はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊 part169 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第68譜

2020年09月28日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第68譜 指始図≫ 7七同歩成まで



  [わたしの願い]

まどか
「これがわたしの祈り! わたしの願い! さあ‼
 叶えてよ‼ インキュベーター!!!」

    (アニメ『魔法少女まどかマギカ』TVシリーズ版 より)



インキュベーター (incubator)
 1. 孵卵 (ふらん) 器
 2.(未熟児のための)保育器
 3.新規産業の企業を育成し、誘致するために、公機関などが、低コストで提供する施設
    技術・経営関係のインキュベーションもあわせて提供する
         (デジタル大辞典 小学館)




<第68譜 吉祥B図の調査 完了!>

 「吉祥B図」を徹底調査中。今回でその最終回になる。

吉祥B図
   【00】7七歩  → 同歩成で「吉祥A図」に → 千日手ループ
   【1】3三歩成 (後手良し) → 先手良し
   【2】3三香 (後手良し) → 後手良し
   【3】8九香 (先手良し) → 先手良し
   【4】2五香 (形勢不明) → 先手良し
   【5】5四歩 (先手良し) → 先手良し
   【6】2六香 (先手良し) → 先手良し
   【7】2六飛 (先手良し) → 先手良し
   【8】2五飛 (先手良し) → 先手良し
   【9】3七桂 (先手良し) → 先手良し
   【10】3八香 (後手良し) → 先手良し
   【11】8一飛 (形勢不明) → 互角(形勢不明)
   【12】1五歩 (後手良し) → 先手良し
   【13】9八金 (後手良し) → 先手良し
   【14】6五歩 (後手良し)
   【15】3七飛 (先手良し) 

        ※ (灰色字) は「吉祥A図」の調査結果




[調査研究 【14】6五歩

6五歩図
 「7八歩、7六歩」の手交換のない形での(「吉祥A図」からの)【14】6五歩 は、第60譜 で結論が出ていて、「後手良し」である。手順は7五桂、9八金、7六桂、8九香、6六銀という手順。
 ところがこの図の場合は、「7六桂」の手がない。これができないとなれば、図の【14】6五歩が「先手良し」の可能性もあるかもしれないわけで、正確な結果を知るためには調査の必要が出てくる。

 候補手は、〔P〕5六桂〔Q〕7八と〔R〕7五桂〔S〕6六銀
 後手は先手に無条件に6四歩と桂馬を取られてしまってはいけない。


研究6五歩図01
 まず、〔P〕5六桂(図)と桂馬を逃げる手を考えよう。
 この手には、7七歩、同歩成、3七飛と指すのが良い(次の図)

研究6五歩図02
 このまま3三香と打ちこまれると後手はまずいので、7五桂と打つ。
 以下7七飛(代えて9八金と受けるのは6六銀以下形勢不明)、6六銀、3七飛。次に3三香と打ちこむと後手陣は攻略できる。
 なので後手は 4四銀 と受けるが、7六歩と打つ手がある。仕方のない6七桂成に、4五歩、同銀、3三香(次の図)

研究6五歩図03
 3三同桂に、5二角成で先手勝ち。

研究6五歩図04
 4四銀 に代えて、3一銀(図)にはどうするか。3三香なら4二金とがんばる意味だ。
 3一銀 には2六香と打つのがわかりやすい攻めになる。2三香成、同玉、3三金、2四玉、8四馬が狙いの攻め。
 それを受けて後手4二銀引とする。
 そこで、ここでも7六歩が打てる。以下6七桂成には、なんと、同飛!
 同銀成に、1五桂(次の図)

研究6五歩図05
 先手勝勢になっている。


研究6五歩図06
 〔Q〕7八と(図)は、やや遅いが着実な攻め。
 これには2五香と打つ。7七歩成なら、2六飛、3一桂、2三香成、同桂、2四金で先手良し。6二金なら6四歩と桂馬を取って1五桂と3五桂を狙って、これも先手良し。
 なので、後手は2五香に、1一桂と受け、2六飛に、6二金とする。次に3一玉が後手の狙い。それを許さないために、3三歩成(次の図)

研究6五歩図07
 3三同桂なら2三香成、同桂、2一金、同玉、2三飛成、1一玉、3二角成で先手勝ちになる。
 よって、3三同玉。
 以下3六飛、4四玉、3七桂、3三桂、8五歩、7四金、6四歩、同銀左上、4六桂(次の図)

研究6五歩図08
 先手勝勢になった。

研究6五歩図09
 〔R〕7五桂(図)は当然考えなければいけない手。
 これは9八金と受ける(次の図)

研究6五歩図10
 「7八歩、7六歩」が入っているこの型では、ここで後手7六桂がないので、それでどうなるかが注目点である。
 ここで考えられる後手の手は〈1〉7八と〈2〉6六銀〈3〉6六歩〈4〉5六桂

研究6五歩図11
 〈1〉7八と(図)として、次に7七歩成~7六歩と2手入れば先手玉に詰めろが掛かる。
 先手は2六香と打つのが早い攻めになる。次に無条件で2五飛が打てれば先手勝ちになる。
 したがって後手は6二金と受ける。2五飛なら3一玉で後手が勝ち。
 ここで3三歩成が正着(次の図)

研究6五歩図12
 3三同銀は5一竜だし、3三同桂は6四歩と桂を取って3四桂を狙えば先手良し(3一玉には1一飛がある)
 3三同玉には、8四馬、同銀、3五飛で、やはり先手勝ち。

研究6五歩図13
 〈2〉6六銀(図)にも、2六香と打つ。
 以下6二金、3三歩成に、同桂と応じる。
 そこから、6四歩に、3一玉と進む(次の図)

研究6五歩図14
 そこで先ほどと同じように1一飛は2二玉、8四馬に、8七桂成、同金、同と、同玉、7七金以下、後手良しになってしまう。
 ここは、6三歩成とする。以下4一玉、1一飛、3一銀、5三と(次の図)

研究6五歩図15
 先手勝ち。5三同金は、3一飛成、同玉、5一竜以下、“詰み”


研究6五歩図10(再掲)
 〈3〉6六歩 も同じように進めて先手良しになる。

 〈4〉5六桂と桂を逃げておくのはどうだろう。2六香、6二金、3三歩成、同桂に、8五歩(次の図)

研究6五歩図16
 7四金に、7五馬がある。
 同金に、3四桂、1一玉(3一玉は1一飛、2一角、2三香成で先手勝勢)
 そこで、8九飛と受ける(次の図)

研究6五歩図17
 後手8六角と7九角の手を両方受けて、次の3二角成または2三香に期待する。3一銀には5一竜があるので受けがなく、先手勝勢である。6六金も、3二角成、7五角、8六飛で受かっている。


研究6五歩図18
 【14】6五歩に、〔S〕6六銀(図)の場合。
 やはり2六香と打つのが良い。以下6二金には、3三歩成、同桂、6四歩で、先手良し。
 2六香に、7五桂、9八金と進めば、先ほどの変化に合流して先手良しが確定している。
 したがって、2六香に、5六桂としてみる(次の図)

研究6五歩図19
 ここは、2三香成と行く手がある。同玉に、1一飛(次の図)

研究6五歩図20
 「7五桂、9八金」で、金を受けに使ってしまっている場合には、この攻めは2二玉で無効になっていた。しかしこの場合は、2二玉には、3二角成、同玉、1二飛成、2二歩に、2三金から後手玉“詰み”――という寄せがある。
 図以下、変化の例は、3四玉、2一飛成、9五歩(代えて7五桂は7九桂の受けで後手の攻めが止まる)、同歩、9六歩、同玉、9四歩、8五金(次の図)

研究6五歩図21
 「桂香」を持っている後手の9筋の攻めは厳しい攻め。しかし、8五金(図)で受かっている。
 ここで8二桂なら、9四金として、同桂に、3七桂で先手勝勢だ。
 4五玉としても、2六竜で後手玉は安全にならない。
 他に考えられる後手の手は、7五銀だ。以下3七桂、9五歩、同金、同金、同玉、8四金、同馬、同銀引、9四玉(次の図)

研究6五歩図22
 先手玉は捕まらない。先手勝勢になっている。


6五歩図(再掲)

 これで、【14】6五歩 は 先手良し、と確定した。





[調査研究 【15】3七飛

3七飛図
 3七飛を打つのなら、「7七歩、同歩成」としてからの3七飛と打つ方がスッキリする。それで「先手良し」になることは、すでに 第61譜 で証明済みだ。
 この場合の【15】3七飛(図)はどうなるか、が以下の調査テーマである。


研究3七飛図01
 〔は〕7五桂(図)と打つのは、7七歩として―――(次の図)

研究3七飛図02
 7七同歩成なら、すでに研究調査済みの図になり、先手良しが確定している。
 6六銀は、7六歩、同桂、7九香で先手良し(6八桂成には7五香)
 9五歩も、7六歩、9六歩、9八玉、7六桂、7九香で、先手良し。
 ここで4六銀は、3三香で、先手良しになる。3三同桂、同歩成、同銀、3四桂、同銀、同飛、3三香と進めば、そこで1一銀があって寄せが決まる(次の図)

研究3七飛図03
 これで先手勝勢。1一同銀なら3二角成、3一玉なら5二角成である。

 〔は〕7五桂 は先手良し。

研究3七飛図04
 すぐに、〔ひ〕4六銀(図)と飛車取りに銀を出る手。この手が、最も気になる手である。
 ここで 〈ア〉3三香 で勝てればよいが、同桂、同歩成、同銀、3四桂、同銀、同飛、3三香と進み、そこで 1一銀 は、同玉で、今度は後手が勝ちになる。3二角成に―――(次の図)

研究3七飛図05
 8五桂(図)で先手玉が詰んでしまう。8五同歩に、8八銀、9八玉、8六桂まで。

 ということであれば、1一銀 に代えて、8四馬 はどうだろうか。同銀なら3二角成、同玉、3一金で後手玉が詰むので、後手は3四香と飛車を取る。以下6六馬、5五銀、同馬、4四銀(次の図)

研究3七飛図06
 以下4四馬、同歩は、先手玉の詰めろを受ける必要があるし、後手玉が捕まらない形。
 これは、先手負けの図。


研究3七飛図07(3六飛図)
 ということで、〔ひ〕4六銀 には、〈イ〉3六飛(図)とすることになる。
 以下、[u]7五桂に、9八金。
 そこで 7八と なら、4六飛、7七歩成、3三香(次の図)

研究3七飛図08
 3三香で、先手勝ちになる。同歩なら8四馬。同桂、同歩成、同銀は、5二角成。
 そして3一銀は、5二角成、同歩に、3二香成、同玉、3三銀以下、後手玉“詰み”

研究3七飛図09
 7八と に代えて、5五銀(図)の変化。
 ここで3三香は同歩で後手良しだ。この場合は先手に駒がなくなり、角を渡すと7九角で受け駒がないため、角切りの攻めができないのだ。
 ここでは、3三歩成、同銀、3五香とする手段がある(次の図)

研究3七飛図10
 4二金なら、5一竜で良い。以下4一金に、3三香成、同歩、4一竜。7九角には8八銀で受けがあるので先手が勝ちだ(後手玉は3二金で詰む)
 4二銀右や4四銀引としても、3三香成、同銀に、5二角成、同歩、4一飛で寄っている(ここでも7九角に8八銀がある)

 残る手段は、8七と、同金、同桂成、同玉、4二金打である。これには、5二角成、同金に、3四桂という手がある。同銀、同香、3三桂打に、4一銀(次の図)

研究3七飛図11
 次に3三香成、同桂、3四桂がある。適当な受けがなく、どうやら先手良しである。
 4二銀引なら、5二銀成、同歩、3三香成、同歩、4一竜、3一銀打、3二歩。

研究3七飛図07(再掲 3六飛図)
 4六銀に3六飛としたこの図まで戻って、ここで([u]7五桂以外の)他の手を考える。
 [v]4七銀不成と、[w]6一歩が有力手である。
 ([x]6二金は5二歩、[y]3一銀は2五香で、先手良し)

研究3七飛図12
 [v]4七銀不成(図)、2六飛、6二金、3三香、同桂、同歩成、同玉、3七桂(次の図)

研究3七飛図13
 7五桂、7九桂、5六銀(5四銀は4六飛がある)、8五歩、7四金、8三馬、6三歩、3四歩(次の図)

研究3七飛図14
 先手良し。3四同玉は3二角成。4四玉は、5六飛で先手勝ち。
 2二玉に、7三馬(2一金以下の詰めろ)、3一玉、7四馬、4一玉、2三飛成で、先手勝勢。

研究3七飛図15
 [w]6一歩(図)は気づきにくいが、好手である。これを[6一同竜]だと、7五桂、9八金、6二金、7一竜、3一玉で、これは後手良し。
 [4六飛]は、3一玉、5二角成、同歩、6一竜、5一桂、8九金、9五歩が想定されるが、形勢不明。
 ここは、[8四馬]で先手が勝てる(次の図)

研究3七飛図16
 金を取って、3二角成、同玉、3三香以下の“詰めろ”になっている。
 ただし、ここで3五銀と粘る手がある。同飛に、4四銀、6六馬、7四桂(次の図)

研究3七飛図17
 ここで3三香と打つ。同桂、同歩成、同銀上に、同飛成で決めにいく。同玉に、3四歩(次の図)

研究3七飛図18
 これで後手玉は詰んでいる。3四同玉は4六桂以下。
 2四玉は、2五銀、同玉、3七桂打、3四玉、2五銀、3三玉、4五桂以下。
 そして4二玉は、3二角成、5三玉、5四銀、同玉、4六桂以下の “詰み” である。


3七飛図(再掲)
 〔は〕7五桂、そして、〔ひ〕4六銀 は先手良しがはっきりした。
 他に後手良しの可能性が考えられるとしたら、〔ふ〕4四銀上 と、〔へ〕3一銀 だろう。


研究3七飛図19
 〔ふ〕4四銀上(図)に、7七歩。
 7七同歩成だと、すでに 第61譜 で調べた図になる。先手良しである。
 ということなら、4六銀しかないだろう。そこで3三香は3一銀で攻め切れない。
 ここは5二角成が正解である。同歩に、4一竜(次の図)

研究3七飛図20
 7九角なら、8八香、3七銀不成、4二竜で先手勝勢。
 受けるなら3一角だが、3三香と打ちこんで、同桂、同歩成、同銀引、3四桂、同銀、同飛、3三香、5四飛で、この変化も先手勝勢である。


研究3七飛図21
 〔へ〕3一銀(図)は、先手の狙いの3三香を先受けした手で、ここで3三香なら4二金で後手良しだ。
 ここは7七歩とする(同歩成なら同飛以下先手良し)
 以下、4六銀、3六飛、7七歩成、4六飛と進む(次の図)

研究3七飛図22
 以下 7五桂 、9八金、9五歩(図)と進み、9五同歩、9六歩、同玉、9四歩、9七玉、9五歩、7八歩、7六歩、2六飛 が想定される手順(次の図)

研究3七飛図23
 2六飛(図)として、先手良し。
 次に2五香と打てば先手勝ちが確定するので、後手は4四銀と出て、2五香には1一玉を用意する。この時に3三歩成(同桂なら5二角成がある)を受けたのが4四銀の意味。
 4四銀には、5三歩が着実な勝ち方。以下3五銀に、2五飛、2四銀。
 そのタイミングで、3三歩成(次の図)

研究3七飛図24
 3三同歩は、2四飛、同銀、2三香。
 3三同桂は、7五飛がある。同金に、3四桂、1一玉、5二角成で、先手勝勢(5二にできた馬が9六に利いている)
 3三同玉には、3八香がある。
 3三同銀には、5二歩成だ。
 いずれも先手がはっきり良い。

研究3七飛図25
 7五桂 に代えて、4二金(図)の変化。
 6三角成、7四銀、4五馬、4四銀(先手の4五馬が好位置なので追う)、5四馬、7五銀、8九香と進むのが一例(次の図)

研究3七飛図26
 手堅く8九香と受けた。これにはしかし7八歩が気になるところ。
 しかし、以下5一竜、7九歩成に、4四飛が決め手(次の図)

研究3七飛図27
 4四同歩は、3三銀以下、後手玉“詰み”
 したがって、後手は8九ととするが―――3三歩成、同歩、4二竜、同銀、3二金、同玉、4一銀、5二銀(次の図)

研究3七飛図28
 結局、これも “詰み” となる。5二同玉に、5三歩、4一玉、5二金、3一玉、4二金以下 の詰み。
 3一玉としても、3二金、同玉、4三銀成から詰む。

 〔へ〕3一銀 も 先手良しが確定した。


3七飛図(再掲)

 これで、【15】3七飛 は 先手良し、とはっきりした。





 ついに「吉祥B図」の調査が終了した。結果は下の通り。

吉祥B図(再掲)
   【00】7七歩  → 同歩成で「吉祥A図」に → 千日手ループ
   【1】3三歩成 (後手良し) → 先手良し
   【2】3三香 (後手良し) → 後手良し
   【3】8九香 (先手良し) → 先手良し
   【4】2五香 (形勢不明) → 先手良し
   【5】5四歩 (先手良し) → 先手良し
   【6】2六香 (先手良し) → 先手良し
   【7】2六飛 (先手良し) → 先手良し
   【8】2五飛 (先手良し) → 先手良し
   【9】3七桂 (先手良し) → 先手良し
   【10】3八香 (後手良し) → 先手良し
   【11】8一飛 (形勢不明) → 互角(形勢不明)
   【12】1五歩 (後手良し) → 先手良し
   【13】9八金 (後手良し) → 先手良し
   【14】6五歩 (後手良し) → 先手良し
   【15】3七飛 (先手良し) → 先手良し

        ※ (灰色字) は「吉祥A図」の調査結果
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終盤探検隊 part168 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第67譜

2020年09月25日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第67譜 指始図≫ 7七同歩成まで



  [時空の迷路]

ほむら 「わたしは、鹿目(かなめ)さんとの出会いをやり直したい。
彼女に守られるわたしじゃなくて、彼女を守るわたしになりたい!」

キュウべえ(インキュベーター) 「契約は成立だ。君の祈りはエントロピーを凌駕(りょうが)した。
さあ、解きはなってごらん、その新しい力を!」

  ※   ※   ※   ※   ※

ほむら 「伝えなきゃ! みんなキュウべえにだまされてる!」

  ※   ※   ※   ※   ※

ほむら 「くりかえす。わたしは何度でもくりかえす。
同じ時間を何度でもめぐり、たった一つの出口を探る。
あなたを、絶望の運命から救い出す道を。
まどか‥‥、たったひとりのわたしの友達。
あなたの‥あなたのためなら、わたしは永遠の迷路の中に閉じ込められてもかまわない」

    (アニメ『魔法少女まどかマギカ』TVシリーズ版 より)





<第67譜 吉祥B図の徹底調査はさらに続く>

 「吉祥B図」を調査中。

吉祥B図(再掲)
   【00】7七歩  → 同歩成で「吉祥A図」に → 千日手ループ
   【1】3三歩成 (後手良し) → 先手良し
   【2】3三香 (後手良し) → 後手良し
   【3】8九香 (先手良し) → 先手良し
   【4】2五香 (形勢不明) → 先手良し
   【5】5四歩 (先手良し) → 先手良し
   【6】2六香 (先手良し) → 先手良し
   【7】2六飛 (先手良し) → 先手良し
   【8】2五飛 (先手良し) → 先手良し
   【9】3七桂 (先手良し) → 先手良し
   【10】3八香 (後手良し) → 先手良し
   【11】8一飛 (形勢不明) → 互角(形勢不明)
   【12】1五歩 (後手良し)
   【13】9八金 (後手良し)
   【14】6五歩 (後手良し)
   【15】3七飛 (先手良し) 
        ※ (灰色字) は「吉祥A図」の調査結果




[調査研究 【12】1五歩


1五歩図
 【12】1五歩(図)
 「7八歩、7六歩」の手交換のない形(「吉祥A図」からの【12】1五歩)は 第58譜 で調べている。その場合は「7五桂以下後手良し」が結論となった。
 そして、その 第58譜 で、そこから「7六歩、7八歩」を入れた変化を検討して、「先手良し」という結論も出しているのであった(→研究1五歩図44) それが正しければこの図は「先手良し」で結論が出ているわけであるが、その結論でよいのだろうか。ここではさらに詳しく再調査をしていきたい。

 ここで先手の候補手は、次の手が考えられる。

 [さ]7八と[し]7五桂[す]6六銀[せ]3一銀

研究1五歩図01
 [さ]7八と には、1四歩と攻めて行く。同歩、1三歩、同香で歩がなくなるが、歩の代わりに1二香と打つ(図)
 (第58譜では[さ]7八とでは2五飛で先手良しと解説している。つまりどちらでも先手良しになる)
 1二同玉は、3二角成、2二香、3三歩成、同銀、3一飛で先手勝ち。
 よって後手は3一銀とするがすかさず1一金と打って、7七歩成に、8四馬(次の図)

研究1五歩図02
 後手玉に2一金、同玉、1一金以下の“詰めろ”が掛かっている。先手勝勢。


研究1五歩図03
 [し]7五桂 には、9八金(図)と受ける。
 後手は6六銀とする。これは8七と、同金、同桂成、同玉、7五金の攻めの狙いがあり、また7八と~7七歩成となれば、先手玉に詰めろがかかる。
 ここは、2六飛と打つ(次の図)

研究1五歩図04
 このまま2五香と打たれると後手は負けなので、6二金とする。後手には3一玉の角捕獲のねらいがある。それを許すと先手が悪いので、3三香と打ちこんで、以下同桂、同歩成、同銀、6六飛と進む(3一玉なら5一竜がある)
 以下6一歩、2五桂、4二銀右、6三歩(次の図)

研究1五歩図05
 こう進んで、この図の場合は「先手良し」が結論となる。
 ただし、「7八歩、7六歩」の手交換のない場合は、ここで後手7六桂があるので、「後手良し」となるところなのである。
 さて、6三歩(図)以下、先手良しであることを具体的に進めて確認していこう。
 6三歩に、後手の応手は、〈a〉5二金、〈b〉5三金、〈c〉3一玉、がある。

 〈a〉5二金には、3六飛、3四香、2六飛と進める(次の図)

研究1五歩図06
 後手に香を使わせて、2六に飛車をまわった。次に、2一銀の狙いがある。
 じつは後手は桂がほしい。桂があれば8七と、同金、同桂成、同玉、7五桂の攻めができる。なので、2四歩と勝負する。
 その手には、1四歩が好手となる。以下同歩、同香、同香、1三銀、2三玉、3三桂成、同銀、8四馬、1三玉、3二角成(次の図)

研究1五歩図07
 8七と、同金、同桂成、同玉、2二金、5七馬、3二金、2五桂(次の図)

研究1五歩図08
 2二玉、1三銀、3一玉、3三桂成、同金、5三歩(次の図)

研究1五歩図09
 これで先手優勢。5三同金なら、6一竜が“詰めろ”になる。
 この瞬間は後手玉に詰めろはかかっていないので、後手は先手玉に詰めろを掛けたいのだが、5七の馬が働いていて、うまい手がない。7七歩成、同歩、6九角は、7八銀で、やはり先手優勢。

研究1五歩図10
 6三歩に、〈b〉5三金(図)の場合。
 これには、先手7一馬とする。(5二金なら、7七歩、同歩成、5三歩、同銀、1四歩、同歩、同香、同香、1三銀で、先手良し)
 7一馬に、4四金以下を見ていこう。以下は変化の一例。
 3六飛、3四香、4六飛、2四銀((次の図) 

研究1五歩図11
 2四銀(図)は桂馬を取りにきた手。
 この手には、7七歩、同歩成、3三歩、同銀引(同銀上は5三馬がある)、9二竜

研究1五歩図12
 先手勝勢。

研究1五歩図13
 戻って、2四銀 に代えて、2四歩(図)の場合。
 3三桂成、同銀(同玉には2一銀の攻め筋がある)、7七歩、同歩成、5三馬(次の図)

研究1五歩図14
 8七桂成、同金、同と、同玉、7五桂、7七玉(次の図)

