はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊211 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第110譜

2021年02月24日 | しょうぎ
5四歩図(最終一番勝負97手目)



   [夏のかがやき]

〈しあわせな夏の日々〉はやがてすぎ
夏のかがやきは色褪せるさだめ――
よしや ためいきの影が ちらちら
物語のなかにほのめいたとしても
ぼくらのお伽(とぎ)ばなしのたのしみに
そんなものが災いひとつもたらせやしない

  (『鏡の国のアリス』巻頭の詩から  ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 )




<戦後研究:何が勝負を分けたのか(7=結論)>

6九歩図(一番勝負71手目)

 この図は最終一番勝負71手目の図。ここで形勢が「先手良し→後手良し」に変わった。▲6九歩が「悪手」だったのだ。

 ここから―――

△6七馬 ▲7八銀 △7四香 ▲7五歩 △同 香 ▲7七歩
△4四歩 ▲7九金 △3四馬 ▲7六歩 △4三馬 ▲6八桂
△7六香 ▲同 桂 △7五歩 ▲7七金 △7六歩 ▲6六金
△9六歩 ▲5九香 △7四桂 ▲5三香成 △同 馬 ▲7六金
△7五香 ▲5四歩 △同 馬 ▲6五金打

 と進んで、次の図になる。


6五金打図(一番勝負99手目)

 ここははっきり「先手良し」になっている。
 つまり、形勢がまた「後手良し→先手良し」と変わったのだ。

 後手の何が悪く、そして先手の何が “形勢逆転” への布石となったのか。
 それについて調べてきたが、以下はその「まとめ」である。



[まとめ 後手の何が悪かったのか]

6九歩図(一番勝負71手目)
 71手目▲6九歩。
 それまで先手が勝てる将棋だったのにこの6九歩が「悪手」で形勢が逆転した。
 (代えて6九金または7九金なら先手良しが継続できていて、おそらくそのまま先手が勝てただろう)
 ここからは “泥沼の闘い” 。ほぼ互角に近いが、先手が苦戦模様の状態での戦いが続く。


6八銀図(一番勝負73手目)
 ここで「7八同馬」とすれば、「後手良し」が継続できていた。
 
 【後手の失敗 その1】 ここで「7八同馬」を逃したこと


7七歩図(一番勝負77手目)

 そして78手目、後手が「6八桂成」を選べば「後手良し」だった。 

 【後手の失敗 その2】 ここで「6八桂成、同歩、7七香成、同銀、8九馬」を逃したこと


7六歩図(一番勝負81手目)

 82手目、ここで後手「6七歩成」の変化は「後手良し」だった。

 【後手の失敗 その3】 ここで「6七歩成」を逃したこと


 しかし上の3つは、後手のミスとも言いにくいところがある。実際に後手が選んだ本譜の順も、理解できるところがあるからである。
 問題は、次の「4つ目の失敗」だった。


6六金図(一番勝負89手目)

 この89手目▲6六金の図で、90手目、後手は「7四桂」を打つべきだった。

 【後手の失敗 その4】 ここで7四桂を逃したこと

 このことこそが、本勝負における後手の「最大の敗因」であろうと思われるのである。
 ここで△9六歩と指したのだが、それによって先手に▲5九香と打つチャンスを与えた。5九香~5三香成の手順が、「逆転」の可能性をつくったのだった。


 しかしそれでもまだ、後手に勝ち筋があった。
 △9六歩、▲5九香、△7四桂、▲5三香成 と進み―――
 後手の最後の「敗着」は、次の場面である。


5三香成図(一番勝負93手目)

 先手が▲5三香成 としたところ。これが先手の勝負手だったが、しかし、後手がこれを「5三同歩」なら、後手良しだったことが戦後の研究で明らかになっている。

 【後手の失敗 その5】 ここで5三同歩を逃したこと

  
 実戦は△5三同馬(94手目)と取った。この瞬間に、形勢は「後手良し→先手良し」と、“勝利の杯” が再度先手側へと戻ったのであった。


5三同馬図(一番勝負94手目)

 ここから先は、もう後手に勝ちはなかった。
 先手は▲5四歩と打ち、以下△5四同馬に、▲6五金打と打って、以下先手が勝利したのであった。


 つまり、上の5つの後手の敗因をあえて絞るとすれば、
  「6六金図(89手目)で7四桂を逃したこと」と、
  「5三香成図(93手目)で5三同歩を逃したこと」
 この2つであろう。


 以上が、本局の「逆転」の理由を、後手の立場から、敗因を探ってみた結論である。





 さて、今度は逆に、先手の視点から、この「逆転」の理由をまとめておくとしよう。
 先手の手の何が「逆転」をもたらしたのか―――つまり、何が後手に間違わせたのか―――について、考察しておきたい。


[まとめ 先手の何が逆転勝利を呼んだのか]

4三馬図(一番勝負82手目)

 この図は▲7六歩(桂馬を取った手)に対し、△4三馬としたところ(82手目)
 
 対して、最善手は理論上は8八玉になるのだが(それなら互角)、実際は▲6八桂(83手目)と指した。
 この選択が、良かったのではないか(つまり逆転の遠因になっているのではないか)


6八桂図(一番勝負83手目)

