も先手有利に働く。
 5二金なら3六飛、3四香、4六飛で。5三金なら7一馬で先手良し。
 また図で3一玉なら、6二歩成、同銀右、8五角成で、これも先手良し。

 というわけで、<C>7六歩 は 先手良し、となるのである。


1五歩図(再掲)
 すでに書いたが、もう一度今回の調査の結論を書いておく。

 【12】1五歩 は、7五桂以下後手良し。



 そして―――

吉祥A図
   【0】7八歩 = 実戦の指し手
   【1】3三歩成 → 後手良し
   【2】3三香 → 後手良し
   【3】8九香 → 先手良し
   【4】2五香 → 互角(形勢不明)
   【5】5四歩 → 先手良し
   【6】2六香 → 先手良し
   【7】2六飛 → 先手良し
   【8】2五飛 → 先手良し
   【9】3七桂 → 先手良し
   【10】3八香 → 後手良し
   【11】8一飛 → 互角(形勢不明)
   【12】1五歩 → 後手良し

 「吉祥A図」の調査結果はこうなった。


 次回は、【13】9八金、および、【14】6五歩 についての調査結果を発表する予定だ。



第59譜につづく
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終盤探検隊 part158 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第57譜

2020年08月22日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第57譜 指始図≫ 7七同歩成まで



   [年齢遡行症(マリーン・シックネス)]

〈スフィンクス〉のなかでなにかが起こって、あなたは時潮に呑まれてしまった。その結果、あなたのからだには変化が起こった。ばかげて聞こえるでしょうけれど、あなたはね――若返っているのよ。あなたの肉体は、いまも刻々と若返っているの。もっとも、当面、それは重要なことじゃないわ。重要なのは、あなたが眠っているうちに゙‥‥記憶がなくなってしまうこと。毎日眠るたびに、一日ずつ記憶が消えてしまうの。

  (『ハイペリオン』 ダン・シモンズ著 酒井昭伸訳 ハヤカワ文庫 より)



 辺境の惑星ハイペリオンには、〈時間の墓標〉と呼ばれる謎の遺跡群があり、そこではエントロピーが逆向きに流れているのだった。



<第57譜 吉祥A図を攻略せよ3>

 「吉祥A図」について徹底調査をしているところ。

吉祥A図
   【1】3三歩成 → 後手良し
   【2】3三香 → 後手良し
   【3】8九香 → 先手良し
   【4】2五香 → 互角(形勢不明)
   【5】5四歩 → 先手良し
   【6】2六香 → 先手良し
   【7】2六飛 → 先手良し
   【8】2五飛 → 先手良し
   【9】3七桂 → 先手良し
   【10】3八香 → 後手良し
   【11】8一飛


 今回の調査は、【11】8一飛。

参考図
 この図の2手前(「9七玉、7七と」の前)の8一飛の場合は、図のように7六歩として後手良しだった。7六歩~7七歩成で「と金を二枚つくる」ことが後手勝利のポイントになっている(第43譜
 ところが、「9七玉、7七と」とすると、8一飛に、今度は7六歩としても、5二角成、7五桂、9八金、1四歩、7八歩以下、これははっきり先手良しになる。というわけで事情がまったく違ってくるのである。


[調査研究 【11】8一飛]

8一飛図
 【11】8一飛 と打って、次に5二角成を狙う。
 したがって、後手 〔サ〕6二金 が考えられる(次の図)

研究8一飛図01
 そこで「7八歩、7六歩、8九香」が先手良しへ道筋となる(次の図)

研究8一飛図02
 以下6一歩に6三歩、7二金、6一飛成、8二銀(次の図)

研究8一飛図03
 ここで5四歩と打って、先手が勝てる。5四同銀には7二竜が、3二角成、同玉、2二金以下、“詰めろ”になる。
 よって5四歩には、7五桂として、5三歩成、9一銀、9八金と進む(次の図)

研究8一飛図04
 9八金(図)と打って先手玉の“詰めろ”を受けておけば、次の4二とで後手玉は“受けなし”に追い込まれる。先手良し。
 ただし、もしもこの図で「7八歩、7六歩」の手交換がなかったら、この図は逆に“後手良し”になっていた。ここで6七飛と打ってその手が8八と以下“詰めろ”(同玉に7六桂)になるからだ。
 ところが「7八歩、7六歩」を入れておくと、6七飛が詰めろにならないので(8八と同玉に7六桂が指せないため)、4二とで先手勝ちになるのだ。
 4二とを後手は許せないので、この図では後手は5三銀とすることになるが、以下7二竜、6二歩。
 そこで1一銀(次の図)

研究8一飛図05
 同玉には3二角成。そして3一玉には6二歩成で先手が勝てる。


研究8一飛図06(7五桂図)
 【11】8一飛 に、〔シ〕7五桂(図)が有力な手だ。
 これには、[A]8九香 と、[B]9八金 があり、迷うところ。

 [A]8九香 には、どうやら1四歩が最善手で、後手良しになるようだ(次の図)

研究8一飛図07
 以下 7八歩 には、同と、5二角成、8九と、3三歩成、同歩、4一馬、7六香(次の図)

研究8一飛図08
 これで後手が勝ち。
 7六に歩ではなく香車を打ったのは、7六歩だと7八歩で受けられるから。香を打てばその受けがない。
 7六香(図)に、受けるなら6八金くらいしかないが、後手5八金で無効である。

研究8一飛図09
 1四歩に、3七桂(図)ならどうか。
 以下7六歩、5二角成、8七と、同香、7七歩成、9八金、6六銀(詰めろ)、7八歩、8七と、同金、同桂成、同玉、7五金(次の図)

研究8一飛図10
 後手良し。

研究8一飛図11
 ということで、〔シ〕7五桂(図)に、[B]9八金(図)のほうが良さそうだ。

研究8一飛図12
 [B]9八金 には、6二金(図)が最善手とみる。
 そこで先手は7八歩(次の図)

研究8一飛図13
 7八歩(図)と打って、後手の対応を聞く。
 これには、〈1〉7六歩、〈2〉7六と、〈3〉3一玉 の対応がある。
 (他に〈4〉7八同と、〈5〉8七と は先手良しになる)

 まず〈1〉7六歩は、3三歩成、同桂(同玉は3七桂で先手良し)、8五歩、3一玉、5二歩、6一歩、5一歩成、同銀、6三角成(次の図)

研究8一飛図14
 これで先手が良い。
 7九角には、8六玉とし、さらに8七と、同金、6八角成と追撃されても、9七玉で先手玉は大丈夫。
 以下6三同金、6一竜、6二銀右に、5一竜、同銀、同竜、4一飛、同竜、同玉、2一飛(次の図)

研究8一飛図15
 後手3一飛合に、同飛成、同玉、1一飛、2一飛、同飛成、同玉、6一飛、3一飛、1一銀(次の図)

研究8一飛図16
 先手勝ち。

研究8一飛図17
 7八歩に〈2〉7六と(図)の変化。
 3三歩成、同桂、5二歩と攻めるのが最善と思われる(5二歩に代えて3四歩は3一玉で後手良し) 
 対して6一歩なら、5一歩成、同銀、6三歩で、先手良しになる。
 しかし5二歩に、6六銀と攻め合う手があって、以下きわどい勝負に突入する。以下5一歩成、7七歩、5二と、6一歩(次の図)

