はんどろやノート

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終盤探検隊209 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第108譜

2021年02月19日 | しょうぎ
最終一番勝負94手目



   [Life, what is it but a dream?]

いつまでも ながれをただよいくだり――
こんじきのひかりのうちを たゆたう――
いのちとは 夢 でなくてどうする? Life, what is it but a dream?

  (『鏡の国のアリス』巻末の詩から  ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 )





<戦後研究:何が勝負を分けたのか(5)>


5三同馬図(一番勝負94手目)
 この、94手目△5三同馬が「敗着」だったかもしれない―――というのは、もしも「5三同歩」としていたら、後手良しだったからである。そのことは 前回の譜 で示した。

 【後手の失敗 その5】 ここで5三同歩を逃したこと


 後手としては、5三馬で「8六」に利かす手が有効と見たのである。

 この後の実戦の進行を確認すると、この図(5三同馬図)から、▲7六金と進む(次の図)

7六金図(一番勝負95手目)
 ▲7六金(図)と受けるのは当然の一手。
 ここで後手はいろいろな手が考えられるところだが、実戦で後手が選んだ手は、△7五香。
 対して先手は、▲5四歩(次の図)

5四歩図(一番勝負97手目)
 △5四同馬、▲6五金打と進み―――(次の図)

6五金打図(一番勝負99手目)
 99手目6五金打(図)としたところでは、「先手良し」がはっきりしている。ここから先、後手にチャンスはなかった。


 すなわち、94手目△5三同馬から99手目▲6五金打のあいだに、後手の勝てそうな――あるいは互角にでも戦えそうな手段があるのかどうか。

 それをこれから調べていく。



[調査研究:7六金図」

 後手に勝てる可能性が残っているとしたら、この「7六金図」である。

7六金図(一番勝負95手目)
 この図を調査する。考えられる後手の候補手は、次の通り。
  〔い〕7五歩
  〔ろ〕7五香 = 実戦の指し手
  〔は〕9五金
  〔に〕9七歩成
  〔ほ〕6四銀
  〔へ〕8六桂
  〔と〕7七歩
  〔ち〕4三馬

 なお、この図の最新ソフト「水匠2/やねうら王」評価は 「互角」(評価値 +11 最善手7五香)

 後手がその前に「△5三同馬」の手を選択したのは、この図での〔い〕7五歩、または〔ろ〕7五香に期待していたからだと思われる。
 〔い〕7五歩 は、実際に指した手〔ろ〕7五香 と同じくらいの評価値を示す有力手である。
まずはその〔い〕7五歩 の手から。

変化7五歩基本図
 〔い〕7五歩(図)に、【X】6五金【Y】5四歩 が有力手となる。
 【Y】5四歩 は、同馬、6五金打、4三馬、7五金直、同金、同馬、6四金という展開が予想され、形勢不明(厳密には先手良しになりそう)
 
 【X】6五金 以下を本筋として解説していく(次の図)

変化7五歩図01(6五金図)
 【X】6五金(図)に、後手の候補手はいろいろある。
 (カ)7六歩(キ)9五金(ク)8六桂(ケ)6四銀(コ)6二香、など。

 最有力手は(カ)7六歩 で、まずこの手から解説する。
 これは以下、7五歩、8六桂、「5四銀」と進む(次の図)

変化7五歩図02
 「5四銀」に代えて5四歩も有力だが、この場合3一馬で後手ペースになる。後手から7八桂成、同金のあと、8五金や8五銀とされたとき、8六に打つ歩がないので困るのである。
 「5四銀」(図)と打って、歩を温存するのが正解となる。

 ここで後手は、<1>3一馬<2>4二馬<3>7八桂成<4>8五香<5>8五金 がある(次の図)

変化7五歩図03
 <1>3一馬(図)には、5一竜の手がある(次の図)

変化7五歩図04
 ここで後手が何を指すか。
 (a)6二香には、4二金で先手良し。以下7八桂成、同金、8五金には8六と打って先手が勝てる。
 他に、(b)8五香、(c)8五金が考えられる。

 (b)8五香は、7六玉、7八桂成と進む(次の図)

変化7五歩図05
 7八同金、8九香成、4三桂(次の図)

変化7五歩図06
 先手良し。

変化7五歩図07
 (c)8五金の変化。
 これには4三歩と垂らしておく。9五香なら4二歩成で先手が勝てる。
 後手6四銀がある。これに対して4二歩成は6五銀の瞬間、先手玉に9七金以下の “詰めろ” が掛かっていて後手が勝つ。
 6四銀には6六金と引いておくのが正しい手。
 そこで9二香(次の図)

