日刊イオ

月刊イオがおくる日刊編集後記

総聯中央が関空税関当局の不当な押収に抗議する記者会見

2018-06-30 09:00:00 | (理)のブログ

 東京都・千代田区の総聯中央本部で6月29日、緊急記者会見が行われた。朝鮮民主主義人民共和国への修学旅行から帰ってきた神戸朝鮮高級学校・高3生徒らに対する関西国際空港税関当局の非人道的な措置を受けて急きょ持たれたものだ。



 記者会見では初めに、総聯中央本部国際統一局の徐忠彦局長(写真左)が発言。
 「去る6月28日に朝鮮から帰国し関西空港に到着した神戸朝高・高3生徒ら(62人)が、修学旅行の際に親戚や友人からもらったお土産を税関当局にむやみに没収されたことが保護者や同胞たちの声で明らかになった。自分たちも事実関係を調べてみると、あまりにも酷い状況だったため記者会見を開いた」と経緯をのべた。

 徐局長は続けて、「神戸朝高の生徒たちは、朝鮮にいる親戚や友人からもらった心からの贈り物を目の前で没収され、その非情さに心を引き裂かれて泣きじゃくったという。朝鮮半島の北と南、そして朝鮮とアメリカ間において和解の流れができてきた中で、生徒たちは『次は朝鮮と日本の関係改善の番だ』という期待と希望に胸を膨らませて帰ってきた。そんな思いが、ささやかな贈り物やお土産まで没収され、日本に着いた入り口で無残にも踏みにじられた」と話し、以下のことを求めた。

1.制裁を口実に基本的人権を踏みにじることは許されず、よって税関当局は在日朝鮮人生徒たちに対するこのような職権乱用、非道極まりない人権侵害行為について真摯に謝罪し、再発防止を確約すること。
2.日本政府は今回の事態が発生した根源である、朝鮮に対する不当な制裁を一日も早く撤回すること。
3.日本政府は在日朝鮮人の民族教育に対する不当な差別と弾圧をただちに中止し、国際人権法に基づいた諸権利を保障すること。




 続いて、偶然にも東京へ出張に来ていた神戸朝高の許敬校長が詳細について説明した。
 62人の生徒たちは2台の飛行機に分乗して帰ってきた。許校長は1便目の生徒らを引率。税関では全員のスーツケースや鞄が開けられ、生徒6人のお土産・民芸品などが押収された。
 2便目は20時半に関空へ到着する予定だったが運航が遅れ、23時過ぎに到着した。しかし、ここでも税関は全員のスーツケースを検査し、お土産や民芸品を大量に押収。生徒たちは声を上げたり涙を流して説明や抗議をしたが、頑なに放棄書へのサインを要求したという。税関から最後の生徒が出てきたのが0時半。飛行機が遅れただけでも心配なのに、お土産まで没収され泣きじゃくる我が子を見て、迎えに来ていた保護者は怒りを禁じえなかったという。


 その後、質疑応答が行われた。主に国内メディアが事実関係の確認をする中、ロシア関連の媒体の記者が何度も本質的な質問をしているのが印象的だった。以下、同記者と徐局長の質疑応答の内容をいくつか紹介したい。

Q. 今回のこと以外に、在日朝鮮人は日頃からどのような差別を受けているか?
A. 高校無償化制度から朝鮮学校のみが排除されるという差別のほか、文科省から地方自治体による朝鮮学校への補助金見直しを求める通達があり、朝鮮学校にだけ補助金を出さない自治体が多く出てきた。また、ヘイトスピーチはもちろん、在日の商工人に対する融資を銀行が渋ったり、朝鮮籍と韓国籍の人に対して制度上の差をつけるなど、生活上さまざまな問題がある。また、マスコミの意図的な「北朝鮮報道」によって、子どもたちを狙い撃ちにした脅迫もある。

Q. 今回の事件が日本と朝鮮の関係にどのような影響を与えると考えるか?
A. この事態はすでに本国にも伝わっており、今後の日朝関係に大きな禍根を残すと思う。北南朝鮮、そして朝米間でも和解の動きが進む中、最近は安倍総理も対話重視の姿勢を見せているが、日本政府が真摯に朝鮮との対話を望むなら、口先だけではなく、このような卑劣で非人間的な措置をやめることから始めるべき。