研究8一飛図18
 7七歩、同銀不成、8八香(代えて8九香は7八銀不成で後手良し)、同銀不成、同金(次の図)

研究8一飛図19
 ここで8七香は、4二と、同銀、1一銀(3一玉なら2二銀以下詰み)、同玉、3二角成、2一銀、6一飛成、同金、2二銀、同銀、6一竜で先手勝ちになる。
 また5一歩と受けるのも、6二とで先手良し。
 8六と、同玉、8五香の攻めが有力だが、以下7七玉、8八香成、5三と、同銀、6八玉、5六歩、5九玉と金を入手して、その瞬間に後手玉に3二角成、同玉、4一銀、同玉、6一飛成以下の“詰み”が生じていて、先手勝ちになっている。

 なので、この図では後手9五歩が最善手であろう。
 そこで4二とは、同銀、9五歩、5二歩と進んで、これは後手良し。
 4二とではなく、5三とが正着手(同銀は4四歩、同歩、4三銀で先手良し)で、以下9六歩、同角成、9五歩。
 そこで8四馬が好手(次の図)

研究8一飛図20
 「8四馬(図)、同銀、4二と」が好手順となる。これを単に4二とでは、9六歩、9八玉、2四歩(以下3四銀としても9七香、8九玉に6七角がある)で、後手勝ちとなる。
 「8四馬、同銀」としておけば、9六歩には、同竜と取ることができる。
 すなわち図から、8四銀、4二と、9六歩、同竜と進む。以下3一香、同と、同玉、5一銀(次の図)

研究8一飛図21
 先手勝ち。〈2〉7六と(図)の変化はきわどかったが、先手良しとわかった。

研究8一飛図22
 7八歩に〈3〉3一玉の変化。
 これも後手の有力手。以下5二歩、8七と、同金、同桂成、同玉、6一歩、5一歩成、同銀、6三歩(次の図)

研究8一飛図23
 4一玉、6二歩成、同銀左引、6一竜、4二玉、8九香(次の図)

研究8一飛図24
 8九香(図)が落ち着いた好手(この手に代えて5四桂と打ちたくなるが、それは5三玉でこれは後手玉を逃がしてしまっている)
 ここで後手9五歩なら、同歩と取っておく。
 この図では5四角が有力手。以下6五歩、同角、9七玉、9五歩に、4五桂と打つ。
 以下9六歩に、8八玉(9六同玉もあるところ)。
 4五桂は後手玉への“詰めろ”になっている。なので後手は1四歩とする(代えて7一歩は同馬で先手が良い)
 先手は、3七桂(次の図)

研究8一飛図25
 3七桂(図)として、後手玉はまた“詰めろ”が掛かっている。7一歩としても同馬だし、5二歩としても5三歩が有効なので、この図は先手良しである。
 後手玉の“詰み”を確認しておこう。図から6九金に、5一竜、同銀、5三銀、3一玉、5一竜、2二玉、3三銀、同桂、同歩成、同歩、4二竜、1三玉、2四金(次の図)

研究8一飛図26
 2四同歩、3三竜、2三合、2五桂打、同歩、同桂まで。

 以上見てきたように、〔シ〕7五桂 には、9八金、6二金、7八歩と進めて、互角に近いが、なんとか先手良しに導くことができるとわかった。

8一飛図(再掲)
 まとめるとこうである。
 〔サ〕6二金 → 先手勝ち
 〔シ〕7五桂 → 先手勝ち(ギリギリ)

 しかし、後手の有力候補手はまだ他にもある。

 〔ス〕1四歩〔セ〕6一歩〔ソ〕7一歩 がある。
 これを以下、調べていく。

研究8一飛図27
 〔ス〕1四歩(図)には、7八歩と細工をする。同となら、5二角成、同歩に、2一飛成、1三玉、7九金、同と、2六香で、先手勝ちになる。
 「7七と」の位置がこのと金のベスト・ポジションなので、7六歩とその位置をキープする。
 そこで5二角成が成立する。同歩に、2一飛成、1三玉、8八香(次の図)

研究8一飛図28
 8八香(図)と、先手玉の7九角からの“詰み”を受けた。それでも7九角なら8九金、3五角成、4一竜左で、次に3二竜左から二枚の竜で玉を追って行けばよい。
 8八香に、7五桂には、7九桂。
 以下4六角に、2五金(次の図)

研究8一飛図29
 2五金(図)と打って、後手玉に“詰めろ”(1四金、同玉、1二竜以下)を掛けて、先手勝勢。

 〔ス〕1四歩 → 先手良し

研究8一飛図30
 〔セ〕6一歩(図)を同飛成と取ると、6二金、7一竜右、7五桂、8九香(9八金)、3一玉(次の図)

研究8一飛図31
 これで後手良しになる。角を取られて先手の攻めが一手遅い。これが〔セ〕6一歩 の狙いだ。

 といっても、6一歩で先手の二枚飛車の攻め止められては困る。良いタイミングで6一飛成とするための下準備を考えたい。しかしなかなか良い手がない。7八歩は打ってみたいが、同とと取られて、次の手がまたわからない。
 ここは8九香が良いかもしれない(次の図)

研究8一飛図32
 対して7五桂なら、5二角成、同歩に、6一飛成で先手良しになる。
 なので8九香としたこの図では、後手6六銀が最善か。今度は5二角成は、同歩、6一飛成に、5一桂があって、これは後手勝ちになっている。
 そこで先手は、5四歩と打つ(次の図)

研究8一飛図33
 5四同銀なら6一飛成として、そこで6二金なら5一竜、同銀、同竜で先手優勢。
 よって後手は6二銀左だが、6一飛成、7一歩、7四歩、同銀、5三歩成、同銀右、7一竜左、6三銀、7八歩、7六歩(次の図)

研究8一飛図34
 そこで7七歩は、千日手になりそう。
 それは先手が面白くないので、6五歩(5六桂なら8五歩、7五金、5七金で先手良し)、6二金、5一竜、6一歩、6四歩、5一銀、6三歩成、7五桂(次の図)

研究8一飛図35
 ほぼ互角の形勢だが―――もう少し進めてみよう。
 ここは7五同竜がある。以下7五同銀に、5三と。この手は3二角成、同玉、4四桂(同歩に4三銀)以下の“詰めろ”になっているのだ。
 なので後手は4七飛。以下5七歩、7九飛、9八銀(次の図)

研究8一飛図36
 ここで5七飛成は、8四馬(3二角成以下後手玉の詰めろになっている)で先手良し。
 よって5三金とするが、3三桂が好手。以下同桂に、2五桂の妙手の用意があるのだ(次の図)

研究8一飛図37
 どうやら「先手良し」の結論が出た。
 2五同桂なら、3三銀、同歩、3二金、1一玉、8四馬で、先手勝ち。2一桂と受けても、3三歩成、同桂、3四桂がある。


研究8一飛図38
 〔ソ〕7一歩(図)。
 これを同飛成だとどうなるか。以下7五桂、9八金、6二銀右、6一竜、6三銀(次の図)