研究1五歩図15
 後手の攻めを余して、先手優勢。次に3一銀、2三玉、2一銀の攻めがある。
 図で4二金なら、同馬、同銀、1一銀、3一玉、6一竜で、先手勝ち。

研究1五歩図16
 6三歩に、〈c〉3一玉(図) 
 以下6二歩成だが、そこで4一玉は5一とが好手ではっきり先手優勢になる。
 よって6二同銀引とし、8五角成に、7四香(次の図)

研究1五歩図17
 先手は6四飛と桂馬を取りたいが、それは8五金、同歩、8七桂成、同金、5三角で、後手良しになる。6一竜とするのも、8五金、同歩、8九角で、後手優勢である。
 ここは9五歩が受けの好手。同歩なら、8四馬左、同歩、9五馬で、上部への道が開けるので先手良し。
 後手は、8五金、同歩、5七角で勝負する(次の図)

研究1五歩図18
 飛車を逃げると、7九角成、9六玉、7八馬で、先手負け。
 ここは7五馬が正着で、同香に、6四飛。以下7九角成、8六玉(次の図)

研究1五歩図19
 先手の6一竜が間に合うようになれば先手が勝ちになるが、ここで8七と、同金、7八馬がうるさいからみ方で、先手は手抜きできない。
 8八金打、8七馬、同金、7七歩成、3三桂不成(次の図)

研究1五歩図20
 8七と、7五玉、8六角、6六玉。
 そこで7七角成には、5七玉と逃げておけばよい。また、3三歩は2四桂が決め手になる。
 しかし、3三銀にも鮮やかな決め手がある(次の図)

研究1五歩図21
 4二銀(図)が “決め手”。これで後手玉はほぼ詰み。2一玉なら詰まないが、3四桂で先手勝ち。
 4二同玉は、3四桂、同銀、5四桂以下詰むのである。
 4二同銀以下の詰み筋を確認しておこう。4二同銀、2二銀(4一玉なら5三桂、同銀右、5二角以下詰み)、同玉、3四桂、3三玉、2二角、2四玉、1六桂、3五玉、2六金、4六玉、4八香、4七合(桂)、5五角成(次の図)

研究1五歩図22
 これで、“詰み”

 以上の調査により、[し]7五桂 は先手良し。


研究1五歩図23
 [す]6六銀(図)には、2六飛と打つ。(代えて1四歩も有望)
 そこで後手7五桂なら、9八金と受けて、その図は上で出てきた図――「研究1五歩図04」――と完全一致する。「先手良し」だった。
 2六飛に、変化するなら、6一歩がある(次の図)

研究1五歩図24
 6一歩(図)を同竜だと、7五桂、9八金、6二金で、後手良しになる。これが6一歩の狙い。
 2五香、1一桂、6六飛、6二金、6三歩、3一玉、6二歩成、4一玉は、はっきりしない形勢。
 ここは、2五香、1一桂に、3七桂がベストの手順(次の図)

研究1五歩図25
 3七桂として、あと一枚金が手に入れば、2三香成以下、後手玉への “詰めろ” になる。その「金」は8四に落ちている。
 その詰み筋を受けるには4四銀しかない(2三香成、同桂、同飛成、同玉の時に3五桂と打てない)
 それには6六飛(次の図)

研究1五歩図26
 ここで3一玉があるが、5二角成、同歩、6一竜、2二玉、8九金で、先手優勢。
 7八とには、1四歩の攻めが有効、以下同歩に、1三歩、同香、2三香成(同桂なら6四飛が3二角成、同玉、2四桂以下の詰めろで先手優勢)、同玉、1二歩(次の図)

研究1五歩図27
 次に1一歩成が“詰めろ”になる。先手勝勢。

 以上見てきた通り、[す]6六銀 は2六飛以下、先手良し。


研究1五歩図28
 [せ]3一銀(図)は、先手の狙う1四歩以下の攻めを先受けした手。
 しかしそれでも1四歩と攻めて行く。同歩、1三歩、同香、7七歩、同歩成、1二歩(次の図) 

研究1五歩図29
 この1二歩を同玉と取ると、3三歩成、同桂、5二角成で、後手いけない。
 ここで7五桂なら、8九香と受けておく。
 また3三を守る4四銀引には、1一金(次に8四馬が詰めろ)で先手良し。
 
 ここからは、4二金以下を解説する。4二金には、3三歩成(次の図)

研究1五歩図30
 これを後手は何で取るか。
 3三同玉 には、6三角成で先手良し。3三同桂 は1一金で、後手玉は“受けなし”になる。
 残りは、3三同歩 と、3三同金
 3三同歩 は、1一歩成、同玉、2三角成、1二桂と進む。
 以下5一竜、3二金、8九馬(次の図)

研究1五歩図31
 まだ変化は多いが、形勢は先手良し。
 図で6六歩なら、1五歩、同歩、1四歩、同歩、1三香、同桂、5二飛で先手勝勢になる。
 馬筋を止める7八歩なら、5三竜とし、次に7二飛と打つ手をみて、やはり先手優勢である。

研究1五歩図32
 3三同金(図)には、5一竜。以下7五桂、8九香、7六歩、7八歩(次の図)

研究1五歩図33
 7八同となら、8五歩として、先手優勢になる。
 よって後手は6六銀と攻めを厚くする。以下5二角成、5一歩、4一馬(次の図)

研究1五歩図34
 次に1一歩成がある。なので後手は4二銀上としたいが、それは、4二同馬、同銀、1一銀、3一玉、4一飛、同玉、5二金、3一玉、4二金、同玉、6二竜以下、後手玉が詰まされてしまう。
 脱出路を開く3四金なら、3七飛があって、これも先手勝勢だ。

 [せ]3一銀 も1四歩以下先手良し、とわかった。


1五歩図(再掲)
 他に、[そ]5六銀[た]4四銀引 の手があるが、やはり1四歩と攻めて、先手が勝てる。

 【12】1五歩 は 先手良し




[調査研究 【13】9八金

9八金図
 【13】9八金(図)
 「7八歩、7六歩」の手交換のない形(「吉祥A図」からの【13】9八金)は、「9五歩で後手良し」が結論だった(→第59譜
 よってこの図での研究課題は、まず 〔な〕9五歩 であり、そして次に 〔に〕7八と を調べるべきところ。

 他には、〔ぬ〕7五桂〔ね〕6六銀〔の〕3一銀、などの手がある。


研究9八金図01
 〔な〕9五歩(図)には、同歩と取る。以下9六歩、同玉、9四歩には、同馬と取る(次の図)

研究9八金図02
 これで先手優勢になる。
 しかし、もしも後手に「一歩」があれば9四同金、同歩、8四銀で次に9五歩が打てるので、形勢は逆になって後手良しになるところだった。「7八歩、7六歩」の手交換で一歩を使っているので後手は歩が足らなくなったのである。そして先手が「7八歩」と打ってあるのも重要で、角を渡しても後手7八角の手がない。
 もう少し続けてみよう。9四同金、同歩、8四銀、8五香、6三角、9五金(次の図)

研究9八金図03
 7五銀、9三歩成、8四桂、同金、同歩、9五玉、8五歩、8三と(次の図)

研究9八金図04
 先手良し。 「dolphin1/orqha1018」評価値は +738


研究9八金図05
 〔に〕7八と(図)でどっちが勝っているかは重要である。
 ここで5四歩(同銀なら5二角成以下先手良しになる)はあるが、形勢不明。
 ここは、「7九歩」が良い(次の図)

研究9八金図06
 「7九歩」(図)に、〔j〕8九と は、3三歩成。(〔i〕7九同とにも同じ攻めでよい)
 これを同銀または同桂なら、5二角成が有効になる(後手7九角が打てなくなっている)
 よって3三同玉だが、そこで8四馬とする
 8四同銀に、3五飛(次の図)

研究9八金図07
 以下3四桂、4五金、2二玉、3四金、6七角、2四桂(次の図)

研究9八金図08
 先手勝ち。
 2四同桂なら2三香、3一玉、5二角成。3一銀と受けても、4三金で寄せることができる。

研究9八金図09
  「7九歩」に、〔k〕7七と(図)の場合は、同じように攻めて行くと、8九角と打つ手が"詰めろ逃れの詰めろ"になる筋があるので注意が必要だ。5二角成、同歩、7一飛の攻めは、5一桂と受ける手があって、後手良しになる。
 3三歩成、同玉までは上と同じように進め、そこで3九飛とするのが良い(次の図)

研究9八金図10
 これで形勢は先手が良い。以下は手が広いので、変化の一例だが
 4四玉、5九飛、9五歩、4八香、4五桂、9五歩、9六歩、同玉、9四歩、同馬、同金、同竜、6三角、8五歩(次の図)

研究9八金図11
 先手良し。

研究9八金図12
 「7九歩」に、〔l〕7七歩成(図)。 以下先手7八歩。
 対して7六歩は、5四歩(同銀に5二角成)で、先手良しになる。
 7六とは、3三歩成、同銀、5二角成でこれも先手良し。

 7八同と以下を見ていくが、これに対しても、5四歩が有効である(次の図)

研究9八金図13
 5四歩(図)を、同銀でも、4四銀でも、6二銀左でも、5二角成、同歩、4一飛と攻めて、先手良しになる。
 ここでは、5四歩に、6二銀左以下を見ておこう。以下、5二角成、同歩、4一飛、3一角、3三歩成、同玉、3七桂(次の図)

研究9八金図14
 2二玉、2六香、1一桂、4五桂、7六歩、5三歩成(同歩なら5二金)、同銀右、同桂成、同歩、5二金、9五歩、3五銀(次の図)

研究9八金図15
 先手勝勢になった。
 後手玉は、3一飛成、同銀、同竜以下の詰めろになっている。それを受けるには5一桂しかないが、同金と取って、この手も次に3四桂、3三玉、4二飛成、同角、2二銀までの詰めろになっている。この3四桂を打てるよう、(3四ではなく)3五銀と打っておいたのである。


研究9八金図16
 〔ぬ〕7五桂(図)には、2五飛と打つ(次の図)

研究9八金図17
 7五桂と桂を使ってしまったので、もう桂馬を受けに使う手が後手にはない。このまま次に2六香と打てば先手が勝ちになる。
 後手は6二金として、次の3一玉をねらいとする。それは先手困るので、3三香と打つことになる。以下同桂、同歩成、同玉、5五飛と進む(次の図)

研究9八金図18
 先手優勢の図になった。

 〔ぬ〕7五桂 は先手良し。


研究9八金図19
 〔ね〕6六銀(図)には、5四歩と打って先手が勝てる。この変化は、先に先手が9八金と受けておいた手が生きる展開になる。香車を手に持っておけば、角を後手に渡しても、7九角に8八香でしのげるので、強気で攻めて行くことができるのだ。
 5四歩と打って、まず後手の金銀の連結を切っておく。5四同銀、4四銀、6二銀左と、3通りの応手があるが、いずれの手に対しても、5二角成としていけばよい。
 5四同銀以下の変化を追っておこう。以下5二角成、同歩に、4一飛(次の図)
 
研究9八金図20
 3一角、6一飛成、7五銀、4一金、7四銀(次の図)

研究9八金図21
 うっかり3一金や4二金とすると、8六銀以下、先手玉が詰まされてしまう。
 ここは7七歩が冷静な手で、同歩成なら4二金で先手勝ち(今度は8六銀は同玉で詰まない)
 よって後手は7七歩に、8六銀、同玉、7五銀と勝負してくる。
 以下8七玉に、8五桂。これは8八金と受けて―――(次の図)

研究9八金図22
 受かっている。先手勝勢。


研究9八金図23
 〔の〕3一銀(図)は、先手の狙う5四歩~5二角成を受けつつ、次に6二銀右から4二金で角を捕獲するような狙いがある。
 先手は、どう攻めて行くか。
 いくつかの手があるが、ここでは3三歩成を示しておこう(次の図)

研究9八金図24
 [3三同桂]は、5二角成(同歩なら、2一金、同玉、1一飛以下詰み)がある。
 [3三同歩]には、2五飛と打って、3二銀なら、5二角成でよい。5二同歩に、5五飛(次の図)

研究9八金図25
 5五飛(図)が後手玉の “詰めろ” になっている。7九角には8八香と受けておけばよい。
 3一桂なら、5三飛成、同歩、4二銀で先手が勝てる。
 なので4一桂の受けが考えられるが、4二歩がある。そこで8九角(詰めろ)があるが、8八金で大丈夫。先手良し。

研究9八金図26
 [3三同玉](図)の場合。
 これには、すぐ3五飛と打つのがわかりやすい(次の図)

研究9八金図27
 3四桂や2二玉なら5五飛と銀を取って先手良し。
 4四玉は、8四馬がある。以下3五玉に、5七馬で、先手優勢である。
 4二玉が気になるところ。5二角成、同玉、5五飛、7九角、8八香、9五歩、8四馬、9六歩、同竜、8四歩、5四歩(次の図)

研究9八金図28
 先手優勢。


9八金図(再掲)

 【13】9八金 は 先手良し




 今回の調査結果を加えて―――

吉祥B図(再掲)
   【00】7七歩  → 同歩成で「吉祥A図」に → 千日手ループ
   【1】3三歩成 (後手良し) → 先手良し
   【2】3三香 (後手良し) → 後手良し
   【3】8九香 (先手良し) → 先手良し
   【4】2五香 (形勢不明) → 先手良し
   【5】5四歩 (先手良し) → 先手良し
   【6】2六香 (先手良し) → 先手良し
   【7】2六飛 (先手良し) → 先手良し
   【8】2五飛 (先手良し) → 先手良し
   【9】3七桂 (先手良し) → 先手良し
   【10】3八香 (後手良し) → 先手良し
   【11】8一飛 (形勢不明) → 互角(形勢不明)
   【12】1五歩 (後手良し) → 先手良し
   【13】9八金 (後手良し) → 先手良し
   【14】6五歩 (後手良し)
   【15】3七飛 (先手良し) 
        ※ (灰色字) は「吉祥A図」の調査結果


 「吉祥B図」の調査はこうなった。
 「7八歩、7六歩」が入ることで、先手が良くなる場合が多いとわかる。
 そうはいっても、簡単に先手が勝てる道は、一つもないのだが。

 次回は、「吉祥B図の徹底調査」の最終結果をお届けできるだろう。
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終盤探検隊 part167 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第66譜

2020年09月22日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第66譜 指始図≫ 7七同歩成まで



  [希望と絶望]

さやか 「希望と絶望のバランスは差し引きゼロだって
いつだったか、あんたが言ってたよね
いまならそれ、よくわかるよ
たしかにあたしは何人か救いもしたけどさあ
だけどその分、こころには恨みやねたみが溜まって、大切な友達さえ傷つけて‥」

杏子「さやか!」

さやか 「だれかのしあわせを祈ったぶん、ほかのだれかを呪わずにいられない
あたしたち魔法少女って、そういう仕組みだったんだね
あたしって、ほんとに‥‥バカ‼ 」

   (アニメ『魔法少女まどかマギカ』TVシリーズ版 より)





<第66譜 吉祥B図の徹底調査 続き>

 「吉祥B図」を調査中。

吉祥B図(再掲)
   【00】7七歩  → 同歩成で「吉祥A図」に → 千日手ループ
   【1】3三歩成 (後手良し) → 先手良し
   【2】3三香 (後手良し) → 後手良し
   【3】8九香 (先手良し) → 先手良し
   【4】2五香 (形勢不明) → 先手良し
   【5】5四歩 (先手良し) → 先手良し
   【6】2六香 (先手良し) → 先手良し
   【7】2六飛 (先手良し) → 先手良し
   【8】2五飛 (先手良し) → 先手良し
   【9】3七桂 (先手良し) → 先手良し
   【10】3八香 (後手良し) → 先手良し
   【11】8一飛 (形勢不明)
   【12】1五歩 (後手良し)
   【13】9八金 (後手良し)
   【14】6五歩 (後手良し)
   【15】3七飛 (先手良し)   ※ (灰色字) は「吉祥A図」の調査結果




[調査研究 【11】8一飛

8一飛図
 「吉祥A図」からの【11】8一飛――「7八歩、7六歩」の手交換が入っていない場合――は、第57譜 で調査したが、「7一歩以下形勢不明」と結論していた。そして、それ以外の手は、すべて先手良しになっていた。
 
 この図は、「吉祥 B図」からの 【11】8一飛 だが、この場合は7一歩がない(二歩の禁じ手)
 ということで、ここでの後手候補手は、(一)7五桂(二)6二金(三)6一歩 の3つ。
 (そのほかの手――(四)6六銀、(五)1四歩、(六)9五歩など――は、5二角成で先手優勢)
 
研究8一飛図01
 (一)7五桂 は9八金(図)と受ける。
 以下6二金に、先手は3三歩成。
 同銀は5一飛成があるので、3三同桂 または、3三同玉 の2択。

 3三同桂 は、「8五歩」と歩を突く。
 7四金 なら、5四歩、同銀、7五馬、同金、3四桂、1一玉、8八香(次の図)

研究8一飛図02
 これで先手勝ち。

研究8一飛図03
 したがって、「8五歩」に、後手は 3一玉(図)とする。
 以下5二歩、6一歩、5一歩成、同銀、6三角成(次の図)

研究8一飛図04
 6三同金、6一飛成、7九角、8六玉(8八香は1四歩で後手良しになる)、8七と、同金、6八角成、9七玉(次の図)

研究8一飛図05
 6二銀右、5一竜、同銀、同竜、4一飛、同竜、同玉、2一飛、3一飛、同飛成、同玉、1一飛、2一飛、同飛成、同玉、4一飛、3一飛、1一銀(次の図)

研究8一飛図06
 先手勝ち。

研究8一飛図07
 3三同玉(図)には、3七桂とする。以下5四銀には、6三歩(次の図)

研究8一飛図08
 6三同銀、または6三同金なら、8四馬、同歩に、3六香と打って先手が勝てる。
 5二金なら7一飛成から7三竜をねらう、7二金なら6一飛成で金をねらう、いずれも先手優勢である。

 (7五桂と打ったこれらに類似した図の研究は、第43譜 でも行っている)


研究8一飛図09(6二金図)
 7五桂を打たず、(二)6二金(図)
 金をかわして先手の5二角成の狙いを防ぐ。
 「吉祥A図」からの8一飛の場合にはここで8九香と打って、先手良しだったが、「7八歩、7六歩」の手交換の入ったこの図ではどうだろうか。

研究8一飛図10
 8九香(図)と打った場合、気になる変化は 7八と である。
 この手には、8五歩。7四金なら5四歩、同銀、5一飛成、同銀、同竜で、先手優勢。「8五歩、7四金」で先手玉が広くなっている。
 したがって8五歩に、後手は8九ととし、以下8四歩と進む(次の図)

研究8一飛図11
 後手としては、ここで8五香と打てるとよいのだが、4一の角が利いている。
 図から、8四銀は8三馬、7七歩成は8三歩成で、先手優勢。
 8四歩が考えられるが、9五歩、7七歩成、9六玉のように進み、先手は"入玉"を見せて、先手がリードできている。もう少し続けてみよう。
 9六玉以下、7六と、7四歩、6六銀、9四歩、7五銀、7三歩成、同金、8七歩(次の図)

研究8一飛図12
 ここで後手8八となら、5一飛成で先手良し。
 したがって後手は6三歩として4一の角の利きを遮断する。
 ここで3三歩成と攻めて行く。同桂なら、先手に桂馬が入ると3四桂が入るので後手は桂馬が使えなくなり、8三桂が打てなくなる。8二竜、7二歩、9二馬で、"入玉"が確実となり、先手良し。
 よって、3三同玉とする。
 先手は3七桂。以下8八とに、2五桂(次の図)

研究8一飛図13
 2五桂で、一気に先手勝ちになった。
 2二玉なら、3二角成、同玉、3三歩、同桂、2一銀、同玉、5一飛成以下、後手玉詰み。
 3四玉なら、4六銀で、先手勝ちである。

研究8一飛図09(再掲)
 「6二金図」に戻って、7八と 以外の後手の手を考えてみると、6一歩 があるが、それは6三歩で、先手が指せる(7二金、6一飛成のときに7一歩と打てない)
 他には、1四歩 だ(次の図)

研究8一飛図14
 ここで6三歩は、今度は7八とで、後手が良くなる。6二歩成、7七歩成、6三と、8九と、5三とが詰めろになっておらず、次に8八と引で先手玉に先に詰めろが掛かってしまう。
 1四歩 には、3三歩成が良い。これを同桂は8五歩、7四金、3四歩で先手良し。
 したがって、3三歩成は、同玉。以下3七桂、7八と、8五歩、7四金、4五桂、4四玉、5三桂成、同銀、5七馬(次の図)

研究8一飛図15
 7七歩成、5一竜、8九と、3四銀(次の図)

研究8一飛図16
 先手勝勢。
 3四同銀は、3五金、3三玉、3二角成、同玉、3一竜までの詰み。


研究8一飛図17(6一歩図)
 (三)6一歩(図)が後手最後の砦となる。
 「7八歩、7六歩」のない形では、ここで8九香で先手良しだった。
 しかしここで 〈s〉8九香 は、結果から言うと、7八とで後手良しになる。結果が逆になるのだ。
 まずそれを確かめておこう。

研究8一飛図18
 〈s〉8九香(図)は、7八と、8五歩、8九と、8四歩と進むが、そこで8五香がある(次の図)

研究8一飛図19
 以下、どうやって先手はこの玉を安全にするかの攻防となる。
 9五歩(同歩なら8三馬で先手良し)、8四銀、9四馬、9三歩、8四馬、同歩、同竜、7八角(次の図)

研究8一飛図20
 8五竜、7七歩成に、9四歩。この9四歩は、後手の狙う7三桂に8六玉とする意味。こうなると先手良し。このときに7六とに9五玉と逃げることができる。
 しかし、7四桂がある(次の図)

研究8一飛図21
 7四桂があって、後手優勢がはっきりしてきた。
 次に8七角成、同竜、同と、同玉、8六飛の寄せがあるので受けなければいけないが、良い受けがない。7五銀なら8六歩がある。
 8六金しかないようだ。以下9九と(9八と以下詰めろ)、8七歩、8四歩、同歩、8三歩(次の図)

研究8一飛図22
 8三同竜 なら8七と、同金、9五香で寄せられる。
 7四竜なら、9五香、9六香(桂合なら7六桂)、9八と、同玉、9六香、9七桂、8八香(次の図)

研究8一飛図23
 9九金に、8九角成、同金、同香成で、先手玉は“必至”に追い込まれた。
 後手勝ち。

研究8一飛図17(再掲 6一歩図)
 〈s〉8九香 では7八とで先手負けとなった。
 となると、先手が勝つためには他の手を探す必要がある。
 候補手は、〈t〉8五歩〈u〉5四歩〈v〉3三歩成 だ。

研究8一飛図24
 〈t〉8五歩(図)には、同金と応じる。
 そこで8九香と打つ。つまり「8九香→8五歩」の手順を変えて「8五歩→8九香」としたのだ。
 8九香に、8四銀として、以下9四馬、9三歩、8三馬、8八歩と進む。
 3三歩成、同銀、8四馬に、7五桂(次の図)

研究8一飛図25
 9八銀と受けるのは、8七と、同銀、同桂成、同玉、8六銀で、先手玉“寄り”
 したがって、7五同馬、同金と進むが、8九歩成~8五歩の前に先手は後手玉を捕まえなければいけない。
 たとえば、4五桂、8九歩成、5二角成という攻めがあるが、7九角、8八歩、8五歩で、後手勝ちになる。

 3一銀という手がある。同玉に、5二角成。
 これにはしかし、8六銀から先手玉が寄ってしまう(次の図)

研究8一飛図26
 8六銀(図)、同竜、同金、同玉、8七飛、7五玉、5七角、7四玉、8四角成、6三玉、6二馬、同馬、同銀、5四玉、8五飛成(次の図)

研究8一飛図27
 後手勝ち 

研究8一飛図28
 〈u〉5四歩(図)は、同銀に、そこで8九香と打つ意味である。
 以下7八となら、6一飛成で、この場合は6二金の手がない。6二金なら、5一竜で先手優勢となる。5一竜の時に6一歩がない(4二竜で先手勝ち)というのが、先に「5四歩、同銀」を入れた効果である)
 しかし、5四歩、同銀、8九香に、6二金とされると―――(次の図)

研究8一飛図29
 先手の模様が悪い。このままでは3一玉から角を取りに来られるので攻めなければいけない。7七歩、同歩成、5二歩くらいだが、7五桂、5一歩成、同銀、8五歩、5二銀で―――(次の図)

研究8一飛図30
 後手優勢となる。

研究8一飛図31
 〈v〉3三歩成(図)が最有力と思われる手。
 これには、〔イ〕同桂、〔ロ〕同玉、〔ハ〕同銀の3通りがある。

研究8一飛図32
 まず〔イ〕3三同桂(図)には、先手は8五歩。7四金なら、5二角成、同歩、6一飛成で先手良し。7九角には8六玉と逃げられる。
 したがって、8五金は同金と取るが、先手は8九香と打って、8四銀に、そこで5二角成、同歩、2一金(次の図)

研究8一飛図33
 このタイミングでの5二角成~2一金(図)が鋭い寄せで、同玉に、6一飛成とすれば、3一角だが(これ以外の手は後手玉が詰んでしまう)、そこで8四馬が決め手になる(次の図)

研究8一飛図34
 8四馬(図)と銀を取って、後手玉には2二銀、同玉、3一竜、同銀、1一角以下の“詰めろ”が掛かっている。5一金なら同馬で、1四歩なら8五馬で、いずれも先手勝勢である。

研究8一飛図35
 〔ロ〕3三同玉(図)には、3七桂とする。次の3六香が厳しい手になる。
 なので後手は2二玉とするが、その手には8九香と打っておく。次に8五歩、7四金、6一飛成や、3三歩の狙いがある。
 後手は7八とで勝負する。そこで先手は3三歩で攻め合う(次の図)

研究8一飛図36
 3三同桂や3三同銀は5二角成で先手良しになる。よって、後手は3三同玉と応じる。
 ここで8五歩。以下7四金に、8六玉(次の図)

研究8一飛図37
 以下変化の一例は、8九と、9四馬、8二桂、同飛成、同銀、同竜、6二銀、4五銀、9三歩、5二角成(次の図)

研究8一飛図38
 9四歩、同玉以下、先手玉は詰まず、後手5二歩に、後手玉は、2五桂、2二玉、3四桂以下、“詰み”

研究8一飛図39
 〔ハ〕3三同銀(図)には、6一飛成とする。このタイミングなら6二金はない(3二角成以下詰みがある)
 後手は4二金。以下6三角成、6二銀右、3六馬、7五桂、9八金、3四歩(次の図)

研究8一飛図40
 ここで3四歩(図)を放置して7八とが後手の好判断となる(3四同銀は5四歩、4四銀は7九香で先手良さそう)
 以下3三歩成に、同金と取る(次の図)

研究8一飛図41
 ここで先手の良い手が見つからない。ソフトは7九香を示しているが、それはどうやら7八銀不成で後手良しになる。
 7九歩には、8九と。以下2六馬に期待するが‥‥(次の図)

研究8一飛図42
 2六馬(図)は、7七歩成なら8四馬、同歩に、3一銀、同玉、5三馬で後手玉を詰ます狙い。
 しかし、4四歩、7八歩、7七歩成、同歩、同銀成、5九馬、6八歩、3九香、9九とと進めてみると―――(次の図)

研究8一飛図43
 どうやら、先手が勝てない形勢である。
 この図から8八金、同成銀、同玉、8七金、7九玉、6七桂成に、3三香成としても、同玉でも同歩でも、後手玉に詰みはない。


研究8一飛図17(再掲 6一歩図)
 (三)6一歩としたこの図から、〈s〉8九香 〈t〉8五歩〈u〉5四歩〈v〉3三歩成 、と調べてきたが、すべて「後手良し」の結果だった。
 するとこの図は「後手良し」が結論となるのかーーー?

