はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊 part130 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第29譜

2019年08月26日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第29譜 指始図≫ 3二歩まで

 指し手  ▲6七歩


    [少年と少女とものいう馬]

 この池こそ、仙人がじぶんの隠れ家の緑のつい地のそとの世界でなにがおこっているかを知ろうとするときに見る、鏡の池なのです。
    (『馬と少年』)
    
 アラビスもしょちゅうコルと口げんかをしましたが(つかいみあいまでしたらしいのです)、しかし、いつもふたりは仲なおりしました。このように、けんかをしては仲なおりということになれっこになったふたりは、何年もたっておとなになってから、いっそ結婚したほうがそれがやりやすいというわけで、結婚することにしました。
    (『馬と少年』C・S・ルイス著  瀬田貞二訳より)


 C・S・ルイス著『馬と少年』は、ナルニア国シリーズの物語の一つ。

 主人公は奴隷の少年シャスタ。ある日シャスタは、雄馬に話しかけながらこう言った。「おまえに口がきけたらなあ。」すると馬は「口はきけますよ。」と答えたのだった! この馬は、ナルニアから来た「ものいう馬」だったのだ! 馬のほんとうの名前は長くて覚えきれない名前だったので、ブレーと呼ぶことにした。
 シャスタは、奴隷として売られてゆく予定だったが、ブレーとともにその南の国カロールメン国を脱出して、北のナルニア国をめざすことにした。ここから“馬と少年”の冒険が始まった。
 少年シャスタとものいう馬ブレーは、途中で道連れの仲間を得る。一人の少女と、そしてその雌馬フインだったが、なんとこのフインも「ものいう馬」だったのだ!
 少女の名はアラビス。彼女はカロールメン国の中の有力な王の娘で、ある人物(60歳)との結婚を父が進めていて、それが嫌で馬フインとともに脱出し、この“少女と馬”もまた、ナルニアをめざしてゆくところだった。
 ナルニアに行くという目的がいっしょなら、行動を共にするほうがよいのではということになった。
 しかし内心、少年シャスタは、少女アラビスのことが好きになれなかった。もともとが王の娘だったこともあり、気が強くて苦手だったし、少年の馬ブレーがアラビスと共通の話題で盛りあがって、世間知らずのシャスタはそれに加われなかったことも面白くなかった。
 それに少女は、自分は奴隷のようなみすぼらしい姿のものとは違う身分にいたのだという誇りがあったので、シャスタのことを見下しているようにも思えた。もともと行動をともにすることにアラビスは抵抗を示していた。それを受け入れたのは、二頭の馬が、そうしたほうがよいと少女を説得したからである。
 シャスタとブレーが、初めてアラビスとフインに会ったとき、その馬上の人物が少女だったとわかったシャスタは、おどろいて、「なんだ、女の子じゃないか!」と叫んだのだが、少女はこう返したのだった。

 「わたしが女の子だからといって、あなたの知ったことじゃないでしょ?」

 ところがこの少女、このとおり気性がきついが、仲間との約束を守るということに関しては、信用のおける人間だったのである。アラビスにとって、シャスタはすでにチームで行動を共にすると約束した“仲間”だった。
 少年と少女と二頭の馬は、カロールメン国の都タシバーンの街を農民に変装して突っ切ろうと計画した。ところが、計画通りにうまくいかず、少年シャスタのみ、離ればなれに孤立して行動せざるを得なくなった。シャスタは一人行動になり、それでもやっと、何かあったときにはここで待とうと約束した合流場所(古代の王たちの墓)に到着した。そこには誰もいなかった。
 不安になりながら、シャスタは待った。シャスタ少年は「アラビスは自分を置いてナルニアめざしてもう行ってしまったかもしれない」などと思いながら、そこにいた猫に寄りそって夜をすごした。(その猫の正体はものいうライオンの王アスランだった)

 シャスタは、アラビスがどんなひとかについて、またしてもまるで考えちがいをしていました。アラビスは、誇りが高く、かなり気むずかしいところがありますが、はがねのように誠実で、すききらいにかかわりなく、ぜったいに仲間をおき去りにできない性質(たち)なのです。

 戦争の風雲までも経験するというこのたいへんな冒険が終わり、少年シャスタは、実は北の国アーケン国(ナルニア国と親交が深い)の、行方不明になっていた王子コルだったとわかり、最終的にはアーケン国を継ぐ王となる。
 そしてそのコル王子(シャスタ)とアラビスは、その後も、しょっちゅうけんかをしては仲直りをし、そして結婚したのである。 



<第29譜 どちらの道を行くか>



≪最終一番勝負 第29譜 指始図≫ 3二歩まで

 先手は4一角と打ち、後手は3二歩と受けた。
 ここで、「8七玉」と指すか、それとも「6七歩」が良いか。
 重要な「分かれ道」であった。


 ≪最終一番勝負 第29譜 指了図≫ 6七歩まで

 我々―――終盤探検隊―――が選んだ手は、▲6七歩 である。



[調査研究: 8七玉(その3)]

 本日の≪指始図≫の2手前の図に戻る。

7三同銀図
 ここで次の4通りの指し方があるのだが、
  (1)8七玉
  (2)6七歩
  (3)4一角、3二歩、8七玉
  (4)4一角、3二歩、6七歩(実戦はこう進んだ)
 ここで(1)8七玉を選んだ場合どうなるかを、前々回(第27譜)と前回(第28譜)に報告してきた。第27譜は「形勢不明」とし、第28譜ではさらにその調査を深めて「後手良し」と結論を出している。
 ところが、さらに“新手の発見”によって、またしてもその調査結果に変更がでることとなったので、ここからはその内容を以下に報告する。(1)8七玉の研究の結果によって、(3)4一角、3二歩、8七玉の結論も明らかになるので、ここは大事なところなのである。

8七玉図(研究テーマ図)
 ここから、7五桂、9七玉、7六歩、7八歩、7六とと進む(次の図)

6七と図
 ここで次の4通りの候補手があり、いずれも「後手良し」となった。
  〔A〕3九香 → 後手良し
  〔B〕2五香 → 後手良し
  〔C〕8八金 → 後手良し
  〔D〕4一角 → 後手良し

 これが今までの調査結果である。この結論については、変わらない。

 しかしここで、“新手”を発見したのだ。 次の手である。

  〔E〕3七桂

3七桂図 
 この 3七桂(図)が新発見の手。
 この手があることはわかってはいたが、7八とで先手負けと思っていた。ところが確認のためにと調べてみると、その思いは“先入観”に毒されていたとわかったのだ。
 あらためて調べていこう。