研究8一飛図39
 こうなって、どうやらこの図は後手が指しやすい。

研究8一飛図40
 〔ソ〕7一歩 には、7八歩(図)が良いようだ。この瞬間なら後手7六歩がないし(二歩禁である)、7八同とは7一飛成で先手良しなので、後手は7六とと応じる。
 そこでチャンスと見て 5二角成 としてみる。5二同歩に、7一飛成、5一桂(代えて6一歩もある)、3三歩成、同歩、7三竜、“7二歩”(同竜なら5四角がある)、8二竜、5六角(次の図)

研究8一飛図41
 こうなって、互角(形勢不明)。
 なお、後手“7二歩”に代えて、“7七歩”も有力。

 また、先手7八歩に、後手7六ととした次の図まで戻って―――

研究8一飛図42
 ここで 5二角成 以下を見てきたのだが、この手以外にも先手は選択肢がある。
 たとえば 3三歩成。以下同玉、3七桂が予想される。
 また、7一馬 も有力だし、8八香 もあるし、6五歩 も指してみたい手だ。
 いずれも、未調査であり、ソフトの評価値的にも、それぞれ「互角」の変化である。

 そうしてみると、調べるべき変化がまだまだたくさんあり、結論を出すのは容易ではない。
 〔ソ〕7一歩 については、「互角(形勢不明)」とするしかないと我々(終盤探検隊)は判断した。


 以上をまとめると―――

8一飛図(再掲)
 〔サ〕6二金 → 先手良し
 〔シ〕7五桂 → 先手良し(ギリギリ)
 〔ス〕1四歩 → 先手良し
 〔せ〕6一歩 → 先手良し(ギリギリ)
 〔ソ〕7一歩 → 互角(形勢不明)


 つまり、【11】8一飛 は互角(形勢不明)、を結論としたい。


   
吉祥A図
   【0】7八歩 = 実戦の指し手
   【1】3三歩成 → 後手良し
   【2】3三香 → 後手良し
   【3】8九香 → 先手良し
   【4】2五香 → 互角(形勢不明)
   【5】5四歩 → 先手良し
   【6】2六香 → 先手良し
   【7】2六飛 → 先手良し
   【8】2五飛 → 先手良し
   【9】3七桂 → 先手良し
   【10】3八香 → 後手良し
   【11】8一飛 → 互角(形勢不明)

 「吉祥A図」の調査はまだ終わっていない。



第58譜につづく
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終盤探検隊 part157 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第56譜

2020年08月16日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第56譜 指始図≫ 7七同歩成まで


   [鏡の国のケーキの扱いかた]

 アリスは小川の土手にすわりこんで、大きな皿を膝にのせ、ナイフでせっせと切りわけているところだったけれど、ライオンにこたえるかわりに、「ああ、じれったい!」とひとこと(怪物よばわりされるのはもう慣れっこだ)、「切ることは切ったんだけど、すぐまたくっついちゃうの」
 「鏡の国のケーキの扱いかたを知らないからさ」とユイニコーン、「はじめに配ってまわって、あとから切るんだ」
 ばかばかしい、とは思ったものの、アリスに素直に立ちあがって、お皿をもってまわったんだね。するとケーキはそのひまにちゃんと三切れにわかれてくれた。「さあ、こんどは切るんだ」空のお皿をもって席にもどると、ライオンがそういうんだ。

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



 鏡の国では、何かが一部、逆向きだ。ケーキを切るときも、「初めに配って、あとから切る」のが正しいやりかたになる。



<第56譜 吉祥A図を攻略せよ2>

 「吉祥A図」について徹底調査をしている。

吉祥A図
   【1】3三歩成 → 後手良し
   【2】3三香 → 後手良し
   【3】8九香 → 先手良し
   【4】2五香 → 互角(形勢不明)
   【5】5四歩 → 先手良し
   【6】2六香 → 先手良し
   【7】2六飛 → 先手良し
   【8】2五飛 → 先手良し
   【9】3七桂
   【10】3八香

 今回の研究調査は、【9】3七桂、そして【10】3八香の手について。


[研究調査 【9】3七桂]


3七桂図
 【9】3七桂 はどうだろうか。
 この桂跳ねは先手の有効手なのは間違いないが、速度的に間に合うかどうか。この手の良いところは、「香」と「飛」の使う場所を保留しているので、相手の次の手を見てその使い方を選択できるということ。

 後手の指す手が問題である。候補手は次の通り。
  (い)7五桂、(ろ)6六銀、(は)7六歩、(に)5六銀、(ほ)9五歩、(へ)3一銀、(と)4四銀引、(ち)4四銀上

研究3七桂図01
 (い)7五桂(図)と打つ手は、後手有力な手段。しかしこの図は、2手前の「6七と図」からの7五桂からの変化と合流しており、すでに調査結果が出ている。「先手良し」である。(第42譜
 (い)7五桂 には9八金と受ける。
 そこで後手が何を指すか。
 7六桂なら8九香と受けて、次に8五歩をねらう。
 6六銀には2六飛と打ち、以下6二金、3三香、同桂、同歩成、同銀、6六飛以下、先手やや良し。
 4六銀も有力だが、4五桂以下、これも先手良しと結論が出た。
 どの変化もきわどいが、いずれも先手良しになるのである。

 ここでは9五歩の変化を追っておく。9五歩、7八歩、9六歩、同玉、9五歩、9七玉、7六歩、2六香(次の図)

研究3七桂図02
 後手は桂馬を使ってしまったので、次の先手2五飛に対する受けを工夫しなければいけない。6二金も考えられるところだが、それは3三歩成、同桂、3四歩、3一玉、1一飛、2二玉、8四馬で、先手良し(この変化も後手に桂があれば、1一飛に2一桂と受けられた)
 もう一つの受けがこの図で3一銀だ。以下、2五飛に、1一玉と逃げる(2三飛成なら2二歩で後手良し)
 そこで先手は、3三歩成、同桂、5五飛とする。以下、4二金、6三角成、6二銀右、8五歩(次の図)

研究3七桂図03
 こう進んで、これは先手優勢。先手は桂馬があれば3五桂(1五桂)と打って、それで後手の受けが難しい。よってここで8五歩(図)として、6三銀、8四歩となれば、桂馬が手に入りそうだ。
 以下8七桂成、同金、同と、同玉と進み後手の手番だが、5一竜もあるし、3五桂をねらって先手勝勢である。

研究3七桂図04
 (ろ)6六銀(図)には、3三香が炸裂する(次の図)

研究3七桂図05
 同桂と取るのは、同歩成、同玉(同銀は5二角成)、2五桂打で、先手勝ち。
 よって、3一銀と受けるが、それには8四馬がある(次の図)

研究3七桂図06
 金を取って、同銀(同歩)なら、3二香成以下、後手玉詰み。
 よって、4二金とするが、そこで6六馬と銀を取ることができるので、この図は「先手勝ち」がはっきりしている図である。後手の6六銀の一手を逆用する変化になっている。

研究3七桂図07
 (は)7六歩(図)は、次に7五桂、9八金、6六銀とすれば、先手玉に詰めろが掛かるというねらいだ。
 先手は、ここでも、3三香と打ってどうか(次の図)