 実は、まだ一つ、道は残っている。
 〈w〉7七歩、である。

 〈w〉7七歩、同歩成 となって、そこで8九香と打てば、これは以前に――第57譜ですでに調査している図で―――(次の図)

研究8一飛図44
 すなわち、この図である。その結論は「先手良し」になっていた。
 その手順は、6六銀、5四歩、6二銀左、6一飛成以下の手順で、ほぼ互角の形勢ながら、結果は先手良しになった。その手順は再確認してみたが、結論に変更はない。

 しかし、ここで7五桂と打つ手が気になる(次の図)

研究8一飛図45
 7五桂(図)で、どうなっているか調べてみたが、変化が多く、結論が出ていない。

 ということで、この図は「形勢不明」としたい。


 よって―――

8一飛図(再掲)
 
 【11】8一飛 は 互角(形勢不明)、これを結論とする。

 後手6一歩が強敵で、対して「7七歩、同歩成、8九香」が最善の頑張りだが、7五桂で形勢不明。




「吉祥B図」のここまでの調査結果は―――

吉祥B図(再掲)
   【00】7七歩  → 同歩成で「吉祥A図」に → 千日手ループ
   【1】3三歩成 (後手良し) → 先手良し
   【2】3三香 (後手良し) → 後手良し
   【3】8九香 (先手良し) → 先手良し
   【4】2五香 (形勢不明) → 先手良し
   【5】5四歩 (先手良し) → 先手良し
   【6】2六香 (先手良し) → 先手良し
   【7】2六飛 (先手良し) → 先手良し
   【8】2五飛 (先手良し) → 先手良し
   【9】3七桂 (先手良し) → 先手良し
   【10】3八香 (後手良し) → 先手良し
   【11】8一飛 (形勢不明) → 互角(形勢不明)
   【12】1五歩 (後手良し)
   【13】9八金 (後手良し)
   【14】6五歩 (後手良し)
   【15】3七飛 (先手良し) 
        ※ (灰色字) は「吉祥A図」の調査結果
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終盤探検隊 part166 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第65譜

2020年09月19日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第65譜 指始図≫ 7七同歩成まで




  [そんなの知らないわ]

チェスのルール? そんなの知らないわ

――――チェスのルールもわからずゲームに参加しているのか
けしからん けしからん
全くだ!
鏡の国のルールも知らないなんて! なんて非常識な!

――――ああ、煩(うるさ)いわ 私は巻き込まれただけ 何も知らず
私は ただ 鏡を通ってここに 来ただけよ

――――アリス! 待ちなさいっ アリス!

  (漫画『東京アリスgirly』 稚野鳥子作 講談社 より)





<第65譜 吉祥B図の徹底調査>

 現在、「吉祥B図」を調査中!

吉祥B図(再掲)
   【00】7七歩 = → 同歩成で「吉祥A図」に → 千日手ループ
   【1】3三歩成 (後手良し) → 先手良し
   【2】3三香 (後手良し) → 後手良し
   【3】8九香 (先手良し) → 先手良し
   【4】2五香 (形勢不明) → 先手良し
   【5】5四歩 (先手良し) → 先手良し
   【6】2六香 (先手良し)
   【7】2六飛 (先手良し)
   【8】2五飛 (先手良し)
   【9】3七桂 (先手良し)
   【10】3八香 (後手良し)
   【11】8一飛 (形勢不明)
   【12】1五歩 (後手良し)
   【13】9八金 (後手良し)
   【14】6五歩 (後手良し)
   【15】3七飛 (先手良し)   ※ (灰色字) は「吉祥A図」の調査結果




[調査研究 【6】2六香

2六香図
 「吉祥B図」からの 【6】2六香(図)
 「7八歩、7六歩」が入っていることで、だいたいの変化は先手が得になることが多い。
 「7八歩、7六歩」が入っていない「吉祥A図」からのケースについては、第54譜 で調べているが、この図でもそのときの戦い方がそのまま有効になる。
 先手が悪くなるケースがあるとすれば、タイミングよく “7八と” が入ってこの手が間に合うケースである。“7八と” の攻めは遅いのだが、次に7七歩成が間に合うともう先手は対処できなくなる。
 気になる変化は、【6】2六香 に3一桂とした場合。「吉祥A図」のときにはそこで1五歩で先手良しと結論していたが、この場合、1五歩に、7八と で、さあどうなるか(次の図)

研究2六香図01
 この変化が気になるというのは、先手がここで「一歩」しか持っていないからである。二歩ならば1四歩、同歩、1三歩、同香、1二歩と攻めて行けたが、ここでは歩が足らない。どうするか。
 7八と(図)に、1四歩、同歩、同香と行けばよい。以下同香に1二歩で先手の攻めは成功である(1四香には1三歩が考えられるが、それも、1三香成、同香、1二歩とすればよい。1三香成に同桂なら1四歩である)

研究2六香図02
 1二歩(図)と打って、7七歩成の後手の攻めは間に合わない。次の1一歩成で後手 "受けなし" になる。
 ここで後手9五歩の攻めがあるが、1一歩成、9六歩、9八玉で、先手勝ち。

 【6】2六香 は 先手良し。




[調査研究 【7】2六飛

2六飛図
 【7】2六飛(図)と打つ手は次に2五香を狙い、後手6六銀の手も封じてよい手に思える。
 ただし、ここで気になるのは、7五桂、9八金に、8七と、同金、同桂成、同玉、3五金という手段が後手にあるということである(図)

研究2六飛図01
 この手があるので2六飛はダメだ―――と断念してしまいそうなところだが、実は3五金に、5二角成で、先手良しになる。このことは「7八歩、7六歩」が入っていない「吉祥A図」からの2六飛の調査研究(→第54譜)にてすでに発見していたことである。
 5二角成の先をもう少し見ておくと、5二同歩に、3三桂として―――(次の図)

研究2六飛図02
 これで先手良しになる。

 また、【7】2六飛 に、7五桂、9八金、6二金なら、6三歩で―――(次の図) 

研究2六飛図03
 これで先手が良い。
 「吉祥A図」からの2六飛では、7六桂、8九香としてからの6二金があり、これが大変に強敵だった(7九歩の妙手があってなんとか先手良しになるとわかった)のだが、この場合はその後手7六桂の手がないために、単に6二金と進むのだが、すると6三歩(図)で先手が勝てるのである。
 6三歩に7二金なら2五香で先手勝勢になる(3一玉には5二角成)
 よって、後手はここで3一玉で勝負する手を考えることになるが、それは、6二歩成、4一玉、2三飛成、6二銀右、6一竜と進むと、はっきり先手優勢。
 他には、ここで8七と、同金、同桂成、同玉、3五金とする勝負手もある。以下3三歩成、同銀、6二歩成、同銀右、3四歩(次の図)

研究2六飛図04
 3四同銀は3七香が決め手になる。
 よって4四銀上とかわすが、今度は1五桂、2六金に、2四香が決め手となる(次の図)

研究2六飛図05
 以下、3一玉、5二角成、2四歩、2三桂成で、先手勝ち(6七飛には9八玉、9七香、8八玉で後手の攻めは続かない)

 【7】2六飛 は 先手良し。




[調査研究 【8】2五飛

2五飛図
  【8】2五飛(図)が有力な手であることは、「吉祥A図」からの2五飛の調査研究(第55譜 )でわかっている。そのときの内容がだいたいここでも通用して、先手が優位に進められる。
 ここで、6六銀 なら3三香があって先手が勝てる。
  7五桂 、9八金、6二金は、やはりここでも3三香で先手良しである。
 【8】2五飛4四銀引 の図は、第55譜 での調査研究では示していない図になるので、ここで示しておこう。
 その場合は8五歩と突く手が有効になる(次の図)

研究2五飛図01
 7四金なら5七馬で先手良しだ。
 後手は8五同金と勝負する。同飛なら8四銀のつもりで、これは後手が指せる。
 8五同金にも、5七馬とするのが良い。
 このときに、後手が7六歩を打っているために、7六金の手がないので、この図は相当に先手が勝ちやすい図になっているのである。
 そして8四銀には、2四香、同歩、同馬で、先手勝ちになる。
 このままでは先手8五飛(金を取る)もあるので、後手は7五桂と打つ。先手8八歩に、9五歩。
 しかし、5二角成がぴったりの手だ(次の図)

研究2五飛図02
 5二同歩とは取れない。9六歩は9八玉で手が続かないし、9六金も、同馬、同歩、8六玉―――先手勝勢である。

研究2五飛図03
 【8】2五飛 に、 7八と(図)は 確認しておくべき変化である。
 以下は、5二角成(同歩なら3三金以下後手玉詰み)、7七歩成、3七桂。
 3七桂で、後手玉は2三飛成以下 “詰めろ”
 3一桂には、2六香(次の図)

研究2五飛図04
 後手玉への“詰めろ”は継続している(2三飛成、同桂、同香成、同玉、3五桂、3四玉、4五金以下)
 その詰みを受けるには5六銀があるが、6三馬とすればやはり “詰めろ” になっている。
 なんとか一手稼いで8八と寄を間に合わせたい後手は、1一玉とするが―――(次の図)

研究2五飛図05
 8四馬(図)で、もう一枚駒を補充する。
 これで後手にもう手がなくなった。先手勝ち。

 以上、【8】2五飛 は 先手良し。



[調査研究 【9】3七桂

3七桂図
 【9】3七桂(図)の「7八歩、7六歩」の手交換のない形では「先手良し」になっていて、それは 第56譜 で研究調査済み。
 そしてこの図は、後手が「7六歩」を打っているために、後手7六桂や後手7六との手がなく、その分だけ後手の攻め筋が狭くなってくる。

 やはり調べておくべきなのは、後手7八とが有効になりそうなケースである。
 ここですぐ7八となら、2六飛と打って、先手良しになる(次に2五香や3三香の狙い)
 ここで7五桂として、9八金に、そこで7八とでどうなるか(次の図)

研究3七桂図01
 この場合は、3三歩成、同銀、5二角成と行ける。5二同歩は3一飛で先手勝ちになる。7九角には、8八香で受けが利く。
 5二角成に、7七歩成にはどうするか。
 3六香がある(次の図)

研究3七桂図02
 3六香(図)が“詰めろ”である。これは4二銀右と受けても、3三香成、同銀、5一竜で “詰めろ” はほどけない。
 詰み筋を確認しておこう。7六歩(先手玉に詰めろが掛かった)に、3三香成、同玉(同歩は3一銀以下)、3五飛、3四香、4五桂(次の図)

研究3七桂図03
 4四玉には5三馬で詰み。2二玉には、3一銀と捨て、同玉、5三馬、4二銀、5一竜、2二玉、3一銀以下の“詰み”となる。

【9】3七桂 は 先手良し。



[調査研究 【10】3八香

3八香B図
 【10】3八香
 ここで後手が<A>7五桂 としたときに、「3三歩成」、同銀、7七歩、同歩成、3三香成、同玉、3七飛、4四玉、7七飛の展開では、先手は勝てないことはすでに学習している(→第56譜
 では、<A>7五桂 に、「9八金」として、それでどうなるかを以下、調べていく。(次の図)

研究3八香B図01
 〔い〕9五歩、〔ろ〕6六銀、〔は〕5六銀、〔に〕4四銀引、〔ほ〕7八と、〔へ〕6六歩 の有力候補手がある。

研究3八香B図02
 まず、〔い〕9五歩(図)はどうなるか。
 これには同歩と取っておいて、そこでまた後手の継続手が難しい(次の図)

研究3八香B図03
 9六歩、同歩、9四歩は、同歩として、後手は “歩切れ” で、次の手がなく困ってしまう。
 6六銀 は、3三歩成、同銀、5二角成、同歩、3一飛で、先手良しだ。7九角には9六玉と逃げるスペースができている。9筋を突いた手が悪い手になってしまったケースだ。
 4四銀引 とするのも、3三歩成、同銀引、同香成、同銀、5二角成で先手良しになる。
 7八と も、3三歩成、同桂、5二角成で、先手優勢だ。
 つまり、9五同歩としたこの図は、すでに「先手良し」の図になっているのである。

研究3八香B図04
 〔ろ〕6六銀(図)は、後手が指したい手だが―――
 3三歩成、同銀(同桂は5二角成で先手良し)、同香成、同玉、3六飛、3四香、6六飛と進む(次の図)

研究3八香B図05
 以下、4二玉、5二角成、同玉、5四歩、同銀、7一馬(次の図)

研究3八香B図06
 先手良し。

 また、4二玉 に代えて、7八と に対しては――――(次の図)

研究3八香B図07
 7九歩(図)でやはり先手良し。後手がどう応じても7九角と打てないので、7九同と(8九と)には、5二角成、同歩、2一竜で、先手がやれる。
 7七となら、(5二角成、同歩、2一竜だと8九角で負けになるので)3一銀と打っておき、以下6七となら、4六飛、7七歩成に、5二角成、同歩、8四馬で、先手勝ちというイメージで指す。

研究3八香B図08
 〔は〕5六銀(図)とすれば、今度は5六銀には桂馬のひもがついているので取られることがない。この銀は、6七~7八とすりこんでくるのが狙いで、つまりあと2手で先手に“詰めろ”がかかる。それまでに後手玉に迫る手段が必要となる。
 どうするか―――(次の図)

研究3八香B図09
 ここは2五飛(図)と打つ手がある。
 6五歩としてこの飛車の横利きを止めるのは、5二角成(同歩なら2三飛成)がある。
 6七銀不成なら、3三歩成、同銀(同桂なら7五飛で3四桂をねらう)、同香成、同玉、5二角成で先手が勝つ。
 したがって後手は6二金とするが、先手は7五飛。以下 同金 に、3三歩成、同桂、7五馬、3一玉、8五角成(次の図)

研究3八香B図10
 後手はここで6三歩としておきたいが、それは3四歩で先手の攻めのほうが早い。
 なので6八飛と攻め合う。これには5四歩(同銀なら4一金、2一玉、4二金)
 以下7八飛成に、9五歩で脱出を計る。続いて8七と、同金、7七歩成には、同金、同竜、8七金(次の図)

研究3八香B図11
 以下、7九竜、5三歩成、9九竜、9八桂、5三金、3四歩と進みそうだが、先手優勢である。

研究3八香B図12
 今の手順を途中まで戻って、先手7五飛に、3一玉(図)と変化する手がある。この手がしぶとい。
 ここで3三桂が正着になる。以下同桂、同歩成、4一玉、3二と、5二玉、4二と、同銀(同玉は7三飛成、同金、8二竜)、5五飛(次の図)

研究3八香B図13
 先手良し。

研究3八香B図14
 〔に〕4四銀引(図)の場合。
 この手には、3三歩成として、以下同銀上、同香成(次の図)

研究3八香B図15
 3三同銀は5二角成で先手優勢がはっきりする。
 よって3三同玉と取るが、以下7七歩、同歩成、3七飛、3四香、7七飛、7六歩、4七飛、4二玉、5二角成、同玉、7一馬(次の図)

研究3八香B図16
 7一馬は、次に6一馬、6三玉、4三馬が狙い。先手優勢。

研究3八香B図17
 次は、〔ほ〕7八と(図)
 ここで、3三歩成、同銀に、7九歩が好手となる(次の図)

研究3八香B図18
 7九歩(図)と打って、5二角切りの前に工夫する。
 後手がどう応じても、この後は先手良しになる。7七とには5二角成、同歩、3一飛で先手優勢(7九同とや8九とでも同じ)

 後手が頑張れる手は、7九歩に7七歩成。これは、7八歩、7六歩(7八同とや7六とでは5二角成で先手良し)
 こう進むと、後手は手損しただけの図になっている。
 しかし5二角成、同歩、3一飛は、7九角に、8八金打しかないので、同角成、同金、8七金で、先手玉が詰んでしまう。
 そこは、3三香成、同玉、3九飛と攻めて行けばよい(次の図)

研究3八香B図19
 4四玉、5九飛に、後手は香車を持っているので、9五歩と攻めてくる。
 同歩、9六歩、同玉、9四歩、8五金(次の図)

研究3八香B図20
 8五金(図)と受けて、先手優勢。
 9五歩、同金、同金、同玉、8四金は、同馬、同銀、9四玉で、先手玉は捕まらない。
 このように、〔ほ〕7八とは、「3三歩成、同銀、7九歩」で先手良しとわかった。

 そのことをふまえ、次の手が後手の期待の一手となる。

研究3八香B図21
 〔へ〕6六歩(図)は、次に6七歩成~7八と左まで進むと、先手玉に“詰めろ”が掛かる。
 先手はそれまでに後手玉を攻略しないといけないが、角を渡せない(7九角と打たれるとまずい)ので攻略が難しい。たとえば、3三歩成、同銀として、8一飛と打つのは、6七歩成、5二角成、7八と左で、後手勝ちになる。
 3三歩成、同銀、同香成、同玉、3九飛は、4四玉、5九飛、6七歩成と進めてみると、後手玉が捕まりにくく後手良し。


研究3八香B図22
 なので、6六歩には、6八歩(図)と受ける。しかし、すると先手は“歩切れ”になっている。
 そこで7八とすれば―――(次の図)

研究3八香B図23
 すると今度は、7九歩と打つための歩が先手にはない―――という仕組みだ。
 さてこれで、どちらが勝っているか。
 ここでは、「8五歩」という手段がある(次の図)

研究3八香B図24
 ここで、後手の手は、8五同金 と、7七歩成 とがある。
 (7四金 は3三歩成、同銀、5二角成、同歩、3一飛で先手良し。先手玉は7九角に8六玉と逃げるスペースができている)

 8五同金 には、9四馬とする。8四金なら、その瞬間に3三歩成、同銀(同桂)、5二角成を決行して先手優勢になる。
 よって後手は8四銀とするが、(3三歩成、同銀とせずに)5二角成が読みの入った手(次の図)

研究3八香B図25
 5二同歩には、8五馬ともう一枚の馬も切って、先手は金二枚を手に入れたので、3三金以下、後手玉が “詰み” なのである。
 ということなら、ここで7七歩成だが、先手は5三馬で後手玉を寄せることができる。以下5三同銀に、3一銀、同玉、5一竜、4一銀、同竜、同玉、8五馬、同銀、6一飛(次の図)

研究3八香B図26
 5一に何を合駒しても、5二金、同玉、6三銀から、この後手玉は “詰み” である。

研究3八香B図27
 8五同金 では上のように後手勝てないということなら、7七歩成(図)とすることになる。
 これには、ここで3三歩成を入れておく。対して、3三同銀3三同桂 がある。
 3三同銀 に、8四歩、7六と(8三歩成なら8五歩の狙い)、9五歩(次の図)

研究3八香B図28
 ここで8四銀なら、5二角成、同歩、8四馬、同歩として、3一銀以下、後手玉詰み。
 7七と引なら、9六玉、8四銀、同馬、同歩、9四歩で先手良し。
 9五同歩には、8三馬とする。以下8五歩、9五竜、8六と、同竜、同歩、3三香成、同玉、8六玉(次の図)

研究3八香B図29
 先手優勢。先手玉はもう捕まらない。

研究3八香B図30
 3三同桂(図)の場合。
 8四歩、同銀、3三香成、同銀(同玉は3五飛、3四香、2五桂)、5二角成、4二銀右、4一飛(次の図)

研究3八香B図31
 これで後手玉は寄っている。以下8七桂成、同金、同と、同玉、3一金で粘ってくる手があるが、4二馬でよい。同銀なら3四桂、3三玉、3五金で後手玉は “必至”。
 4二馬に、4一金なら、3四桂、同銀、3三金(次の図)

研究3八香B図32
 3三同歩に、3一銀、同金、同馬、5一竜以下、後手玉 “詰み”

 この結果、次のことが明らかになった。

3八香B図(再掲)
 この図から「7五桂、9八金」と進んで、後手が良くなる手は一つもなかった。

 すると―――
 【10】3八香 は 先手良し、と結論してよいのだろうか?