 さて、ここで、攻めるなら、(山)7八と か、(川)7七歩成
 そして受けるなら、(森)3二歩 が有力である。
 この3つの手について、以下、調査していく。


変化7八と基本図
 上でも述べた通り「3七桂は7八とで悪い」と思っていたので、その先を深くは考えなかったのだが…
 この (山)7八と(図)以下の結論がどうなるかがたいへん重要である。
 ここで「4一角、3二歩、3三香」と攻めるのが有効とわかってきた(次の図)

変化7八と図01
 この3三香という攻め筋は、戦闘時、「激指14(13)」を使っていた我々終盤探検隊の“死角”になっている。「激指」には、この手が良い手に見えていないのだ。
 3三香(図)には、3一銀(3三同桂は5二角成、3三同銀は同歩成、同玉、1一角以下先手良し)
 そして3一銀に、先手8四馬がある(次の図)

変化7八と図02
 この瞬間、8四の「金」を一枚加えて、後手玉に“詰めろ”がかかっている。3二香成、同銀、同角成、同玉、3三銀以下。3七桂が後手玉の上部を押さえている。
 だから4二金でその“詰めろ”を受ける(5一竜には4一金、同竜となって「角」を手に入れれば逆に先手玉が先に詰む)
 ところが、3二香成と捨てて(この手が大事)、同銀に、それから5一竜とすれば状況が変わる(次の図)

変化7八と図03
 この5一竜は3三金以下“詰めろ”だし、後手としては4一銀や4一金と角を取りたいが、それも3三金以下詰む。1四歩としても3三金以下詰み(3三同銀は2三香成~2一竜。3三金に1三玉も2四金、同玉、2五飛以下詰み)なので、後手は指す手がない。
 5一竜のこの図は、「先手勝ち」になっているのだ! 

変化7八と図04
 戻って、先手の3二香成を、同金(図)と取るとどうなるか。
 7五馬、6四銀右、7六馬、7五香。そこで2四桂(次の図)

変化7八と図05
 2四桂(図)が好手。
 同歩に、4三馬がある(同金は2三金以下詰み)
 また7六香なら、3二桂成、同銀、3三金以下“詰み”
 4二金には4三馬。 4二銀引も、3二桂成、同銀、同角成、同玉、3三金以下詰み。
 つまりこの図で、先手勝ちになっている。

 「(山)7八と に対して先手良しになる順」の発見は大きかった。(とくに「3二香成、同銀、5一竜」の手順)
 これで一気に、この「3七桂」が有望な手として輝きを放ちはじめたのである(我々の戦後研究の中での話だが)


変化7七歩成基本図
 3七桂 に、(川)7七歩成 を次に調査しよう。
 以下、同歩、同とと進む。 先手は8九香と受ける(次の図)

変化7七歩成図01(8九香図)
 ここで後手が何を指すか。
 【P】7六歩と、【Q】8七桂成が考えられる。

 【P】7六歩には、7八歩と打つ。同とに、「4五桂」(次の図)

変化7七歩成図02
 ここで3二歩と受けても、3三歩成、同歩、5三桂成で後手陣はスキだらけ。5三同銀に、4一飛、3一桂、6三銀で寄り。
 それなら攻めたほうがよい―――ということなら、8九と
 先手は3三角(次の図)

変化7七歩成図03
 3三角(図)で、後手玉は詰んでいる。
 3三同桂は、同歩成、同銀、3四桂以下。 
 3三同銀は、同歩成、同桂に、1一銀がある(次の図)

変化7七歩成図04
 1一同玉に、3一飛、2一銀合、2二金、同玉、3三桂成、3一玉、3二歩以下詰み(この詰み筋は最後に金を持っておくことが重要である)
 先手の勝ち。

変化7七歩成図05
 「4五桂」に、4四銀引(図)。 受けるならこの手だ。
 しかし、5三桂成、同銀上、3三銀、同桂、同歩成、同銀、3四歩、同銀、2六桂(次の図)

変化7七歩成図06
 先手の攻めは切れず、しっかり迫れば、先手が勝つ。3三歩には、4一飛と打って、後手の受けが難しい。

 結局、【P】7六歩は、4五桂で、先手良し。

変化7七歩成図07
 【Q】8七桂成(図)は、同香に、7五桂と迫る意味。
 先手は7九桂と受け、その桂馬をねらって、後手7八歩。
 先手、どうするか。 今度は4五桂は7九歩成で後手が勝つ。
 しかし、「7六歩」と打つ手があって、これがこの場合の最善の一手(次の図)

変化7七歩成図08
 ここで後手の2択である。7六同と、または、7九歩成
 
 7六同と には、2六飛がぴったりした好手となる。

変化7七歩成図09
 7六の「と金」をとられないよう6六銀や6六歩では、4五角の一手でもう後手の受けがなくなり「先手勝ち」が確定してしまう。この攻め筋が2六飛の意味。
 よって、後手は7九歩成。
 これは先手玉が“詰めろ”になっているので、7六飛。「と金」を消す。大きな一手。
 ここで後手7四銀なら、4五桂が速い攻めになる。後手はもっと速い攻めで迫らないといけない。
 そこで後手は、8七桂成、同玉、7五桂、9七玉と、香車を手にして、9五歩(次の図)

変化7七歩成図10
 9五歩(図)で、後手は攻め筋を広げてきた。
 ここで7九飛は形勢がもつれる。飛車はできれば2六飛のように攻めに使いたい。
 図以下、9五同歩、9六歩、同玉、9四歩。
 そこで3五桂と打つ(次の図)

変化7七歩成図11
 3五桂(図)と打って、攻撃の準備。次に2六飛や4五角が狙いとなる。
 4四銀上なら、2三桂成、同玉、4一角、3二歩、5二角成で、先手勝勢になる。
 図より、9五歩、9七玉、8九と(次の図)

変化7七歩成図12
 8九と(図)で、先手玉に“詰めろ”がかかった。
 これを9八玉では、8七香があってたいへん。
 ここは8五歩という絶妙な返しがある(次の図)

変化7七歩成図13
 8五歩(図)で、後手9六香には8六玉で逃げられるようにした。
 「8五同金で意味ないじゃないか」と反論されそうだが、8五同金には、次に示す“用意の手”がある(次の図)

変化7七歩成図14
 7五馬(図)である。桂馬を取って、この瞬間に、後手玉が、2三桂成、同玉、3五桂、2二玉、2六飛以下の、“逆詰めろ”になっているのである。
 後手は7六金と飛車を取ってその“詰めろ”を解除するが、やはり2三桂成、同玉、3五桂として、2二玉に、2三金、3一玉。そこで7六馬と手を戻す(次の図)

