日本人があの戦争のことを映画化するとロクでもない映画が多々出来上がってしまうことがあるが、意外にも外国人が撮ると良い作品が撮れてしまう事がある。クリント・イーストウッド監督の硫黄島からの手紙しかりである。しかし、所詮はやっぱり外国人が撮ったらこんなに日本の事を理解できて無いのかと思う映画も多い。マイケル・ベイ監督の超駄作、では無くて超大作アクション映画パール・ハーバーなんかは、頓珍漢度ではその最たるものだろう。
冒頭のあの戦争とは、もちろん大東亜戦争(太平洋戦争と呼ぶ人もいるが)のことだが、すっかり焼け野原化してしまった日本を占領支配したGHQは一体何をしていたのか?特に戦争責任者として天皇は加担していたのか、していないのかを探り出すミステリー作品が今回紹介する映画終戦のエンペラーだ。本作は外国人が監督した日本を描いた映画だが、果たしてこのことは吉と出るか、凶と出るか。
しかしながらミステリー作品と言っても、その部分については大して斬新な解釈もなければ驚きの事実があるわけでもない。結末にしてもおおよその日本人なら知っていることばかりだから予想通り。だいたいこの映画を観た多くのお客さん(僕も含めて・・・以前に映画館で観ており、再度DVDで観直しています)は本作に対してミステリーの部分に注目している人などほとんど居るわけがなく、日本人には何かとアンタッチャブル的な存在である天皇、しかも昭和天皇がどのような描き方をされているのかに興味津々だったはずだ。
さて、いきなり結論から言ってしまうが昭和天皇が登場するのは最後の方の数分のみ。もちろんその登場場面はこの映画のクライマックス場面であるのだが昭和天皇の描き方がどうのこうのよりも、日本人がアメリカ人に説教しているシーンが非常に気持ちいい映画だ。日本人と言えば外国人に謝ってばかりいるイメージがあるが、この映画に登場する日本人は変にアメリカ人に媚びていないし、堂々としている。
中村雅俊が演じる近衛文麿元首相がアメリカ人に言い放つ台詞は、現在の保守思想の日本人が言いたくてもグッと堪えて言えなかった台詞を堂々と言ってくれる。そして西田敏行演じる元軍人が言うところの日本人の精神性である本音と建前、そして天皇と日本国民の関係である忠誠心をアメリカ人に説明するシーンは感動物だ。そして、二千六百年以上の長きに渡って皇室を信奉してきた日本人である事を誇らしく感じる瞬間が、クライマックスシーンで昭和天皇の口からダグラス・マッカーサーに発せられる。これほど無私無欲である国家の最高権力者が古今東西見渡しても存在しただろうか?英国王なんかとは明らかに歴史的、立場的に比べ物にならないぐらいの凄みを天皇は持っていることを我々日本人は誇りに持ち、感謝する瞬間だ。
さて、何だか外国人に褒められて良い気分になったように思え、嬉しくなるようなストーリーとは如何なるものか。
1945年の8月、占領地の日本にやって来たGHQ最高司令官であるダグラス・マッカーサー(トミー・リー・ジョーンズ)が日本に上陸。部下であり、知日家であるフェラーズ准将(マシュー・フォックス)に特命を与える。それは10日以内で日本の戦争責任者は誰なのかを調べ上げること、特に天皇が戦争に深く関わっていたのかを調べること。
フェラーズ准将(マシュー・フォックス)はかつて、開戦前にアメリカの大学で知り合った恋人である島田あや(初音映莉子)の安否を確かめるのと同時進行で、調査を開始する。しかし、フェラーズ准将(マシュー・フォックス)の前に天皇を中心とする複雑な日本の統治組織、調べれば調べるほどアメリカ人である自分にはワケのわからない日本人の精神性及び天皇に対する忠誠心によって調査は難航するのだが・・・
黒白ハッキリした結論が好きなアメリカ人に対して、決して黒白だけでは判断できないばかりか時には曖昧な表現をも良しとする日本人の考え方がこの映画では非常に重要な意味を持っている。ようやくアメリカも日本の事をここまで理解できるようになったかと感慨深いものがある。
しかしダグラス・マッカーサーが善人過ぎるように描かれているのが個人的には不満。まるで戦後たどる日本の復活、成長がマッカーサーのおかげだといわんばかりの主張は吐き気がした。彼の口から『これからの日本の将来のために・・・』なんて、俺はホントかよと思わず唖然とした。
マッカーサーが日本を救い、天皇家を存続させたみたいな描き方がされているが、今や日本はマッカーサーのせいで天皇の万世一系という男系による存続がピンチ。しかも、何かと日本を滅亡させるような都合の悪い憲法を押し付けた張本人として糾弾されるべき人物だと思うのだが、ようやく日本においても憲法改正の気運が盛り上がってきた。マッカーサーの呪縛から解き放たれるために憲法改正を早くしろ!