 後手、ここで<A>7五桂 以外の手はないのだろうか。
 これ以外の手で有望なのは、<B>6六銀 である。以下それを調べてみた。

研究3八香B図33
 <B>6六銀(図)
 この場合は、3三歩成、同銀、同香成、同玉に、3九飛とするのが正着となる(次の図)

研究3八香B図34
 3四香、5九飛、4二金、6三角成、6二銀右、4五馬(次の図)

研究3八香B図35
 このまま放置して2五金と打たれるとまずいので後手は4四歩とする。4六馬や7二馬なら、7五桂、9八金、7八とで後手良しになる。
 先手は3四馬。以下、同玉、3七香、4三玉、3四金、5二玉、5四歩(次の図)

研究3八香B図36
 先手良し。
 <B>6六銀 以下は先手良しとなった。


3八香B図(再掲)
 <A>7五桂<B>6六銀 はいずれも先手良しになった。
 ほかに後手の勝てそうな手も見つからず、したがって―――

 【10】3八香 は 先手良し、と結論する。



 そうして、「吉祥B図」の調査結果のまとめは、次のようになった。

吉祥B図(再掲)
   【00】7七歩 = 実戦の指し手 → 千日手ループ
   【1】3三歩成 (後手良し) → 先手良し
   【2】3三香 (後手良し) → 後手良し
   【3】8九香 (先手良し) → 先手良し
   【4】2五香 (形勢不明) → 先手良し
   【5】5四歩 (先手良し) → 先手良し
   【6】2六香 (先手良し) → 先手良し
   【7】2六飛 (先手良し) → 先手良し
   【8】2五飛 (先手良し) → 先手良し
   【9】3七桂 (先手良し) → 先手良し
   【10】3八香 (後手良し) → 先手良し
   【11】8一飛 (形勢不明)
   【12】1五歩 (後手良し)
   【13】9八金 (後手良し)
   【14】6五歩 (後手良し)
   【15】3七飛 (先手良し)   ※ (灰色字) は「吉祥A図」の調査結果


 今回の調査の結果で注目は、「吉祥A図」では後手良しだった【10】3八香が、「吉祥B図」では先手良しとなったというところである。




 今回の研究によって、新たに気づいたことがある。
 「吉祥A図」での【10】3八香について、再考したい。以下はその研究調査である。


[再調査 【10】3八香

3八香A図
 ここで7五桂は最善手と思われる(6六銀も有力だが3三歩成、同銀、同香成、同玉、3九飛、3四香、5九飛で先手良しになる)
 前回の「吉祥A図」での【10】3八香の調査(第56譜)では、7五桂に、3三歩成、同銀、同香成以下を最善手段とみて調べて、その結果、「後手良し」の結論を下していた。

 しかし、今回の調査で、「7五桂に9八金」を調べる必要がある、と気づいたのである(次の図)

研究3八香A図01
 さあ、この図からどちらが勝てるか、それを探るのが以下の目的である。
 ここでは後手9五歩がきびしい。後手の持ち歩が「3つ」あるのがポイントとなる(「7八歩、7六歩」の入った「吉祥B図」からの【10】3八香の場合は歩が2つしかない)
 この場合、9五同歩、9六歩、同玉、9四歩の攻めが有効となる。ここであと「一歩」を後手が持っているので、9四同歩には9五歩があるし、9四同馬にも、同金、同歩、8四銀で次に後手9五歩があり、この場合「一歩」の有無でこの9四歩が成立するかしないか、形勢の “分け目” となるのである。
 9四歩に、同歩とできない先手は、9七玉とし、以下9五歩と進む(次の図)

研究3八香A図02
 ここで、[1]7八歩が本筋だが、他に、[2]7一飛、[3]5四歩、[4]1七桂 の有力手もあるので、まずそれらの手から解説しておく。

研究3八香A図03
 [2]7一飛(図)に、6二銀引なら、6一飛成として、次に3三歩成、同銀、5二竜以下の寄せを見て先手良し。これが[2]7一飛の狙いだが―――
 7六桂があって、後手良しになる。5二角成に、8八桂成(次の図)

研究3八香A図04
 以下8八同金、同と、同玉、8七金、8九玉(7九玉なら6七桂成)、7七歩、7九歩、6九金で、後手勝ち。
 この形は、後手7六桂が速い攻めになるということが理解されたことと思う。

研究3八香A図05
 [3]5四歩(図)なら、7六桂、5三歩成と攻め合えば、今度は先手の攻めのほうが早い。
 なので後手は6二銀と引く。
 先手は6三歩。同銀なら、3三歩成、同銀、5三歩成だし、同金なら後手陣が弱体化して先手にチャンスができる。
 しかし、ここでなんと3一銀という手がある(次の図)

研究3八香A図06
 以下6二歩成に、4二金、6三角成、7四銀、3三歩成、同歩、7三馬、6五銀(次の図)

研究3八香A図07
 こう進んでみると、次の後手7六銀が厳しく、後手優勢である。

研究3八香A図08
 [4]1七桂(図)も有力である。
 次に2五桂がねらいだが、これを防ぐ意味で2四歩とするのは、2五桂、同歩、5二角成、同歩、2四飛以下、後手玉が寄ってしまう。
 [4]1七桂には、7六桂と攻め合うのが正解で、以下2五桂、8八桂成(次の図)

研究3八香A図09
 やはり先手玉に先に“詰めろ”が掛かってしまい、先手が勝てない。

研究3八香A図10
 [1]7八歩(図)が先手の本命の手である。
 対して 7六歩 なら、今度は1七桂で先手が勝てるのだ。7六桂の手がないからである。
 1七桂、7八と、2五桂。
 そこで7七歩成だと、8四馬、同銀に、3二角成、同玉、3三飛、2二玉、2三飛成、同玉、3三歩成以下、後手玉が詰んでしまう(以下3三同桂、3四金、3二玉、3三金、2一玉、3二金、1一玉、2三桂でぴったり詰み)
 なので後手は4四銀引と受けるが、3三歩成、同桂、5二角成として―――(次の図)

研究3八香A図11
 先手優勢。7七歩成なら4一飛とする。2五桂なら、4一馬、3五桂、3四飛である。

研究3八香A図12
 したがって、[1]7八歩には、同と(図)と応じる。
 ここで “5四歩” は、4四銀上と応じられ、以下4五歩には8九とで後手良しになる(次に9九と、同金、9六香が厳しい)
 “7九歩” でどうか(次の図)

研究3八香A図13
 “7九歩”(図)と打って、同と なら5二角成、同歩、4一飛で先手良し。
 7七と でも、5二角成である(次の図)

研究3八香A図14
 5二同歩に、7一飛と飛車を打つ手は、この場合は9六歩、同玉、8七角から、先手玉が詰まされてしまう。
 しかし、5二同歩に、8四馬が予定の継続手で、これが "詰めろ逃れの詰めろ" になっているのだ。後手玉は3三金以下の “詰めろ” である。
 しかし後手にもまだ手段がある。8七と、同金、同桂成、同玉、6五角と攻めてくる。
 先手は7七玉として―――(次の図)

研究3八香A図15
 結果として、なんとか、先手がリードできそうな図になっている。7六歩なら8八玉でよい。
 ここで6一歩という手があるが、同竜と取って、5一金には、同竜、同銀、4一飛で、先手玉は詰まず、先手勝ちになる。
 図で3八角成(後手玉の3三金以下の詰みが解除された)が想定されるが、3三歩成、同歩、7三馬、1四歩、3五桂で、先手良しだ。

研究3八香A図16
 しかし、“7九歩” に、8九と(図)の応手があるのだ。この手は次に9九との狙いで、これが見た目以上に厳しい。
 
 先手は受けはないので攻めるしかないが、3三歩成、同桂、5二角成と攻める。
 しかし、9九と、同金、6六銀とされてみると―――(次の図)

研究3八香A図17
 6六銀(図)として、次に9六香と打つのが後手のねらいである。9六香、8八玉に、7六桂以下の “詰み”
 9八玉くらいしかないが、7七銀成、8八金打、同成銀、同金、7六桂で後手の攻めはほどけない。
 後手良し。


3八香A図(再掲)

 ということで、「吉祥A図」からの 【10】3八香 は 7五桂以下後手良し が結論で、前回の結果と変更なしということなった。

 「吉祥A図」からの【10】3八香は9五歩で後手良しになるが、「吉祥B図」からの【10】3八香は9五歩としても先手良しになるのである。




 最後にもう一度、今回の結果を加えたまとめの図を掲げておく

吉祥B図(再掲)
   【00】7七歩  → 同歩成で「吉祥A図」に → 千日手ループ
   【1】3三歩成 (後手良し) → 先手良し
   【2】3三香 (後手良し) → 後手良し
   【3】8九香 (先手良し) → 先手良し
   【4】2五香 (形勢不明) → 先手良し
   【5】5四歩 (先手良し) → 先手良し
   【6】2六香 (先手良し) → 先手良し
   【7】2六飛 (先手良し) → 先手良し
   【8】2五飛 (先手良し) → 先手良し
   【9】3七桂 (先手良し) → 先手良し
   【10】3八香 (後手良し) → 先手良し
   【11】8一飛 (形勢不明)
   【12】1五歩 (後手良し)
   【13】9八金 (後手良し)
   【14】6五歩 (後手良し)
   【15】3七飛 (先手良し)   ※ (灰色字) は「吉祥A図」の調査結果
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終盤探検隊 part165 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第64譜

2020年09月16日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第64譜 指始図≫ 7七同歩成まで




   [女王の王冠]

 ついたところは、苔(こけ)みたいにやわらかい芝生でね。小さな花壇があちこちに点々とある。
「ああ、ここまでこられてよかった。あれえ、頭になにかのっかっている?」アリスはびっくりしたように、そういいながら両手をあげてさわってみると、なんだかすごく重たいものが頭にしっかりとはまっているんだね。
「でも、どうして、知らないまにこんなものが、こんなとこに?」つぶやきながらそれを脱いで、一体全体何か、ひざの上にのせてみた。
 なんとそれは、金の王冠だった。

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



 白の騎士(ナイト)に見送られて、アリスは「8マス目」に。
 ついに「女王」になったのだった。




<第64譜 吉祥B図の徹底調査>

 「吉祥B図」を調査している。

吉祥B図
   【00】7七歩  → 同歩成で「吉祥A図」に → 千日手ループ
   【1】3三歩成 (後手良し) → 先手良し
   【2】3三香 (後手良し) → 後手良し
   【3】8九香 (先手良し) → 先手良し
   【4】2五香 (形勢不明)
   【5】5四歩 (先手良し) → 先手良し
   【6】2六香 (先手良し)
   【7】2六飛 (先手良し)
   【8】2五飛 (先手良し)
   【9】3七桂 (先手良し)
   【10】3八香 (後手良し)
   【11】8一飛 (形勢不明)
   【12】1五歩 (後手良し)
   【13】9八金 (後手良し)
   【14】6五歩 (後手良し)
   【15】3七飛 (先手良し)   ※ (灰色字) は「吉祥A図」の調査結果

 今回は、【4】2五香 についての調査研究を行う。


2五香図
 【4】2五香(図)は、先手を持つ我々(終盤探検隊)の期待していた手。
 「7八歩、7六歩」の手交換のない形では、結局結論が出せず「形勢不明(互角)」としているが、この場合は「7八歩、7六歩」が入っているそれで違いが出るかどうか、そこがこれからの調査の見どころである。
 基本的な先手のねらいは次に2六飛。たとえばここで6六銀なら、2六飛と打って、以下3一桂に、2三香成、同桂、2四金で、先手勝ちとなる(2六飛に2四桂としても同香、同歩、3五桂で先手勝ち)
 6二金は、2三香成、同玉、1一飛の攻めがある(以下2二玉なら3二角成、同玉、1二飛成で後手玉“寄り”)
 したがって、この図では7五桂と打って、9八金と、先手に金を使わせ、それから6二金とする(次の図)

研究2五香図01
 6二金(図)に2六飛は、3一玉で後手良し。
 またここで2三香成、同玉、1一飛は、今度は2二玉で先手が負ける(金がないため)
 ということで、ここは、「2三香成、同玉、2五飛」と行くしかない。
 以下2四歩、5五飛と進む。

研究2五香図02(5五飛図)
 「吉祥A図」からの2五香(「7八歩、7六歩」がない形)の場合は、ここで後手6九金として、それで「互角(形勢不明)」が結論となっている。
 この場合は、どうだろうか。

 〈ラ〉6九金 以下をまず調査しよう。
 実は、「7八歩、7六歩」の入ったこの型は、先手が指しやすくなる。というのは、ここで7五飛が有効になるからである。以下、同金、同馬と進む(次の図)

研究2五香図03
 「7八歩、7六歩」のない形では、ここで7六とで後手良しになるところなのである。だからこの7五飛、同金、同馬という筋は無効になっていたのだが、この場合は7六とがないために、これが有効となるのである。
 以下7八となら6六馬で先手優勢。6七飛なら、1五桂、3四玉、5七金、6八飛成、4六金で、やはり先手優勢。

研究2五香図02(再掲 5五飛図)
 この「5五飛図」まで戻って、ここから 〈ラ〉6九金 以外の手を以下研究調査する。
 調査対象となる候補手は、〈リ〉1四歩〈ル〉7四銀〈レ〉2二玉〈ロ〉6六歩〈ワ〉7八と がある。
 しかし 〈リ〉1四歩 は、“一手パス”のような手で、3三歩成、同玉、5九飛、7八と、3五歩が一例で、わりと簡単に先手良しになる。

 〈ル〉7四銀 は、先手の狙いの7五飛や8五歩に備えた手だが、5九飛、7八とに、7四馬と切っていく(次の図)

研究2五香図04
 7四同金に、7五馬、同金と、二枚目の馬も切り、3五桂と打てば、後手玉は寄っている。
 以下2二玉、2三銀、3一玉、5二銀(次の図) 

研究2五香図05
 先手勝ち。

研究2五香図06変化2二玉
 〈レ〉2二玉(図)は、先手の7五飛、同金、同馬から1五桂の攻めを避けておき、3一玉も視野に入れた手。
 ソフト評価値はすでに +800 くらいで先手優勢と示しているが、具体的に勝ち筋を確定させておきたい。
 ここで5九飛は、5六香(以下5七歩に3一玉)で後手良しになる。
 ここは5四歩、4四銀、7五飛、同金、同馬がわかりやすい勝ち方。
 以下後手6七飛(代えて1四歩は5七馬として次に2四馬を狙って先手良し)
 先手は1五桂(次の図)

研究2五香図07
 1五桂(図)と打って、先手がリードを保っている。
 7八と、7七歩(好手。同飛成は8七金)、3一玉、8五角成、7四香、2三桂成、4一玉、2二金(次の図)

研究2五香図08
 あらかじめ「5四歩、4四銀」としていたことで、後手陣が弱体化している。
 形勢は先手が良いのは間違いないが、正しく指さないとすぐに逆転されてしまうような場面である。
 7七飛成、8七銀、5二玉(6三玉~5四玉の狙いを見せて7四馬を強要)、7四馬直、同銀、同馬、6三歩、9五歩(次の図)

研究2五香図09
 ここで9五歩(図)があって、先手優勢がキープできた(7九角に9六玉と逃げることができる)
 9五同歩、同竜、8八と、同金、7九角、8九銀(8九香だと8八竜、同香、7七歩成がしつこい)、5七竜、7八歩、7七歩成、同歩、7六歩、同歩、同桂、7八歩(次の図)

研究2五香図10
 これで後手の攻めは止まったようだ。先手優勢。

 〈レ〉2二玉 も 先手良し。

研究2五香図11
 〈ロ〉6六歩(図)
 ここで7五飛もなくはないが、ここは8五歩がより勝ちやすい手になる(次の図)

研究2五香図12
 8五歩(図)に7四金なら7五馬、同金、同飛として、飛車を残す意味だ。そうなると先手勝勢。
 したがって、後手はここで4四銀とする。
 対して、5九飛もあるところだが、7五飛と行くのが後がわかりやすい。以下同金、同馬。8五歩と突いてある分だけ、先手玉が広くなっている。
 6七飛に、9五歩(次の図)

研究2五香図13
 7八となら、9六玉だ。上部脱出すればこの先手玉は捕まらない。
 なので、8八と。同玉に、1四歩(先手の1五桂を消した)
 以下5四桂、5三銀引、6二桂成、同銀左、8七金打、7七香(次の図) 

研究2五香図14
 後手は攻めを急がないと、先手には9四竜~6四竜~3五桂の攻め筋がある。
 ということで、7七香(図)と攻めてきた。同歩に、6八飛成。
 以下9七玉、7七歩成、8六金(そこで7六とがありそうに見えるが、それは同金、同桂に、4二馬があるので無効)
 6七歩成に、3五銀(次の図)

研究2五香図15
 先手に攻めがまわった。次に2六香と打てばよい。それを避けて2二玉には、3三香、同桂、同歩成、同銀、3四歩、4二銀、2四銀で先手勝ち。
 3五銀に3一桂が工夫の受けで、2六香に、2二玉と引く(これなら3三香がない)
 しかしそこで6五馬が好手。次に5五馬がねらい。
 それを防いで後手は5八竜とするが、2四銀と出て、2三歩に、3三歩成(次の図)

研究2五香図16
 3三同桂なら6四馬(同銀に3四桂がある)、3三同銀には4三馬で後手玉 “必至”
 先手勝ち。

研究2五香図17
 「5五飛図」から、〈ワ〉7八と(図)が最後の手段。
 このまま7七歩成で二枚目の「と金」をつくられて、さらに8八と寄とされると先手も受けが困難になる。
 ここで、「次の手」が、先手がリードするためには重要な手になる(次の図)

研究2五香図18(7九歩図)
 「7九歩」(図)である。後手の「と金」の位置をずらす意味だ。
 (1)同玉とならどうなるのか。
 (1)7九同とには、8五歩と突く(次の図)

研究2五香図19
 対して7四金なら7五馬、同金、1五桂、3四玉、7五飛で先手勝ちになる。馬で桂を取って五段目の飛車を残すのが、この場合の先手の理想なのである。
 よって、先手8五歩に、後手は4四銀とする。以下5九飛、7七歩成、8四歩、同銀(次の図)

研究2五香図20
 ここで7一竜とする。次に7五竜と桂馬を取れば、1五桂以下の詰めろになる。
 (この形になったとき、7九とが7八との位置にあったとしたら、8八と寄が詰めろとなって後手良しになっていた。「7九歩、同と」の手交換で先手は一手稼いでいることになる)
 後手は1四歩で、それを防ぐが、先手は1一銀。

研究2五香図21
 次に3二角成からの寄せを狙って、先手勝勢。
 
 つまり、「(1)7九同と、8五歩」と進めば、先手良しとなる。

研究2五香図18(再掲 7九歩図)
 ということで、後手は(1)7九同と以外の応手を考えることになる。
 (2)7七歩成、(3)8九と、(4)7七と、(5)6八と、(6)4四銀、が考えられる。
 以下、この順に調査していこう。

研究2五香図22
 (2)7七歩成(図)は、7八歩、同とと進み、後手の“二枚目のと金”のタネがなくなったので、先手良しになる。
 具体的には、やはり8五歩である。
 以下4四銀、5九飛、7四金、6六金(次の図) 

研究2五香図23
 6六金(図)と打って、次に7五金を狙う。この後手玉を攻略するには、桂馬を入手して1五桂と打つのが早いのである。
 図以下、8四歩、7六歩、1四歩、3三歩成、同玉(代えて同桂なら2一銀、3一香、3九飛)、7五歩、8五金、8六歩、7六金、同金、同桂、2六桂(次の図)

研究2五香図24
 先手勝勢。
 2三金(または3五金)なら9四馬。3四香は同桂でよいし、4五銀なら3七桂がある。

研究2五香図25
 「7九歩」に、(3)8九と(図)
 これには7八歩として、二枚目のと金をつくらせない。
 以下9九と、同金、7四香 に、5九飛、9五歩(次の図)

研究2五香図26
 後手は9筋を攻めてきたが、ここでも8五歩がベストの手になる。
 同金に、7五馬(次の図)

研究2五香図27
 後手は9六金と攻めたいところだが、9八玉、7五香に、1五桂、3四玉、9六角成がピッタリの手となって先手勝ちとなる。
 すると、図では7五同金とするしかないが、1五桂、3四玉に、9五竜(次の図)

研究2五香図28
 6八角なら、7五竜、同香に、2三銀以下後手玉詰み。この図は、先手勝勢である。

研究2五香図29
 今の手順は後手 7四香 と打った手がカラ振りになったので、その手に代えて、2二玉(図)でどうか。
 以下5九飛、9五歩(代えて6六歩などでは5四歩、4四銀、4五歩、同銀、5三銀で後手陣は壊滅)、同歩、9二歩、同竜、5二香、6三歩(同金なら9一竜)、6一金、9八金(次の図)

研究2五香図30
 9八金と「8七」を受けておいて、次に5四歩、4四銀、5三銀が先手の狙いの攻めになる。
 後手はその攻めが来る前に、7七歩成、同歩、3一玉で勝負する。
 以下、5二角成、同金、2三銀(次の図)

研究2五香図31
 2二香、1二銀成、6八角、2三香、同香、2二金、4一玉、2一成銀(次の図)

研究2五香図32
 先手勝ち。
 5九角成なら、8四馬(次に3一金打)。3一香と受けても、3三歩成、同歩、3二歩があるので無効。

研究2五香図33
 「7九歩」に、(4)7七と(図)
 以下3三歩成、〔A〕同玉〔B〕3三同桂 は後述)に、“8五歩” とする(次の図)

研究2五香図34
 ここで、「8七桂成」「7四金」「4四銀」が候補手となる。

 「8七桂成」、同金、同と、同玉に、3一金と打つ手がある。
 対して、3四歩(次の図)

研究2五香図35
 2二玉なら、1五桂があるので、後手は4四玉と出て、5九飛に、4一金で角を取るが―――(次の図)

研究2五香図36
 4六歩(図)と打って、先手優勢。
 5四銀なら5五銀、同銀、4五金だし、8六香には、同玉、7七角、9七玉、5四銀、4五銀、同銀、同歩、4八香で、先手勝ち。

研究2五香図37
 “8五歩” に、「7四金」(図)の場合。
 これまでの流れからすると、そこで7五馬とするところだが、この場合は以下同金、同飛、5七角で、あやしいところがある。
 なので、ここは3五飛、3四香(代えて4四玉には4六銀)、7五飛とするのが良い(次の図)

研究2五香図38
 7五同金、同馬に、6七飛以下を見ていくが、代えて5八飛(9八飛成以下詰めろ)は6六馬がある。
 また6八飛と打つのは8六玉で、継続手がない(9八飛成には6六馬の王手があるし、8八とは5七馬がある)
 ということで、6七飛と打って、8六玉に、6八飛成と工夫する。次に8八との攻めがある。
 先手は、9四竜(次の図)

研究2五香図39
 8八と、6三歩、9三歩、同竜、9八と、4五桂、4四玉、9五玉(次の図)

研究2五香図40
 9五玉(図)と先に逃げておく。
 6五金なら4六銀でよい。4五玉なら6二歩成で次に5七銀や6三角成がある。
 7二金には、5三桂成、同銀、4五歩、同玉、5七銀とする(次の図)

研究2五香図41
 先に9五玉と逃げておいたので8八竜が王手にならない。
 先手優勢がはっきりした。

研究2五香図42
 “8五歩” に、「4四銀」(図)
 ここで7五飛、同金、同馬は、6七飛で、先手悪い。
 「4四銀」には、5九飛。
 そうしておいて、後手は7四金。
 これには3五歩とする(次の図)

研究2五香図43
 3五同銀に、5五飛とし、4四銀、7五飛、同金、同馬、5八飛、9五歩(次の図)

研究2五香図44
 後手の打った5八飛は、9八飛成以下の詰めろになっていたが、9五歩(図)がその対応手。
 9五同歩なら8六玉だ。
 先手優勢。

研究2五香図45
 次に、 〔B〕3三同桂(図)の変化を見ていく。
 ここで3四歩と打つ。同玉なら3二角成、2五桂なら 5九飛で先手良し。
 しかし6六歩が手強い手。5九飛では先手勝てないし、3三歩成、同玉、4五桂も、4四玉で先手が悪い。
 6六歩には、7八歩とする(次の図)

研究2五香図46
 7八同となら、3五飛として、これで先手勝勢になる。
 よって、後手は6七歩成。
 そこで8五歩(7四金ならやはり3五飛で先手良し)
 4四銀、5九飛、7八と左、8四歩(次の図)

研究2五香図47
 後手は8四同銀としたいが、それは同馬、同歩に、3四銀、同玉、2六桂以下、後手玉が詰んでしまう。
 したがって後手は8四同歩とするが、8六玉、8七桂成、7五玉、9八成桂、1五桂で―――(次の図)

研究2五香図48
 1五桂(図)と打って、先手勝勢。3二角成以下詰めろである。

 以上の調査で、(4)7七とは先手良し、が明らかになった。

研究2五香図49
 「7九歩」に、(5)6八と(図)とする手もある。
 これなら先手の5九飛がないし、次に7七歩成の手が残る。
 先手はそこでやはり8五歩も有力だが、ここでは「7一竜」の手をを紹介しよう(次の図)