変化7七歩成図15
 先手勝勢になっている。
 いまのこの3五桂以下の攻めも、3七桂が有効に働いていた。

 このように、「変化7七歩成図08」から 7六同と には、2六飛があって、先手良し。

変化7七歩成図16
 「変化7七歩成図08」まで戻って、7九歩成(図)の場合はどうなるか。
 7五歩、7八と引に、3三桂(次の図)

変化7七歩成図17
 この3三桂(図)は、3二飛以下の“詰めろ”である。
 なので後手も対応する必要がある。しかし3三同桂、同歩成、同銀では、3四歩、同銀、2六桂、3三歩、4一飛で、“詰めろ”の攻めがほどけない。
 よって、3二歩と受けるが、2一桂成、同玉に、4一角と打っておく。
 8八とに、3三桂(次の図)

変化7七歩成図18
 3三桂と打って、後手玉は“詰み”なのである。3三同銀に、3二角成、同玉、3三歩成、同玉、3四歩以下。
 なお、先手4一角に、4四銀引と受けても、2四桂(同歩に2三金)のように手が続くので後手玉は延命できない。
 7九歩成 も先手勝ちになった。

 以上により、3七桂 に、(川)7七歩成 以下は先手良し、が結論となる。


変化3二歩基本図
 3七桂 に、後手(森)3二歩(図)と先に受けた場合。先手はどう攻略するか。
 3三歩成といく(次の図)

変化3二歩図01
 これを同歩は、3二に隙ができて後手が悪い。4五桂と跳べば、銀を逃げても5三歩があるので銀もはがされる。
 なので後手は、図の3三歩成に、同銀と応じる。
 先手4五桂に、4四銀引が頑強な対応である(次の図)

変化3二歩図02
 以下、3三桂成、同銀、4一飛、3一桂、3四歩、4二銀左(代えて4四銀なら1一角、同玉、3一飛成がある)
 そこで5五角が見えるが、それは4四銀、7三角成、7八とで、先手苦戦する。
 先手は5四歩と打って、後手の金銀の連結を弱くするのがよい。

変化3二歩図03
 5四歩(図)には、後手4四銀が、後手最善。
 手抜きして7七歩成と攻めるのは、同歩、同と、5五角、4四銀、7七角で、と金を消されてしまう。

 5四歩に同銀だとどうなるのか。それは、6一銀で先手優位に傾く。以下7八と、5二銀成、7七歩成で先手苦しいように見えるが、8九香と受けて―――(次の図)

変化3二歩図04
 後手の攻めはこれで止められる。8九同となら、6六角(図)で、“王手”でと金を抜く手があるからで、その変化ははっきり「先手良し」になるのである。

変化3二歩図05
 だから、5四歩には4四銀(図)が正着となる(ここで6一銀は、今度こそ7八とで後手良し)
 「5四歩、4四銀」を利かすことで、先手からは5三銀(香)の攻めがあるし、場合によっては5三歩成、同銀ともとの形に戻すこともできる。
 ここで先手は、「8八金」といったん受けに回る(次の図)

変化3二歩図06
 ここで後手に攻めのターンが来た。しかし7四銀のような手だと5三香が早く、後手陣が先に崩壊する。
 ということなら〔a〕6四銀ならどうだろうか(5三にも利かせている)
 他に、〔b〕9五歩、〔c〕6六歩、〔d〕6五桂、〔e〕6六桂が後手の有力手。一つずつ順に調査しよう。

変化3二歩図07
 まず〔a〕6四銀は、6一竜(図)がぴったりとした攻防の手になる。
 以下、6三歩には、8九香と打っておく(次の図)

変化3二歩図08
 いったん8九香(図)と受けて8筋を強化しておく。これで次に5二竜、同歩、4二飛成をねらう。後手は1四歩くらいしかないが、それでも5二竜以下を決行して、先手良し。

変化3二歩図09
 〔b〕9五歩(図)は、同歩、9六歩、同玉、9四歩、同歩と進む。以下7八と(次の図)

変化3二歩図10
 ここで、先手は7八同金、または9七金として、それで先手優勢である。
 7八同金以下を見ていくと、9五歩、9七玉、6五桂、6六銀、6四銀(代えて7四銀には6四角と打つ手がある)、1五角(次の図)

変化3二歩図11
 ここはもうはっきり先手が良い形勢になっている。
 1五角では、代えて6一竜もあった。後手の攻めが息切れ気味なので6一竜から“受けつぶし”で勝つ指し方である。
 ここでは1五角(図)からの攻めで勝つ順を解説する。
 1五角は次に4二角成が狙いで、だから後手はここは3三歩と受けるしかない。
 そこで5三香。以下、同銀上、同歩成、7七桂成、同銀、同歩成、同金、5三銀、3三歩成、同銀、4五桂(次の図)

変化3二歩図12
 4二銀右、3三桂成、同銀、3四歩、7九銀、9八玉(次の図)

変化3二歩図13
 後手はもう受けがない。2四銀では、4二銀で先手勝ち。
 よって、後手は3二玉で勝負する。ここは勝ち方が何通りもあり、以下は一例を示す。
 3三歩成、同桂、5三歩(次の図)

変化3二歩図14
 4一玉に、5二歩成、同玉、5三銀以下、後手玉を詰ませて、先手の勝ち。


変化3二歩図15
 〔c〕6六歩は、次に7八と、同金、6七歩成が狙いで、ここで先手5三香は、間に合わない。
 5三銀が正解である(これなら放置すれば4二銀成が詰めろになる)
 5三同銀上、同歩成、同銀、5五角(次の図)

変化3二歩図16
 これで後手陣の銀を一枚消して、5五角(図)と打てた(ただし、後手の持駒に銀が増えたリスクもある)
 5五角に、後手4四銀は、4二銀で先手勝ちになる。よって、4四歩だが、7三角成で先手が良い。
 後手は(7八と、同金、6七歩成では遅いので)7九銀と攻めてくるが、9八金とかわし、7七歩成に、5一馬が決め手である(次の図)

変化3二歩図17
 先手勝勢。

変化3二歩図18
 戻って、先手の7三角成に、後手が4二銀打(図)と頑強に受けた場合。
 最新ソフトは、ここで8五歩を推奨する。同金に、8六銀として、上部開拓をして“入玉”をめざす。これで先手勝勢だという。
 ここでは、3八香以下、攻めて勝つ順を示しておく(次の図)