そんな不満はあれど、それ以外の部分では大いに感動できる映画だ。
ハリウッド映画によく描かれる素っ頓狂な日本人、日本の風景が描かれている場面は特に見受けられず、竹薮の幻想的なシーンは監督の演出のこだわりが見られてビジュアルも良い感じ。名優トミー・リー・ジョーンズも写真などでよく見られるダグラス・マッカーサーのイメージをピッタリ演じているのは流石だ。
そして巷では恋愛の要素なんかこの映画には必要ないんじゃないの?なんて批判もあるが、個人的には恋愛の場面は大いに結構。恋愛シーンは映画の楽しみ要素の一つになり得るし、決してこの映画の価値を下げることにはならない。むしろアメリカ人男性と日本人女性の恋愛を描くことによって大きな感動を得られた。
他にもフェラーズ准将の通訳に登場する日本人タカハシが良い。この礼儀正しさ、謙虚さ、そして個人的な私情をはさまず仕事をこなす様子はまさに、これぞ日本人。タカハシという人物にも注目すれば益々日本人であることに感謝する。
日本人には手が出しづらく、中途半端な知識では描くことが出来ないテーマだが、それにしても外国人が描いた日本、天皇に感動してしまうのが微妙に悔しいところ。改めて外国人の方が日本の良さをわかっていることを思いしらされる映画だ。
日本人であることに誇りを持つことができるし、実はアメリカにも日本が好きな人がいることを確認できる映画終戦のエンペラー。日本人なら政治、思想、宗教のイデオロギーのスタンスに関わらずお勧めだ
監督はピーター・ウェバー。撮っている映画の本数は少ないですが今や人気者となったコリン・ファース、スカーレット・ヨハンソン共演の真珠の耳飾りが、日本でも人気のある画家フェルメールに興味のある人ならばお勧め。
主演のフェラーズ准将を演じるのがマシュー・フォックス。ポリティカル・サスペンス映画の傑作バンテージ・ポイントでは重要な役を演じていてお勧め。
ダグラス・マッカーサーを演じているのが今さら説明の不要の名優トミー・リー・ジョーンズ。多くの名作に出演していますが、ポール・ハギス監督、シャリーズ・セロン共演の告発のときがお勧め。
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冒頭のあの戦争とは、もちろん大東亜戦争(太平洋戦争と呼ぶ人もいるが)のことだが、すっかり焼け野原化してしまった日本を占領支配したGHQは一体何をしていたのか?特に戦争責任者として天皇は加担していたのか、していないのかを探り出すミステリー作品が今回紹介する映画終戦のエンペラーだ。本作は外国人が監督した日本を描いた映画だが、果たしてこのことは吉と出るか、凶と出るか。
しかしながらミステリー作品と言っても、その部分については大して斬新な解釈もなければ驚きの事実があるわけでもない。結末にしてもおおよその日本人なら知っていることばかりだから予想通り。だいたいこの映画を観た多くのお客さん(僕も含めて・・・以前に映画館で観ており、再度DVDで観直しています)は本作に対してミステリーの部分に注目している人などほとんど居るわけがなく、日本人には何かとアンタッチャブル的な存在である天皇、しかも昭和天皇がどのような描き方をされているのかに興味津々だったはずだ。
さて、いきなり結論から言ってしまうが昭和天皇が登場するのは最後の方の数分のみ。もちろんその登場場面はこの映画のクライマックス場面であるのだが昭和天皇の描き方がどうのこうのよりも、日本人がアメリカ人に説教しているシーンが非常に気持ちいい映画だ。日本人と言えば外国人に謝ってばかりいるイメージがあるが、この映画に登場する日本人は変にアメリカ人に媚びていないし、堂々としている。
中村雅俊が演じる近衛文麿元首相がアメリカ人に言い放つ台詞は、現在の保守思想の日本人が言いたくてもグッと堪えて言えなかった台詞を堂々と言ってくれる。そして西田敏行演じる元軍人が言うところの日本人の精神性である本音と建前、そして天皇と日本国民の関係である忠誠心をアメリカ人に説明するシーンは感動物だ。そして、二千六百年以上の長きに渡って皇室を信奉してきた日本人である事を誇らしく感じる瞬間が、クライマックスシーンで昭和天皇の口からダグラス・マッカーサーに発せられる。これほど無私無欲である国家の最高権力者が古今東西見渡しても存在しただろうか?英国王なんかとは明らかに歴史的、立場的に比べ物にならないぐらいの凄みを天皇は持っていることを我々日本人は誇りに持ち、感謝する瞬間だ。