研究2五香図50
 「7一竜」(図)のねらいは、次に8四馬、同銀、7五竜、同銀、1五桂(以下詰み)である。5五飛を盤上に残したまま7五の桂馬を取るのが7一竜の狙いなのである。6八ととしたこの瞬間は後手の攻めが甘いので、こうした大駒を切る手が成立するのだ。
 対して、[4四銀][6七桂成] が考えられる。

 [4四銀] には、6五飛とするのがよい。そうして8四馬の狙いを残す。
 後手は1四歩として、先手の1五桂を消しておくが、8四馬、同歩(同銀は6二竜がある)、1一銀(次の図)

研究2五香図51
 先手勝勢である。
 7七歩成なら、2二金、3四玉、7三竜。3一銀なら、7五飛、6六角、3五桂、3四玉、7三竜。

研究2五香図52
 戻って、「7一竜」に、[6七桂成](図)
 桂馬を取られないように、成った。
 以下、8五歩、7四金、同角成、同銀、同竜で、“二枚替え” だ。そして7四竜としたこの竜は、次に6四竜と桂馬を取って1五桂をねらいがある。これが大きい。1一銀の狙いもある。
 よって後手は2二玉とするが、それでも6四竜だ(次の図)

研究2五香図53
 6四同銀なら、2三銀以下、後手玉“詰み”。 先手勝ち。

研究2五香図54
 「7九歩」に、(6)4四銀(図)が後手の最後の候補手。
 以下3三歩成、同玉(同桂は後で2一銀の手段が残る)、5九飛、6八と、3九飛、3四香、3五歩、同香、3六銀(次の図)

研究2五香図55
 “歩切れ”の先手は3六銀(図)と打った。以下3六同香、同飛、3五銀打、3七飛、6七と、6五金(次の図)

研究2五香図56
 ここでも、7五の桂馬を取るのが目標になる。以下7七歩成、7五金、同金、同馬、7六と、2六桂、3一金、7六馬、同桂、8五角成(次の図)

研究2五香図57c
 先手勝勢になった。

 (6)4四銀も、先手良し。

研究2五香図18(再掲 7九歩図)
 〈ワ〉7八と には「7九歩」(図)と打って、そこで―――
 (1)7九同と、(2)7七歩成、(3)8九と、(4)7七と、(5)6八と、(6)4四銀、いずれも「先手良し」になった。
 

 この結果を受けて―――

2五香図(再掲)
 以上の調査研究で、【4】2五香(図)は、「7八歩、7六歩」があるこの形は 先手良しになる、ということが判った。

 【4】2五香、7五桂、9八金、6二金、2三香成、同玉、2五飛、2四歩、5五飛 の後は、後手に変化する手が多くて読み切ることはたいへんだが、それでも全体的には先手の指し手の選択に余裕があって、先手が勝ちやすい図になっている。

研究2五香図02(再掲 5五飛図)
 つまりこの図がそうなのであるが、「7八歩、7六歩」が入っているこの形では「先手良し」となり、そうでない場合には「形勢不明」になるのである(6九金、7五飛、同金、同馬の時に7六とがあるので7五飛の筋が成立しないため)
 「7八歩、7六歩」が入っているかいないかで、はっきり結果が変わるのである。



 今回の結果を加え、「吉祥B図」の調査結果は、こうなっている。

吉祥B図(再掲)
   【00】7七歩  → 同歩成で「吉祥A図」に → 千日手ループ
   【1】3三歩成 (後手良し) → 先手良し
   【2】3三香 (後手良し) → 後手良し
   【3】8九香 (先手良し) → 先手良し
   【4】2五香 (形勢不明) → 先手良し
   【5】5四歩 (先手良し) → 先手良し
   【6】2六香 (先手良し)
   【7】2六飛 (先手良し)
   【8】2五飛 (先手良し)
   【9】3七桂 (先手良し)
   【10】3八香 (後手良し)
   【11】8一飛 (形勢不明)
   【12】1五歩 (後手良し)
   【13】9八金 (後手良し)
   【14】6五歩 (後手良し)
   【15】3七飛 (先手良し)   ※ (灰色字) は「吉祥A図」の調査結果
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終盤探検隊 part164 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第63譜

2020年09月13日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第63譜 指始図≫ 7七同歩成まで

 指し手 ▲7八歩



   [女王さまになりたいのよ]

「どうだかがやかしき勝利だったろう」白の騎士がはあはあいいながら近づいてきた。
「さあどうだか」アリスは首をかしげながら、「あたし、だれのとりこにもなりたくないもの。女王さまになりたいのよ」
「次の小川をこせば、そうなれるさ」と白の騎士、「森のはずれまでわたしがぶじに送りとどけてあげる――こっちはそこから引返さなきゃならないがね。わたしの詰めはそこまでだ」
「どうもありがとう」とアリス。「兜をぬぐの、お手伝いしましょうか?」といったのは、騎士ひとりではどう見ても手におえそうになかったからだ。アリスが手伝ってゆすってやって、やっとこさ兜はぬげた。

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



 「白のポーン(歩兵)」であるアリスは、「女王(クイーン)」になりたい。
 いま、「7マス目」にいるアリスは、小川を超えて、「8マス目」にゆけば、念願の「女王さま」になれるのである!




<第63譜 千日手軌道 二周目>


≪指始図≫

 △7七歩成(図)に、実戦で我々(終盤探検隊)は、▲7八歩 と指した。



≪最終一番勝負 第63譜 指了図≫ 7八歩まで

 千日手周回軌道 (ループ)の “二周目” に入った。

 千日手にはしたくない。
 だが、どこで、何の手を指して打開できるのか、我々はまだわかっていなかった。
 三周してしまうと、千日手が成立してしまうが―――まだ大丈夫だ。



第64譜につづく





[吉祥B図の調査]

 この ≪指了図≫ を一手進めて後手7六歩を加えると(または指始図から2手戻すと)、次の図になる。

吉祥B図
 これが、「吉祥B図」である。

 ずっと「吉祥A図」からの千日手打開手段を考えてきたが、今度はこの「吉祥B図」からの手を考えていく。
 「吉祥A図」との違いは、「先手7八歩」と「後手7六歩」の2つの「歩」が盤上に置いてあることだ。この “違い” が影響する場合と、しない場合とがある。
 それを厳密に調査して行きたい。

 【1】3三歩成
 【2】3三香
 【3】8九香
 【5】5四歩

 今回は、この4つの手について。



[調査研究 【1】3三歩成

3三歩成図
 「先手7八歩、後手7六歩」の手交換が入った図での、【1】3三歩成 (図)

 以下3三同銀に―――この後、どうするか。
 [イ]8九香、[ロ]5二角成、[ハ]3八香と3つの手がある。

 まず[イ]8九香は、7五桂と打たれて―――(次の図)

研究3三歩成図01
 この図の研究は、前回(第62譜)の最後の研究テーマになっており、そこの[追記]によって、「後手良し」の結論が出ている。先手の狙いの8五歩には(同金なら5二角成以下先手良しなのだが)、4二金という応手があって「後手良し」になるのだ。

研究3三歩成図02
 次に、[ハ]3八香(図)を片付けよう。
 この手は、後手4二金で、先手が勝てない。4二金、6三角成、6二銀右、7二馬、6六銀、5四歩(次の図)

研究3三歩成図03
 5四歩で先手もやれそうな気もするが、7八と、5三歩成、7七歩成と進んでみると―――(次の図)

研究3三歩成図04
 後手の攻めが一歩早い。7七歩成が先手玉への“詰めろ”になっており、受けも難しい。
 後手勝ち。

研究3三歩成図05
 【1】3三歩成、同銀に、[ロ]5二角成(図)が最有力の手。
 5二同歩に、7九金(次の図)

研究3三歩成図06
 後手の角打ちをあらかじめ防ぐ7九金(図)で勝負だ。
 以下7五桂、8九香、3四銀(次の図)

研究3三歩成図07
 後手は3四銀(図)で脱出口を開く。
 「7八歩、7六歩」が入っていない形だと、次の後手7六角が決め手になり、この3四銀で後手勝勢となっていた。
 ところがこの形だと、その「7六角」の手がないので、事情がまったく変わってくるのである。
 ここで4一竜として、以下5七角、6八歩、3三玉、2一竜、4四玉、3二竜、9五歩(次の図)

研究3三歩成図08
 ソフト評価値的にもほとんど互角。
 ここで3一飛と打って、9六歩、同玉、9五歩、9七玉、5四玉、3四飛成、4四歩、7一竜(次の図)

研究3三歩成図09
 こう進み、どうやら先手が良くなった。以下3三歩、同竜と進む。
 そこで 6二銀右 だと、7二竜で、次に8四馬、同歩、7四竜の狙いが残り先手優勢。
 7四金 が粘り強い手だが、8五桂、6二銀左、7二竜で、先手が少し良い(これが後手最善の道と思われる)
 6二銀左 以下を紹介しておこう。この手に対し7二竜は6六角成で後手ペースになる。また4一竜は5三歩で形勢不明。
 しかし、6二銀左 に、5六歩の好手があって、先手優勢になる(次の図)

研究3三歩成図10
 7一銀は、5五歩、同玉、4七桂以下、後手玉 “寄り”
 5六同桂は、7三竜左、同銀に、6五銀、同玉、6三竜以下“詰み”
 5六同銀は、4一竜、5三銀、5二竜、6二銀右、6三銀以下、“寄り”

 ということで、【1】3三歩成 は、同銀に5二角成以下 先手良し と結論する。



[調査研究 【2】3三香

3三香図
 【2】3三香(図)には、後手は3一銀と引いて、次に4二金で陣形を強化してから7八と~7七歩成がねらいになる。
 先手は8一飛くらいだが、4二金、6三角成、6二銀右、4五馬と進む。
 以下、6六銀、6三歩(次の図)

研究3三香図01
 後手玉は詰めろをかけるまでに2手の余裕がある。この瞬間に後手は攻める。
 7四桂が早い攻めになる。
 以下6二歩成に、7五銀として。9八玉、8六銀と進み―――(次の図)

研究3三香図02
 先手玉に詰めろが掛かり、受けが困難である。
 後手勝ち。

 【2】3三香 は 後手良し



[調査研究 【3】8九香

8九香図
 【3】8九香(図)はどうだろうか。
 ここでの有力手は、〔a〕7五桂である。しかしここで7五桂と打ったその図は、第52譜 ですでに研究済みの図に合流しており、「先手勝ち」の結論が出ている。
 まず先手のその勝ち筋をおさらいしておこう。

研究8九香図01
 〔a〕7五桂(図)に、8五歩と突く。以下、同金に、3三歩成、同銀、5二角成、同歩、7五馬、同金、3一飛というのがその「勝ち筋」である。
 以下4二銀左、2一飛成、3三玉、4五金(次の図)

研究8九香図02
 この図が「先手勝ち」の図である。
 4五金と打つところで3五金だと7九角(王手金取り)で後手勝ちになってしまうところ。
 そしてもし「7八歩、7六歩」の手交換がなかったとしたら、4五金には、8六角、9八玉、5四角と対応する手段があって、4五に打った金を消されてしまうために、後手良しになるのである。この場合は後手に「7六歩」と打たせてあるために、この図が先手勝ちとなるのだ。

8九香図(再掲)
 この図で、7五桂以外の手―――たとえば〔b〕6六銀 だと、先手の攻めが有効となり、先手良しとなる。あらかじめ8九香と受けてある効果で、5二角成で角を後手に渡しても先手玉が詰まないので、「3三歩成、同銀、5二角成」の攻めが有効となる。その攻め筋をさらに効果的にするために5四歩と打ってから「3三歩成、同銀、5二角成」を決行するともっと勝ちやすい。
 7五桂と打てば、後手が角をもてば7九角から先手玉が詰んでしまうので、今の先手の攻めが無効となる。なので〔a〕7五桂 が最有力手とみられるところだったが、それを打ち破る手段が、8五歩からの一連の冴えた組み立てであった。

 この図では、〔c〕7八と を調べておかねばならないところだ(次の図)

研究8九香図03
 〔c〕7八と(図)で先手が負けてしまうなら、この「7八歩、7六歩、8九香」という手順は大失敗ということになる。
 先手の攻めは「3三歩成、同銀、5二角成」だ。5二同歩なら、3一飛と打って先手が勝てる(7九角には9八玉)
 よって後手は4二銀左するが、先手は5一竜(後手4二銀右なら4一飛が決め手になる)

研究8九香図04
 5一同銀なら、5三馬が詰めろで先手が勝ち。
 よって後手は8九と。
 先手は4二竜と決めにいく。同銀に、同馬(次の図)

研究8九香図05
 飛車を渡しても先手玉に詰みはなく、したがって、先手勝ちになっている。

研究8九香図06
 もう一つ、〔d〕3一銀(図)という手がある。これは、先手の狙い筋の「3三歩成~5二角成」に対応しながら、次に4二金右などで陣形を固めようとする意味。それでも5二角成と攻めていくのは、同歩、4一飛に、4二銀引で後手良しだ。
 3一銀には、8五歩と突き、7四金に、3三歩成、同歩、8一飛とする(次の図)

研究8九香図07
 次に5二角成があるので、後手は4二銀引と受けるが、そこで5三歩と打って、先手優勢である。
 8五歩と突いておいた効果は二つあり、7九角打ちに8六玉と逃げるスペースがあること、そして9三の馬が活用できるようになっていること。
 5三歩以下、6二金、5一飛成、同銀、同竜(次に4二竜から詰みがある)
 そして1四歩には、5七馬(次の図)

研究8九香図08
 先手勝ち。

研究8九香図09
〔e〕1四歩(図)も、先手の「3三歩成、同銀、5二角成」の攻めに対応している。それを決行すると先手が悪い(1四歩の効果で後手玉に詰めろがかかりにくい)
 ではどうするか。
 1四歩には、1五歩と攻めて行く手が有効な攻めになる。
 それで先手良しだが、ここでも、8九香と打ってある手を生かして、8五歩と突く手を見ていこう(次の図)

研究8九香図10
 7四金なら、1五歩と攻めて、同歩に、1三歩、同香、7七歩、同歩成、1二歩(次の図)

研究8九香図11
 1二歩(図)として、同玉は3二角成だし、3一銀としても1一歩成、同玉、3三歩成、同桂、5二角成で、先手勝勢となる。
 「8五歩、7四金」の効果で、9三の馬を5七に引いて使う手もあって、1筋の攻めがより強力になっている。

研究8九香図12
 しかし、戻って8五歩には、後手6六銀(図)の変化がある(7四金で勝てない後手はこういう手で抵抗してくるだろう)
 以下8四歩に、同銀、同香、7五銀と勝負するのが後手の意図で、次に後手8五桂の狙い。
 それを防いで、先手は9四馬。
 以下8四歩に、3五飛(次の図)

研究8九香図13
 3五飛(図)で、この変化も先手勝勢になった。
 3五飛は、3二角成、同玉、3三銀以下後手玉への“詰めろ”。 よって後手8五桂は同馬と取られて無効。
 といって受けに回るのでは、7五飛と要の銀を取られてしまう。

 以上見てきたように、【3】8九香 に打ち勝つ後手の手は見つからない。

 よって、【3】8九香 は 先手良し

 

[調査研究 【5】5四歩

5四歩図
 【5】5四歩(図)は、「7八歩、7六歩」が入っていない形では、「先手良し」が結論だった。この手交換が入ったこの図では何がどう変わるだろうか。

 まず、ここでの後手の有力手〈あ〉7五桂から見ていこう。
 〈あ〉7五桂に、9八金(次の図)

研究5四歩図01
 「7八歩、7六歩」の入っていない形では、ここで7六桂という手があって、その型の攻略が先手の問題だった(7六桂、8九香以下、変化が多いが、先手良しになるという研究結果が 第37譜
で出ている)
 この場合は、その後手7六桂の手がないので、より先手が指しやすくなっている。以下そのことの証明をしておこう。
 ここで後手7八とは5三歩成で先手が勝つ。
 したがって後手はここで先手の5四歩に対処することになるが、5四同銀4四銀上6二銀左 のいずれも、5二角成を軸とした攻めで先手良しになる。

 その中で、より接戦となる 4四銀上 以下の変化の一例を示しておく。4四銀上に、5二角成、同歩、4一飛と進む。
 そこで3一角という受けがあるが、その手には7一飛成とし、7八とに、4一金で先手優勢。
 3一角と受けるのではなく、7九角と角を攻めに使ってどうか。
 7九角、8八香、1四歩、8九金(次の図)

研究5四歩図02
 8八と、同金寄、3五角成(4六角成なら4二飛成。次に3三銀、同桂、同歩成、同銀、3一竜左、1三玉、2五桂以下詰めろ)
 以下2一飛成、1三玉、3二竜、9五歩、8四馬、同銀、2二金

研究5四歩図03
 先手勝ちになった。

5四歩図(再掲)
 さて、「5四歩図」に戻って、〈あ〉7五桂以外の手を考えよう。
 〈い〉5四銀、〈う〉4四銀上、〈え〉6二銀左 の3つの手がある。
 しかしこれはすでに「7八歩、7六歩」の手交換が入っていない形で研究調査したものがあり、それがそのまま有効手順となって、先手良しになる。すなわち―――
 〈い〉5四銀 → 7七歩、同歩成としてから、3七飛と打つ
 〈う〉4四銀上 → 8九香(以下7五桂には7一飛) 
 〈え〉6二銀左 → 2五香
   (その研究内容は 第53譜第55譜 で)
 こういう手順で、いずれの手も、先手良しになる。

 
 【5】5四歩 は 先手良し





「吉祥B図」についての調査結果の、ここまでのまとめは次の通り。

吉祥B図(再掲)
   【00】7七歩  → 同歩成で「吉祥A図」に → 千日手ループ
   【1】3三歩成 (後手良し) → 先手良し
   【2】3三香 (後手良し) → 後手良し
   【3】8九香 (先手良し) → 先手良し
   【4】2五香 (形勢不明)
   【5】5四歩 (先手良し) → 先手良し
   【6】2六香 (先手良し)
   【7】2六飛 (先手良し)
   【8】2五飛 (先手良し)
   【9】3七桂 (先手良し)
   【10】3八香 (後手良し)
   【11】8一飛 (形勢不明)
   【12】1五歩 (後手良し)
   【13】9八金 (後手良し)
   【14】6五歩 (後手良し)
   【15】3七飛 (先手良し)   ※ (灰色字) は「吉祥A図」の調査結果


 「吉祥A図」→「吉祥B図」となることで、【1】3三歩成 が「後手良し → 先手良し」と変わっている。
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終盤探検隊 part163 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第62譜

2020年09月10日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第62譜 指始図≫ 7七同歩成まで



   [騎士とのわかれ]

 二人はそこで握手をし、騎士はそれからゆっくりと森の中へ遠ざかっていった。「お見送りにあんまり手間どらずにすむかしらん」アリスはひとりごとをいいながらあとを見守る。「あ、やっちゃった!やっぱり頭からまっさかさま!でもわりかしすぐにのり直したわね――あんまりやたらいろんなものを馬にぶらさげるからよ――」アリスはそうやってひとりごとをいいながら、お馬がのろのろすすんでいくのを見守っていたけれど、騎士は騎士でまず右におち、次には左におちしてね。四度か五度おちたあげくに曲り角へたどりついたので、アリスはそこでハンカチをふりふり、騎士のすがたが見えなくなるまでまっていた。

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)




<第62譜 吉祥A図 調査結果 まとめ>

吉祥A図
   【0】7八歩 = 実戦の指し手 → 千日手ループ
   【1】3三歩成 → 後手良し
   【2】3三香 → 後手良し
   【3】8九香 → 先手良し
   【4】2五香 → 互角(形勢不明)
   【5】5四歩 → 先手良し
   【6】2六香 → 先手良し
   【7】2六飛 → 先手良し
   【8】2五飛 → 先手良し
   【9】3七桂 → 先手良し
   【10】3八香 → 後手良し
   【11】8一飛 → 互角(形勢不明)
   【12】1五歩 → 後手良し
   【13】9八金 → 後手良し
   【14】6五歩 → 後手良し
   【15】3七飛 → 先手良し

 「吉祥A図」の戦後調査が完了した。
 上の通り、この図からははっきり「先手良し」になる手段が複数ある。けれども、実はどの道もかんたんな道ではない。この調査を終えたいま、この中から「勝ちやすい手」を3つ選ぶとしたら何になるだろうか。
 それを考えてみた結果、以下の3つの手を選ぶこととなった。
 
 【3】8九香、【8】2五飛、【15】3七飛

 この3つである。これらの手について、以下、その内容をおさらいしてみよう。



[再確認 【3】8九香

8九香基本図
 【3】8九香(図)と先に受けておいて、このままなら、3三歩成、同銀、5二角成、同歩、3一飛で勝とうというのが、この手の狙い。
 この狙いを阻止するのが、7五桂。ここで上の攻めを決行すると、7九角で先手玉が詰まされてしまう。

 しかし、7五桂に、「7八歩、7六歩、8五歩」が優れた手順で―――(次の図)

変化8九香図a
 8五同金、3三歩成、同銀、5二角成、同歩、7五馬(次の図)

変化8九香図b
 7五同馬に、3一飛以下、まだ難しいところがあるが、調べると先手良しになるとわかった。

 「7五桂に、7八歩、7六歩、8五歩で先手良しになる」ことの発見が難しいが、それを見つけることができれば、確かに 【3】8九香 で先手が勝てるのである。

 (【3】8九香 は、第52譜 で研究調査している)



[再確認 【8】2五飛

2五飛基本図
 【8】2五飛については、第55譜 において研究調査している。

 【8】2五飛(図)に対して、後手は次の応手が考えられ、それぞれ、以下のように指して、先手良しに導けるとわかっている。
 〔ア〕7五桂 → 9八金、6二金、3三香
 〔イ〕6六銀 → 3三香
 〔ウ〕9五歩 → 5二角成
 〔エ〕6二金 → 3三香
 〔オ〕4四銀引 → 7八歩(以下7六歩なら8五歩、7六となら3七桂)

研究2五飛図a
 これは、「〔〔ア〕7五桂 → 9八金、6二金、3三香」と進んだ図だが、以下3三同桂、同歩成、同銀、5五飛と進んで先手良しになる(単に5五飛だと3一玉で角が取られはっきり後手良しになるところ)

 このように、【8】2五飛 に、〔ア〕7五桂、〔イ〕6六銀、〔ウ〕9五歩、〔エ〕6二金、〔オ〕4四銀引を調べて、先手良しの結論が出ている。

 つまり、「3三香の筋が見えていれば」という条件付きで、先手は比較的わかりやすい勝ち方ができる。
 (我々の相棒であった「激指14」はこの筋が見えていなかったようだ。だからこの 【8】2五飛 の有効性がわからなかった)


 しかしもう一つ、調べておかねばならない手があったようだ。この手を軽視していたが、あらためて調べてみると意外に難しい。

研究2五飛図b
 【8】2五飛 に〔カ〕4四銀上(図)がその手である。
 この変化を調査していなかったので、ここで追加調査しておく。

 〔カ〕4四銀上(図)の手は、〔オ〕4四銀引の場合と違って2五飛の横利きが通っていない。そのために8五歩の手が切り札にならない。したがって4四銀引の時と同じように攻めても無効になる(〔オ〕4四銀引には7八歩と打ち、7六歩なら、8五歩で先手良しになるところ)

 ここは「3七桂」とする(次の図)

研究2五飛図c
 「3七桂」(図)と桂馬をはねて、次に5二角成、同歩に、2三飛成から後手玉を詰ますことができる(5二角成としたとき次に4二馬で後手玉は受けなしになるので放置しにくい)
 後手はこの筋を防がなけらばならないが、桂馬を使って1一桂などと先受けすると、5四香があって、それで先手良しになる。ということで、後手の応手は次の手に限られる。
 〈X〉6二金〈Y〉7五桂〈Z〉3一銀

 〈X〉6二金 には、6三歩と打つ。以下 5三金7二金 と逃げる手もあり後述する)、5四歩、同金、6二歩成(次の図)

研究2五飛図d
 6二同銀なら6一竜、5三銀上、2六香、2四桂、8五歩で先手良しになる。
 よって、後手は6五金と勝負する。
 以下、5二と、7五桂、8九香、7六金、9八金(次の図)

