褒めまくる映画伝道師のブログ

映画の記事がメイン。自己基準で良かった映画ばかり紹介します。とにかく褒めることがコンセプトです。

映画 ミリオンダラー・ベイビー(2004) ヒューマン・ボクシング映画です

2014年05月15日 | 映画(ま行)
 昔からのハリウッド映画の得意分野にロッキーなどに代表されるようなボクシング映画があるが、一攫千金、アメリカンドリームを描くのにボクシングはとても扱いやすい素材であることは確かだろう。貧困から抜け出して成功者へ駆け上がるストーリーを描くのにボクシング映画はまさにうってつけ。そして今回紹介する映画ミリオンダラー・ベイビーも表向きはボクシングをする選手が女性というのが珍しいぐらいでタイトルから想像されるように従来通りのボクシングを題材にしたサクセスストーリーに思える。
 しかし、本作の監督であるクリント・イーストウッドは現実のアメリカを極めて冷静に描くことができる映画監督。そんな彼の手に掛れば、ボクシング映画を題材にしてもアメリカンドリームと言う名の夢物語をぶっ飛ばしてしまう。
 確かに中盤過ぎまではクリント・イーストウッド演じるジム経営が火の車である老トレーナーとヒラリー・スワンク演じる貧困生活から這い出そうとする30歳過ぎの女性ボクシング選手の二人三脚による世界チャンピオンを目指すボクシング映画の王道的ストーリー。しかし、後半は世界チャンピオンを目指すどころではなくなってしまう事態に陥ってしまう。この映画の本領発揮するのは勿論後半の方。アメリカン・ドリームを目指す部分は所詮は後半のインパクトを高めるための前振りの要素に過ぎないわけだ。
 この映画の衝撃的な結末は色々なところで語られていて、俺自身も脳ミソが揺れるぐらいの衝撃を受けたひとり。しかし、実のところ多くの日本人はこの映画の本当の凄さを理解できていない。なぜならカトリックに対する宗教知識、アイルランドの民族及び歴史、プアホワイトに属するアイリッシュ系アメリカ人のこと等を理解していないと衝撃的な結末の凄さを理解できないからだ。特に日本人は宗教に対して無関心な人が多いために、クリント・イーストウッドヒラリー・スワンクの選択した行動の重さが理解できない。ちなみにこのような偉そうなことを書いている俺自体が肝心な知識が欠如してしまっているというのが1番の問題だ。

 さて、スポコン、サクセスストーリーを期待させておいて、観ている者をボロボロに打ちのめすストーリーとはいかなるものか。
 ボクシングジムを経営しているトレーナーでもあるフランキー(クリント・イーストウッド)は多くの優秀なボクサーを育てるが、マネジメントの拙さがたたり、ジムの経営はニッチモサッチモいかない状態の上に家族からも見捨てられているのも同然の生活をしていた。 
 ある日のこと、彼のジムに30歳過ぎの女性マギー(ヒラリー・スワンク)が彼の門をたたきにやって来る。当初フランキー(イーストウッド)は女性の入門はお断りと頑なに彼女を無視し続けるが、次第に彼女のボクシングに対する熱心さに惹かれコーチすることになる。フランキー(イーストウッド)の指導のもとでメキメキ頭角を現すマギー(スワンク)はやがて世界チャンピオンの座を狙うまでに成長。そして、いよいよ百万ドルのファイトマネーを賭けた戦いに臨むのだが・・・

 この映画の前半はひたすらアイルランドを強調するシーンが度々出てくる。クリント・イーストウッド演じる老トレーナーが読書する本は英語で書かれた本ではなく、古きアイルランドの母国語であるゲール語。いかにイーストウッド演じる老トレーナーがアイリッシュ系(アイルランド系)であることに民族的な誇りを持っていることがわかる。
 そしてアイルランドと言えば宗教はカトリック、そして長年に渡りイギリスと戦争を繰りひろげてきた因縁がある。そのような背景があるからこそ、ヒラリー・スワンク演じるボクサーがアイルランドの象徴である緑色のガウンをまとい、イギリス人ボクサーと戦うシーンは観客も観ている我々も大いに盛り上がる。
 そしてアイリッシュ系アメリカ人のアメリカ国内での立ち位置もこの映画では知らされる。ヒラリー・スワンク演じる女性の出自が貧困生活から抜け出せない白人社会の最下層に属するアイリッシュ系であることが、それとなく知らされる。貧乏生活から抜け出そうとボクシングに活路を見いだすヒラリー・スワンクと、すっかり働く意欲を無くし、福祉に頼りきった生活に満足している彼女の家族たちの対比が非常に意味深だ。このことが後半の悲劇的なシーンを大いに増長させる。
 そしてやはりと言うべきか本作に限らずクリント・イーストウッド作品の全般のテーマである宗教について。この映画でもカトリックの教会のシーンが度々出てくる。この宗教的な背景、特にカトリックを強調することによって、ラストシーンの行動の重さが際立ってくる。
 俺から見れば全く希望の欠片も感じられない救いようのない映画だが、本国アメリカでは大ヒットした。後味が悪いという理由で大ヒットするわけがなく、しかもアカデミー賞では作品賞、監督賞などに輝いているように名作の扱い。なぜこの映画が大ヒットしたのか、多くの映画賞を受賞したのか。そのようなことを考えるだけでも多くの時間を費やしてしまう。

 正直お気楽に観られる映画では無いが、民族、歴史、家族愛、チャレンジ、社会、尊厳死等など、あらゆるテーマが内包されている映画。何だか他にもこの映画について書かなければならないことが抜け落ちているような気もするのだが。とにかく思いっきり余韻に浸ることをできる映画としてミリオンダラー・ベイビーはお勧めだ

ミリオンダラー・ベイビー [DVD]
クリント・イーストウッド,ヒラリー・スワンク,モーガン・フリーマン
ポニーキャニオン


 監督、主演は今さらこんなところで説明する必要がないクリント・イーストウッド。比較的初期の彼の監督、主演作品でガントレットをお勧めしておこう。ツッコミどころ満載ですが、かなり面白い部類に入るアクション映画です。

 女性主人公を演じるのが今や名女優として風格すら漂うヒラリー・スワンク。クリストファー・ノーラン監督、アル・パチーノ、ロビン・ウィリアムズ競演のインソムニア、ブライアン・デ・パルマ監督、ジョシュ・ハーネット、アーロン・エッカート、スカーレット・ヨハンソン競演のブラック・ダリアがお勧め。他にボーイズ・ドント・クライを観れば、この人の凄さがわかる。

 そしてこの映画のナレーター的な役割を担っているのが名優モーガン・フリーマン。多くの名作に出演する名優。今回はベン・アフレックが監督したゴーン・ベイビー・ゴーンを超お勧め作品として挙げておこう。

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