変化7五歩図08
 9二同馬なら7五銀として後手良しになる。
 したがって、ここは7六金として、9三香に、8五金、7八桂成、同玉と進む。
 そこで6六歩には、5七金と受けて―――(次の図)

変化7五歩図09
 これで先手良し。
 図以下6七銀、同金、同歩成、同玉、5五銀と進めば、4二歩成で先手が勝ちに近づく。

変化7五歩図10
 <2>4二馬(図)と引く手には、8六玉と桂を取る手が成立する(次の図)

変化7五歩図11
 以下8五香に、7六玉、8九香成、4三歩(次の図)

変化7五歩図12
 ここで4三歩があるのが4二馬の弱点になっている。
 先手は飛車を取られたが、先手玉が7六玉型となり容易には詰まされない位置にいるのが大きい。
 4三同銀は、同銀成、同馬、4一竜、4二銀、5四桂と進むと先手勝勢である。
 また3一馬なら8九金としておいて次に4二金をねらう。これも後手に勝ち目のない戦いである。 
 <2>4二馬 には8六玉が鋭い判断となった。

変化7五歩図13
 それでは、<3>7八桂成(図)はどうか。これは同金と取る(同玉は6四銀で後手良し)
 そこで4二馬と引いておく。以下4三歩、同銀、同銀成のときに、8五金とする手がある(次の図)

変化7五歩図14
 先手玉は後手8六香から詰むので受けなければいけない。しかし歩はもう攻めに使ってしまった。
 ここは8六金と受ける。以下4三馬、8五金とし、すると6五馬、4一竜、3一金、5二竜、3二銀と進む(次の図)

変化7五歩図15
 後手3二銀と打つ手に代えて3二香だと4三桂という手があった。
 ここで3四歩と打って、どうやら先手良しの形勢である。対して7七歩成なら9六玉と逃げて、7八と、3三歩成、同玉、6三竜、4三馬、3五桂で先手勝勢となる。
 3四同歩なら2六桂(次の図)

変化7五歩図16
 先手優勢。4三銀や4三馬でまだ粘る手はあるが、先手優勢はまちがいない。

変化7五歩図17
 次は、「5四銀」に馬を逃げずに、<4>8五香(図)の変化。
 以下7六玉、7八桂成、5三銀成、同歩、4二金(次の図)

変化7五歩図18
 3一銀、同金、同玉、8四馬、同歩、4三歩、同銀、4二歩(次の図)

変化7五歩図19
 先手優勢。4二同玉は5一角以下 “寄り”

変化7五歩図20
  <5> 8五金(図)は、先手に7六玉と逃げさせないという手。
 5三銀成、同歩の後、9四馬とする。以下8四銀に、8二竜がある(次の図)

変化7五歩図21
 これで先手優勢。
 なお、8四銀に代えて8四香なら、4二金と打って、これも先手が良い。
 
 以上の調査から、(カ)7六歩 は 先手良しになると、結論が出た。


変化7五歩図01(再掲 6五金図)
 「6五金図」に戻って、ここで(カ)7六歩 以外の手の可能性を確かめていく。

 すなわち、(キ)9五金(ク)8六桂(ケ)6四銀(コ)6二香、である。


変化7五歩図22
 (キ)9五金(図)の変化。
 対して7七銀は8四香で後手ペースの戦いになる(形勢不明)
 ここは7七玉が良い。右辺に逃げ出す構え。
 以下〔m〕8六金 と〔n〕6三香 を見ていく。

 〔m〕8六金 には同飛もあるところ(以下同金、同桂、同玉、8四銀、同馬は互角)だが、、6七玉と逃げるほうが優る。
 これには、6三香(次の図)

変化7五歩図23
 ここは5五金打と受ける手もなくはないが、金は取らせて5八玉のほうが優る。
 5八玉、6五香、4三歩、同馬、4八玉、9七歩成、7一竜と進むのが進行の一例。
 先手玉は3八まで逃げておくのが理想。もしも後手が1四歩のような手なら、先手も3八玉としておく。
 しかしこの手順のように9七歩成のような攻めの手を見せてきたら、先手も7一竜と攻めを急ぐ(次の図)

変化7五歩図24
 8四銀、8二馬、8七と、6四馬(次の図)