Q. 今回の事件、そして高校無償化制度からの除外もそうだが、子どもたちが日本の中でターゲットになっている現状がある。なぜそのようなことが起こっていると考えるか?
A. 日本政府は朝鮮に制裁を続けているが、本国には効き目がないので、日本にいる在日朝鮮人を、ある意味では人質のように考え、圧力をかければ本国が心を痛めて態度を変えるだろうと考えているのではないか。このような日本政府の行為は非常に卑劣極まりない。在日朝鮮人は、植民地支配の被害者である。私の父も強制連行で日本にきた。その子孫を苦しめる行為は、国際的にも犯罪行為に当たると思う。簡単に言うと、ドイツ政府がユダヤ人をいまだに差別し、圧力をかけているというような状況が、今の日本で起こっている。私は国連人権理事会にも参加するが、その例を出すとみんな信じない。そんなひどいことが現実に日本で起こっているなんて、という反応だ。

 なぜこのようなしっかりとした質問をするのかと気になり記者会見後に話しかけてみると(通訳は在日朝鮮人の記者がしていた)、なんと在日朝鮮人のドキュメンタリー番組を作っているとのこと。「明日はチョデ(朝鮮大学校)にも行きますよ」と教えてくれた。色々な取材をしているところに、たまたま今回の事件があったそうだ。どのように報道されるのだろうか。

 最後に、許校長が改めて発言した。
 「皆さんにぜひお願いしたいのは、この事実関係をしっかり知らせること。修学旅行から帰ってきた子どもたちがお土産をすべて没収されて泣きじゃくっている姿とか、そのようなことすら知らない人がたくさんいると思う。朝鮮学校で学んでいる子たちは、反日教育を受けているわけではない。例えば『拉致問題』でも朝鮮と日本、両方の見方を考えさせ、その問題をどのように理解し、どうやって解決していったらいいのかということを授業でも教えている。子どもたちが本当に日朝友好の架け橋になれるような教育を心がけているし、スパイを育てるための教育はしていません」
 ここまで聞いて、このような場でこんな当たり前のことを言わなければならない校長先生の辛さ、やるせなさを考えた。しかし、言わないと分からない、それが現実なのだということも同時に思った。

 「子どもたちは、さまざまな偏見の中で暮らしている。高校無償化の問題では各地で子どもたちが裁判を起こしている。神戸朝高も月に1度、子どもたちが街頭に立って署名活動をしている。声をかけてもほとんど無視されて―中には『頑張りや』、という激励もあるが―、そういった活動をしていることを、ほとんどの人は知らないと思う。僕たちももっと声を上げていきたいが、朝鮮学校の子どもたちがどんな思いをしているのか、発信していってほしい」

 いつも子どもたちが被害を受けている。すべての問題解決のための一番の根本である、日本による朝鮮への植民地支配に対する清算が一刻も早くなされなければならない。(理)
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2018年度コッソンイポスター完成!

2018-06-29 10:00:00 | (麗)のブログ
以前からこのブログでお知らせしていた、作文コンクール「コッソンイ」の2018年度ポスターが完成しました!
朝鮮新報ではすでに発表がありました。


ついにやってきた「統一の息吹」。
歴史的な南北首脳会談後、統一旗を掲げ、笑顔で歩く…。
あの日の喜びと、変わっていくであろう「未来」を、
ワクワクしながら願う子どもたちの様子を表現しました^^


タイトルの下にある朝鮮語の文章をじっくり読むと、ある「仕掛け」が…?

今年も個性あふれる作品が多く寄せられることを期待しています。(麗)
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オンマごころ

2018-06-28 10:00:00 | (理)のブログ

 日本各地の子育てサークルを紹介する連載「この街のオンマオリニサークル」。企画を担当するようになってからこれまで6つのサークルを訪ねたが、どこも創意工夫に溢れていて楽しくあたたかい空間だった。

 今回は福岡県小倉支部で定期的に開催されている「たんぽぽクラブ」にお邪魔した(誌面の都合上8月号はKyc journalともに休載し、9月号で紹介します)。
 この日の内容は「ポジャギアート教室」。ポジャギ(보자기)とは、ものを包んだり覆ったりする時に使う布のことで、日本でいう風呂敷に当たる。包み方には様々な種類があり、結び目を工夫すると上の写真のように印象がグンと華やぐ。韓国のチョゴリ屋さんで働いた経験のある同胞講師を招き、基本の包み方・結び方をレクチャーしてもらっていた。

 「ではまず、好きな色のポジャギを選んでください」
 なめらかな質感の生地に、優しくも鮮やかな色合い。表と裏で色が違い、参加したオンマたちはしばらく悩んだ末にそれぞれのポジャギを選んだ。