研究3七桂図08
 以下3一銀に、8四馬。取れば3二香成以下後手玉詰みだが、4二金と受けてどうなるのか(次の図)

研究3七桂図09
 先ほどは6六銀と出ていたのでここで6六馬がピッタリだったが、この場合はその手がないので、取るなら7三馬だが、それだと4一金で、これは先手おもしろくない変化になる。角を渡すと7九角があるので8九金のように受けることになるが、そうなると後手ペースの将棋である。
 そうするとこの図は先手がまずいように一見思われるが、そうではなかった。
 ここで3二香成、同銀、5一竜が好手順だ(次の図)

研究3七桂図10
 これで後手の指す手がないのである。というのは、4一金でも4一銀でも、3三金以下、後手玉が詰んでしまうからだ(たとえば4一銀なら、3三金、同金、同歩成、同玉、3四歩以下)
 もちろん放置しても3二角成から詰んでしまうし、4四歩(4五の地点を受け4三のスペースをつくった)としても、3二角成、同玉、2二飛、同玉、3一銀以下、詰みがある。
 この図は、先手勝ち。

研究3七桂図11
 そこで、(に)5六銀(図)が工夫した手となる。この手は「4五」に利かせたのがポイントで、先手のねらいの3三香に対応した手なのである。これまでと同じように3三香なら、3一銀と引いて、この場合は後手有望の図になる(8四馬と金を取っても後手玉が詰めろになっていないからだ)
 5六銀は、6七銀不成~7八銀不成という使い方で攻めに使う狙い筋もある。
 さて、この (に)5六銀 に、先手はどうしたらよいだろう?

研究3七桂図12
 7八歩(図)と打つ。後手は「7七」がこのと金のベストポジションなので7六歩と受ける。
 そこで3三歩成、同銀、2五桂と桂馬を活用して攻める。銀を逃げると3九香で先手勝勢になる。
 なので後手は7五桂とし、先手は8九香と受けて次の図となる(この場合は9八金は4二金で後手良しになる)

研究3七桂図13
 持駒に「金」を残す方が後手玉に迫りやすいので香で受けた。
 後手は6七銀不成。次に7八銀不成が詰めろになる。
 以下、3三桂成、同玉、3八飛、3四桂、4五銀、4二玉、5二角成、同玉、7七歩(次の図)

研究3七桂図14
 7七歩(図)が正確な対応。
 攻めるなら5四歩だが、ここでそれを指すと、8七桂成、同香、7九角で先手玉が詰まされてしまう。
 ここで7七同歩成なら、先手の3八の飛車の“横利き”があるので、先手の玉が詰めろになっていないという仕組みだ。なので今度は5四歩で先手が勝てる。
 ここで6二銀右のように受けにまわっても、5四歩、4二銀、7二金で、先手勝ち。

研究3七桂図15
 (ほ)9五歩(図)は、「端玉には端歩を突け」のセオリー通りの手で、有力手である。この手は先手の3三香を防いでもいる。3三香なら、9六歩、9八玉、3三桂、同歩成、同銀で、次に9七香が“詰めろ”になっており、後手勝ちになる。
 それなら、9五同歩はどうか。しかしそれは、9五同金、9六歩に、8四銀がある。以下8二馬は、8六金、同玉、7六と、9七玉、8五桂以下、先手玉が寄ってしまう。
 では、どうするか。

 ここは2六香と打っておく。6六銀のような手なら、5二角成(同歩は3三金以下詰み)で先手優勢。6二金は3三歩成(同銀に8五歩)で、これも先手優勢。
 ここでまず 7五桂 が後手の有力手。
 7五桂、9八金、9六歩、同玉、9五歩、9七玉、3一銀、2五飛(次の図)

研究3七桂図16
 1一玉、3三歩成、同桂、5五飛、4二金、8五角成(次の図)

研究3七桂図17
 これで、先手優勢。
 以下6二銀左(5一竜を防いだ)に、7五飛がある。同金、同馬左、8四銀、3五桂(次の図)

研究3七桂図18
 3五桂は“詰めろ”だが、8五銀でその詰めろは消える。
 8五銀に、2三桂不成、2二玉、1一銀、2一玉、3一桂成、同玉、2二香成、4一玉、8五馬、6三歩、6一竜、5二金、5三銀(次の図)

研究3七桂図19
 これで後手玉は“必至”になった。7九角には、8八銀の受けがある。
 先手勝ち。

研究3七桂図20
 戻って、2六香に、3一桂 とした場合。桂馬を7五桂 と打って後手に勝ちがないなら、3一桂 と受けてどうか、という手。
 これには1五歩として、1筋の攻めを狙うのが着実な攻め方。後手が桂馬を受けに投入したので先手玉を攻める速い攻めがない。
 以下6六銀に、1四歩、同歩、1三歩(同香なら1二歩)、同桂、1四香。
 ここで7五銀のような手なら、8四馬と金を取って、後手玉は3三金以下の“詰めろ”になる。
 なので後手は4四銀とその筋を消すが、先手は1三香成と決めにいく(次の図)

研究3七桂図21
 1三同玉なら、3二角成で先手勝ち(9六歩には9八玉で先手玉に詰みなし)
 したがって1三同香とする。
 その手には8四馬がやはりここでも決め手になる。同銀に、2三香成、同玉、3二角成、同玉、2四桂(次の図)

研究3七桂図22
 後手玉は“詰み”。 2三玉に、2二金、同玉、2一飛、同玉、1二金まで。

研究3七桂図23
 (へ)3一銀(図)。
 攻める手に勝てる手がないのであれば、3一銀と受けてどうか。次に6二銀右と引いて4二金とすれば、角が捕獲できる。
 これには、2五香と打つのが良さそうだ。
 ここで後手は7五桂と打つ。先手は9八金(次の図)

研究3七桂図24
 9八金と受けさせて、そこで 9五歩 という手がある。
 しかしそれには2六飛が先手の予定。以下9六歩、同玉、9五歩、9七玉、1一玉に、3三歩成、同桂、2三香成といく(成でいくのが正着)
 以下2二歩に、8四馬(次の図)

研究3七桂図25
 2一金以下の“詰めろ”。
 先手勝ち(この攻めを成立させるために、香車を「2五」に打ったわけだ)

研究3七桂図26
 というわけで、後手は 9五歩 ではなく、4二金(図)とする。
 以下6三角成、6二銀右、4五馬、4四銀上(4四銀引なら4六馬として2三香成を狙う)、8九馬、7八歩、7二飛(次の図)

研究3七桂図27
 6九金、8四馬、7九金、同馬、同歩成、7五馬、7八と引、1五桂(次の図)

研究3七桂図28
 桂馬を取って1五桂と打つのが有効手になる。これで先手勝勢。

研究3七桂図29
 (と)4四銀引(図)と銀を引いて守った場合。
 これには、2五香と打つ(次の図)

研究3七桂図30
 2六香と打つと、後手3五銀のような手も生じるので、この場合は「2五」に打つ方が後手は困る。
 このままなら、5二角成、同歩、2三香成で先手の攻めが決まるので、後手はそれに対応しなければならない。しかし5五の銀を受けに使ったので、持駒の桂馬は攻めに使いたい。
 候補手は〈A〉6二金。
 それには、5二歩(次の図)