変化7五歩図25
 先手優勢。

変化7五歩図26
 先手7七玉のところまで戻り、〔m〕8六金 に代えて、〔n〕6三香(図)の変化。
 これは先手玉を右辺に逃がさないという意味で、それでも右辺に逃げる6七玉は、6五香、5八玉、9七歩成、同歩、9六歩で、これは「互角」の闘いだ。
 またこの図で7五金は、8六金、同飛、同桂、同玉、8四飛で、後手優勢になる。

 ここは7五馬の手がありこれが最善手。6五香なら、5三馬、同歩、9五竜で先手良し。
 よって、7五馬には、同馬と応じ、同金で次の図となる。

変化7五歩図27
 ここで8六金は、同飛、同桂、4二銀で先手優勢。
 「4二」を防ぎつつ金取りに打つ3一角には9五竜がある。
 ここは、6六角と打ってどうかということになる。6六角に7六玉。
 そこで9九角成(同飛なら8六金で先手玉詰み)、9五竜、6六馬、8七玉の変化は、先手優勢。
 だから、後手は7五角と金を取る。
 先手は9五竜(次の図)

変化7五歩図28
 ここで後手が “4二角” と引くか、“3一角” と引くかで先手は対応を変える必要がある。
 “3一角” なら先手は5四角と打つ。以下8四馬に、5五竜(または9二竜)の手が、3二角成以下後手玉への “詰めろ” になっているので主導権を握れる。
  “4二角” なら、今度は5四角は不発になるので、その場合は5四金のほうが良い。
  “4二角”、5四金、8四銀に、4三銀(次の図)

変化7五歩図29
 4三銀と打って、後手玉は “詰めろ” になっている。先手良し。
 3一金なら、4二銀不成、同金、8四竜、同歩、5一角、3一銀、6三金で、先手勝勢となる。


変化7五歩図30
 (ク)8六桂(図)はどうだろう。
 8六桂を同玉と取るのは8五香で先手悪い。
 ここは5四銀が正解手。対して3一馬なら4三歩で先手良し。
 よって後手は4二馬とする。
 そこで8六玉としてどうか(次の図)

変化7五歩図31
 8六玉(図)と桂馬を取った。
 これには8五香があり当然そう打ってくる。以下7七玉、8九香成、同金(次の図)

変化7五歩図32
 ここで後手に手を渡ることになるのが不安要素だが、飛車だけでは早い攻めはない。先手は4三歩が楽しみだ。
 7六歩、6七玉、4七飛、5七歩、1四歩、3七香、4八飛成、4三歩(次の図)

変化7五歩図33
 後手は4八飛成で先手玉を包囲してプレッシャーをかけてきたが、ここでついに4三歩(図)を決行。
 ここで6六歩が返し技。同玉と取ると、4三銀、同銀成、同馬、4一竜のときに、6五馬で先手玉が先に詰まされてしまう。
 なので6六同金と取り、すると後手は6四馬。以下6五銀に4六馬(8六馬なら5一竜とする)
 これには5八金と受ける(次の図)

変化7五歩図34
 5八金(図)と受けて、これで先手勝勢。
 5八竜、同玉、4七金の攻めは大丈夫(後手玉の攻略は4二歩成~3一飛の攻めがある)
 4九竜のような手なら、4二歩成とし、その後は、3二と、同玉、5一竜と攻めて行けばよい。


変化7五歩図35
 (ケ)6四銀(図)も後手としては考えてみたい手。
 先手は5四歩と打つ(次の図)

変化7五歩図36
 こうして馬の引場所を問う。
 この場合は、4二馬だと5一銀がある(3一馬に4二金)
 したがって、3一馬と引いて、先手は7四金、同金、5一竜と後手陣に迫る。
 以下6五銀に、9五歩(次の図)

変化7五歩図37
 後手の6五銀は、7六銀、9六玉、9五歩、同玉、8四金打の狙いがあるので、先手はそれを受けなければいけなかった。7七歩もあるが、9五香と打たれるのが気になるので、9五歩(図)として工夫して受けたのがこの図である。9六玉となったときに8九飛が受けに利いてくるという構想だ。
 6四馬、4二金、3一香、5二竜、7六銀、9六玉、9四歩、4三桂、1四歩(次の図)

変化7五歩図38
 1四歩で、後手玉はすぐには詰まなくなった。
 だからここで3一桂成とすると、9五歩、同玉、8四金打、9六玉に、1九角成が先手玉が先に “詰めろ” になって、先手まずい。
 だからここでの先手の最善手は7七歩となる。6五銀とバックするなら、3一桂成で先手が勝ちになる。
 先ほどの9五歩、同玉、8四金打、9六玉、1九角成は、7六歩で大丈夫だ。以下9五香、8七玉、6五金は詰めろではないので、3五銀と後手玉に先に“詰めろ”を掛けて先手勝ち。