 「自分の子どもが女の子だったらピンク系のポジャギを選ぶ人が多いんですよ。男の子だったら青系とか。女の子と男の子がいる場合は、ピンク系と青系が表裏のものを選んだり。不思議とそういう人は結構います」

 講師の言葉に互いの手元を確認するオンマたち。
 「あっ、私もだ!」
 「オンニ男の子ですもんね」
 「うちも男と女! 本当だ~」

 そんな中、注目されたのはサークル責任者のオンマ。「あれ、男の子?」「男の子よ~」と言葉が交わされ笑いが起きる。責任者のオンマは青系のポジャギを選んでいたが、雰囲気的にどうやら娘さんがいるようだ。

 「いや、うちの子は最近ピンク系を卒業してこういう色が好きなんよ。つい子どもが好きな色で選んじゃうね」。

 サラッと過ぎていった何気ない一言だったが、無性に心に残った。
 男の子だから女の子だからというより、「あの子は…」と選ぶ色。なによりも、その場にはいないのに子どもが基準になっていることに驚いた(子育てサークルと銘打っているが、この日は純粋にオンマたちのリフレッシュと交流の場だった)。

 「あー、オンマっていうのは、好きな(自由に、という意味)ものを選ぶ時にも子どもの顔が浮かぶのかなあ」と、ちょっとジーンとした。もし私がその時ポジャギを選ぶ立場だったら、自分以外の誰かのことを自然に考えたりしただろうか? 

 自分のオモニもなにかを選んだりする時に、そうやって私や弟のことを思い浮かべてくれていたんだろうか。なぜか余韻に浸りたく、帰りの飛行機の中でも責任者のオンマの言葉を何度か反芻していると、「子どもって自分がいないところでも愛情を向けられている存在なのかな」と気づいた。
 もしかしたら私は、責任者のオンマの言葉に「子ども」として反応して嬉しかったのかもしれない。取材中、当のオンマ(10歳上)から「オンニ(お姉さん)」と呼ばれるというまさかの出来事もあったが…。

 すでに子どもがいる同級生も多い。きっと、オンマではない私には分からない種類の気持ちを知っているんだろう。「子どもを持つ」ことの不思議さについて、いろいろな思いを巡らせた。(理)
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東京無償化裁判控訴審が結審、10月30日に判決

2018-06-27 10:00:50 | (瑛)のブログ


国側、論理破綻認める


 東京無償化裁判控訴審第2回口頭弁論が6月26日、東京高裁101号法廷で行われ、317人が傍聴券を求めて列をなした。開廷時間は30分。2回の弁論を終えたこの日、結審が決まり、10月30日(火)16時から判決が言い渡されることになった。

 前回の控訴審第1回口頭弁論を振りかえる。国側は就学支援金不支給の理由として、①ハの削除と、②審査の結果、規程13条に適合すると認めるに至らなかった―という2点を主張していた。これに対し、原告の朝高側は控訴理由書で、東京地裁判決(2017年9月13日)でハ削除の違法性について何も検討しなかったことに意義をとなえ、ハ削除は明らかに政治的外交的理由による違法なものだと主張していた。

前回の弁論で裁判長は、国側の代理人に「規定ハ削除」について「論理的な説明を」との宿題を課していた。

裁判長は国側が、朝高を不指定にした当初(2013年2月20日付けの不指定通知)は、①規定ハの削除、②規程13条に適合すると認めるに至らなかった―という2つの理由を掲げていたにも関わらず、裁判が始まってからは、②を主に主張し、①は念のため通知したと、主張を変えた経緯を振り返りながら、「二つの理由の関係について論理的に述べてほしい」と促していた。

 この宿題に対して国側は第1準備書面で回答し、二つの理由の関連性について、あっさりと「論理的に成立しない」と自らの論理破たんを認めた。国の主張はこうだ。

 ①②の論理的関係について、規定ハが存在しなくなった場合には、下位法令である規定13条は存立の基礎を失うので、「①と②は不指定処分の理由として、論理的に両立しない」。国は論理的に成立しないと言いながらも、省令改悪の前日である2013年2月19日に「不指定処分の通知文書を出す予定である」と朝高にファクスで通知したことを理由に、「省令改正の効力が発生する余地がある」と主張。朝高排除を意図した省令改悪が違法であったと判断される場合でも、規定ハが存在することになるとして、理由②が不指定処分の理由になると述べた。