研究3七桂図31
 5二歩(図)に、6一歩と受けるのは、この場合は、5一歩成、同銀、2三香成、同玉、3一飛があり、こうなれば先手勝ちが決まる。
 ということで、後手はもう非常手段に出るしかない。7五桂、9八金と金を受けさせて、2四歩と突く。同香なら2三歩で強引に香車を入手して9五歩から攻めようという狙いである。
 2四歩に、先手は5一歩成。
 対して後手はそこで9五歩(次の図)

研究3七桂図32
 対して、先手は8五歩(9五同歩でも先手良し)
 以下、2五歩、8四歩、同銀、同馬、同歩、8六玉、7三金、8二竜(詰めろ)、7二歩、2四飛、2三香、3二角成、同玉、4一銀、2二玉、3二金、1一玉、7三竜(次の図)

研究3七桂図33
 先手勝ち。

研究3七桂図34
 戻って、2五香に、〈B〉3一銀の場合。
 この場合は、2六飛と打って、先手が良い。1一玉は2三香不成、2二歩、3二角成で先手勝ちだし、2四桂と受けるのも、同香、同歩、1五桂で先手勝ち。
 なので後手は1一桂しかない。
 そこで3三歩成、同銀(同桂もあるが2三香成、同桂、3四金、2五歩、同桂以下やはり先手良し)に、5二角成が決め手(次の図)

研究3七桂図35
 5二同歩、2三香成、同桂、同飛成、1一玉、1二竜、同玉、2三金、同玉、3五桂(次の図)

研究3七桂図36
 後手玉“詰み”

研究3七桂図37
 8つ目の候補手は、(ち)4四銀上(図)
 (と)4四銀引と違って、5五の銀を攻撃に使える形。その分、敵陣は弱体化している。
 この手には4五歩が合理的(次の図)

研究3七桂図38
 対して後手の応手は3通りある。[x]3五銀、[y]5三銀引、[z]7五桂の3つ。
 まず[x]3五銀は、7八歩、7六歩、5四香がピッタリの攻めになる(ただし「7八歩、7六歩」を入れずに5四香は7五桂、9八金、7六桂で後手ペースになる)

研究3七桂図39
 以下7五桂、9八金、6二金、5一香成とする。
 以下7八となら次に5二成香で先手が勝てる。また9五歩には8五歩として金を追う。先手良し。

研究3七桂図40
 [y]5三銀引(図)の場合。後手は5三に銀を戻って、先手は4五歩のために一歩を使ったが、“手得”をした。
 ここで3三歩成とするのが早い攻め。同銀に、2五桂と跳ねる。以下7五桂、3三桂成、同玉、8九香(図)

研究3七桂図41
 この場合、「香」で受けるほうが良い。「飛金銀」と手に持っているほうが後手玉を寄せやすいからだ。
 7六桂なら、3七飛と打って、3四桂、7七飛で、後手は対応に困っている。
 またここで9五歩なら、3一銀と打つ。これで後手玉は寄せられる。次に3八飛と打って、3四桂に2五銀で受けがなくなる。なので3一銀には4二銀が最善と思われる応手だが、4二銀に、3八飛、3四桂、8四馬がある。同銀なら、3二角成、同玉、3四飛以下“詰み”。なので8四馬に3一銀とすることになるが、7五馬で、先手玉は安全になり、先手勝勢である。

研究3七桂図42
 4五歩に、[z]7五桂(図)
 この手は、先手が何で受けるかをみて、それから3五銀とするか5三銀とするかを決めようという意味である。
 ここは9八金と、金で受ける。
 そこで 3五銀 は、7八歩、7六歩、5四香で上の変化に合流して先手良し。
 なので 5三銀引 とする。
 「金」を手持ちにしていた上の変化では3三歩成、同銀、2五桂と攻めて行ったが、この場合はその攻めはうまくいかない。
 ここでは2六香と打つのがよい(次の図) 

研究3七桂図43
 次に5二角成の寄せがあるので、6二金とするが、5二歩で先手良し。
 そこで〈1〉6六銀は5一歩成、7六歩が先手玉への“詰めろ”になっているが、7八歩と受けておいて大丈夫。同となら2五飛で先手勝ちだし、3一銀(2五飛に1一玉、2三飛成、2二歩の受けを用意した)は、3三歩成、同桂、5二とで先手の攻めのほうが早い(次の5三とが詰めろになる)
 5二歩に〈2〉6一歩なら、5一歩成、同銀、2三香成、同玉に―――(次の図)

研究3七桂図44
 3一飛(図)があって、先手勝勢になる。
 8七と、同金、同桂成、同玉、2二金は、1五桂、2四玉、8四馬で。
 2四玉は、2一飛成、2三歩、4七桂で“寄り”


3七桂図(再掲)

 これで結論が出た。 【9】3七桂 は、先手良し。




[研究調査 【10】3八香]


3八香図
 【10】3八香 と打つ手は考えてみたい手だ。しかし―――
 ここで後手が7五桂と打てば、この2手前の「6七と図」で3八香と打った変化に合流している。つまりすでに研究済みで、その結果は「後手良し」と出ているのである。
 以下、その主な変化を記しておく。

 7五桂、3三歩成、同銀(次の図)


 3三同銀(図)と取るのが良い手で、これで後手良しになる。
 対して9八金では、4二金、6三角成、6二銀右、4五馬、4四銀引、4六馬、7六桂で、後手良し。
 なので、3三同香成、同玉、3七飛という順に進む。以下、3四香、7七飛、7六歩(次の図)


 5七飛は6六銀以下後手良し。
 よって、7九飛。
 そこで5八金なら3五歩の好手があって、先手良し(3五同香、5二角成、同歩、4五金となれば先手勝ち)
 6七歩とする変化も、調査の結果は、きわどく先手良しになった。
 しかし、6九金があった(次の図)


 6九金(図)が妙手。同飛に、7七歩成、9八金。
 そこで6二銀左がまた好手。次に4二金(角取り)を狙いにする。5九飛なら4二金で後手が良い(6二銀左に代えて4二玉とするのは2二金、4一玉、8四馬できわどく先手良しになる)
 6二銀左に対しても、3五歩がある(次の図)


 3五同香なら、3一銀と打って、先手良し(3五歩、同香を入れずに3一銀は4二金で後手良し)
 よって、先手3五歩に、4二玉とするのが最善手。以下、5二角成、同玉、5九飛、5六銀(次の図)


 こう進んでみると、これは「後手良し」の図になっている。
 次に7六角と打たれると先手玉に受けがない。なのでこの図では6六金が考えられるが、それも8七角と打たれると先手勝てない。
 だからこの図では、7八歩が最善と思われるが、それも、8七と、同金、同桂成、同玉、7六角以下、やはり先手玉は寄せられてしまう。


 以上、【10】3八香 は後手良し、 を確認した。




 「吉祥A図」の研究結果は以下の通り。

吉祥A図
   【1】3三歩成 → 後手良し
   【2】3三香 → 後手良し
   【3】8九香 → 先手良し
   【4】2五香 → 互角(形勢不明)
   【5】5四歩 → 先手良し
   【6】2六香 → 先手良し
   【7】2六飛 → 先手良し
   【8】2五飛 → 先手良し
   【9】3七桂 → 先手良し
   【10】3八香 → 後手良し