 【これが勝因か? その1】 6八桂

 図以下は、△7六香、▲同桂、△7五歩、▲7七金と進む。


7七金図(一番勝負87手目)

 そしてここで▲7七金と打って受けた。83手目に▲6八桂とすれば、ここは▲7七金とするしかなさそうではあるが‥‥この一連の手順が、「勝利」を呼び込んだのではないか。
 この図の▲7七金に、勝つぞという、“念” がこもっているという気がするのである。

 【これが勝因か? その2】 7七金

 形勢は、しかし、厳密には「後手良し」。
 △7六歩、▲6六金と進んだときに、「7四桂」(=最善手)なら先手は勝てなかっただろう。

 しかし後手はその最善手を逃し△9六歩と指す。まだ勝利は後手寄りのところにあるが、この手は “緩手” だった。
 先手は▲5九香(91手目)


5九香図(一番勝負91手目)

 先手は、▲5九香(図)と打った。
 この手が、 “形勢逆転” を呼びこんだのであった。
  後手が、90手目「7四桂」を逃して、△9六歩だったので、この香車を打つことができた。

 【これが勝因か? その3】 5九香

 とはいえ、まだ逆転には至っていない。
 ここで△7四桂(92手目)が来て、先手は▲5三香成と銀を取る。


5三香成図(一番勝負93手目)

 次の手△5三同馬(94手目)が、後手の「敗着」となった(同歩だったら後手良し)
 
 【これが勝因か? その4】 5三香成

 この後は、後手にもうチャンスは来なかった。先手(我々)が、しっかりと勝ち切ったのである。


5四歩図(一番勝負97手目)

 【これが勝因か? その5】 5四歩~6五金打

 97手目▲5四歩(図)と打って、△同馬、▲6五金打 と進み、以下先手は勝利することができた。「勝利を逃さない手」がこの▲5四歩だった。



 今回の調査報告を、「最終一番勝負」の最終譜とする。





一番勝負初形図(亜空間入口図)


先手:終盤探検隊
後手:亜空間の主(ぬし)

後手:ぬし
後手の持駒:桂 歩三 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 龍 ・ ・ ・v金 ・v桂v玉|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v銀v銀v香|二
|v歩v歩v歩 ・ 桂v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・v龍 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ 玉 ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・v銀 ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 ・ ・vとv金 ・ 歩 ・|七
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ 金 ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手:探検隊
先手の持駒:角二 金 銀 歩三 

▲3四玉 △5二金 ▲3一銀 △5一歩 ▲2二銀成 △同 玉
▲4二銀 △3三銀打 ▲4五玉 △4二銀 ▲5四玉 △5三銀
▲6五玉 △6四銀打 ▲7六玉 △5八金 ▲3三歩 △同 銀
▲3四歩 △4二銀左 ▲9一龍 △5九金 ▲6六角 △5五銀引
▲9三角成 △9四歩 ▲9六歩 △8四金 ▲8六歩 △5六と
▲7三歩成 △同 銀 ▲4一角 △3二歩 ▲6七歩 △6四桂
▲8七玉 △6七と ▲9七玉 △7七と ▲7八歩 △7六歩
▲7七歩 △同歩成 ▲7八歩 △7六歩 ▲7九香 △3一銀
▲3三歩成 △同 歩 ▲7七歩 △同歩成 ▲同 香 △7六歩
▲2五飛 △3二銀 ▲5二角成 △同 歩 ▲5五飛 △4一桂
▲7六香 △同 桂 ▲5九飛 △7七角 ▲8九飛 △6八角成
▲4四歩 △9五歩 ▲8七玉 △6六歩 ▲6九歩 △6七馬
▲7八銀 △7四香 ▲7五歩 △同 香 ▲7七歩 △4四歩
▲7九金 △3四馬 ▲7六歩 △4三馬 ▲6八桂 △7六香
▲同 桂 △7五歩 ▲7七金 △7六歩 ▲6六金 △9六歩
▲5九香 △7四桂 ▲5三香成 △同 馬 ▲7六金 △7五香
▲5四歩 △同 馬 ▲6五金打 △同 馬 ▲同 金 △7六金
▲8八玉 △7七歩 ▲7五金 △7八歩成 ▲同 金 △7五金引
▲4二銀 △1一玉 ▲3一銀不成△9七歩成 ▲同 香 △2二銀
▲同銀成 △同 玉 ▲4二角 △3一銀 ▲1一銀 △同 玉
▲3一角成 △2二銀 ▲3二馬 △3一金 ▲同 馬 △同 銀
▲4一龍 △7七歩 ▲同 金 △7六歩 ▲6七金 △7七歩成
▲同 金 △7六歩 ▲6七金 △9六歩 ▲3一龍 △7七歩成
▲同 玉 △2二角 ▲同 龍 △同 玉 ▲3一銀 △同 玉
▲3二歩 △同 玉 ▲4三銀 △同 玉 ▲5五桂 △5三玉
▲3一角 △5四玉 ▲4三銀 △4五玉 ▲4六歩 △同 玉
▲3七金 △5五玉 ▲5六歩 △4五玉 ▲4六歩 △3五玉
▲3六歩 △2四玉 ▲2五香 △1四玉 ▲1五歩 △2五玉
▲2六金 △2四玉 ▲3五金
まで171手で先手の勝ち




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