A Challenge To Fate

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【Disc Review】極私的東京地下音楽シーン回想録〜『V.A. / Tokyo Flashback P.S.F. 〜Psychedelic Speed Freaks〜』

2017年05月03日 03時18分26秒 | 素晴らしき変態音楽


『V.A. / Tokyo Flashback P.S.F. 〜Psychedelic Speed Freaks〜』

2017年5月24日発売
SUPER FUJI DISCS FJSP271/272 (2CD) 2,800円+税

Disk 1
1. White Heaven / OUT
2. 今井和雄 / Delay 160715
3. Acid Mothers Temple & The Melting Paraiso U.F.O. / Pink Lady Lemonade
4. マヘルシャラルハシュバズ / いけえずみさん
5. Kim Doo Soo / 野花
6. .es / 暁の歌
7. à qui avec Gabriel / ほばらみ
8. 静香 / 狂気の真珠
9. 浦邊雅祥 / “Alto Saxophone Solo”
10. 灰野敬二 / 遠ざかりはしない
11. Overhang Party / 今立ち現れる

Disk 2
1. ヒグチケイコ with ルイス稲毛 / Nothing Is Real 002
2. Ché-SHIZU / 皇帝〜伝えよ
3. High Rise / Outside Gentiles
4. 冷泉 / Untitled
5. Ghost / Blue Link
6. 長谷川静男 / Low Blues
7. 不失者 / お前
8. 川島誠 / 窓からの輝き
9. 平野剛/ For Rains
10. にせあぽりあ / 空の蒼に染まず詠う
11. 近藤秀秋 / ソナタ第 1 番ト短調 BWV1001

『東京フラッシュバック』の極私的地下音楽シーン回想録

『Toyko Flashback』とは因果なアルバムタイトルを付けたものだと思う。「Flashback/フラッシュバック」とは文字通り「過去の記憶が光のように突然蘇ること」であり、映画等では「回想場面」のことである。70年代終わり、パンクムーヴメントの影響で60年代ガレージ/サイケデリック・ロックがパンクのルーツとして発掘され、数々の有名無名の音源が盤起こしのブートまがいのレコードで多数再発された。その中に『Flashback』というタイトルのサイケ本やコンピレーションもあった。80年にレコードショップ「モダーンミュージック」を開店した生悦住英夫は当時そうした知られざるサイケのレコードを熱心に売っていたという。PSFレコードを立ち上げ、90年代の日本のライヴハウスシーンの有望アーティストのコンピレーションをサンプラーとしてリリースしようとした時に彼の頭に浮かんのがだ10年前に使われた『Flashback』だったのだろう。よく考えれば、今現在活動し、将来を有望視するバンドの紹介に「過去の記憶の回想」を意味するタイトルをつけるのは矛盾している気がする。しかし『Tokyo Flashback』シリーズが日本よりも海外で人気を博し、生悦住の目標通り日本のアンダーグラウンドシーンを海外に紹介する結果になったのだからこのタイトルも正解だったのかもしれない。1991年〜2011年に8作リリースされたこのシリーズの最新作がPSFレコードの最後の作品となり、急逝した生悦住への追悼アルバムになったことで、やっとタイトルの意味を全うすることが出来たと考えるのは罰当たりだろうか。

80年代前半に東京の地下音楽シーンの深部に身を置いた筆者が、86年大学卒業と共にシーンから離れ、所謂メジャー予備軍であるインディーズに興味を惹かれたことは、拙著『地下音楽への招待』の最終章に記した通りである。同時に、地下シーン自体が結束力を失い、それぞれ別の方向へ分かれて行った様相は、本文に登場する当事者の多くが証言している。しかし「地下音楽」の火は消えること無く、90年代に「東京Psychedelicシーン」として再び脚光を浴びることになるのである。その最大の貢献をしたのが『Tokyo Flashback』シリーズであることは言うまでもなかろう。もし『地下音楽への招待』の続編があるとしたら、東のPSF・西のAlchemyを中心とする90年代の地下音楽の「場の創造者」を取り上げることも一案だ。もちろんそこには世界的な「JAPANOISE」ブームの分析も必要になる。その部分は『DOKKIRI!!』の著者であり、90年代にPublic Bathレーベルで日本のノイズを海外に知らしめた張本人である加藤デヴィッド・ホプキンスの力を借りたい。

 
LOFT BOOKS『地下音楽への招待』特設サイト
【書評】ドッキリ!〜日本の自主制作音楽 1976-1989 歴史と案内/加藤デイヴィッド・ホプキンス

閑話休題。
将来を語るのは本稿の主眼ではない。本題に戻って筆者の個人的な回想を記そう。地下音楽の場からは足が遠のいたが、サイケの再発やレア盤蒐集にハマりモダーンミュージックに通うようになった。大学卒業後も続けていたニューウェイヴバンドRAJIOは88年に解散し、別のメンバーを入れてFLOWER TRIPというバンドを結成する。バンド名から想像が付くと思うが”サイケデリックロック”をやろうとした。併しそれは多分にスタイルとしてのサイケ、つまりギミック的な楽器編成(シタールやタブラやフルート)、ファズやワウペダルや変拍子の多用、サイケデリックペインティングの衣装やステージであった。ライヴではお香を焚き、ステージ後ろにタイダイ模様の幕を貼った。UKロックやUSオルタナロックのサイケ志向にも影響された。モダーンミュージックのサイケコーナーを漁ったついでに購入したG-Modernにもサイケ関連記事が出ていたが、入手困難なレアなレコードばかりで余り参考にならなかった。それでも数少ないサイケ情報は貴重だった。『Tokyo Flashback』も最初の頃は発売と同時に購入した。しかしG-Modern同様に「精神的サイケ」主義のバンドが多く、恐れ多くて自分のバンドを『Tokyo Flacshback』に売り込もうという気は全く起きなかった。