 先手の有望手は、まだある。
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終盤探検隊 part156 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第55譜

2020年08月12日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第55譜 指始図≫ 7七歩まで

 指し手  △7七同歩成


[でもずいぶん得なこともあるのよ。記憶が前後両方にはたらくの]

 「おう、おう、おう!」女王さまはわめきながら、ちぎれんばかりに手をふりまわしてね。「指から血がでてる!おう、おう、おうおう!」
 その金切声といったら、まるで蒸気機関車の汽笛そっくりで、アリスもおもわず両手で耳をおおったほどだ。
 「どうしたっていうの。指でもさしたの?」やっと声がききとれるようになって、アリスはさっそくたずねた。
 「まだ刺さっちゃいないの――でも、もうじき――おう、おう!」と女王さま。
 「いつ刺さるわけ?」アリスはききながら、いまにもふきだしそうだ。
 「ショールをとめなおすときよ」きのどくに女王さまはうめき声で、「ブローチがもうじき外れるわ、おう、おう!」いってるそばからブローチのピンがパチンとはずれて、女王さまは手あらくそれをひっつかみ、とめなおしにかかった。
 「気をつけて!」とアリス。「それじゃまがってる!」そういってブローチをつかもうとしたけれど、あとのまつり、ピンはすべって、女王さまは指をさしてしまったのだ。
 「ほら、ちゃんと血が出たでしょ」女王さまはにっこり、「この土地の順序がこれでわかったでしょう」
 「でも、どうして今度はわめかないの」
 「だってもう十分わめいといたもの。いまさら繰り返してなんになる?」

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



 鏡の国の住人である「白の女王さま」の頭の中では、記憶は未来と過去と両方向に働いているという話。



<第55譜 吉祥A図を攻略せよ>


≪最終一番勝負 第55譜 指始図≫ 7七歩まで
 
 亜空間戦争最終一番勝負は図のようになった。ここから△7七同歩成と進んで―――


≪最終一番勝負 第55譜 指了図≫ 7七同歩成まで

 こうなった。これは4手前と同一局面である。
 あと2回、これを繰り返せば「千日手」になるが―――

 戦いの中、「あるいは失敗したかな…」とも思っていた。千日手になるとしたら、明らかに失敗である。
 打開手順がありそうなのだがーーーでも、発見できていなかった。


第56譜につづく




 我々は今、この図に「吉祥A図」と名前をつけて、研究している(ただし、これは“戦後研究”である)
 今では、この図からの打開手順は発見できている。

吉祥A図
   【1】3三歩成 → 後手良し
   【2】3三香 → 後手良し
   【3】8九香 → 先手良し
   【4】2五香 → 互角(形勢不明)
   【5】5四歩 → 互角(形勢不明)
   【6】2六香 → 先手良し
   【7】2六飛 → 先手良し

 この「吉祥A図」は、このとおり、「先手良し」になる道がいくつかあることがわかってきている。
 ここまできたら、この図を完全に調べ尽くしてしまいたいと思う。
 
 これから調査するのは【8】2五飛である。


[調査研究 【8】2五飛

2五飛図
 【8】2五飛(図)は有力な手で、この「吉祥A図」で最も勝ちやすい手は、実はこの手なのかもしれない。
 ここで考えられる後手の手は次のとおり。
  〔ア〕7五桂
  〔イ〕6六銀
  〔ウ〕9五歩
  〔エ〕6二金
  〔オ〕4四銀引

 このうち、〔ア〕7五桂(図)および〔イ〕6六銀については、「2手前の6七と図で2五飛」とした場合の研究ですでに結論の出ている変化になる。結論はどちらも「先手良し」。
 まずは簡単にそのおもな変化を示しておこう。
  
研究2五飛図01
 〔ア〕7五桂(図)には、9八金と、金で受けるのが急所である。これを8九香と香で受けると、逆に後手良しになってしまうのだ。

研究2五飛図02
 9八金(図)と受けたところ。なぜ金で受けるかというと、「香」を攻めに使いたいからである。ここで後手6六銀なら、2六香で先手勝ちになる。後手は桂馬を7五に使っているので受ける駒がない。なので8七と、同金、同桂成、同玉、2四金と受けるしかないが、2四同飛、同歩、1五桂で、先手勝ちが確定する。
 したがって、図の9八金に対しては6二金とする。これなら、2六香には3一玉で、これは後手勝ち。
 では、6二金に、先手はどうするか。5五飛(銀を取る)では、やはり3一玉で後手良し。

研究2五飛図03
 6二金に、3三香(図)が正解手となる。この手が指したいために、9八金と金で受けておくのだ。これで先手良し。
 以下、3三同桂、同歩成。これを同銀と同玉があるが、同銀は5一竜で先手良し。
 3三同玉には、5五飛と銀を補充しておいて先手が良い(この時のために「2五」に飛車を打ったともいえる)
 以下は変化の一例。後手9五歩がきびしい攻めだが、2五桂、4四玉(代えて2二玉には7五飛)、5九飛、5四銀、4六銀(次の図) 

研究2五飛図04
 4六銀(図)で、先手勝勢である(後手9六歩には、同角成があるので大丈夫)

研究2五飛図05
 【8】2五飛 に、〔イ〕6六銀(図)の場合。
 ここではいろいろな有望手があって、実戦ならかなり迷うところ。たとえば2六香、あるいは7八歩や5二角成(同歩なら3三金で後手玉詰み)も考えてみたいところ。
 しかし、はっきり先手良しになるのは、3三香だ(次の図)

研究2五飛図06
 3三同桂、同歩成、同銀と進むと、8四馬と金を取った手が、2一金以下後手玉への“詰めろ”で、先手勝勢。(3三同桂、同歩成、同玉も、8四馬が3四歩以下の詰めろになる)
 よって3三香(図)には、3一銀と受けるしかなさそう(次の図)

研究2五飛図07
 しかしそれも、8四馬が有効になる。8四同銀に、3二角成、同銀、同香成、同玉、3三銀、同桂、同歩成、同玉、3四歩、同玉、4六桂(次の図)

研究2五飛図08
 後手玉“詰み”。 3三香の一手で、鮮やかに攻めが決まっていた。

研究2五飛図09
 〔ウ〕9五歩(図)は「端玉には端歩」で、理にかなった攻めである。
 この手には、5二角成がある。これを同歩なら、3三金以下後手玉“詰み”である。よって、取れない。
 以下7五桂には、8九香と受ける(次の図)

研究2五飛図10
 8九香(図)と受けたので、持駒は減ったが、それでも5二歩なら、3三金、同銀、同歩成、同玉、3四歩、同玉、3五金、3三玉、2三飛成、同玉、2一竜以下の“詰み”
 次に先手3三歩成、同桂、5五飛となれば先手勝勢が確定する。といって6六銀は3三歩成、同桂に7五飛がある。なので、ここは後手4四銀引が最善と思われる。以下4一馬、7六歩、9八金(次の図)