法廷で、国側の準備書面に対する意見陳述を行った原告側の師岡康子弁護士は、「この主張は、行政庁において、自らが行った省令改正が違法であることを前提とするものだ。これは法の一般原則である禁反言にも反するものであって到底認められない」と喝破。「不指定処分が、規定ハの削除が違法・無効であることを前提してなされたはずがない。②はすでに存在していない法令の適合の有無を論ずるものとして、法律的には無意味であり、…不処分の理由たりえない」と述べた。

国の主張は、「ハの削除が違法であることを前提にした、前代未聞の主張。国の主張は破たんしている」(報告集会での李春熙弁護士の発言)

 東京弁護団が提訴当時から主張しているように、政治的外交的な理由でなされた「規定ハ削除」は高校無償化法の趣旨からしても違法であり、国が朝高を排除した理由もこの一点に尽きる。「規程13条に認めるに至らなかった」とする国側の主張は、とってつけたものであり、ここにきて国の論理破たんはますます明らかになっている。

 この日の弁論で原告側は石井拓児・名古屋大准教授の意見書を含む3種類の準備書面と証拠調べの必要性に関する意見書を提出した。

 また裁判所は、双方から出された省令改正後の様々な証拠を却下。「規定ハ削除の違法性」に論点が定まった印象を受けた。

 しかし、予断は許さない。広島、東京、愛知における無償化裁判は、地裁で敗訴しており、国側の意向を汲んだ判決が続く可能性は否定できないのだ。

4ヵ月後の判決までの課題

 判決まで4ヵ月。報告集会で、「高校無償化からの朝鮮学校排除に反対する連絡会」の長谷川和男代表は、「裁判の行方は国の世論がどのような動向に傾いているのかで、大きな影響がでる。新しい朝鮮半島をめぐる状況が生み出されている、今の状況を引き寄せ、主張を大きく展開し、朝鮮学校を来たことない人に知らせよう。ともに全力を尽くしていこう」と呼びかけていた。



 報告集会は、会場に立ち見が出るほどの満席。東京朝高の舞踊部キャプテン、申英鉉東京中高オモニ会会長らが発言し、東京朝高の3年生全員が合唱「民族教育の誇りたかく」を披露し、場内を盛りあげた。

 申会長は、昨年9月の一審判決に「怒りと、深い悲しみ、国を相手に闘う難しさ感じた」と吐露しつつ、「私たちは、ひるむことなく闘い続ける。こんなことで負けない。ともに闘ったすべての人と抱き合える日までともにがんばりましょう。日本政府には、朝鮮と和解し、就学支援金の訴求適用と補助金支給の見直し、生徒たちの学ぶ権利保障するよう強く求めます」と熱い気持ちを伝えていた。(瑛)
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歴史に残る激闘-東京朝高サッカー部インターハイ予選準決勝

2018-06-26 10:12:44 | (全)のブログ
 先週の土曜、6月23日に「全国高等学校総合体育大会」(インターハイ)サッカー東京都予選の準決勝が駒沢第2球技場で行われた。
勝てば全国行きの切符が手に入る大一番の試合。東京朝高サッカー部の対戦相手は関東第一高校。この関東一高は15年度から3年連続インターハイを出場しており、16年、17年度連続で選手権大会出場を果たしている強豪校。近年、東京朝高サッカー部の全国大会をかけた試合(インターハイ、選手権の都予選)では関東一高が立ちはだかる局面が多かった。15年度のインターハイ都予選準決勝では1-2、17年度の選手権都予選Aブロック準決勝は延長戦の末に3-4で敗れるなど悔しい思いをしている。

 試合前、東京朝高選手たちは緊張している様子もなく、互いに声をかけあい、良い雰囲気のなかでアップしていた。
 そして、試合開始のホイッスルとともに会場には、東京朝高サッカー部部員による応援団、応援に駆けつけた東京朝高の全校生、保護者、関係者による応援コールが鳴り響く。

 前半8分、相手がPA内でハンドを犯し、東京朝高がPKを獲得。これを10番の洪悧鎭選手(3年、MF)が決め、東京朝高が先制した。

先制し、大いに盛り上がる応援団

 しかし、前半途中から相手のポゼッションも増え相手ペースに。すると同27分に東京朝高が自陣PA内でのファールによりPKを献上し失点。試合は同点になる。その後も相手の猛攻は続くが朝高は競り合いなどの局面で粘り強く対応し、気迫あふれるプレーを展開。しかし、同38分に東京朝高は一瞬のミスを突かれて失点してしまう。1-2とゲームがひっくり返される。