研究2五飛図e
 後手の攻めは止まり、後手陣にはもう受けは利かない。先手勝ち。

研究2五飛図f
 今の手順で、先手6三歩に、7二金(図)の変化がある。
 この手には、6一竜とするが、そこで8二金の勝負手があるのだ。
 しかしそこで3三香と打って、同桂、同歩成、同銀引、8四馬(2一金以下後手玉詰めろ)、2四香、5五飛(次の図)

研究2五飛図g
 こう進んで、後手玉に3二角成、同玉、4一銀、同玉、5二飛成以下の“詰めろ”が掛かっている。よって後手はここで8四歩と馬を取ることができない。
 つまりこの変化も、先手勝ちになる。

 以上で、〈X〉6二金 は先手良しになると確認できた。

研究2五飛図h
 〈Y〉7五桂 には、9八金と受けてこの図になる。
 先手は受けに金を一枚使ったが、それでもまだ5二角成、同歩に、2三飛成以下の “詰み” は成立している。
 結局、6二金と指すことになり、すると6三歩で上の変化に合流する。(3一銀は2六香、1一玉、5二角成で先手良し)
 つまり、〈Y〉7五桂 は先手良しである。

研究2五飛図i
 「3七桂」に、〈Z〉3一銀(図)の場合。
 2六香と打って、1一桂(2四桂でも同じ攻めでよい)、7八歩、7六歩に、5三歩と攻めて行く(次の図)

研究2五飛図j
 以下4二金、6三角成、7四銀、7三馬、4一金、8九金(次の図)

研究2五飛図k
 8九金(図)と受けておいて、いつでも角を切って攻める態勢にしておく。
 ここで後手の指し手が難しい。7五銀は6三馬があるし、6六銀は6四馬で桂馬が取られる。
 6三歩が最善か。
 先手は8四馬左、同歩、7四馬で、“二枚替え”を決行する。
 以下、6九角、6三馬、2五角成に、9八金打と受ける(次の図)

研究2五飛図l
 4二金に、5一飛成。
 そこで6七飛などでは、5二歩成(3一竜以下詰めろ)で、先手勝ちになる。
 しかし、後手3六馬の勝負手がある。先手5二歩成なら、6三馬で先手玉に9六馬以下の詰めろが掛かっていて後手勝ちになる。
 ということで、先手は3六同馬だが、そこで5七飛で、攻め合う。
 先手は6七歩(次の図)

研究2五飛図m
 これを同飛成なら、3三歩成、同歩(同銀には4五角がある)、5二歩成で、先手勝ち。
 6七歩(図)に6六銀の勝負手には、2三香成、同桂、2四銀と攻めて行く。2四銀は、2三銀成、同玉、1五桂、2二玉、1一角、同玉、2三桂不成以下“詰めろ”である。
 4一香と受ける手には、2三銀成、同玉、1五桂(次の図)

研究2五飛図n
 以下2二玉、4一竜、同金に、2四香以下、後手玉は詰んでいる。

 〈Z〉3一銀 も、先手良し。


 これで、【8】2五飛 に〔カ〕4四銀上の手には、3七桂以下先手良し、がはっきりした。



[再確認 【15】3七飛

3七飛基本図
 【15】3七飛(図)は先手が勝ちやすい手である。
 先手の「3三香」または「8四馬」が強烈だし、それを受ければ7七飛で後手の攻めの拠点の「と金」を消すことができる。
 7五桂なら、7七飛、7六歩、3七飛で、再び3三香の狙いができて、先手優勢。
 4六銀も、7七飛、7六歩、7九飛で、先手優勢である。
 最も複雑な変化になるのは、4四銀上だろう。以下7七飛、7六歩、4七飛。
 この4七飛と途中下車するところが難しい(3七飛としたいがそれは4六銀、3六飛、3五銀上でもつれる。また4七飛に代えて7九飛でも先手良し)
 以下7五桂に、2六香(次の図)

研究3七飛図a
 2六香(図)と打っておき、先手に桂馬が入れば1五桂がある状況にしておく(1四歩なら1五歩が有効になる)
 ここで後手にいくつかの有力手があるが、いずれも先手良しになる。
 一例として、6六銀以下を紹介しておく。6六銀、7八歩、6七歩、8八金、6二金(次の図) 

研究3七飛図b
 ここで4六飛が好手になる。以下5五銀引、3六飛。後手の銀を引かせ、3六飛と手順に3筋に飛車を展開(この4六飛の発見は難しいがここは他の手でも先手良しになる手段がある)
 そこで6八歩成には、3三歩成、同銀引、6三歩以下、先手良し。

 (【15】3七飛 の調査研究は 第61譜 にて)



吉祥A図(再掲)
 以上、「先手良し」への有力手となる3つの候補手――【3】8九香、【8】2五飛、【15】3七飛――を再確認してみた。
 それぞれ、難しい部分はあるが、確かに「先手良し」になる道が存在している。

 しかし、これらがはっきりしたのは“戦後調査”の結果である。
 戦っている最中は、我々は暗中模索の状況であったし、使っているソフトは「激指14」であった。
 その中で、この「千日手ループ」を抜け出すために、何の手が良いのかを必死で考えていた。

 そこで最も我々終盤探検隊が期待していたのは、【4】2五香 だったが―――
 はっきりした勝ち筋が見えなかった。無理もない、戦後のより優れたソフトを使っての調べでも、その勝ち筋は明瞭にはならなかったのだから。



[再確認 【4】2五香

2五香基本図
 【4】2五香(図)と打って、次に2六飛をねらう。
 しかし、7五桂、9八金、6二金と対応されると、3一玉を実現されると先手は困るので、2三香成と攻めて行くしかないのだが、同玉、2五飛、2四歩、5五飛、6九金と進んで―――(次の図)

変化2五香図02
 ここからの「先手の勝ち筋」がはっきりしないのである(評価値的には+300くらいで先手が良さそうなのだが決定的な勝ち筋が見つからない)
 つまりこの図は「互角(形勢不明)」として結論を出せていない。
 (【4】2五香 の調査研究は 第53譜

 “戦後研究”でさえ、こうなのだから、実戦中に我々がこの 【4】2五香 での先手の勝ち筋を見つけられなかったというのも、むしろ当然のことなのである。



 もうひとつ、調べなおしておきたいことがある。

吉祥A図(再掲)
   【0】7八歩 = 実戦の指し手 → 千日手ループ
   【1】3三歩成 → 後手良し
   【2】3三香 → 後手良し
   【3】8九香 → 先手良し
   【4】2五香 → 互角(形勢不明)
   【5】5四歩 → 先手良し
   【6】2六香 → 先手良し
   【7】2六飛 → 先手良し
   【8】2五飛 → 先手良し
   【9】3七桂 → 先手良し
   【10】3八香 → 後手良し
   【11】8一飛 → 互角(形勢不明)
   【12】1五歩 → 後手良し
   【13】9八金 → 後手良し
   【14】6五歩 → 後手良し
   【15】3七飛 → 先手良し

 さて、こういう結果になっっているのであるが―――

 「【1】3三歩成は後手良しとなっているが、厳密には先手良しではないか」というのが以下の研究課題である。



[再調査 【1】3三歩成

3三歩成基本図
 【1】3三歩成、同銀に、5二角成以下を調べて、「後手良し」と結論したのが、第52譜 での結論だった。そのことは間違いないだろう。
 しかし、厳密にいえば、「【1】3三歩成、同銀に、8九香」と手を戻せば、先手良しなのではないか?―――ということについて、調べておきたい(次の図)

研究3三歩成図a
 8九香(図)と打てば、【3】8九香 の変化に合流して、先手良しになるのではないか?
 次に5二角成(同歩に3一飛)が厳しい攻めになる。そして、ここで7五桂なら、7八歩、7六歩、8五歩、同金、5二角成、同歩、7五馬、同金、3一飛以下先手良しというのは、すでに研究済みだ。

 しかし、結論から言うと、ここで後手に“好手”があって、後手良しになる。6二銀左である(次の図)

研究3三歩成図b
 6二銀左と銀を引くのが“好手”。 以下5二角成、同歩、4一飛なら、7一歩(次の図)

研究3三歩成図c
 7一歩(図)があって、後手良し。
 というわけで、「【1】3三歩成、同銀、8九香」は、“手順前後”となって、後手良しである。

 だが、まだこの研究は終わらない。

研究3三歩成図d
 しかし、「【1】3三歩成、同銀に、7八歩」ならまた事情が変わる。
 対して「7六歩」なら―――(次の図)

研究3三歩成図e
 そこで8九香(図)と打って、今度は6二銀左が無効 になる。7筋に歩が打てないので7一歩がないためだ。
 そして、ここで(a)7五桂なら、8五歩、同金、5二角成、同歩、7五馬、同金、3一飛の、研究済みコースとなり、先手良し。
 ここでは他に、(b)7八と、(c)4二金 が考えられるので、その調査をしなければならない。
 (b)7八と、5二角成、4二銀左、5一竜(同銀、5三馬は先手勝ち)、8九と、4一竜(次に3一金が狙いになる)、3一香、3三歩(次の図)

研究3三歩成図f
 3三歩(図)で、先手勝勢。3三同歩なら、5三馬。3三同玉は3六飛。4四銀引なら、3二歩成、同香、3一金で、後手玉“寄り”

研究3三歩成図g
 8九香に、(c)4二金(図)の変化。
 以下6三角成、6二銀左と進む(代えて6二銀右だと4五馬で先手良し。7三銀が後退すると後で先手8五歩の手が有効になってくる)
 そこで4五馬は、4四銀引で、これは後手良しになる(後手の7三銀が先手8五歩への備えになっている)
 ここでしかし、先手3四歩が絶好の切り返しとなる(次の図)

研究3三歩成図h
 6三銀、3三歩成、同玉、3九飛の進行は、先手良し。
 3四同銀なら、7三馬、同銀、5一竜(次の図)

研究3三歩成図i
 これで、先手優勢。7九角なら、9八玉でよい。

研究3三歩成図j
 戻って、先手の「7八歩」に、「7八同と」(図)の変化がある。
 この手には、3七香と、3筋に香車を打っておく。
 後手7六歩なら、3一金、同玉、5二角成で、先手勝勢になる。また4二金は、3三香成、同歩、5二飛で、“寄り”
 したがって4四銀引と受ける。
 そこで9八金は、4二金以下以下きわどい形勢となる。
 ここは「5二角成、同歩、7九金」というのが、絶好の手順(次の図)

研究3三歩成図k
 7九同となら、先手玉に詰みがないので、4一飛で先手勝ちになる。先手の3七香の存在が心強く、後手玉は受けがきかない。
 図で4二銀右と受けにまわるなら、4一飛、3一桂、7八金で、はっきり先手良しである。


3三歩成基本図(再掲)
 「吉祥A図」から、「【1】3三歩成(図)、同銀に、7八歩」(以下7六歩なら8五歩)は 先手良し、である。


 ということで、「吉祥A図」のまとめは、次の通り修正される。

吉祥A図(再掲)
   【0】7八歩 = 実戦の指し手 → 千日手ループ
   【1】3三歩成 → 後手良し 先手良し
   【2】3三香 → 後手良し
   【3】8九香 → 先手良し
   【4】2五香 → 互角(形勢不明)
   【5】5四歩 → 先手良し
   【6】2六香 → 先手良し
   【7】2六飛 → 先手良し
   【8】2五飛 → 先手良し
   【9】3七桂 → 先手良し
   【10】3八香 → 後手良し
   【11】8一飛 → 互角(形勢不明)
   【12】1五歩 → 後手良し
   【13】9八金 → 後手良し
   【14】6五歩 → 後手良し
   【15】3七飛 → 先手良し


 まとめとして言えることは、「千日手ループを脱出する手はいくつもある。しかしいずれもやさしい道ではない」ということである。


第63譜につづく




[追記: 結果の修正あり]

研究3三歩成図e(再掲)
 この図は、【1】3三歩成、同銀、7八歩、7六歩、8九香と進めたところ。
 上では、「ここで(a)7五桂なら、8五歩、同金、5二角成、同歩、7五馬、同金、3一飛の、研究済みコースとなり、先手良し」と書いている。
 ところが、これが誤りであったということが判明した。

 以下、そのことを説明し、結論を修正することとなる。

研究3三歩成図l
 後手が(a)7五桂 と打ったところ。
 ここで 8五歩 として、同金に5二角成以下先手勝てるというのが上での結論だったが―――
 この場合、 8五歩 に、「4二金」と変化する手があったのである(次の図)

研究3三歩成図m
 5一竜は、4一金、同竜、7九角、8六玉、8七と、同香、6八角成以下、後手勝ちになる。
 よって、6三角成だが、以下7四銀、4五馬、5六銀(次の図)

研究3三歩成図n
 5五馬、4四銀左、4六馬、6七銀不成(次の図)

研究3三歩成図o
 後手は、先手の馬を追いながら、手順に6七銀不成(図)と銀を攻めに使えて、ここは後手良しの図になっている。
 (図)以下、8四歩なら、8七と、同香、7八銀不成、8八金、8七桂成、同金、同銀成、同玉、8五香で―――(次の図)

研究3三歩成図p
 後手勝ち。

研究3三歩成図q
 「研究3三歩成図l」まで戻って、8五歩 では先手勝てないとわかったので、8一飛(図)としてみる。
 しかしここでも、「4二金」がある。以下6三角成、6二銀右、4五馬、5六銀(次の図)

研究3三歩成図r
 先ほどと同じように、5六銀~6七銀とすりこまれて、先手が不利。

 ということで、8九香と打った「研究3三歩成図l」は結論が覆って、「後手良し」


 したがって、【1】3三歩成 は 後手良し」という結論に再修正される ことになる。
 (もとの結論にもどった)



 以上の追加調査の結果、「吉祥A図」のまとめは、次のように再修正される(もとに戻る)

吉祥A図(再掲)
   【0】7八歩 = 実戦の指し手 → 千日手ループ
   【1】3三歩成 → 後手良し
   【2】3三香 → 後手良し
   【3】8九香 → 先手良し
   【4】2五香 → 互角(形勢不明)
   【5】5四歩 → 先手良し
   【6】2六香 → 先手良し
   【7】2六飛 → 先手良し
   【8】2五飛 → 先手良し
   【9】3七桂 → 先手良し
   【10】3八香 → 後手良し
   【11】8一飛 → 互角(形勢不明)
   【12】1五歩 → 後手良し
   【13】9八金 → 後手良し
   【14】6五歩 → 後手良し
   【15】3七飛 → 先手良し
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終盤探検隊 part162 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第61譜

2020年09月07日 | 横歩取りスタディ
≪最終一番勝負 第61譜 指始図≫ 7七同歩成まで



   [白い騎士のうたう歌]

 鏡の国の旅で見たさまざまな不思議なものごとのなかでも、アリスがいちばんあざやかに思い出せるのが、この一齣(ひとこま)だった。何年もたってからでさえ、アリスはつい昨日のことのように、そのときの情景をあまさず思い浮かべることができたんだ――騎士のおとなしい青い眼、そしてやさしい微笑(ほほえ)み、夕日がその髪ごしにきらきら透けて、鎧(よろい)にあたって目も眩(くら)みそうにぎらっとかがやいたこと――首のまわりにだらりと手綱をたれたまま、足もとの草をたべたべ静かに歩きまわっている馬――背景には黒い森影――こうしたものすべてをアリスはさながら一幅の絵のようにながめながら、片手をかざして木によりかかってね。そして風変わりな馬と騎士の一組を見守り、なかば夢見心地で物悲しい歌のメロディに耳をかたむけていたんだ。

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)





<第61譜 吉祥A図、攻略完了!>

 「吉祥A図」について徹底調査をしている。それがいよいよ完了しようとしている。

吉祥A図
   【0】7八歩 = 実戦の指し手
   【1】3三歩成 → 後手良し
   【2】3三香 → 後手良し
   【3】8九香 → 先手良し
   【4】2五香 → 互角(形勢不明)
   【5】5四歩 → 先手良し
   【6】2六香 → 先手良し
   【7】2六飛 → 先手良し
   【8】2五飛 → 先手良し
   【9】3七桂 → 先手良し
   【10】3八香 → 後手良し
   【11】8一飛 → 互角(形勢不明)
   【12】1五歩 → 後手良し
   【13】9八金 → 後手良し
   【14】6五歩 → 後手良し

 最後に、【15】3七飛 を調査する。



[調査研究 【15】3七飛

3七飛図
 【15】3七飛(図)と打つ手が残っていた。
 ねらいは3三香の攻めと、7七飛と後手の攻めの要の「と金」を払う手。

 対して、後手の候補手は―――
 [マ]7六歩[ミ]6六銀[ム]9五歩[メ]7五桂[モ]4四銀引
[ヤ]4四銀上[ユ]3一銀[ヨ]4六銀

 これらを一つ一つ、調査していこう。

 まず、[マ]7六歩 および、[ミ]6六銀 は、「3三香」として、先手良しになる。

研究3七飛図01
 [マ]7六歩(図)に、「3三香」と打ちこんで行く。
 以下その進行例を示すが、[ミ]6六銀 の場合も同じように進めて先手が勝てる。

 「3三香」に、3一銀と引いても、3二香成、同銀、同角成、同玉、3三銀以下後手玉詰み。
 したがって3三同桂と取るが、同歩成、同銀に、5二角成とできる。
 以下7五桂に、7九桂(次の図)

研究3七飛図02
 6二銀右、4一馬(次に3一金と打てば後手受けなし)、3一香、3四歩、4二銀左、8四馬(次の図)

研究3七飛図03
 8四同歩、3三金、同歩、同歩成、同銀、3一馬(次の図)

研究3七飛図04
 以下、後手玉“詰み”

研究3七飛図01(再掲)
 実はこの図では「3三香」以上に速い攻め筋がある。
 それは、「8四馬」である。それは次の [ミ]6六銀 で示そう。


研究3七飛図05
 [ミ]6六銀(図)でも、同じように「3三香」または「8四馬」で先手が勝てる。
 ここでは、「8四馬」を紹介しよう(次の図)

研究3七飛図06
 「8四馬」(図)で金を取って、この瞬間、後手玉に“詰み”が生じている。その詰みを受けても、6六馬があるので、後手はもう勝ちようがない。
 8四同銀に、3二角成、同玉、3三香、同桂、同歩成、同銀、3一金(次の図)

研究3七飛図07
 3一同玉に、3三飛成以下、“詰み”


研究3七飛図08
 [ム]9五歩(図)は、先手陣の急所に迫る手である。
 しかし、この場合も、「8四馬」で、先手勝ちになる。
 「8四馬」を同銀や同歩なら、3二角成、同玉、3三香以下、後手玉が詰むのはすでに述べている通りだが、「8四馬」に、9六歩、同玉、6二銀左と頑張った場合について、見ておこう(次の図)

研究3七飛図09
 「5三」を開けたことで3二角成以下の詰み筋は消えた。
 しかしここで “3三香” と打って、先手が勝てる。
 これには、同桂 と、同銀 がある。
 3三同桂、同歩成、同銀に、3四桂がある(次の図)

研究3七飛図10
 3一玉なら、2一金、同玉、2二金、同銀、同桂成以下、詰み。
 よって3四同銀だが、3二角成、同玉、3四飛、3三歩、3一金で―――(次の図)

研究3七飛図11
 後手玉が詰んでいる。

研究3七飛図12
 “3三香” を、同銀(図)の場合。
 3三同歩成、同桂に、5二角成。
 そこで8四銀と後手は勝負してくる(先手玉に詰めろが掛かった)が、3一銀以下、後手玉に “詰み” がある。3一銀、同玉、4二金、2二玉、3三飛成(次の図)

研究3七飛図13
 これで “詰み”


研究3七飛図14
 というわけで、【15】3七飛 に対し、後手は攻めるなら、[メ]7五桂(図)しかないようだ。
 この手には、先手は7七飛と「と金」を払う(次の図)

研究3七飛図15
 以下、7六歩(代えて 6七歩 は後述)に、3七飛(次の図)

研究3七飛図16
 3七飛(図)と3筋に戻って、再び、3三香の攻め筋が復活している。

 ここで 〔A〕4六銀〔B〕4四銀引〔C〕4四銀上〔D〕3一銀 が、後手の考えられる候補手。

研究3七飛図17
 〔A〕4六銀(図)として、以下3六飛、7七歩成のような展開になれば「互角」の戦い。
 しかし、4六銀に、3三香がある。
 以下、同桂、同歩成、同銀に、3四桂(次の図)

研究3七飛図18
 3四同銀、同飛、3三香(代えて3一香には、3三歩、同歩、2四銀で先手勝ち)に、1一銀(次の図)

研究3七飛図19
 1一同玉に、3二角成、2一銀、3三飛成で、後手“受けなし”になる。

研究3七飛図20
 戻って、〔B〕4四銀引(図)。 銀を引いて「3三」に利かせた。
 しかしそれでも3三香と打ちこんで行く手がある。同桂なら、同歩成、同銀引、5二角成で、先手優勢だ。後手の桂がいなくなれば5二角成が可能になるのである。
 よって、後手は3一銀と受ける。しかしこれにも、先手に有効手がある。8四馬だ(次の図)

研究3七飛図21
 8四同銀(図)に、3二香成、同銀、同角成、同玉、3三銀以下、後手玉“詰み”
 先手勝ち。

研究3七飛図22
 〔C〕4四銀上(図)にも、3三香と打ちこんで行く。
 以下3一銀に、この場合は「5三」の空間が開いているので、8四馬としてもその手が詰めろになっていないため無効。
 ここは、5二角成、同歩、4一金(次の図)

研究3七飛図23
 以下7七歩成、同飛、1四歩、3一金、6九角、2一金、1三玉、4七歩(次の図)

研究3七飛図24
 後手玉にはまだ詰めろが掛かっていないが、先手玉もまだ寄らない。8七桂成から飛車を取っても、攻めがうすい。
 このままなら、次に先手3七桂や3六桂で後手玉に詰めろが掛かり、それが間に合う。
 先手勝勢になった。

研究3七飛図25
 〔D〕3一銀(図)と受ける変化。
 先手はいったん7八歩と受けておく。以下6六歩に2五香と打つ。

研究3七飛図26
 2五香(図)と打って、次に、2三香成、同玉、3三金の狙い筋がある(2六香よりこの場合は2五香が優る。理由は追って明らかになる)
 これを4二金と受けるのは、6三角成、6二銀右に、4五馬が“絶好の位置”で、先手勝勢になる。
 よって、後手は4二銀引と受ける。「3三」を強化した。
 対して、先手は6五金と打つ。以下4六銀に、3六飛(次の図)

研究3七飛図27
 「2五」に香車を打ったのは、このような変化になったときのためだった。2六飛の狙いが生じている。
 この図は、先手勝勢になっている。
 図以下、一例を示すと、7七歩成、同歩、6七歩成、2六飛、1一玉、7五金、3五銀、1五桂(次の図)

研究3七飛図28
 2六銀に、2三桂不成、2二玉、3一桂成、同玉、5二角成で、先手勝ち。

研究3七飛図29
 「研究3七飛図06」まで戻って、そこで後手 6七歩(図)の変化。先手の飛車を3七まで戻すと後手がつらい―――ということなら、このように 6七歩 として封じ込める手は後手としては考えてみたいところだろう。
 対して、7五飛、同金、同馬、7七飛、8七桂でも先手が良いようだが、この図ではもっと勝ちやすい指し方がある。
 3三歩成、同銀、5二角成の攻めである(3三歩成を同玉は5二角成、同歩、2一竜)
 以下同歩に、3一金と打つ(次の図)

研究3七飛図30
 角を後手に渡しても、7九角打ちがないのがよい。
 以下3四銀、4一竜、3三玉、4八香(次の図)

研究3七飛図31
 後手玉は逃げられない。3二竜以下の“詰めろ”になっており、1四歩でそれを防いでも、3五歩と打って、先手勝ち。


研究3七飛図32
 [モ]4四銀引(図)と受けた場合。
 ここで3三香は3一銀以下、形勢不明の勝負になる。
 7七飛が本筋の手で、以下7六歩、3七飛、6七歩、5四歩(次の図)