当時のライヴハウスシーンはバンドブームやイカ天ブームの余波でビートパンク系のバンドが多く、普通にブッキングすると若いタテノリバンドばかりで客層も音楽性もマッチしなかったので、90年ころから『アートロック宣言』という自主企画イベントを始めた。サイケ感覚を持ったバンドに声をかけライヴハウスに売り込んだ。93年に出演バンド3組でコンピレーションCD『アートロック宣言』を自主リリース。都内のレコード店に手持ちで委託販売を依頼した。モダーンミュージックにも行って偶々お店にいた生悦住に打診したところ「ああ、そのCDなら聴きましたよ。“TOKYOアンダーグラウンドシーン"と書いてあるから」との返事。委託販売できますか?と尋ねたところ「サイケデリックはなかなか難しいですからね」と返された。やはりこの店の眼鏡には適わなかったと思いすごすごと引き下がった。当然ながら「難しい」とは売れないという意味ではなく、本物のサイケデリックを名乗るのは簡単ではない、という意味であった。



それからはや24年経ってリリースされた最後の作品。灰野敬二、不失者、Acid Mothers、マヘル、浦邊雅祥、Overhang Party、Ché-SHIZU、長谷川静男、平野剛は当時からライヴを観ていた。White Heaven、Kim Doo Soo、 静香、High-Rise、Ghostはライヴは観ていないがPSFのレコードやCDで聴いていた。今井和雄、.es、à qui avec Gabriel、ヒグチケイコ、冷泉、川島誠、近藤秀秋はここ5年くらいの間にPSFとは無関係なところで知り合った。唯一名前を知らなかったにせあぽりあは、Ghostのメンバーによる即興ユニット。ということですべてが筆者の記憶回路の中にある名前である。このアルバムは間違いなく筆者の『東京の回想場面』のサウンドトラックと言っていい。しかしながら『記憶』とは過去の出来事だけではない。未来の経験も時と共に『記憶』となることを考えれば『フラッシュバック』とは『今現在』を記録する作品に相応しいタイトルであること明らかだろう。

PSF
東京フラッシュ
バックオーライ


JazzTokyoレビュー:#1408 『V.A. / Tokyo Flashback P.S.F. 〜Psychedelic Speed Freaks〜』

●ライヴイベント
5月23日(火) 高円寺 ShowBoat http://www.showboat1993.com/
P.S.F. Records 生悦住英夫氏追悼ライブ
~キム・ドゥス東京公演」


18時30分開場、19:00時開演 
前売2500円、当日3000円 (plus drink)
出演: キム・ドゥス、Indian Sonnie(ゲスト)、川口雅巳ニューロックシンジケイト、馬頭將器(The Silence, ex: Ghost)、冷泉


6月25日(日)六本木SuperDeluxe
Tokyo Flashback PSF 発売記念
~Psychedelic Speed Freaks~
生悦住英夫追悼ライブ


開場 15:30 / 開演 16:00
料金 予約3000円 / 当日3500円 (ドリンク別)
*入場料はご遺族へのお見舞金となります
出演:
灰野敬二 + 今井和雄
マヘルシャラルハシュバズ
Ché-SHIZU
馬頭將器 + 荻野和夫 (The Silence, ex:Ghost)
三浦真樹(ex: 静香)X横山玲
成田宗弘 (High Rise)
川島誠
à qui avec Gabriel
ヒグチケイコ
長谷川静男
.es
冷泉
平野剛

予約 https://www.super-deluxe.com/room/4292/


●ギャラリー展示企画
6月11日(日)〜 6月18日(日)南青山Art & Space ここから
Modern Music / P.S.F. Recordsの軌跡

80年代より日本の最も先鋭的な音楽を紹介し続けてきた生悦住英夫が、2017年2月27日、筋萎縮性側索硬化症(ALS)のために死去しました。享年68歳。
時代や状況に求められた回答のような音楽ではなく、自己の律の赴くままに奏でられた自然体の音楽を世界へと発信し続け、日本の前衛音楽の新たな鉱脈を見出し、世界中のサイケデリック、即興、ノイズ、アヴァンギャルド・シーンに多大な影響を及ぼし続けてきたP.S.F. Records / Modern Music 生悦住英夫の仕事を、200タイトルを超えるCDやLPのジャケット、G-Modernの展示などにより振り返ります。

入場無料
月〜土 12:00〜20:00/日 12:00〜19:00(最終日は18:00まで)/会期中無休
Art & Space ここから
〒107-0062 東京都港区南青山2-27-20-2F
tel 03-6434-7547
http://www.cococara-minamiaoyama.com
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