先制し、逆転された東京朝高。そして先制され逆転した関東一高。精神的な部分では前者のほうがダメージは大きい。しかし東京朝高選手たちのメンタルは逆転され落ち込むほどやわではない。それを象徴するかのごとく、前半終了間際に東京朝高は右サイドの深い位置まで切り込んだ2番の安准吾選手(2年、SB)から8番の尹智秀選手(3年、MF)へ、そして最後にパスを受けた10番の洪悧鎭選手(3年、MF)がミドルシュートを放ち得点する。試合は2-2の振り出しに戻り、前半を折り返す。

 後半に入ると、試合は終始、東京朝高ペース。両サイドを幅広く使った攻撃で多くのチャンスを作り出す場面が増える。すると後半13分、相手がまたもハンドを犯し、東京朝高はフリーキックを得る。このフリーキックに4番の鄭攸堅選手(3年、CB)が合わせるが惜しくも外れる。

 連続的な攻撃は分厚いディフェンスによって生まれるもの。東京朝高の攻撃が相手にクリアされても分厚いディフェンスを展開し、セカンド(こぼれ球)を拾いマイボールにする。そしてまた攻撃。このように後半は東京朝高が圧倒するが、決めきれない。

 すると今度は相手のチャンスがめぐってくる。後半31分、相手の左サイドの素早い攻撃から失点。試合は2-3に。

点を失っても応援団は「大丈夫、おれらがいる!」といった掛け声で選手たちを鼓舞し声を張り上げる。それに応えるかのごとく、東京朝高の選手たちは怒涛の攻撃を繰り広げる。

後半36分、東京朝高のキャプテン文炯晶選手(3番、DF)が強烈なミドルシュート。しかしキーパーの好セーブに阻まれる。
後半終了間際、10番の洪悧鎭選手(3年、MF)がロングシュートを放つも、これまた相手キーパーが好セーブを連発。

後半アディショナルタイムも残りわずか。最後の猛攻がついに得点へと結びつく。東京朝高、左サイド5番の朴俊範選手(3年、SB)がクロスをあげると4番の鄭攸堅選手(3年、CB)が競り勝つ。こぼれたボールの先にいた2番の安准吾選手(2年、SB)のシュートがゴールネットを揺らし、値千金のゴールを決めた。その瞬間、選手たち、ベンチ、応援団、観客席の歓喜の雄叫びが爆発し、試合会場は最高潮に盛り上がる。同時に後半終了のホイッスルが鳴り、試合は延長戦へと続く。


 延長戦は互いに一歩も譲らないゲーム展開。東京朝高の選手たちは粘り強く、同胞たちの思いを胸に、戦い抜いた。試合の決着はPK戦に委ねられた。

 東京朝高の先攻から始まったPK。一回目は冷静に決め幸先の良いスタート。しかし、相手も全国出場経験のある強豪校。きっちりと決め、PKを成功させる。東京朝高は5人中4人がシュートを決める一方、関東一高は5番手までに全員が成功。これが決まると敗退してしまう。全員が固唾を呑んで見守るなか、東京朝高の守護神、姜ブラマ選手(3年、GK)は相手の5本目をセーブし、PK戦はサドンデスに。サドンデスで味方選手が失敗したが、守護神はまたも相手のシュートをとめ、2回連続でセーブ。
 最終的に7人目のキッカーで勝敗が決したものの、合計スコア3-3、PK4-5という歴史に残る激闘に観客たちは心からの拍手を送った。

 東京朝高選手たちの最後まであきらめずに戦い抜いた勇姿―「朝高魂」は、多くの同胞たちに力と勇気、感動を与えるものだった。関東一高との歴史に残る激闘で今後、東京朝高サッカー部に対する他校のマークはより一層きつくなり、選手権予選でも「打倒、東京朝高」をかかげ、挑んでくる高校も多くなる。冬の選手権予選では同胞たちの期待を胸に、気負うことなく「朝高魂」で全国の切符をつかみとってほしい。(全)
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期待したい北と南のスポーツ交流