研究3七飛図33
 5四歩(図)では、代えて4五歩(同銀なら3三香)があってそれで先手が良いが、5四歩はさらに良さを求めた手。6二銀左なら、今度こそ4五歩がより効果的になっている。
 よって5四同銀と取るが、5三歩が追撃の手裏剣で、同金に、3三香(次の図)

研究3七飛図34
 3三同桂、同歩成、同銀引、3四歩、4四銀、3三桂(次の図)

研究3七飛図35
 3三同銀引、同歩成、同銀、5一竜となれば、先手勝勢が確定。
 よって、後手は1四歩と抵抗するが、その手には先手1五歩。以下同歩、同香、同香、1四歩(次の図)

研究3七飛図36
 まだ後手玉は詰めろになってはいないが、8四馬と金を取れば詰めろになる。
 先手勝ち。


研究3七飛図37
 [ヤ]4四銀上(図)は、先ほどの[モ]4四銀引 と同様に「3三」を強化した受けの手だが、意味合いがずいぶんと変わってくる。[ヤ]4四銀上 と銀を上がることで、二枚の銀で中原を制圧しようといういうのが後手の秘めたる望みなのである。
 図以下、7七飛、7六歩までは同じ。そこで3七飛としたいが、4六銀、3六飛、3五銀上とされて、こうなると互角の勝負(こういう展開が後手の狙い)
 なのでこの場合、4七飛 と“途中下車” する手が優る。
 以下7五桂に、2六香(次の図)

研究3七飛図38
 2六香と打って、5二角成、同歩、2三香成が先手の狙いの攻め筋である(以下2三同玉、2一飛成、2二歩(香)、1五桂以下、後手玉詰み)
 後手の有力手は、攻めるなら 〈1〉5六銀、または 〈2〉6六銀、受けるなら 〈3〉6二金 がある。

 〈1〉5六銀、3七飛、6七銀不成。
 そこで5二角成は7七歩成、9八金、7六銀成で後手の勝ちになる。
 よって先手は8八金と受ける(次の図)

研究3七飛図39
 8八金(図)と受け、次に5二角成(同歩なら2三香成以下後手玉詰み)に期待する。
 それを6二金と受けても、6三歩、5三金、5四歩、同金、5二角成、同歩、2三香不成、同玉、2一竜、2二歩、1五桂、1四玉、2二竜で、後手に受けがなく先手勝ちになる。
 したがってここでは後手は攻めるしかない。7七歩成、同金、7六銀成。
 以下同金、同桂に、5二角成(次の図)

研究3七飛図40
 8七金、同飛、同桂成、同玉、8八飛、7六玉、5二歩、7九金、5八飛成、1五桂(次の図)

研究3七飛図41
 先手勝ち。

研究3七飛図42
 〈2〉6六銀(図)の場合。
 ここで5二角成は、7七歩成、9八金、5二歩と対応され、2三香成としても後手玉に詰みがないので、先手悪い。
 よってこの図では、7八歩と受ける。
 以下6七歩、8八金、6二金(次の図)

研究3七飛図43
 8八金としっかり受けて、後手の早い攻めはなくなった(7七歩成、同歩、7六歩くらいだが5二角成の攻めのほうが早い)
 なので、後手は自陣に手を戻して、6二金(図)としたところ。
 さて、ここでどうするか。
 4六飛と指すのが好手。対して後手は5五銀上としたいが、それは5一竜、同銀、4三飛成で先手勝ちになる。
 (注:4六飛がベストの手と見ているが、ここは4五歩、5五銀、3三歩成、同桂、5二歩でも先手良し)
 したがって後手は5五銀引と指すしかない。先手は3六飛。これで先手は後手の銀を下がらせて、手順に3筋に飛車を展開できた(次の図)

研究3七飛図44
 ここで「4五銀」は、8四馬、同銀、5一竜、同銀、3三金で先手勝ち。
 また「3一玉」とするのは、6三歩、5三金、5四歩、4一玉、5三歩成、同銀引、6一竜で先手良し。

 後手攻めるなら、「6八歩成」だ。この先を見ていこう。
 3三歩成、同銀引、6三歩、5三金、6二歩成、同銀、2三香成(後手に3一玉を許さない)、同玉、8五歩(次の図)

研究3七飛図45
 6三歩~6二歩成で、後手の銀を下がらせたので、この8五歩(図)が効果的になっている。
 図以下、6三銀、8四歩、5二銀で、角が取られてしまうが、同角成、同金、8三歩成と進めてみると―――(次の図)

研究3七飛図46
 先手優勢である。
 次に7五馬と桂馬を取る手が有効手になる。6七桂成なら、8六玉で“入玉”をめざす。

研究3七飛図47
 途中まで戻って、先手の6三歩に、手抜きして 6六歩(図)の変化。
 6二歩成、7八と、同金、6七歩成。これで先手玉に受けがない。しかしまだ詰めろは掛かっていない、という状況。
 先手に好手がある(次の図)

研究3七飛図48
 3三飛成(図)で、先手が勝てる。
 同銀は5一竜で。同桂は3四銀で、先手勝勢。また3三同玉には、3五銀で、やはり先手勝勢である。

研究3七飛図49
 戻って、〈3〉6二金(図)。 先手の狙いの5二角成を避けた手。
 これには6三歩と打って、5三金、5四歩、同金、9二竜と進める(次の図)

研究3七飛図50
 6二歩の受けに、同歩成以下、攻め合いに。
 5六銀、3七飛、6七銀成、5二と、同歩(次の図)

研究3七飛図51
 5二同竜、7七歩成と進むと、後手優勢。後手玉が詰まないから。
 しかし、ここで3三歩成を先に利かすのが正着手で、同桂なら3四金で先手良し。なので3三同銀引だが、そこで5二竜として、7七歩成に―――(次の図)

研究3七飛図52
 3三飛成‼(図)
 これで後手玉は詰んでいる。3三同玉に、3四金、同玉、5四竜以下。

研究3七飛図53
 [ヨ]4六銀(図)はどうなるか。
 この手には、7七飛とし、以下7六歩、7九飛と進む(次の図)

研究3七飛図54
 ここで(あ)5八金や(い)6七歩は、3三香で先手良しになる。
 具体的には、(あ)5八金、3三香、3一銀、5二角成、同歩、4一金(次の図)

研究3七飛図55
 これで、先手が勝てる。角を渡しても、後手6八角に8九飛、7七歩成が詰めろではないので、先手の3一金からの攻めのほうが早い。
 図で4二銀引なら、同金、同銀、3二香成、同玉、4一銀、2二玉、3二金、1一玉、8四馬で、先手勝ち。

研究3七飛図56
 7九飛に、(う)7五桂(図)が先手玉に最も迫っている。
 この手に対して同じように3三香と攻めると、角と香を後手に持たれたとき、6八角と打たれて、8九飛、7七歩成が先手玉への詰めろになっているので、今度は後手優勢になってしまう。
 なので、ここは7八歩と受けておくのが正着となる(次の図)

研究3七飛図57
 7八歩と受けて、先手の狙いは、5九飛~3九飛。このときに「金金香」と持っていれば、3九飛が後手玉への“詰めろ”になっている。
 後手は5八金とするが、3九飛で、次の図。

研究3七飛図58
 このまま3三香と打ちこめば先手勝ち。
 なので4四銀と受ける手が考えられるが、それでも3三香と打ちこむのが明快な寄せ。
 対して3一銀なら、5二角成、同歩、4一金として、先手が良い。
 3三同桂なら、5二角成(次の図)

研究3七飛図59
 先手勝勢。

研究3七飛図60
 3九飛に、3一銀(図)の場合。 
 この手には、2六香と打つ。2三香成、同玉、3三金、2四玉、8四馬がねらい。
 なので後手は4二銀引と受ける(4二金は6三角成、6二銀右、4五馬で、先手勝勢になる)
 そこで先手は6六金(次の図)

研究3七飛図61
 6六金と打って、先手の次の狙いは7五金、同金、同馬である。7五桂を取ってしまえば先手玉は安全になるし、桂馬が入れば1五桂が決め手になる。
 先手勝勢である。


研究3七飛図62
 [ユ]3一銀(図)が後手“最後の候補手”
 図から、7七飛、7六歩、3七飛と進む(次の図)

研究3七飛図63
 ここで考えられる後手の候補手は―――
 〔s〕6六銀〔t〕4二金〔u〕6二銀右〔v〕4六銀
 (他に〔w〕7五桂 は上で調べた「研究3七飛図25」に合流する→先手良し)

 〔s〕6六銀 には、2六香と打つ(次の図)

研究3七飛図64
 対して、7七歩成なら2三香成、同玉、3三金、2四玉、8四馬で、先手勝ち。
 よって後手は受けなければいけないが、4二金と受けるのは、6三角成、6二銀右に、2三香成、同玉、4五馬で、先手勝勢になる。
 したがって、2六香には、4二銀引と受ける。
 以下3三歩成(同桂なら3四歩、4五桂、8四馬、3七桂不成、6六馬で先手勝勢)、同銀、5二角成、同歩、2三香成、同玉、3一竜(次の図)

研究3七飛図65
 7九角には9八玉で大丈夫。先手勝ち。

研究3七飛図66
 [ユ]3一銀 と早く銀を引いたのだから、〔t〕4二金(図)は指してみたい手。
 以下6三角成、6二銀右、3六馬、6六銀、7八歩、7七歩成、同歩、6五桂、2六香(次の図)

研究3七飛図67
 2六香(図)と打って、後手7七桂成なら、2三香成、同玉、4五馬で後手玉は“必至”になり先手勝ち。
 それを受ける手として1一玉もあるが、2三香成、2二歩、1二成香、同玉、1五歩として、次に1四歩からの端攻めがあり、先手良し。
 また4五馬を防ぐ4四歩には、5四歩がある。
 ということで後手は4四銀と受けるが、これには6一竜、5二金に、5四馬がある。以下7七桂成、6四馬(次の図)

研究3七飛図68
 1五桂と、2三香成~3一馬の二つの狙いがあり、先手勝勢。

研究3七飛図69
 〔u〕6二銀右(図)と引く手のねらいは、次に4二金として4一角を捕獲することである。
 ここはしかし、2六香と打って、4二金に、3三金と打つ(次の図)

研究3七飛図70
 3三同桂、同歩成、同金は、3四歩がある。
 よって後手は図で1一玉とするが、4二金、同銀引、2三香成、7七歩成、同飛、2二歩、3二成香(次の図)

研究3七飛図71
 3二同銀、同角成、3一金、3三歩成、同桂、3一馬、同銀、4一金(次の図)

研究3七飛図72
 以下3二銀、3一金、2一銀が予想されるが、4二銀で先手が勝てる。4二銀は詰めろではないが次に3三銀成がねらいで、4五桂なら3二歩で後手“受けなし”になる。4二銀は後手5三角の受けを許さない意味もある。
 4二銀に、後手3二歩なら、8四馬で、先手勝ち。

研究3七飛図73
 〔v〕4六銀(図)は、3六飛、7七歩成、4六飛、7五桂、9八金、7六桂、8九香と進む(次の図)

研究3七飛図74
 後手の攻めはいったん止まり、ここで後手の指し手が難しい。
 6九金 のような手なら、7八歩、同と、7六飛で先手良しになる(以下8九と、3三歩成、同玉、5二角成、同歩、3一竜)
 7四銀 または 6二銀 は考えられる。7八歩なら4二金で勝負しようという意味の手だが、しかし7四銀6二銀)に、3三歩成、同玉、8二馬という手が先手に生まれて、やはり先手良しになる。
 
 ということで、後手は6二歩とする。これも4二金の角捕獲が後手の狙いである。
 対して、先手は、3三歩成、同玉、7九歩とする(次の図)

研究3七飛図75
 7九歩(図)は攻める前の準備。次に5二角成、同歩、3一竜の狙い。そのときに後手7九角の筋を消しておいたわけだ。
 図以下、4二金、5一竜、2二玉、3三歩、同歩(同桂なら8五角成、同玉なら3六飛)、3二歩(次の図)

研究3七飛図76
 3二同金は、同角成、同玉、5二竜以下、“寄り”
 3二同銀なら、5二角成(次に3一銀)で、先手勝ち。



 これで、【15】3七飛 の調査がおわった。結論は―――

3七飛図(再掲)

 【15】3七飛は 先手良し。




 「吉祥A図」の調査結果のまとめ

吉祥A図
   【0】7八歩 = 実戦の指し手
   【1】3三歩成 → 後手良し
   【2】3三香 → 後手良し
   【3】8九香 → 先手良し
   【4】2五香 → 互角(形勢不明)
   【5】5四歩 → 先手良し
   【6】2六香 → 先手良し
   【7】2六飛 → 先手良し
   【8】2五飛 → 先手良し
   【9】3七桂 → 先手良し
   【10】3八香 → 後手良し
   【11】8一飛 → 互角(形勢不明)
   【12】1五歩 → 後手良し
   【13】9八金 → 後手良し
   【14】6五歩 → 後手良し
   【15】3七飛 → 先手良し

 ついに「吉祥A図」の徹底調査が完了した。


第62譜につづく
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終盤探検隊 part161 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第60譜

2020年09月04日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第60譜 指始図≫ 7七同歩成まで



   [さかさまの騎士]

 馬が立ちどまるたびに(いや、よくとまる馬だよ)、きまって騎士は前におっこちるし、また馬があるきだせば(それがまた、たいていはだしぬけなんだね)、こんどはきっと後ろにおっこちる。ほかのときは、けっこううまくのっているけれど、ただ時折左右におっこちるくせがある。それもたいていはアリスのあるいてる側へおちてくるので、あんまり馬のそばをあるかないほうがいい、とすぐ悟ったね。
    (中略)
 騎士は頭を横にふり、「わしにとっては、どっちにしろ、しんどいかぎりさ、断然」そういいながら、いささか興奮してか両手をふりあげたものだから、たちまち鞍からころげおちて、深い溝(みぞ)にまっさかさまにおっこちてしまった。
 アリスはどうなったかと溝際(みぞぎわ)へかけよった。このところうまく乗りこなしていただけに、落ちるなんて思いがけず、こんどこそけがしたんじゃないかと心配しちゃってね。ところが騎士ときたら、足の裏しか見えないのに、いつもの調子でしゃべり続けているようすなので、ほっと胸をなでおろした。
    (中略)
「そんなさかだちのかっこうで、どうしてそう落着いてしゃべっていられるの?」アリスは騎士の足をつかんでひっぱりあげて、溝のわきにねかしてやりながらたずねる。
 騎士はこの質問に面くらったみたいだ。「からだがどうなっていたって、それがどうしたっていうんだ?わしの精神はいつだって変わりなく働いているぞ。じっさい、頭が下になればなるほど、あたらしい発明がどんどんわいてくるんだ」

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



 なにかが「さかさま」の世界である「鏡の国」。そこで出会った「白の騎士」は、さかさまになっても話しつづける。
 「騎士」なのに、乗馬が下手というのも、「さかさま」の世界だからだろう。





<第60譜 吉祥A図を攻略せよ6>

 「吉祥A図」について徹底調査中。

吉祥A図
   【0】7八歩 = 実戦の指し手
   【1】3三歩成 → 後手良し
   【2】3三香 → 後手良し
   【3】8九香 → 先手良し
   【4】2五香 → 互角(形勢不明)
   【5】5四歩 → 先手良し
   【6】2六香 → 先手良し
   【7】2六飛 → 先手良し
   【8】2五飛 → 先手良し
   【9】3七桂 → 先手良し
   【10】3八香 → 後手良し
   【11】8一飛 → 互角(形勢不明)
   【12】1五歩 → 後手良し
   【13】9八金 → 後手良し
   【14】6五歩

 今回は、【14】6五歩 の手を調べていく。



[調査研究 【14】6五歩]

6五歩図
 【14】6五歩

 対して ≪一≫7六歩 なら、6四歩、7五桂、9八金、6六銀で次の図となる。
 (なお、「6五歩図」から ≪二≫6六銀 を選んでもこの図に合流しそうである)

研究6五歩図01
 6六銀(図)と出て、先手玉に8七と以下の“詰めろ”が掛かっている。
 ここで7八歩と受けるのは、同と以下、後手良しになる。
 したがってここでは8九香が考えられるが、以下1五桂に1四歩(3五桂なら4四銀がある)、2三桂成、同玉、2六飛、2四歩、6六飛、8七と、同金、同桂成、同玉、7五桂と進み、「形勢不明」である。つまり容易に結論の出せない「互角」の勝負となる。
 しかし、“次の手の発見” によって、どうやら「先手良し」になりそうだとわかった(次の図)

研究6五歩図02
 8九桂(図)と受けるのが、“その手” である。桂で受けて後手の攻めを受け止め、香車を攻めに使おうという意味である。
 以下6七銀不成、7九歩、6四銀右、2六香(次の図)

研究6五歩図03
 次に2五飛を狙う。
 6二金なら、3三歩成、同桂、8五歩。
 2四歩なら、3七桂と力を溜めて、次に2四香、2三歩、5二角成の攻めをねらう。
 先手良し、である。

6五歩図(再掲)
 他に、≪三≫7六桂 も有力な手である。
 しかし以下8九香に7五桂は、7八歩、同と、8五歩のような選択肢を先手に与えることになる。それなら、先に7五桂と打ったほうが良さそうだ、ということになる。

 なので、この「6五歩図」では、≪四≫7五桂 以下を本線として、以下考えていくこととする(次の図)

研究6五歩図04
 ≪四≫7五桂(図)に、8九香は、7八歩と打って、7九歩成をねらって後手良し。
 したがって先手は9八金と受けるしかない。以下7六桂、8九香、6六銀(次の図)

研究6五歩図05(6六銀図)
 図の6六銀の手では、代えて7四銀という手もあった(その変化は互角)
 この図が、「どちらが良いか」ということが重要なテーマである。この図が後手良しならば、それが【14】6五歩 についての結論となる(ここまでの手順で先手に手を代える余地がない)

 ここで考えられる先手の手は何だろうか。
 〔ハ〕8五歩〔ヒ〕3七桂〔フ〕2六飛 が有力候補手だ。

研究6五歩図06
 〔ハ〕8五歩(図)がソフトの示す最善手。
 この手には、“7四金” もあるが(形勢不明)、“8五金” がより良さそうな手。
 以下同香に、8八桂成、同金、同と、8六玉、8七と、7六玉、6七銀成(次の図)

研究6五歩図07
 7八歩、7四歩、7五馬、同歩、6七玉、4七角(次の図)

研究6五歩図08
 先手にとって、ほとんど変化の余地もなく、この図になった。
 後手5六金と5八角成の両方の手を受けなければいけないが、5七金と打つと、7六金から詰まされてしまう。
 だからここは5五飛と受けるしかなさそうだが、その手には、5八金、同飛、6六歩という手順がある。以下5七玉、5六金、6八玉、5八角成、同玉、2八飛以下、寄せられてしまう。

 〔ハ〕8五歩 は、後手良し。

研究6五歩図09
 〔ヒ〕3七桂(図)。次に4五桂や2五桂が狙いになる。
 後手の攻めは 「7八と」~7九とが着実な攻めだが、ここで 「7八と」 は、3三歩成、同銀、5二角成、同歩、3一飛で、先手勝ちになる。7九角には8八香で大丈夫。なお、5二同歩に代えて8九とは5一馬が3三馬以下詰めろでやはり先手勝ち。

 では、後手「7八歩」ならどうか。これは「7八と」よりも香車を取る手が一手遅くなるが、7七とを置いておくことで攻めの厚みが違う。「7八歩」に、3三歩成、同銀、5二角成、同歩、3一飛の攻めは、7九角と打たれて、今度は先手玉は詰んでしまう。
 なので「7八歩」には4五桂。
 以下、7九歩成に、3三歩成、同桂、8四馬(次の図)

研究6五歩図10
 8四同銀、3三桂成、同銀(代えて同玉は3五飛以下寄り)、5二角成(次の図) 

研究6五歩図11
 これは、先手勝ち。 後手は7九歩成としたので7九角と打てない、その瞬間をついた攻めだった。

研究6五歩図12
 〔ヒ〕3七桂 に、「7八と」も「7八歩」も、後手うまくいかなかった。
 しかし、「6八桂成」(図)なら、うまくいくのだ。これからその証明をしよう。
 速度的には、「7八歩~7九歩成~8九と」と「6八桂成~7八成桂~8九成桂」も同じである。
 先ほどと同じように、4五桂、7八成桂、3三歩成、同桂、8四馬といくと、同銀、3三桂成、同銀、5二角成のときに、7九角と打たれて―――(次の図)

研究6五歩図13
 先手玉が詰まされてしまうのである。「6八桂成~7八成桂~8九成桂」のコースをとれば、いつでも後手は7九角を打てるわけである。

研究6五歩図14
 「3三歩成、同桂」のところまで戻って、そこで単に3三同桂成(図)としてどうか。
 同銀 に、5二角成とする。この成角は取れない。
 後手は適当な受けがないので、8九と。この手で、先手玉に8七と(桂成)以下の“詰めろ”が掛かっている。
 そこで8四馬(次の図)

研究6五歩図15
 8四馬が “詰めろ逃れの詰めろ”。後手玉には2一金、同玉、5一竜以下の“詰めろ”が掛かっている。
 先手勝ち。角を切る手順とタイミングを工夫して、先手勝ちに導けた。

 けれど、いまの手順に “穴” はないだろうか?―――実は、 “穴” はあった。

研究6五歩図16
 3三桂成を、同玉 (図)と取るのである(この変化があるので先に「8四馬、同銀」を入れる手順から考えたのであった。それが入っていれば同玉には3六飛で先手良しになる)
 この図で3六飛は―――、4四玉、6六飛、8九成桂、7九桂、7八歩と進んで―――(次の図)

研究6五歩図17
 7九桂と打つことで、後手の攻めを一手遅らせた。しかしそれでも7八歩(図)とされると―――
 次に7九歩成~9九成桂で、先手玉に詰めろが掛かる。それまでに後手玉に先に“詰めろ”を掛けたいが―――
 5二角成、7九歩成、4六飛、4五香、5五銀、3三玉、4五飛、9九成桂(次の図)

研究6五歩図18
 後手玉に詰みはない。
 図以下、8八金としても、同と、同玉、8七金、7九玉、6七歩で、先手玉は捕まってしまう。
 よって、後手の勝ち。

 これで、〔ヒ〕3七桂 は(「6八桂成」以下)後手良し、が決定した。

研究6五歩図19
 〔ヒ〕3七桂 に、「9五歩」(図)でも、後手良しになるようだ。
 (ただし、9五同歩、9六歩、同玉、9四歩に、8五飛と受けるような頑張りもあり、複雑な変化になる。したがって後手は「6八桂成」を選ぶほうがわかりやすい)

研究6五歩図22
 3つ目の先手有力手は、〔フ〕2六飛(図)。
 ここで後手の有力手段は次の3通り。
 (x)6七銀不成、(y)6二金、(z)6八桂成
 このうち、(x)6七銀不成は、8五歩以下、形勢不明の戦いになる(ソフト評価値はわずかに先手良し)
 (y)6二金は、研究では今のところ後手良し。ただし変化が広そう。
 先手にとって一番の“強敵”は、(z)6八桂成だ。以下この手の先を見ていこう。

 (z)6八桂成、6六飛、7八成桂(次の図)

研究6五歩図23
 ここで先手はどうするか。
 3三歩成、同銀、3一銀、同玉、5二角成という手段はあるが、6二銀右で、攻めが止まってしまう(以下8五歩には8八銀で後手勝勢)
 3七桂ではゆるく、8九成桂で後手勝勢になってしまう。
 先手は8五歩と突いて、あやを求める指し方になる(7四金なら8六玉で先手良し)
 以下8九成桂、8六玉、6七桂成、8四歩、同銀、同馬、同歩(次の図)

研究6五歩図24
 8五歩と指せば、ここまではほとんど変化の余地がない。
 ここで3六飛なら5七角(8五香、9七玉、7九角成以下詰めろ)と打って、後手良し。以下5二角成はあるが、この手は後手玉への詰めろになっておらず、9九成桂(8五香以下詰めろ)で後手勝ちとなる。
 よって先手は2六飛がベスト。
 2六飛に5七角は、今度は5二角成(同歩は3三銀以下後手玉詰みだし、放置しても3三銀以下詰み)で、先手良し。
 よってここは、4八角と打つ(次の図)