研究2五飛図11
 9八金(図)と受けておく。これで後手からの攻めは止まった。6九金なら、8五歩で先手勝勢になる。
 よって後手は8七とと無理をして攻めることになる。これには同金がわかりやすい。以下同桂成、同玉に、3五金という手があるが、5四桂で―――(次の図)

研究2五飛図12
 先手勝勢である。桂馬が入ったので、5四桂(図)が生じた。

研究2五飛図13
 【8】2五飛 に、〔エ〕6二金(図)
 放っておくと先手5二角成の手があったので、〔エ〕6二金とするのは当然考えられる応手である。
 これには、3三香がここでも炸裂する。4二の銀が動くと5一竜が生じるので、この手が有効になりやすい状況なのである。
 以下、3三同桂、同歩成、同銀(同玉は8四馬、同銀に、3四歩以下詰み)、5一竜、3一香、4五桂(次の図)

研究2五飛図14
 4四銀引としても、3二角成、同玉、3三桂成、同銀、2一銀以下“詰み”
 先手勝勢である。

研究2五飛図15
 〔オ〕4四銀引(図)と銀を受けに使うのはどうか。これなら、先手の狙いの5二角成と3三香を両方防いでいる。
 これには、7八歩とする(次の図)

研究2五飛図16
 7八同となら、8五歩とし、同金に、5七馬で先手良し(以下8四銀には2四香が決め手になる)
 なので後手は〈a〉7六とか〈b〉7六歩の2択。
 まず〈a〉7六と。この手には、3七桂(次の図)

研究2五飛図17
 この3七桂(図)のねらいは、5二角成である。同歩なら、2三飛成、同玉、2四金以下の“詰み”がある。
 よって後手は 3一銀 と受ける。これには先手2六香。
 以下1一桂(代えて2四桂には1五金がある)の受けに、5二角成、同歩、8四馬と攻める。金を二枚入手して、2三飛成以下の“詰めろ”になっている(「7八歩、7六と」の手交換が入ったので、先手は角を渡して攻められるようになっている)
 後手はこれを取れず、7九角と打ってくる。これは9八玉とかわす。7九角は2四に利かせた攻防手だった。後手は2四歩(次の図)

研究2五飛図18
 2四同飛、同角成、同香、2三歩、同香成、同桂、7三馬(3一竜以下詰めろ)、4二銀引、2四金(次の図)

研究2五飛図19
 2四金(図)と打って、2三金以下の“詰めろ”をかけた。
 以下9七香、同玉、8七飛、9八玉、3七飛成が想定手順だが、8八金、7五桂、8九香としっかり受けておけば、後手の攻めは続かない。
 その後、先手は6四馬と桂馬を取って1五桂と打つのが後手玉への早い攻めになる。先手はっきり優勢である。

研究2五飛図20
 3一銀 では先手良しになったので、代えて6二金(図)としてみる。
 先手は2六香と打つ。
 対して1一桂は8四馬、同銀に、2三飛成以下後手玉“詰み”。2四桂は5二歩、同金、7七歩、同と、8五歩という手順で先手良し。
 それでは2六香に、後手3一玉とするのはどうか。以下5二角成(次の図)

研究2五飛図21
 5二角成(図)はカラ成だ。以下5二同金、2三飛成、4一玉、2一竜、3一桂、3三桂(次の図)

研究2五飛図22
 先手勝ちになった。この変化も「7八歩、7六と」の手交換があるので、先手は角を渡して攻めることに成功している。

研究2五飛図23
 戻って、7八歩に、後手〈b〉7六歩(図)の場合。この場合は後手に角を渡せない。「7六歩」を後手に打たせたことを利用する指し方を選ぶことになる。
 8五歩がその手だ。7四金なら、9四馬として、8六玉~9五玉の“入玉”をねらう(後手は7六ととできないのが「7六歩」を打たせた効果)
 8五歩には、同金とする(同飛なら8四銀で後手良し)
 そこで5七馬とするのが有効手(次の図)

研究2五飛図24
 5七馬(図)には、次に2四香(同歩、同馬となれば後手“受けなし”)のねらいがある。
 後手は7五桂とするが、先手は8八歩と受ける。さらに後手9五歩が9六金以下先手玉への“詰めろ”である。

研究2五飛図25
 しかし、5二角成(図)というピッタリの手があった。この手が“詰めろ逃れの詰めろ”で、先手が勝ちになっている。

 以上の研究調査から、次の結論がはっきりした。

2五飛図(再掲)

 【8】2五飛 は先手良し。



 さらに、次のことを調査したい。これは“再調査”になる。

[調査研究 【5】5四歩

5四歩図

 【5】5四歩 には4つの応手がある。
 [A]7五桂[B]5四同銀[C]4四銀上[D]6二銀左、この4つ。

 このうち、[A]7五桂第37譜 で解説した変化と合流し「先手良し」の結論が出ている。
 そして [B]5四同銀 は3七飛で、[C]4四銀上 には7八歩、7六歩、8九香でこれも「先手良し」と 第53譜 で解説している。

 問題は、[D]6二銀左(次の図)の手であった。

研究5四歩図01(6二銀左図)
 第53譜では、[D]6二銀左(図)に対する攻略がはっきりしないので、「形勢不明」として検討を打ち切ったのであった。
 あらためてこの図を調査研究して、今度は結論が出たので、以下その報告をする。

 ここではまず、7八歩とする(次の図)

研究5四歩図02
 7八歩(図)に、同となら、2五香、3一桂、2六飛で先手良し。
 また7六となら、5二角成、同歩、4一飛、3一角、3七桂で、これも先手良し。
 よって、後手は7八歩に、7六歩とする。

 そこで2五香と打つ(次の図)

研究5四歩図03(2五香図)
 2五香(図)が有力な手だ(2五に打ったのは、あとで2六飛と打つ含みを持たせるため。ただし3七飛や8一飛など飛車の別の使い方も視野に入れている)
 ここで後手の手番だが、有力な手は〔カ〕7五桂、〔キ〕3一桂、〔ク〕1一桂、〔ケ〕3一銀である(最有力手は〔ケ〕3一銀で、前回調査時点ではこの手が攻略できていなかった)
 この順に、調べた結果を以下に示す。

研究5四歩図04(7五桂図)
 〔カ〕7五桂(図)は当然考えられる攻めである。これには9八金と受ける。
 受けに駒を使わせて、後手は6三銀(次の図)

研究5四歩図05
 対して先手2六飛なら、3一玉から角を取りに行って、これは後手優勢になる。6三銀は3一玉を可能とした手だったわけだ。
 3一玉を許しては先手まずいので、2三香成、同玉、2五飛と攻めて行く。以下、2四歩、5五飛、7四銀直、3七桂と進む(次の図)

研究5四歩図06
 後手の7四銀直は、先手の7五飛からの“二枚替え”を警戒した手だったが、3七桂(図)として、ここでも次に7五飛を狙っている。9五歩なら7五飛、同銀、1五桂と打つつもりだ。1四歩とそれを防いでも、3五に桂を打てる。
 なので後手は7八ととする。これなら、7五飛と飛車を切ってくれば、あとで後手の6七飛打ちが厳しい手になる。
 先手は3五飛(次の図)