2018-06-25 09:45:29 | (K)のブログ
 6月14日からロシアでサッカーのワールドカップが始まっている。
 ワールドカップは1974年の西ドイツ大会からリアルタイムで見続けているが、回を追うごとに興味が薄れていき(朝鮮民主主義人民共和国が出場した2010年の南アフリカ大会は別)、今回のロシア大会は、まったくと言っていいほど関心を持てないでいる。始まる直前までその存在を忘れていたほどだ。関心が薄れていくのは、オリンピックも同じで、年齢を重ねていることが原因なのだと思うが、今回のロシア大会の無関心は他の原因がある。
 年初から劇的に変化する朝鮮半島情勢の方に関心が全て向いてしまった。板門店での首脳会談や朝米首脳会談などに夢中で、ワールドカップのことは完全に直前まで忘れてしまっていた。

 18日に北南スポーツ会談が板門店で行われた。7月に平壌、秋にソウルで北南統一バスケット大会を開くこと、8月にインドネシアで開催されるアジア大会での開閉幕式で合同入場し一部競技で合同チームを結成することなどが合意された。今後、板門店宣言を履行していく中で、北と南の合同チームが結成されるなどスポーツ交流が進められていくはずだ。大会そのものよりも、北と南の交流の方に関心が行く。

 2020年の東京五輪に北と南はどのように参加するのだろうか? ぜひとも合同入場をこの目で見たいものだ。また、2022年にカタールで開催されるサッカーワールドカップには、北と南の合同チームで参加することになるかもしれない。2030年のワールドカップの北南の共同開催という話も出ているらしい。

 もう一つサッカーに関する話題。23日の土曜日、インターハイ進出をかけた東京都予選の東京朝高と関東一高校との準決勝の試合が駒沢第2競技場で行われた(東京朝高は準々決勝で強豪の帝京高校を4―3でくだし準決勝に進出。東京都からは2校が出場するため準決勝で勝利するとインターハイ出場となる)。
 会社でSNSを通じて送られてくる経過に注目していた。試合は壮絶な闘いだったようだ。点の取り合いのなか、2-3で朝高がリードされたまま後半アディショナルタイムに。そこで劇的な同点弾が決まり3―3に。延長戦でも決着がつかず。勝負はPK戦にまでもつれ込んだが、結果は4―5で破れてしまった。インターハイまであと一歩だった。激闘の模様は朝鮮新報のHPで。http://chosonsinbo.com/jp/2018/06/0623yd-2/
 東京朝高サッカー部、年末の全国大会で悲願の「全国大会出場」を果たしてほしい。(k)
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次回、ついに結審!―九州無償化裁判第19回口頭弁論

2018-06-22 10:00:00 | (理)のブログ
 九州無償化裁判の第19回口頭弁論が、きのう福岡地裁小倉支部207号法廷で行われ、約90の傍聴券を求めて百数十人の同胞・日本市民が駆けつけました。九州朝鮮中高級学校の高級部全生徒のほか、福岡朝鮮初級学校の初級部6年生も参加。福岡初級の子どもたちはオモニ会の代表と一緒に車で1時間かけて裁判所を訪れ、初めての裁判所に少し緊張した面持ちでした。

 昨日は、原告側の意見書を提出した三輪定宣先生の証人尋問が行われました。三輪先生は、教育行政学の中でも主に教育財政学を専門として研究されている方で、千葉県に暮らしながらさまざまな大学で教えています。加えて、1980年代からは日本で無償教育をすすめる教育運動を精力的に続けてこられたそうです。御年80歳!



 ご自身の専攻の立場から書き上げた意見書のタイトルは「朝鮮高校生就学支援金差別事件に関する意見書―無償教育の意義と朝鮮高校生就学支援金差別の不当性―」。法廷では、この意見書をもとに尋問が進みました。

 三輪先生は意見書の冒頭で、国連・国際人権規約の社会権規約(=“A規約”。「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」のこと)について、「半世紀にわたり国際社会の権利保障の法規範となっている」と重要性を説明しています。法廷でもそれに言及しつつ、A規約13条で示している「教育への権利」の部分を強調しました。
 
 同13条1項では、「教育についてのすべての者の権利」を定め、「教育が人格の完成及び人格の尊厳」、「諸国民の間及び人種的、種族的又は宗教的集団の間の理解、寛容及び友好」などを目指すべきことを明記しています。
 続く2項では、このような「権利の完全な実現」のため、初等教育の無償制に加えて中等・高等教育の「無償教育の漸進的導入」などを規定しています。
 そして同13条は、規約2条2項が定める無差別平等原則が適用されるため、「人種」「国民的出身」など「地位によるいかなる差別もなしに行使されることを保障」されています。(以上、概要は意見書より)