研究6五歩図25
 以下5二角成、2六角成、7五玉、4四馬、8四玉(代えて6三馬と馬を助ける手は6二銀で後手の優位が拡大する)、5二歩、9三玉、5五馬、8二銀、4七角、8三歩、6五角成、7一竜、9九成桂(次の図)

研究6五歩図26
 これが変化の一例だが、これはお互いの玉を捕まえるのはもう難しいかもしれない。
 しかし大駒を後手は三枚有しており、“相入玉”の勝負になったときに、後手が勝てそう。

 よって、〔フ〕2六飛 は、後手良し、と結論する。
 (この展開が好みでないなら後手には(y)6二金の選択肢もある)

研究6五歩図05(再掲 6六銀図)
 以上、この図から先手の 〔ハ〕8五歩〔ヒ〕3七桂〔フ〕2六飛 に対し、どれも「後手良し」がはっきりした。

 その他に考えられる手は、〔へ〕8一飛 と、〔ホ〕7一飛 くらい。


研究6五歩図27
 〔へ〕8一飛(図)と打って、次に5二角成を狙う。
 後手はどうするか。
 6一歩という手がある。これを同飛成なら、6二金、7一竜右、3一玉で、後手良し。
 よって、先手は3三歩成とする。
 これを同桂なら、8五歩、同金、5二角成、同歩、7五馬、同銀、3四桂で、鮮やかに先手勝ち。
 後手は3三同銀と銀でとる。そこで先手は6一飛成(これなら、6二金には5一竜とできる)
 しかしそこで後手7一歩がある(次の図)

研究6五歩図28
 7一歩が好手で、後手良し。
 これを同竜左と取ると、4二金、6三角成、6二銀右で、後手勝勢になる。後手に角が入ると先手玉は7九角から詰まされてしまう。なので6二銀右に、4五馬、7一銀、3四歩のような展開が見えるが、4八飛が先手玉への詰めろになり、後手勝ちである。
 この7一歩で先手は手段に困っている。8五歩は、同金、同香に、8八桂成で後手良し。
 3七桂なら、6二銀左として、次に4二金で角取りに来る手がきびしい。

 〔へ〕8一飛 は後手良し。

研究6五歩図29
 〔ホ〕7一飛(図)とここに打つとどうなるか。
 これには6二銀右、6一飛成、6三銀(次の図)

研究6五歩図30
 これで先手の狙いの5二角成を防いでいる。
 しかしここで5四歩がある。同銀右なら5二角成で先手優勢になるし、5四同銀直なら6四歩で攻めが続く。
 5四歩に、しかし、“手抜きして3一玉” があった。
 以下5三歩成に、4一玉(次の図)

研究6五歩図31
 玉で「角」を一直線に取りに行って、この図ははっきり後手優勢の図になっている。
 後手7九角(詰めろ)がきびしいからだ。4二と、同玉、7九銀と受けても、4六角(詰めろ竜取り)で後手勝ちになる。

 〔へ〕7一飛 は後手良し。


6五歩図(再掲)
 これで結論が出た。

 【14】6五歩 は 7五桂以下 後手良し。




 「吉祥A図」の調査結果は―――

吉祥A図
   【0】7八歩 = 実戦の指し手
   【1】3三歩成 → 後手良し
   【2】3三香 → 後手良し
   【3】8九香 → 先手良し
   【4】2五香 → 互角(形勢不明)
   【5】5四歩 → 先手良し
   【6】2六香 → 先手良し
   【7】2六飛 → 先手良し
   【8】2五飛 → 先手良し
   【9】3七桂 → 先手良し
   【10】3八香 → 後手良し
   【11】8一飛 → 互角(形勢不明)
   【12】1五歩 → 後手良し
   【13】9八金 → 後手良し
   【14】6五歩 → 後手良し

 もう一つ、先手にとって有望な手がある。
 最後にそれを調べて、この「吉祥A図」の調査は完了となる。



第61譜につづく
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終盤探検隊 part160 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第59譜

2020年09月01日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第59譜 指始図≫ 7七同歩成まで



   [白の騎士は発明家]

「この小箱に感心してらっしゃるみたいですな」と騎士は親しげに、「自分で発明したんですよ、着るものやサンドイッチを入れとくんです。雨が入らないように、ほら、こうやって逆さむきにしてあります」
「でも、物が出ちゃうでしょ。ふたがあいてるの、おわかり?」アリスは親切心でいってやった。
「気がつきませんでしたな」騎士は一瞬まごついた表情をうかべて、「じゃあ、なかみはみんな落っこっちゃったんだ!そうなったら箱だって用はない」いいながら騎士は箱をとりはずして、茂みになげすてようとしたけれど、そこでふいに何か思いついたらしく、木の枝にそっとぶらさげた。そしてアリスにきくんだ。「どうしてこうしたか、わかるかね?」
 アリスは首を横に振った。
「蜜蜂が巣をかけないかと思ってさ――そしたら蜜がとれる」
「でも、蜂の巣箱なら――ほら、それ、巣箱みたいなのーーちゃんと鞍にくくりつけてあるじゃないの」
「ああ、なかなか上出来の巣箱だ。いちばん上等のやつだ」騎士はどうも気にくわんといった口ぶりだ、「だが、まだ一ぴきも近寄ってきたためしがない。もうひとつのは、ねずみ捕りでね。ねずみがハチをよせつけないんじゃないかな――でなければハチがねずみをよせつけないかだ。どっちかわからんが」
「なんでまたねずみ捕りがいるのかと思って」とアリス、「馬の背中に、ねずみなんか出るわけないでしょ」
「まあ、ありっこない、とは思うよ。だけど万一出たとして、そこらじゅうかけまわられたんではかなわないからね」
「いいかい」やや間をおいて、騎士はまたつづけて、「なにごとにせよ、備えあれば憂いなし、だ。馬の足にいちいち足かせをはめてあるのもそのためだよ」
「なんでまたそんなことを」アリスは興味津々だ。
「鮫に咬まれない用心にさ。わしが自分で発明したんだよ」

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



 アリスをとりこにしようと近づいてきた「赤の騎士」を、「白の騎士」がおいはらってくれた。
 さて、この「鏡の国」の世界では、だいたい「何かが反対」になっている。
 「白の騎士」の馬にぶらさげてある “小箱” も逆さまになっていた。騎士の発明品で、雨が降ったときの用心のために逆さまにしてあるところが自慢のくふうなのだが‥‥



<第59譜 吉祥A図を攻略せよ5>

 「吉祥A図」について徹底調査中。

吉祥A図
   【0】7八歩 = 実戦の指し手
   【1】3三歩成 → 後手良し
   【2】3三香 → 後手良し
   【3】8九香 → 先手良し
   【4】2五香 → 互角(形勢不明)
   【5】5四歩 → 先手良し
   【6】2六香 → 先手良し
   【7】2六飛 → 先手良し
   【8】2五飛 → 先手良し
   【9】3七桂 → 先手良し
   【10】3八香 → 後手良し
   【11】8一飛 → 互角(形勢不明)
   【12】1五歩 → 後手良し
   【13】9八金

 今回は、【13】9八金 を調べていく。



[調査研究 【13】9八金]

9八金図
 【13】9八金

 “答え” から言うと、ここは 〔タ〕9五歩 が後手の正着となる。
 それ以外の手―――〔チ〕7五桂〔ツ〕6六銀〔テ〕7六歩〔ト〕7四銀―――などでは、先手良しになる。
 まずそのことから確認していこう。

研究9八金図01
 〔チ〕7五桂(図)には、2五飛と打つ(次の図)

研究9八金図02
 次に2六香の狙いがある。後手は桂馬を使ってしまったので、受けが限られる。
 6二金に、3三香(後手3一玉を許さない意味)、同桂、同歩成、同玉、5五飛が予想され、先手優勢である。
 この展開は、9八金と先に備えた手が最も生きる展開である。

研究9八金図03
 〔ツ〕6六銀(図)には、5四歩(次の図)

研究9八金図04
 5四歩で、後手陣の形を乱してから5二角成が先手のねらい。5四同銀は、5二角成、同歩、4一飛、3一角、5三歩、6三銀、4八香(または6一竜)で、先手優勢。
 6二銀左と引くのも、5二角成、同歩、4一飛、3一角、4四歩(次の図) 

研究9八金図05
 「4三」を狙うのが急所。4四同歩に、4三香で後手“受けなし”。
 この変化も、先に9八金を打っておくことで、後手の7九角が詰めろにならず、したがって5二角成~4一飛の攻めが可能になった。

研究9八金図06
 〔テ〕7六歩(図)は手強い手で、なかなか結論を出せなかったが、我々終盤探検隊の調査では、どうやら6五歩と打てば先手が良くなるようだということになった。
 以下5六桂に、7一飛と打つ(次の図)

研究9八金図07
 6二銀右、6一飛成、6三銀、8五歩、同金、8九香(次の図)

研究9八金図08
 以下8四歩、8五香、同歩に、9四馬から、上部開拓をめざして、先手有望の形勢。

研究9八金図09
 いまの変化で、後手 6三銀 の手に代えて、7五桂(図)の場合。
 以下8九香、8七と、同香、7七歩成、5四歩(次の図)

研究9八金図10
 5四同銀、5二角成となれば、先手大成功。
 といって、この図で6三銀、5三歩成、同金と辛抱する手順も、5一竜、同銀、同竜と進めて、先手優勢。

 後手からの攻め筋は「7六歩+6六銀」でこれが入ると先手玉に“詰めろ”が掛かる。しかしここで7六歩は、5三歩成、6六銀に、7八歩と受けて、先手良しである(次の図)

研究9八金図11
 7八歩(図)を同となら、5二竜、同歩、4二とで先手勝ち。
 7八歩に、8七と、同金、同桂成が想定される進行だが、同玉、7三香に、8九桂と受けて後手の攻めは続かない。
 以下5三銀右は5二角成だし、5三金は6二竜がある。また、5三銀左には3二角成、同玉、5二竜で後手玉が寄っている。

研究9八金図12
 〔ト〕7四銀(図)はこの銀を攻めに参加させようという手。
 先手は、5四歩と打って、勝負。
 5四同銀や6二銀引なら、もちろん5二角成だ。
 後手は7五銀。以下5三歩成に、8六銀。これが後手のねらいの攻めだ。以下同玉に、7六と、9七玉、8五桂、8八玉、7七と、8九玉、7六桂(次の図)

研究9八金図13
 ここで3二角成、同玉、4一銀としても、同玉、5二と、同玉、5四香、6三玉で、後手玉は詰まない。
 そして先手玉には、9七桂不成以下、“詰めろ”が掛かっている。
 なので先手は受けなければならないが、8六銀と受けても7八歩で先手勝てない。
 しかしここは6一竜があった! この手が、“詰めろ逃れの詰めろ” なのだ!(後手玉は3二角成以下の詰めろ)
 以下5三金に、3三歩成、同銀(同桂ではあとで先手に3四桂と打たれる筋が出てくる)、7二飛として、9七桂不成、7九玉、6八と、同竜、同桂成、同玉、6九飛、5七玉と進んで―――(次の図)

研究9八金図14
 後手の攻めは息切れ。先手優勢。

研究9八金図15
 〔ナ〕3一銀(図)という手もある。この手の意味は、次に6二銀右としてそれから4二金とすれば角が獲れるということだ。その筋を見せて先手をあせらせている。
 この瞬間、「3三」の地点が薄くなったので、3三歩成、同歩、3四歩と行くのが良い攻めになる(次の図)

研究9八金図16
 3四同歩なら、3三歩として、以下同桂、5二角成(取ると後手玉詰み)となれば、先手優勢。
 よって3三歩成、同歩、3四歩に、後手は、4四銀引と頑張る。
 しかし4五歩がある。同銀なら、3三歩成、同玉、3七飛、3四歩、5二角成、同歩、3一竜以下、先手優勢。
 よって4五歩に、後手は4二金。以下6三角成、7四銀、7三馬(5一馬を狙う)、7五銀、 8九香(次の図)

研究9八金図17
 以下4五銀に、3三歩成、同金、5一馬、4二銀引、4一馬のような展開が予想される。
 まだ勝負の行方は決定的ではないが、先手有利の形勢なのは確かである。

9八金図(再掲)
 他には、〔二〕6二銀右〔ヌ〕1四歩〔ネ〕4四銀引 があるが―――
 〔二〕6二銀右 は、5四歩、同銀、5二角成で先手良し。
 〔ヌ〕1四歩〔ネ〕4四銀引 には、7一飛で、先手ペースの戦いになる。


研究9八金図18(9五歩図)
 〔タ〕9五歩(図)。
 これ以外の手では後手に勝ち筋がないということをこれまでに示してきた。【13】9八金 の意外な優秀性がわかってきた。
 そしてこの 〔タ〕9五歩 までも先手が跳ね返せば、【13】9八金 は先手良し、という結論になるが―――
 さて、この 〔タ〕9五歩 を、(K)9五同歩 と取るか、「他の手」を指すか。それがまず問題であるが、「他の手」には何があるだろうか。まずそこから考えてみよう。

 仮に、(L)5四歩 と攻めたとしよう。すると、9六歩、同玉、9五歩、9七玉に、8五桂という手がある(次の図)

研究9八金図19
 これで「後手良し」になってしまう。以下8五同歩、同金に、8六飛と受けるしかないが、8四銀で後手の優位は動かない。

研究9八金図18(再掲 9五歩図)
 よってこの図では、攻めるなら5四歩よりも速い攻めでないと先手は勝ち目がない(5四歩は次に5三歩成としても後手玉は詰めろになっていない)
 (M)3三歩成 がある。これを見ておこう。

研究9八金図20
 3三歩成(図)に、同銀、5二角成、同歩、3一飛に、7九角(次の図)

研究9八金図21
 先手玉は詰んでいる。8八香合なら、9六歩、同玉、9五歩、9七玉、8八角成、同金、9六香まで。
 8八金打のほうが長い。しかし、9六歩、同玉、9五歩、9七玉、8八角成、同金、9六金、9八玉、8八と、同玉、7六桂となって―――(次の図)

研究9八金図22
 先手玉は“詰み”である。

研究9八金図23
 (N)2六香(図)ならどうだろうか。
 この手に、先ほどと同じように、9六歩、同玉、9五歩、9七玉に、8五桂と攻めてくれば、以下同歩、同金、8六飛、8四銀、同馬、同歩、1五桂で―――(次の図)

研究9八金図24
 なんと、先手良しになっている。8六金、同玉で、後手に「飛角」を渡すことになるが、先手玉は “詰みなし” なのだ。

研究9八金図25
 しかし、(N)2六香 に、6六銀(図)と正しく応じられると―――
 こう指されてみると、どうも先手に有効手がない。次に後手からは、9六歩、同玉、7六と(さらに9五歩、9七玉、7七銀不成が後手の狙い)の着実な攻めがある。
 一例を示しておくと、2五飛、3一桂、3七桂、9六歩、同玉、7六と、5二角成、9五歩、9七玉、7七銀不成(次の図)

研究9八金図26
 先手の5二角成を同歩と取ってくれれば、2三飛成以下後手玉が詰むのだが、7七銀不成(図)で、後手優勢である。
 8七金打なら、攻め駒が足らなって5二歩で先手負けなので、8七金と金を打たずに勝負するが、同金、同玉に、2四金と受けて、以下6五飛、5二歩、7七玉、7四銀のような手順が予想され―――(次の図)

研究9八金図27
 これは、後手良し。
 図以下、6七飛(6八飛は5五角がある)、6六歩、同玉、5八金、2四香、4四角、5五歩、7五銀が予想され、先手玉は捕まっている。

研究9八金図28
 すぐの攻めがないなら、(O)7八歩(図)でどうか。(7六歩 なら9五歩で先手指せる)
 これを 同と なら、今度はいまの2六香~2五飛の攻めが有効となる。2六香、6六銀、2五飛、3一桂、8五歩(次の図)

研究9八金図29
 以下7五金、同馬、同銀、同飛が予想されるが、先手良しである。

研究9八金図30(7六と図)
 (O)7八歩 には、7六と(図)が後手の正しい応手である。
 こうして、次に9六歩、同玉、9五歩、9七玉、7五金の攻め筋が後手にできた。他に6六銀~7七歩も着実で有効な攻め。
 それらの攻めが来る前に、先手は勝負してゆく。
 〈1〉3三歩成、同銀、5二角成、同歩、3一飛、7九角(次の図)

研究9八金図31
 8八香、4二銀左、2一飛成、3三玉、3七桂(3四歩以下の詰めろ)、8六と(次の図)

研究9八金図32
 図の8六とが後手の好手。同玉に、6八角成とする。以下7七歩に、7八馬(次の図)

研究9八金図33
 7八馬(図)が “詰めろ逃れの詰めろ” になっている。
 8七歩なら、7四桂、9七玉、9六歩、同玉、9五歩、9七玉、8五金で“受けなし”になってしまう。
 よってここは8七金と受けることになるが、7五桂があって、後手優勢である。

研究9八金図34
 「研究9八金図30(7六と図)」においては、〈2〉5四歩(図)が有力な攻め。
 これを同銀や6二銀右なら、5二角成、同歩、4一飛で、勝負する。
 それなら互角の戦いになるが、ここでは9六歩、同玉(8八玉は8六とで先手勝勢)として、そこで7四桂がある(次の図)

研究9八金図35
 「8六」に攻めを集中させる7四桂(図)
 これを受けるには9七金があるが、後手9四歩と打って9五金ねらうのが有効手となり、後手が良い。
 ここは8七香がベストの手で、8六を守りながら9七~8八の退路も確保できている。
 この手には、4四銀上とする(次の図)

研究9八金図36(4四銀上図)
 ここは6二銀左と引くよりも、4四銀上(図)と出る手が優る。その理由はあとで明らかになる。
 ここで後手の手番なら、9四歩から9五金、あるいは9五歩、9七玉に、7五金で、後手良しになる。
 先手の期待の攻めは[1]5二角成だ。9五歩、9七玉、5二歩に、4一飛。
 そこで後手3一角もあるが(互角)、後手は7九角、8八金、1四歩で勝ちにいく。
 以下4二飛成に、8五金(次の図)

研究9八金図37
 8五金(図)を同歩なら、8七と、同玉、8六香以下、先手玉が詰む(このままでも8六金以下“詰めろ”になっている)
 こうなったときに、後手4四銀上とした手が「3三」を守っている。この銀がいなければ、3三歩成、同桂、3一竜左から後手玉は詰んでいた。

 先手玉に受けがないので、先手は3三金と打って勝負。これには1三玉が安全な対応。
 以下2三金、同玉、4三竜に、2二玉(次の図)

研究9八金図38
 2二玉(図)で、後手玉は詰まないので、後手勝ち。

研究9八金図36(再掲 4四銀上図)
 「4四銀上図」まで戻って、ここで[1]5二角成以外の手を考えてみる。
 [2]4五歩はどうか。同銀なら、そこで5二角成の攻めを決行し、今度は先手良しになるのである。
 だから後手は[2]4五歩に9四歩とする(次の図)

研究9八金図39
 以下9七玉、9五金、4四歩、8六金、同香、同と、8八玉、7六桂、7九玉、5八金(次の図)

研究9八金図40
 後手優勢。

研究9八金図41
 [3]7一飛(図)はどうか。次に5二角成がある。
 この手には、9五歩、9七玉、6二金と対応する。そこで6三歩と打てば、後手は金の行きどころがない(単に6二金だと8四馬、同銀、7四角成の変化があり、それは先手有望になるので「9五歩、9七玉」をきかす)
 そして、7五金で―――(次の図)

研究9八金図42
 以下6二歩成は、8六金以下、先手玉が寄ってしまう。
 だから7五馬、同ととして、後手の攻めを遅らせてから、6二歩成が考えられるが、それも7九角、8八金打、7六桂で、やはり後手優勢である。

 以上の調査により、(O)7八歩 には、7六と 以下後手良し、が確定した。

研究9八金図18(再掲 9五歩図)
 (K)9五同歩
 (L)5四歩 → 後手良し
 (M)3三歩成 → 後手良し
 (N)2六香 → 後手良し
 (O)7八歩  → 後手良し

 ここまで、調査が進んでいる。

研究9八金図43
 (K)9五同歩(図)が最後の手段となる。
 これで先手に勝ち筋がないなら、後手〔タ〕9五歩 以下は後手良しの結論が出る。

 図以下、9六歩、同玉、9四歩(次の図)

研究9八金図44
 「9四同歩」は、9五歩、9七玉、8五桂で、後手良し。
 また、ここで「5四歩」(後手陣の形を乱す)などと指すと、9五金、9七玉、8四銀で―――(次の図)

研究9八金図45
 いっきに先手は敗勢になってしまう。5三歩成は、9三銀と角を取った手が、8五桂、同歩、8六角までの詰めろになっているので後手勝ち。
 図で9六歩は、8六金、同玉、7六と、9七玉、8五桂、8八玉、7七と、7九玉、9三銀で、やはり後手勝ち。

研究9八金図46
 ということで、後手9四歩に、先手は「9七玉」(図)
 そこで仮に後手6六銀なら―――3三歩成、同銀、5二角成、同歩、3一飛、7九角、8八香、4二銀左、2一飛成、3三玉、3七桂(次の図)

研究9八金図47
 こうなって、これは先手優勢になっている。
 後手玉の受けが難しいのだ。3四歩以下の詰めろを受けて4四歩としても、8四馬と金を取れば、3四金、同玉、3二竜以下の詰めろになっている。
 したがって図では3五角成しかなさそうだが、4五歩としておいて、そうなってみると先手良しがはっきりしている。

研究9八金図48
 ということで、後手は(先手「9七玉」に)じっと9五歩(図)が正着となる。

 この図になってみると、最初に後手9五歩と突かれた「研究9八金図18(9五歩図)」と状況はほとんど変わらない。違いは先手に歩の持駒が増えていることである。
 しかしこの場合、持ち歩が多くても状況は好転しない。
 〔l〕5四歩 → 8五桂以下後手良し
 〔m〕3三歩成 → 同銀、5二角成、同歩、3一飛は、7九角以下先手玉詰み
 〔n〕2六香 → 6六銀以下後手良し
 〔o〕7八歩 → 7六とで、後手良し

 つまり、これまでの研究調査と全く同じ手順をなぞって、「後手良し」になるのである。

研究9八金図49
 「9七玉」では先手に勝ちの可能性がないのであれば、「8五飛」(図)と頑張るしかない。
 これを同金なら、同玉で先手にも“入玉”の夢も見えてくるが、飛車を取らずに6六銀として―――
 以下3三香には、3一銀(次の図)

研究9八金図50
 後手からは7六ととして、次に9五歩、同飛、7七銀不成があり、それが実現する前に先手は動かなければいけない。
 ということで、7四歩、同銀、8四飛で勝負する。“上部開拓”が先手の望みだ。
 しかし以下、同歩、同馬に、7五飛と打たれ、先手玉は安全にならない。
 そこで3七桂なら、後手7二桂(または8三歩)で後手優勢である。
 7三金にも、8三歩がある(次の図)

研究9八金図51
 以下7五馬、同銀引、7四金に、8四桂、同金、同銀となって、7八角から先手玉は捕まってしまう。
 7四金としても、8四歩、7五金、7八角、8七銀、同と、8四金、7六銀で、やはり逃げられない。
 後手勝ち。

 (K)9五同歩 も後手良し。


 以上、後手の〔タ〕9五歩 に、先手はこれに打ち勝つ手段が発見できなかった。
 すなわち―――


9八金図(再掲)

 【13】9八金 は 9五歩で 後手良し、が結論となる。
 (9五歩以外の手なら先手良しになる)



 そして、「吉祥A図」の調査結果は―――

吉祥A図
   【0】7八歩 = 実戦の指し手
   【1】3三歩成 → 後手良し
   【2】3三香 → 後手良し
   【3】8九香 → 先手良し
   【4】2五香 → 互角(形勢不明)
   【5】5四歩 → 先手良し
   【6】2六香 → 先手良し
   【7】2六飛 → 先手良し
   【8】2五飛 → 先手良し
   【9】3七桂 → 先手良し
   【10】3八香 → 後手良し
   【11】8一飛 → 互角(形勢不明)
   【12】1五歩 → 後手良し
   【13】9八金 → 後手良し

 こうなった。

 次回は【14】6五歩を調査する。



第60譜につづく
コメント
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