変化3二歩図19
 図以下、7八と、同金、6七歩成と進むが、そこで先手は攻めに出る。
 8四馬左、同歩、5一馬(次の図)

変化3二歩図20
 角を二枚渡しても、まだ先手は詰まない。5一同銀(金でも同じ)に、同竜。
 同金に、3三銀、同歩、同歩成、同桂、1一銀、3二玉、4三銀(次の図)

変化3二歩図21
 後手玉が詰んだ。

変化3二歩図22
 〔d〕6五桂(図)。 これは今の〔c〕6六歩より、7筋に利かせている分、攻めが早い。
 だから今度は7九香と受ける(これ以外の手は先手不利になる)
 7七歩成、同歩、7八歩、同香、6六歩、5三銀(次の図)

変化3二歩図23
 先手はここで5三銀(図)と打ちこんで行く。
 同銀上、同歩成、同銀に、5五角と打ち、後手4四歩(4四銀なら4二銀がある)
 そこで7三角成は、この場合は8七銀、同銀、7八とで先手が悪い。
 ここは、5五角をこの位置に置いたまま、7一馬とこの援軍を攻めに参加させるのが良い攻めの構想(次の図)

変化3二歩図24
 7一馬(図)が早い手。次の4四角の攻めを狙いとする。
 後手は6二銀右と受けたいところだが、それは同馬、同銀、4四角で無効。
 6二銀打はあるが、銀を手放したため先手玉への攻撃が遅くなり、4四飛成、同銀、同角と攻めて、以下後手の受けが難しく、先手勝ちになる。
 後手は7九銀と攻める。これは詰めろ。
 しかし、3一飛成、同玉、5三馬があった。以下、同金に、5一竜、4一飛、4二銀、2二玉、3三歩成、同歩、同銀成(次の図)

変化3二歩図25
 3三同桂は3四桂があるので、3三同玉だが、5三竜、以下、詰んでいる。
 先手勝ちになった。

変化3二歩図26
 〔e〕6六桂(図) これが後手最強の手と思われる。
 これにも、7九香と受けるのが手堅い。6九金なら(攻めがきびしくないので)、5三銀と打ちこみ、同銀上、同歩成、同銀、5五角、4四歩、7三角成、7九金、5一馬と攻めて勝てる。
 先手に香を打たせ、その香を取ることを前提に、後手は9五歩と攻めてくるほうがよりきびしい手になる。
 今度は5三銀で銀を後手に渡す攻めでは先手悪くなるので、5三歩成とする(次の図)

変化3二歩図27
 5三同銀上 なら、1一角がある。以下、同玉に、3一飛成。
 2二角、3二竜、4二金、2三竜(次の図)

変化3二歩図28
 次に2四桂がある。それを3五銀で受けても、1五桂と打てば、後手玉にもう受けはない。
 先手勝ち。

変化3二歩図29
 なので、後手は5三歩成を、同銀引(図)と取ることになる。
 ここで5五角。以下、4四歩に、7三角成、9六歩、同玉、9五歩、9七玉、7八と(次の図)

変化3二歩図30
 7八同香、同桂成、同金、6六歩、6八歩、6九金(次の図)

変化3二歩図31
 ここでの6九金(図)は見かけ以上に早い攻めで、次に7九金をねらっている。同金は7七歩成で先手玉は"受けなし"になる。
 ここで先手がどう攻めるのがよいか、難しい。(歩が2つあれば、4三歩、同金、5五桂、3四金、4三歩で明快なのだが)
 ここは3三歩成が良い。相手の応手を聞いてから、攻め方を決める意味(次の図)

変化3二歩図32
 3三歩成(図)には、3つの応手がある。歩、銀、玉のどれで取るかの3択 である。
 
 まず 3三同歩 から。その手には、6四桂(次の図)

変化3二歩図33
 5二桂成とした手は、次に3二金、同玉、4二成桂以下の“詰めろ”になる。よって、ここで7九金は後手攻め合い負け。
 だから後手は4三金と逃げるが、そこで先手3二歩(次の図)

変化3二歩図34
 空いた空間に打つ3二歩(図)があった。7九金なら、3一歩成、同銀、5一馬で、先手の攻めが早い。
 なので、3二同玉だが、そこで8四馬左と金を取る。以下、9六香、8八玉、8四歩に、5一飛成(次の図)

変化3二歩図35
 5一同銀なら、4一銀以下、“詰み”である。先手勝勢。

変化3二歩図36
 戻って、3三同銀(図)
 5一馬で勝てればよいが、この場合は、同金、同竜、4二銀右で、先手悪い。

 ここは、7一馬が継続手になる。
 以下、7九金に、3四桂と打つのが好手。 3四同銀に、5三馬(次の図)

変化3二歩図37
 5三同金なら、3一飛成以下詰む。先手勝ち。

変化3二歩図38
 今の手順を途中まで戻り、先手7一馬に、後手が6七歩成、同歩、6二歩と受けてきた場合は、この図のように、6一馬と指せばよい。

変化3二歩図39
 3三同玉(図)
 この場合は、8四馬左とする。単に同歩は9五竜で先手玉が安全になってしまうので、後手は9六香と打って、8八玉に、8四歩と角を取る。
 そこで先手9五竜だ(次の図)

変化3二歩図40
 後手玉の露出した「3三玉」は、香車に弱い。それに先手は次に7五竜とすれば、この竜は攻めに働く。
 先手勝勢である。 


変化3二歩図05(8八金図、再掲)
 後手の有力手〔a〕6四銀、〔b〕9五歩、〔c〕6六歩、〔d〕6五桂、〔e〕6六桂すべて先手優勢になった。
 よってこの図は「先手良し」とする。

 すなわち、(森)3二歩 は先手良し、である。


3七桂図(再掲)
 以上から、3七桂 と指したこの図は、「先手良し」を結論とする。


8七玉図(再掲)
 つまり、この図の「8七玉」は、結論がくつがえって、「先手良し」に変わったのである!!!


 しかし、実戦は4一角と打った。以下、3二歩に、そこで“8七玉”ならどうなのだろうか。同じように「先手良し」としてよいのだろうか?