 三輪先生は尋問に沿って以上のような内容について適切に説明しつつ、したがって「無償教育を受ける権利は、朝鮮高校の生徒にも無差別平等に保障されるべき」だと理論的に明言しました。

 他にも、朝鮮学校が無償化制度に適用されるかどうかの基準となっていた規則1条1項(専修学校及び各種学校のうち「高等学校の課程に類する課程」)2号ハの削除については、「もともと『高等学校の課程に準ずる課程』ではなく、『高等学校の課程に類する課程』」としたのは、一条校だけではなく、より柔軟に適用を認める趣旨のものだから。ハの削除は、朝鮮学校を排除するための恣意的な細工」という旨の発言をして、文科省の裁量権の乱用を指摘しました。

 また、被告による「朝鮮学校は総聯や朝鮮から『不当な支配』を受けている」という主張に関連づけて行われた尋問では、以下のようなやり取りがありました。
 ●弁護士「朝鮮学校を見てどう思われましたか?」
 ●三輪先生「教育の自治が保障されている。日本の文化についての理解も取り入れながら、自分たちの教育を実践しようという思いが感じられた」
 三輪先生は続いて、「民間の団体が教育の内容を促進させる。そこに権力が不当に介入することが良くない、許されないというのが『不当な支配』の考え方。『不当な支配』の主体は国家や権力」、「(朝鮮による「不当な支配」という論法もあるが)教育基本法ではもともと『他国からの干渉』ということは想定していない」という風にものべていました。

 そうして約1時間におよぶ尋問は終了。専門家による、よどみのない回答に傍聴席からは小さく拍手も上がりました。



 裁判後の報告集会では、三輪先生への尋問を行った安元隆治弁護士が発言。
 「三輪先生は普段から色々な人と話す機会があるが、教育法の学者の中で、この問題について国と同じような立場をとって、無償化制度から朝鮮学校を除外するのを是とするような人とは会ったことがないと仰っていた」
 「今回の裁判に向けて三輪先生と何度も打ち合わせをしながら思ったのが、先生は『(日本で完全な)無償教育を実現する』という、高校無償化よりもさらにずっと先を見ている方だということ。とても大きなことを考えている先生に、国によるヘイトのような、朝鮮学校だけを除外するという理屈はあり得ないという、こんな情けない証言をして頂かないといけない事態に申し訳なさを感じた。そういう酷い価値観の中で、この問題をどう捉えるべきかということを裁判官にアピールしたかった」
 とても印象的な視点でした。



 続いて金敏寛弁護士が、「先日の原告2人も、裁判官に対して非常に堂々と、朝鮮学校で学ぶことの意義、なぜ自分が高級部を卒業しても原告となり、裁判所に来て話をするのかという熱い思いを話してくれた」と、6月7日に開かれた第18回口頭弁論(原告への本人尋問)についてもおさらい的に言及しました。
 この日、イオからは取材に行けませんでしたが、九州無償化裁判のHPで活動報告が掲載されているので詳細が気になる方はチェックしてみて下さい。
http://msk-f.net/katudou.html

 私も別の場所でたまたま聞いたところによると、大変いい尋問だったとのことで、内容を以下に紹介します。

 「幼稚班から高級部まで朝鮮学校に通った子で、今は日本の大学に通っている。その子によると、差別はときどき受けてきたらしいんですね。例えば、中級部の時に日本の学校とサッカーの試合をしていて、朝鮮学校側が勝っていたら相手チームの選手から『キムチくせえ』と言われたとか。私みたいな日本人からしたらすごくショックで、ああ、もっと差別の現状を知らないといけないなと思いました。でも、その子は『ほとんどの日本人はそんなことはなくて、とても親切にしてくれる』とキラキラした目で話すんですね…」
 「私が尋問を担当したんですが、質問の打ち合せも特にせず、その子には思っていることを本当に素直に自由に話してもらいました。そうしたら、『大学には朝鮮名で通っているの? 通名で通っているの?』という質問で、その子がついうっかり法廷で自分の本名を言ってしまったんですね。法廷では、傍聴席から顔が見えないように仕切りも置くのに、自分で名前を言っちゃった(笑)。閉廷後、報道の方に『名前を出すのは控えて下さい』と伝えましたよ」(弁護団・後藤富和弁護士より)

 裁判官も、このハプニングにはつい笑ってしまったそうです。

 さて次回、第20回口頭弁論の期日は9月20日(木)14:00に決まりました。場所は福岡地裁小倉支部207号法廷です。弁護団はこれから最終準備書面の作成に取りかかります。九州でもついに結審! 緊張が高まります。引き続き各地の進行状況とリンクさせながら、力強く進んでいく様子を追っていきたいと思います。(理)
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おいしい冷麺が食べたい!