研究5四歩図07
 次に4五桂が先手のねらいで、その手は3三歩成、同桂、3四銀、2二玉、3二角成以下、“詰めろ”になっているので、7七歩成では後手攻め合い負け。 
 また後手9五歩なら、同歩と取っておく。以下、9六歩、同玉、9四歩なら、8四馬で、先手良し。

 後手4四歩と桂跳ねを防ぐ手の変化を見ていこう。先手は3三銀と打ちこむ。以下、同桂、同歩成、同銀、1五桂、2二玉、3四歩(次の図)

研究5四歩図08
 「3四歩、4二銀、8四馬」が正確な勝ちへの手順で、これを単に8四馬とすると、後手玉が“詰めろになっていない”ので、8九銀で後手勝ちになる(2三金には1一玉で逃れている)
 3四歩、4二銀、8四馬、8九銀には、2三桂成(次の図)

研究5四歩図09
 「3四歩、4二銀」を入れておけば、2三桂成(図)で後手玉は“詰み” 2三同玉に、3三金だ。

 以上の研究調査により、〔カ〕7五桂以下は「先手良し」となる。

研究5四歩図10(3一桂図)
 〔キ〕3一桂(図)には、2六飛と打って、先手が良い。
 次に2三香成、同桂、2四金で後手玉は“受けなし”になるので、後手は6三銀とする。こうしておけば、2三香成、同桂、2四金には、3一玉、5二角成、同銀で、角が取れるので、これは後手勝ち。
 6三銀には、3三歩成とする。同桂なら、8四馬、同銀に、2一金以下詰み。3三同玉には4五金で先手勝勢。
 なので後手は3三同銀。以下5三歩成、同金、5一竜(次の図)

研究5四歩図11
 2三香成、同桂、3二角成、同玉、3一金以下の“詰めろ”
 1四歩とすればその詰めろは消えるが、3四歩(同銀なら4二竜)で先手勝ちは揺るがない。

 〔キ〕3一桂は、2六飛で「先手良し」。

研究5四歩図12(1一桂図)
 〔ク〕1一桂(図)の場合は、2六飛と打つと、「形勢不明」の変化となる。
 1一桂、2六飛に、3一銀があるからだ。以下2三香成、同桂、2四金は、2五歩、同飛、1一玉で、難解な形勢である。
 〔ク〕1一桂に対しては、「3七桂」の手が良い(次の図)

研究5四歩図13
 「3七桂」(図)と力を溜めて、たとえば9五歩、同歩、9四歩なら、5二角成、同歩、3三金以下、後手玉は詰んでいる。
 「3七桂」に、後手(e)6六銀 は4五桂で先手良し。
 また、(f)7八と はそこで2六飛と打ってこれも先手良し(金を渡しても先手玉が詰まない形なので3一銀に2三香成~2四金が有効になる)
 後手の有力手としては、(g)3一銀(h)4四銀 とが考えられる。

 (g)3一銀 に4五桂は、4二金で後手良し。これが(g)3一銀 の狙いだ。
 ここは、5二角成(4二金とかわされる前に切っておく)、同歩、8九金として、次の図となる。

研究5四歩図14
 8九金(図)は後手の7九角を防いだ手だが、こう受けておいて、この図は先手が少し良いようだ。
 以下一例は、9五歩、4一飛、9六歩、同玉、9五歩、9七玉、4二角、4五桂(次の図)

研究5四歩図15
 4四銀、3三桂成、同銀、同歩成、同玉、3五金、2二玉、4四歩、同歩、7七歩、同歩成、4三歩(次の図)

研究5四歩図16
 先手勝ち。

研究5四歩図17
 「3七桂」に、(h)4四銀(図)の変化。
 これには3三歩成、同銀上、5二角成(やはり4二金とされる前に切っておく)、同歩、8九金(次の図)

研究5四歩図18
 こうなってみると、後手の打った「1一桂」がほとんど働いていないとわかるだろう。
 以下想定される手順は、4二銀(4一飛に5一銀右を用意した)、4一竜、5一銀右、6三飛(次の図)

研究5四歩図19
 この6三飛は、6四飛成と桂馬を取って、3四桂、3三玉、2三香成、同桂、4二竜、同銀、2二銀、3四玉、2五金までの“詰み”を狙っている。
 よって、後手は3四角と打ってその筋を防ぐ。以下7三飛成、7八と、7一竜(次の図)

研究5四歩図20
 3一銀以下の“詰めろ”。 先手勝勢である。

 〔ク〕1一桂も「先手良し」。

 ここまではしかし、前回の調査の時点でも(発表はしていないが)わかっていた。
 わからなかったのは、次の手である。

研究5四歩図21(3一銀図)
 〔ケ〕3一銀(図)。 この後の変化がわからなかったので、「形勢不明」としたのであった。
 ここで2六飛では、形勢がわからない。
 今回、新たに発掘した道は、「5三歩成、同銀、7七歩、同歩成、3七飛」という道である。

研究5四歩図22
 この順を発見したので、これで先手が勝てるのではないかと思えてきた。
 3七飛と打って、このまま後手が放置すれば――たとえば7六歩なら、2三香成、同玉、3三金として、寄せることができる。
 といって、1一桂は、7七飛で先手良しだし、4二金と受けるのも、6三角成で先手が良い。
 ここは7五桂が後手の最善手のようだ。以下、7七飛、7六歩、4七飛(次の図)

研究5四歩図23
 4七飛では、3七飛としたいところだが、それは4六銀とされたときに悩ましい。
 4七飛(図)として、次に5二角成、同歩、2三香成、同玉、4三飛成を狙い筋にする。4四歩(銀上)とそれを防いでも、5二角成、同歩、2三香成、同玉、3一竜で先手優勢だ。
 なので後手は5六銀で先手を取る。以下3七飛、4二金、6三角成、6二銀右、3六馬、6六歩、7八歩、6七歩成、8五歩、同金、8六金(次の図)

研究5四歩図24
 後手は5六銀から6六歩~6七歩成で攻めをつないできた。先手は8五歩、同金、8六金(図)で、上部脱出をはかる。
 これで先手優勢のようだ。もう少し続けてみよう。
 7七歩成、同歩、同と、同飛、6七桂成(取られそうな桂馬をさばいた)、7二飛成、8四歩、8五金、同歩、8七歩(次の図)

研究5四歩図25
 7六歩、7八歩、7七歩成、同歩、7六歩、同歩。
 後手としてはそこで6五銀と銀を使いたいが、すぐ6五銀は4五馬が先手にとっての絶好手で後手負けが決まってしまう。
 なのでここで後手は4四歩。次に6五銀とする意味だ。
 以下9四馬、6五銀、8五馬(次の図)

研究5四歩図26
 先手玉の“入玉”を後手は防げそうにない。先手勝勢である。


5四歩図
 【5】5四歩 は先手良し、と結論が出た。



吉祥A図
   【1】3三歩成 → 後手良し
   【2】3三香 → 後手良し
   【3】8九香 → 先手良し
   【4】2五香 → 互角(形勢不明)
   【5】5四歩 → 先手良し
   【6】2六香 → 先手良し
   【7】2六飛 → 先手良し
   【8】2五飛 → 先手良し

 「吉祥A図」の解明はここまですすんだ。有望な候補手はまだある。
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