 結論を言えば、「4一角、3二歩」を入れたあとの「8七玉」だと、逆に「後手良し」になってしまう

 その理由を述べる。
 4一角、3二歩、8七玉、7五桂、9七玉、7六歩、7八歩、6七と、3七桂と進んだとする。
 そこで後手は、7七歩成、同歩、同とを選び、8九香に、8七桂成、同香、7五桂、7九桂、7八歩、7六歩となる。
 後手は「7六同と」と応じる。そして次の図である。

変化4一角図
 「4一角、3二歩」の手の交換がなかったら、ここで2六飛で「先手良し」だった。
 ところがこの場合、4一に角を使っているために、2六飛と打っても、次に4五角と打つ手がないので、この2六飛の攻めの効果がないのだ。
 したがって、3七桂の攻めは、この図に誘導されてしまうと「後手良し」となるのである。


 ということで、「4一角、3二歩」の後に「8七玉」を選んだ場合は、先手としては、3三香からの攻めを敢行することになる。
 それは「互角」に近い闘いにはなるが、我々の研究調査上は、「後手良し」となっている。(その内容は前回報告第27譜で示している)


 〔E〕3七桂 のところで、代えて、〔F〕2六飛 という手もある(次の図)

先手2六飛基本図
 これも調べてみると相当に有力である。
 7七歩成、同歩、同と、8九香(次の図)

先手2六飛図01
 ここで後手7八歩があるが、それは7六歩、6七桂成、3七桂で、先手がやれそう。
 なので、後手は7六歩とする。
 先手は7八歩と打ち、同とに、4五角と打つ(次の図)

先手2六飛図02
 4五角(図)は、後手玉への“詰めろ”なので、後手は3一桂と受けるが、そこで8五歩が先手の勝負手である。
 (4五角と3一桂の交換をすることで後手に桂馬を受けに使わせた)
 以下、8九とに、8六玉(次の図)

先手2六飛図03
 ここで後手に有力な手(4四銀や8七桂成や7四銀など)がいくつかあるが、しかし先手もやれそう。う
 ここから先は変化が膨大になり、とてもすぐには結論は出せない。
 よって、形勢不明(=「互角」)としておく。

[後日注]
 この 〔F〕2六飛 については、違う手順で同じ局面に合流するかたちで、再び後の譜で研究調査することになった。(第33譜)
 その結果は、「形勢不明」または「千日手」で、その選択権は後手が持つ。
 先手の終盤探検隊にとってはおもしろくない結果である


 
6七と図(再掲)
 すなわち、こうなる。
  〔A〕3九香 → 後手良し
  〔B〕2五香 → 後手良し
  〔C〕8八金 → 後手良し
  〔D〕4一角 → 後手良し
  〔E〕3七桂 → 先手良し
  〔F〕2六飛 → 形勢不明(互角)


7三同銀図(再掲)
 再び「7三同銀図」に戻り、状況を整理しよう。
  (1)8七玉 → 先手良し
  (2)6七歩
  (3)4一角、3二歩、8七玉  → 後手良し
  (4)4一角、3二歩、6七歩

 そして実戦は「(4)4一角、3二歩、6七歩」と進行した。 つまり、先手の分の悪い変化に入る可能性のある(3)のコースは避けたわけである。と同時に、(1)を逃したといえる。
 しかしそれは後に現れる「3七桂」の最善手を発見できなければ先手良しにはならない。その手は戦闘当時は発見できなかったのではないか。それなら、(1)8七玉を選んだ場合、先手はやはり苦戦することになっただろう。
 つまり、(1)および(3)の「8七玉コース」を選ばなかったのは正解だったかもしれない。


 ≪最終一番勝負 第29譜 指了図≫ 6七歩まで

 ただし、「6七歩」のコースを選ぶとしても、(後で冷静にふりかえってみれば)4一角打ちを保留して単に(2)6七歩のほうが、(4)4一角、3二歩、6七歩よりも優っていたという可能性は高い。 そのことは、後の譜の研究報告で具体的に明らかにしていくつもりである。

 ともかく、我々終盤探検隊は、▲4一角、△3二歩、▲6七歩 と指したのだった。



第30譜につづく
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終盤探検隊 part129 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第28譜

2019年08月05日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第28譜 指始図≫ 4一角まで

 指し手  △3二歩


    [ひみつのかがみ]
 ママ「しっかりおるすばんたのむわよ」
 アッコ「まかしといて」
 ママ「たまごやきなんかつくったりしちゃだめよ! おへやちらかさないことよ」
 アッコ「はあい」
 ママ「じゃいってくるわね」
  ジューーッ(注:卵焼きを焼く音)
 アッコ「イヒヒッ」
   (中略)
 男「わたしはかがみの国からきましてね。こうしてかがみがこわれたら新しいかがみとかえてあるいているんですよ。ただしあなたのようにかがみを大切にするひとだけにですがね」 
        (赤塚不二夫作『ひみつのアッコちゃん』より)


 赤塚不二夫作『ひみつのアッコちゃん』は、1962年から少女漫画雑誌『りぼん』で連載が始まっている。
 一方、TVアニメのほうは、1969~1970年である。
 TVアニメ『ひみつのアッコちゃん』で、アッコちゃんが使っている魔法のかがみは“コンパクトミラー”であった。すなわち、携帯用の小さな鏡である。

 しかし、オリジナルの赤塚不二夫の漫画の『ひみつのアッコちゃん』は、25~30センチメートルくらいの大きさの楕円形の鏡で、アッコは(ひみつのかがみなので)普段はこれを押し入れにしまっておき、必要な時に持ち出して遊ぶ。
 アッコちゃんにこの「秘密の鏡」をくれたのは、(漫画版では)「かがみの国からきた」という黒服・黒帽子・黒眼鏡のおじさんだ。おじさんと呼ぶには若い感じの男だが、鏡の国から来たのだと言う。アッコが大切にしていた鏡が割れてしまって悲しんで泣いていたところに、それを察知して「新しい鏡」を交換にやってきてくれたのだ(怪しすぎる…)
 この「新しい鏡」にむかって「なりたいものを逆さに唱える」と、それに変身することができる。たとえば、「ラレデンシ」と唱えれば、シンデレラになれるという仕組みだ。

 ところで、清少納言の『枕草子』の中に「鏡は」というタイトルの段がある。その本文は「鏡は八寸五分」と、これだけ。鏡は八寸五分のサイズがいいよね、ということか。

 アッコちゃんの鏡もだいたいそれくらいの大きさだ。たしかに、顔を見るにはちょうど良い。
 しかしこの大きさの鏡だと、友達と遊ぶときに、いちいち草むらの陰などにこの大切な鏡を隠しておかなければならず、不便である。大切な物だからこそ、気軽には持ち出せない。盗まれては困るし、鏡は割れてしまうリスクがある。だからアニメ版がコンパクトミラーに変更したというのもうなずける。コンパクトミラーなら、ポケットに入れておくことができる。
 しかし、漫画版の大きめの鏡のその“不便さ”が、まんが作品としては、アニメ版にない面白さを生み出していることも事実である。アッコちゃんは、変身したいとき、元にもどるとき、いちいち家まで戻らなければならない。“秘密をまもる”というのは苦労が多いのである。