 先手7七歩に、後手は、9五歩、同玉、9八歩と玄妙な技を繰り出してくる(次の図)

変化7五歩図39
 9八歩の意味は同香、9七歩、同香とすれば、7三馬から先手玉が詰んでしまうということだ。
 というわけで、先手は7六歩と銀を取る、以下9九歩成に、3二金、同香、3一銀、1三玉、2五銀(次の図)

変化7五歩図40
 先手勝ちが決まった。


変化7五歩図41
 (コ)6二香(図)はどうなるか。
 この手には5四歩とする(次の図)

変化7五歩図42
 3一馬なら5一竜として6五香に4二銀で先手良しになる。
 また4三馬は、7五金がある。
 よって4二馬と逃げるが、5一銀がある。以下3一馬、4二金(次の図)

変化7五歩図43
 6五香、3一金、同玉、8四馬、同銀、4二金、2二玉、3一角、1一玉、7七歩、5八角(7六金以下詰めろ)、9六竜(次の図)

変化7五歩図44
 先手勝ち。


 以上の調査から、〔い〕7五歩 は 先手良し、と結論する。



 7五香図(一番勝負96手目)
 〔ろ〕7五香(図)は、実戦で後手の≪ぬし≫が指した手。
 いまの〔い〕7五歩との違いは、「6五金には7八香成がある」ということである。以下7八同玉、7六銀、6一竜の変化は形勢不明=互角(その変化については 第91譜 で示してある)

 しかし、〔ろ〕7五香には、(6五金ではなく)▲5四歩で先手が勝てたのであった。
 (これについては第92譜以降で解説している)



変化9七歩成基本図
  次に、〔に〕9七歩成(図)
 「9七歩成、同玉」を利かすことでどういう違いが出るかが注目点である。

 9七同香、7五歩、6五金、7六歩、7五歩、8六桂と進んで―――(次の図)

変化9七歩成図01
 ここで “違い” が出る。
 5四銀と打つと、同馬、同金、8五金、4二金に、9八銀の手がある。後手が「9七歩成、同香」を入れた意味はここにあった。
 なのでここは5四歩と打つ。9筋で歩をもらったので今度は歩切れにならないということで、ここは5四歩が正解になるのである。
 以下3一馬(4二馬は6七銀、6四銀に5一銀が有効手になる)、5一竜(次の図)

変化9七歩成図02
 5一竜として4二銀をねらう。後手は6四銀が指したい手なのだが、先手4二銀があるのでそれを指せない。
 というわけで後手は、7八桂成、同金、8五金と先手玉に迫ってくる。
 そこでこの変化は、「一歩」を持っているので8六歩と打てる(ここが重要ポイントである)
 以下7七香に、4二銀と打つ(次の図)

変化9七歩成図03
 これで先手良し。以下手順の一例を示す。
 4二同馬、同竜、3一銀、同竜、同玉。
 そこで5一角、4二銀、7三角成でも先手良しであるが、この変化は勝ち切るまでまだたいへん。
 ここは、5一銀、4二銀、同銀成、5一銀という手段がある。以下5一同玉に、3一角と打つ(次の図)

変化9七歩成図04
 後手に7八香成の余裕を与えずに迫ってこの図になった。後手玉は、6三桂以下の “詰めろ” である。“詰めろ” が継続すれば先手勝ちとなる。
 8二銀打なら、6三桂、6二玉、7四歩で先手勝ち。

 6三飛と打って抵抗する手がある。
 これには8三馬(6一金、同飛、7三馬以下詰めろ)として、8二銀打、4二金、6二玉、7四桂(次の図)

変化9七歩成図05
 7四同銀に、8二馬として、その手は7三銀、同飛、同馬、同玉、7四金以下“詰めろ”になっている。そして先手玉には詰みはない。
 先手の勝ち。

 〔に〕9七歩成 は 先手良し。



7六金図(一番勝負95手目)
  〔い〕7五歩 → 先手良し
  〔ろ〕7五香 = 実戦の指し手
  〔は〕9五金
  〔に〕9七歩成 → 先手良し
  〔ほ〕6四銀
  〔へ〕8六桂
  〔と〕7七歩
  〔ち〕4三馬

 残りの候補手については、次回に。


次譜[戦後研究:何が勝負を分けたのか(6)]につづく
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