さて、何だか外国人に褒められて良い気分になったように思え、嬉しくなるようなストーリーとは如何なるものか。
1945年の8月、占領地の日本にやって来たGHQ最高司令官であるダグラス・マッカーサー(トミー・リー・ジョーンズ)が日本に上陸。部下であり、知日家であるフェラーズ准将(マシュー・フォックス)に特命を与える。それは10日以内で日本の戦争責任者は誰なのかを調べ上げること、特に天皇が戦争に深く関わっていたのかを調べること。
フェラーズ准将(マシュー・フォックス)はかつて、開戦前にアメリカの大学で知り合った恋人である島田あや(初音映莉子)の安否を確かめるのと同時進行で、調査を開始する。しかし、フェラーズ准将(マシュー・フォックス)の前に天皇を中心とする複雑な日本の統治組織、調べれば調べるほどアメリカ人である自分にはワケのわからない日本人の精神性及び天皇に対する忠誠心によって調査は難航するのだが・・・
黒白ハッキリした結論が好きなアメリカ人に対して、決して黒白だけでは判断できないばかりか時には曖昧な表現をも良しとする日本人の考え方がこの映画では非常に重要な意味を持っている。ようやくアメリカも日本の事をここまで理解できるようになったかと感慨深いものがある。
しかしダグラス・マッカーサーが善人過ぎるように描かれているのが個人的には不満。まるで戦後たどる日本の復活、成長がマッカーサーのおかげだといわんばかりの主張は吐き気がした。彼の口から『これからの日本の将来のために・・・』なんて、俺はホントかよと思わず唖然とした。
マッカーサーが日本を救い、天皇家を存続させたみたいな描き方がされているが、今や日本はマッカーサーのせいで天皇の万世一系という男系による存続がピンチ。しかも、何かと日本を滅亡させるような都合の悪い憲法を押し付けた張本人として糾弾されるべき人物だと思うのだが、ようやく日本においても憲法改正の気運が盛り上がってきた。マッカーサーの呪縛から解き放たれるために憲法改正を早くしろ!
そんな不満はあれど、それ以外の部分では大いに感動できる映画だ。
ハリウッド映画によく描かれる素っ頓狂な日本人、日本の風景が描かれている場面は特に見受けられず、竹薮の幻想的なシーンは監督の演出のこだわりが見られてビジュアルも良い感じ。名優トミー・リー・ジョーンズも写真などでよく見られるダグラス・マッカーサーのイメージをピッタリ演じているのは流石だ。
そして巷では恋愛の要素なんかこの映画には必要ないんじゃないの?なんて批判もあるが、個人的には恋愛の場面は大いに結構。恋愛シーンは映画の楽しみ要素の一つになり得るし、決してこの映画の価値を下げることにはならない。むしろアメリカ人男性と日本人女性の恋愛を描くことによって大きな感動を得られた。
他にもフェラーズ准将の通訳に登場する日本人タカハシが良い。この礼儀正しさ、謙虚さ、そして個人的な私情をはさまず仕事をこなす様子はまさに、これぞ日本人。タカハシという人物にも注目すれば益々日本人であることに感謝する。
日本人には手が出しづらく、中途半端な知識では描くことが出来ないテーマだが、それにしても外国人が描いた日本、天皇に感動してしまうのが微妙に悔しいところ。改めて外国人の方が日本の良さをわかっていることを思いしらされる映画だ。
日本人であることに誇りを持つことができるし、実はアメリカにも日本が好きな人がいることを確認できる映画終戦のエンペラー。日本人なら政治、思想、宗教のイデオロギーのスタンスに関わらずお勧めだ
終戦のエンペラー [DVD] | |
マシュー・フォックス,トミー・リー・ジョーンズ,初音映莉子,西田敏行 | |
松竹 |
終戦のエンペラー [Blu-ray] | |
マシュー・フォックス,トミー・リー・ジョーンズ,初音映莉子,西田敏行 | |
松竹 |
監督はピーター・ウェバー。撮っている映画の本数は少ないですが今や人気者となったコリン・ファース、スカーレット・ヨハンソン共演の真珠の耳飾りが、日本でも人気のある画家フェルメールに興味のある人ならばお勧め。
主演のフェラーズ准将を演じるのがマシュー・フォックス。ポリティカル・サスペンス映画の傑作バンテージ・ポイントでは重要な役を演じていてお勧め。
ダグラス・マッカーサーを演じているのが今さら説明の不要の名優トミー・リー・ジョーンズ。多くの名作に出演していますが、ポール・ハギス監督、シャリーズ・セロン共演の告発のときがお勧め。
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