 それにしても、この時代(1960年代)の漫画の子供は、よく走る。
 アッコちゃんは変身したいとおもったとき、家の押し入れの箱の中にしまってある「鏡」にむかって元気に走っていくのである。



<第28譜 ずっとこの手が指したかった>


≪指始図≫ 4一角まで

 我々は―――先手番をもつ終盤探検隊は―――▲4一角 と指した。
 この角打ちはずっと狙っていた手で、打ちたくてうずうずしていた。

 しかしこのタイミングでの4一角打ちは、あるいは早すぎたかもしれない。
 4一角に、後手3二歩が予想されるが、その後に先手は、「8七玉」と「6七歩」の2択になる。どちらを選ぶにしても、「4一角、3二歩」は、後でも入りそうなので、それなら4一角は後回しにしたほうが、手が広い可能性があるからだ。
 戦闘中は、とてもそこまで読み切れなかったので、「チャンスが来た!」という感覚で、とりあえず4一角を打って行ったのであった。「ここは4一角の打ち時だろう」と。


[調査研究: 後手3一歩]

変化3一歩基本図
 先手の▲4一角に対しては、「3二歩」が正着で、実戦で後手が指したのもその手である。

 しかし、代えて「3一歩」(図)も考えられる手である。もし後手がこの手を指していたら、先手は具体的にどう指せばよいかを、ここで確認しておきたい。

変化3一歩図01
 3一歩には、「2三」の弱点を衝く2六香(図)がよい。
 2三角成からの“詰めろ”なので、後手はこれを防がなければいけないが、3二歩 と受ける手と、桂馬を使って1一桂と受ける手がある(3二桂もある)

 3二歩 には、先手5二角成。

 これを 5二同歩 と取るか、または放置して 7五桂(先手玉に詰めろ)とがある。

5二同歩 なら、2三香成、同玉、2一竜で、2二歩合に、2五飛が抜け目ない決め方(次の図)

変化3一歩図02
 以下、2四香に、1五桂、1四玉、5五飛(次の図)

変化3一歩図03
 これで先手勝ちが決まった。後手玉は、2三銀以下の“詰めろ”。それを3一桂で受けても、2五銀、同香、2四金、同玉、3五金から詰んでいる。

変化3一歩図04
 5二角成に、7五桂(図)。 これは次に先手玉に6六との一手詰だ。
 8五歩では、6六と、8六玉、7四桂以下、後手ペースになる。
 ここは、しかし、8四馬と対応する手がある(次の図)

変化3一歩図05
 この8四馬(図)は、“詰めろ逃れの詰めろ”である。
 だからといって取る以外に手がなく、8四同歩(銀)に、2三香成、同玉、2四金、同玉、2六飛と進む(次の図)

変化3一歩図06
 2四金と捨てて2六飛(図)が鋭い詰み筋だった。後手玉のこの“詰み”を最後まで確認しておこう。
 2五歩合に、1五金、3四玉、2五金、3三玉、2四金、4四玉、4五歩、5四玉、6五金、4五玉、3七桂、3五玉、5三馬、同銀、4四銀(次の図)

変化3一歩図07
 5三馬切りから4四銀(図)が素早く華麗な詰ませ方である(ただし5三馬に代えて2五金、4四玉、4五歩、3三玉、2四金からの平凡な手でも詰む)
 4四同玉に、4五歩、3五玉、2五金まできれいな詰み。

変化3一歩図08
 「2六香」に、1一桂(図)と受けた場合(3二桂と受けた場合も同じように対応する)
 この場合は、8五歩がわかりやすい優勢拡大の手。

変化3一歩図09
 8五歩(図)に、7四金では先手玉が安全になって、後手に勝ち目がなくなる。
 なので、後手は6六と、8六玉、7四桂、9七玉、8五金と応じることになる。
 これは部分的には、後手がうまくやった形。
 しかし、先手としては、「後手に桂馬を使わせた」ということに意味がある。ここで後手玉の攻撃に入る。
 2三香成(次の図)

変化3一歩図10
 2三同桂に、2四金、3二歩、2六飛で、後手に受けがなく、先手勝ちがはっきりした(8六金には9八玉として、後手に香車が入っても、先手玉は詰まない)
 なお、2四金のところで、2六飛だと、2四歩(同飛には3二歩)で受かってしまい、勝ちを逃す。
 将棋の終盤は、勝ちになっても細心の注意が必要である。「勝った」と思ったときこそ、一番あぶない。 

 「3一歩」には、2六香以下、先手良し。



[調査研究: 先手8七玉(前回のつづき)]

7三同銀図
 これは今回の≪指始図≫の一手前の図。 ここで次の4つの手順が考えられると、すでに第27譜(前譜)で述べた。
  (1)8七玉
  (2)6七歩
  (3)4一角、3二歩、8七玉
  (4)4一角、3二歩、6七歩

 その報告(第27譜)では、(1)8七玉の調査を行った。
 それは結局、「互角」(形勢不明)ということでいったん調査を打ち切った。

 その調査をさらに進展させ、「新たな結論」へと変わったので、その内容および結果を以下に報告したい。


変化8七玉基本図
 「8七玉」と先手が指したところ。
 ここから、7五桂、9七玉、7六歩、7八歩、6七とが想定される手順であるが、そこで最有力手は、どうやら、4一角である(次の図)

変化4一角基本図
 4一角(図)、3二歩に、3三香と打ちこみ、3一銀、5二角成以下、進んで、次の図に至る。

変化8七玉図01
 この図がはたして、先手が良いのか、悪いのか、それがわからない。
 “最善”と思われる手をお互いが指しつないでいくと、次の「5五竜図」になる。(その内容は前譜での研究を参照のこと)

5五竜図(変化8七玉図02)
 前譜では、ここまで調べて、形勢不明とした。(この図は8七玉としたところから30手先の局面になる)
 今回はさらに先まで調べ、この図に“結論”を出す。
 ここで後手は、(A)「3三歩」または、(B)「3三桂」と「香車」を取ることになる。

 まず(A)「3三歩」から調査する。
 (A)「3三歩」、同歩成、同銀、7八歩(次の図)

変化8七玉図03
 先手玉は9六香の一手詰だったので、7八歩(図)とそれを受けた。
 以下、9六歩、9八玉、9七香、8九玉、9九香成、同玉、9七歩成、同金、9五香(次の図)

変化8七玉図04
 後手の攻めはなかなか途切れない。
 9六歩、同香、同金、7八角成(次の図)

変化8七玉図05(7八角成図)
 さて、この図はいったいどちらが良いのか。
 ここで先手9八銀がおそらく最善の応手。
 対して、8七桂不成 があるが――――
 同銀、同馬、8八金に、9八歩(次の図)

変化8七玉図06
 これを8九玉では、9六馬が詰めろになって後手の攻めが続くので後手良し。
 9八同金と取るのが正解で、以下、7七馬が“王手竜取り”で、8八金、5五馬となるが―――(次の図)

変化8七玉図07
 5二飛(図)と打てば、大駒(馬)を取りかえすことができる。 この図は、先手優勢の図。

変化8七玉図08
 したがって、後手7八角成に、先手が9八銀受けたとき、後手は 9六馬(図)と金を取る手が本筋の手となる。

 ここで先手は3四歩を利かす。同銀に、4六桂、4三銀とし、これで先手に桂馬が入れば、“3四桂打”と攻めることのできる形になった(その桂は7五にある)
 そこで9七歩と受けに回る(次の図)

変化8七玉図09
 手番の後手は、ここで指したい手が多い。〔あ〕8七桂成、〔い〕7八馬、〔う〕7六歩 などである。
 しかし、調査結果は、〔あ〕8七桂成 には8九香で、〔い〕7八馬 には8八金で、先手が指せるようだ。

 ここからは、最有力手と思われる〔う〕7六歩 以下を見ていく(次の図)

変化8七玉図10
 9六歩では、9七歩で、先手が不利になる。
 ここは7五竜が先手の戦える唯一の一手。同銀に、3四桂打が狙いだ(次の図)

変化8七玉図11
 3四同銀は、同桂、1一玉、9六歩(代えて7五馬は7九飛以下先手玉が詰まされる)、7七歩成、4四角以下、先手良し(3三歩に2二銀以下詰みがあるし、3三歩に7七角でも先手が良い)

 よって、後手は単に1一玉。
 1一玉に、7五馬(今度は7五馬が正解で、代えて9六歩は7七歩成で先手が悪い)
 以下、7九飛、8九香(次の図)

変化8七玉図12
 7九飛に8九香(図)と受けたが、代えて8九金だと8八金、同玉、7七歩成、9九玉、8九飛成以下、先手玉は寄っていた。8九香合が最善の受け。
 ここで後手7八馬が普通の手だが、それは2二金、同銀、同桂成、同玉、3一銀、3三玉、4二馬、4四玉、4三馬以下、後手玉が寄って、先手勝ちになる。
 したがって、後手はここで8八金と打ち捨て、同玉に、7八馬とスピードアップして攻めてくるしかない。
 以下、9九玉に、3四銀(次の図)

変化8七玉図13
 3四銀(図)で、今度は後手が桂を入手して、攻めに使おうとする。8七桂と打たれては先手が詰まされて負けだ。
 しかし先手には、6六馬があった。王手で、馬を攻防に働く位置に。
 後手3三歩に、8八金と受ける。以下、7七歩成、同金、同馬(次の図)

変化8七玉図14
 7七同馬、同飛成、3四桂、7六桂(次の図)

変化8七玉図15
 後手の攻めも“四枚の攻め”になっている(四枚の攻めは切れないというが…)
 8七金、7九竜(代えて6六角もあるが7七金、同角成、8八香打で先手良し)、4四角(次の図)

変化8七玉図16
 どうやら、「先手良し」が見えてきたようだ。それにしても「相穴熊」になっているのが面白い。
 7七歩、同角、6八角、6六角、7七歩、8八香打(次の図)

変化8七玉図17
 後手は7八歩成とするが、この手は詰めろではない。
 これでついに、攻守が入れかわる。
 2二銀、同銀、同桂成、同玉、5二飛、3二金(金合以外は3一銀以下詰み)、4二金(次の図)

変化8七玉図18
 先手勝ち。
 この図は、「8七玉」より94手後の局面になる(最新ソフトを使えば、ここまで調べられるというのがすごい)

 つまり、(A)「3三歩」以下は、先手良し。

 こう進むのであれば、先手は(1)8七玉を選ぶ価値があった。
 しかし、“もう一つの手”がある。

5五竜図(変化8七玉図02 再掲)
 「5五竜図」に戻って、もう一つの手(B)「3三桂」を見ていく。

変化8七玉図19
 以下、3三同歩成、同歩、となるが、このほうが後手陣は「スキがない」。 桂損をするよりそれが重要なことなのである。
 そこで7八歩 と受け、以下、同じように進んで、次の図になる。

変化8七玉図20
 9八銀に、そこで8七桂不成。
 以下、同銀、同馬、8八金、9八歩(次の図)

変化8七玉図21
 攻防の手順はまったく同じだが、後手の陣形が違う。
 さっきは「先手良し」になったが、この場合は逆にはっきり「後手良し」となる。
 9八同金に、7七馬~5五馬と、竜を取られ、今度は後手玉の“横っ腹が開いていない”ために、5二飛からその大駒(5五馬)を取り戻す手がないからまったく状況が異なるわけである。
 したがって、ここから先手が頑張るとすれば8九玉だが、9六馬、8七香、6九金、7八玉、6八金打、7七玉、6五歩となって―――(次の図)

変化8七玉図22
 後手優勢である。このままなら6六銀があるし、6五同竜には7四馬で、先手が悪い。

変化8七玉図23
 だから、「3三歩成、同歩」の後、先手は、7八銀(図)と銀で受ける。
 以下、9六歩、9八玉、9七香、8九玉、9九香成と、ここまでは同じ手順で進むが―――(次の図)

変化8七玉図24
 9九香成に、7九玉(図)とかわす。
 ここで「9七歩成」なら、先手6九銀と角を取り、6七桂成に、6八金と頑張る(次の図)

変化8七玉図25
 この図は、後手からの攻めの手段が多くて大変だが、正確に応じれば先手も戦えそうだ。

変化8七玉図26
 しかし、戻って、「9七歩成」ではなく、「5八角成」(図)が後手の最善の応手かと思われる。
 この手には、先手6八金があって、先手がやれそうに見えるのだが―――
 そこで6四銀が後手の絶好手である(次の図)

変化8七玉図27
 遊んでいた銀を6四銀(図)と、このタイミングで使うのが素晴らしい手。この手がなければ、6八金と打った場面は先手有望の図になるところであった。
 6四同竜は、6七歩で、後手良しがはっきりする。また、5八金、5五銀、5九金も、9七歩成(同金に7七歩)で、後手良しである。
 よって、ここでの先手の指し手は、【g】5二竜 か、【h】5八竜 の、2択。

 【g】5二竜 は、後手5七歩なら、8四馬、同歩、5八金、同歩成、4二竜から、後手玉を一気に詰め上げようというような狙いを持っている。
 しかし【g】5二竜 には、2五馬がピッタリの手になる(次の図)

変化8七玉図28
 2五馬(図)には、先手は5九竜(金のタダ取り)がある。
 しかし、6七歩が厳しい攻めだ(次の図)

変化8七玉図29
 5八金、8七香、同銀、5七歩、4八金、8七桂成、同金、6八銀(次の図)

変化8七玉図30
 後手優勢。 先手は持駒が多いが、攻めに使うひまがなく、やられてしまう。

変化8七玉図31
 【g】5二竜 では勝てないということであれば、先手は【h】5八竜(図)に期待したい。これで先手はますます“駒得”をしたが―――
 以下、同金、同金に、5七歩、同金、6七歩が厳しい攻め(次の図)

変化8七玉図32(6七歩図)
 これを先手はどう凌ぐか。放っておけば、後手5九飛や8七香が厳しい。
 “6九歩” が堅実な受けだが、8七香が刺さる(次の図)

変化8七玉図33
 8七同銀に、8九飛が鋭い攻めだ。8九同金、同成香(次の図)

変化8七玉図34
 きれいに寄せられてしまった。

変化8七玉図35
 「6七歩図(変化8七玉図32)」から、“5四角”(図)が工夫の一手。
 これには後手4三歩だが、そこで6九歩と受けてどうか。5四角を打ったので、これが受けに利いており、ここで8七香は同銀で今度は先手良しになる。
 5一香でどうなるかだが、それには3二歩、同銀、8二飛でどうかというところ。
 しかし、(5一香ではなく)5五飛があった。これが後手の最善手か(次の図)

変化8七玉図36
 5五飛(図)には、5六飛と受ける。以下、同飛、同金に、5九飛。
 つまり後手は先手の金を「5六」にうわずらせてから5九飛と打ったわけだが、これが読みの入った好手順で、これを「単に5九飛」としてしまうと、5八金打と受けられ、以下2九飛成、1五桂と進むと、先手ペースの戦いになっていた。
 
 先手は、2六飛。 この2六飛は、金取りを受けつつ、攻めを含みにした手。
 先手は、受け一方ではなく、どこかで後手陣に迫りたい。次に1五桂とすれば詰めろがかかる。後手の攻め駒はギリギリなので、受ける駒がない。だから後手玉に“詰めろ”をかける展開になれば、流れは先手になる。

 後手は6六香(次の図)

変化8七玉図37
 6六香(図)は“詰めろ”だが、これを6六同金は5四飛成と角を取られてしまう。
 先手は2三飛成と勝負する! 同玉に、4五角。
 以下、3四歩に、3五桂、3二玉(3三玉は2三金、4四玉、7一馬)、2三金、2一玉と後手玉を追い、そこで6六金と手を戻す。
 後手から詰めろが途切れれば、先手の勝ちになるが―――(次の図)

変化8七玉図38
 しかし5八飛成(図)が“詰めろ”なのだ。
 たとえばここで3四角なら、8九飛、同銀、同成香、同玉、8八竜以下“詰み”である。
 先手に適当な手(受け)がない。後手優勢である。

変化8七玉図39
 「6七歩図(変化8七玉図32)」に戻って、“7七角”(図)。
 これは、攻め味を持たせた手。3四桂と打てれば、先手ペースになる。
 後手は当然、3九飛と打って、その筋を防ぎつつ飛車を攻めに利かす。
 そこで先手の6九飛が工夫の一手である。
 そこで後手は応手に迷うところ。6九同飛成は、同玉で、むしろ少し先手玉は安全になり、先手有望の分かれになる(これが先手6九飛の狙いだ) また、3八飛成は3九金または3九歩で、はっきりしない。
 もっと良い手がある(次の図)

変化8七玉図40
 この瞬間に7六歩(図)と打つ手が好手となる。
 3九飛と飛車を取れば、7七歩成、同銀の後、後手4八角がぴったりの手になる。
 7六歩に、4四角と逃げる手には、3八飛成で、次に8七香をねらってはっきり後手優勢である(3九歩には6八歩成、同飛、4九竜が王手角取り)

 どうやら、先手の勝ちはないようだ。


5五竜図(変化8七玉図02 再掲)
 以上の調査により、この「5五竜図」は (B)「3三桂」以下後手良し、とはっきりした。

 すなわち――――

8七玉図
 この「8七玉図」から、7五桂、9七玉、7六歩、7八歩、6七とと進み―――

6七と図(再掲)
  〔A〕3九香 → 後手良し
  〔B〕2五香 → 後手良し
  〔C〕8八金 → 後手良し
  〔D〕4一角 → 後手良し

 「形勢不明」としていた 〔D〕4一角 は、「 後手良し」、が今の調査で明らかになった。

 そして、この図で先手に勝てる手がないので、「後手良し」が結論となるのである。


 以上は、“戦後の調査研究”の内容である。


 “戦後研究”は、最新ソフトが使用できるため、今回の「8七玉」の研究のように、複雑な終盤にまでなんとか結論が出せる。

 しかし我々がこの「亜空間戦争」で、使用していたのは、「激指」(13および14)である。これだと、同じレベルまで調べ尽くすのに、最新ソフトの10倍以上の時間をかけないとたどり着けない、という感覚だ。
 だから「激指14」という強いソフトを使用しても、時間が十分にあっても、それを使う人間の気力体力の限界もあって、どこかで調査を打ち切らなければいけなくなる。

 実戦では、だから我々は読み切れないまま、自信の持てないまま、であった。
 変化の広い場面では、結局は最後は“勘”による手の選択になってしまうのだ。



 ≪最終一番勝負 第28譜 指了図≫ 3二歩まで

 「亜空間最終戦争一番勝負」の実戦は、▲4一角 に、△3二歩 まで進んだ。
 
 ここで、「8七玉」と、「6七歩」の2択だ。(他の手は後手7五桂で先手はっきり不利になる)
 そして、「8七玉」を選べば、いま研究調査した変化と合流する。


 我々(終盤探検隊)は、ここはその2択であることは、わかっていた。
 しかし、どちらの手も、読み切れてはいない。

 我々が選んだ手は――――



第29譜につづく
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