2018-06-21 10:00:00 | (麗)のブログ
イオ8月号の特別企画は、いま何かと話題の「冷麺」を企画します。
味に定評のある冷麺専門店や、焼き肉店の冷麺を紹介する予定です。

企画会議で特集や特別企画の内容が決まれば、デザイナーは記者が各地に取材に行く前に、
「カンプ」というデザインイメージを具体的に示すための見本を作ります。
過去、イオに掲載された冷麺の画像などを集めて誌面を組んでいるのでが、
作っていくうちに段々と冷麺が食べたくなる衝動に駆られてきます…。
最近ではその欲に負け、某ファミリーレストランにて盛岡冷麺(と銘打っている)を食べてきました。
個人的には好きな味なので、暑い季節になると商品が出るのを何気に待ち望んでいます。
※画像はファミレスの冷麺ではないです。

今日は蒲田にあるお店に取材に行きますが、すごく楽しみにしています。

読者のみなさまがこの企画を読んで、「冷麺食べたい!」と思えるような誌面にしたいと思います^^
冷麺企画、どうぞお楽しみに!(麗)
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幼馴染からの連絡

2018-06-20 10:00:00 | (全)のブログ

先日、幼馴染から連絡がきた。

「記事見たよ! (全)の記事見て元気が出た! 頑張ろう!」と私の記事の写真と一緒にメールが送られてきた。

自分の記事が月刊イオの誌面で少しずつ掲載されていくなかで、こういった連絡は大学の同期を筆頭に送られてきたが、幼馴染からの連絡は、より一層感慨深いものがあった。

幼馴染とは幼稚園から大学までずっと一緒の仲だ。かのじょは私より1年早く大学を卒業し、ウリハッキョ(朝鮮学校)で初級部の先生になった。

私たちの母校は地元でも人数の少ないハッキョだった。

幼稚園の頃の同級生は3人。そして初級部時代は5人で6年間を過ごした。中級部からは他校の子らと一緒になるので、小さい学校出身だからといって、なめられまいと張り切っていたことを記憶している。時には「かっぺ方面」と言われながら、自分たちとは逆の電車ホームで都市部に帰る大勢の同級生をみてうらやましいと思ったこともあった。

幼稚園、初級部を過ごした母校も、今は私が通っていた頃より児童数が少なくなっている。
幼馴染からの連絡に私はこう返した。


「お盆に地元帰るから、同窓会も兼ねて久しぶりに母校を訪ねて、なにか手助けになることでもしよう!」


数日後には入社して3ヵ月を迎える。
この3ヵ月間はあっというまであり、学ぶことしかなかった。
毎日が勉強なので、新しいことを学ぶ楽しさでいっぱいの日々。
常に初心を忘れずに、もっとたくさんの方に読んでいただける記事を届けたいと思った。(全)
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資料集「朝鮮人犠牲者追悼碑~歴史の真実を深く記憶に」が発刊

2018-06-19 10:00:00 | (瑛)のブログ


資料集「朝鮮人犠牲者追悼碑 歴史の真実を深く記憶に」が5月下旬、朝鮮人強制連行真相調査団から出版された。

朝鮮人強制連行の真相調査、被害者への謝罪と補償は本来、日本政府によってなされるべきだが、手付かずのままだ。各地の追悼碑をまとめて紹介したのは本書が初めて。同調査団は、本書の出版を通じて「過去の清算につなげたい」と普及に取り組んでいる。

日本各地の追悼碑が一冊に

 資料集は、全254ページ。日本の35都道府県下にある160の朝鮮人犠牲者追悼碑が写真、所在地、建立地、建立日、大きさ、碑文、解説とともに収められている。

 日本の朝鮮植民地支配時、在日朝鮮人は関東大震災時の流言蜚語によって数千人が虐殺され、日本の国策として、610万人以上が日本や朝鮮各地の炭鉱や鉱山、軍需工場で過酷な労働を強いられた。資料集には、関東大震災朝鮮人虐殺犠牲者の碑、強制連行、強制労働犠牲者の碑、日本軍性奴隷被害者の碑、長崎、広島の原爆犠牲者の碑をはじめ、朝鮮人関連の追悼碑が都道府県別に整理されている。日本政府による加害の事実や犠牲者名が記されたものもあるが、まったく言及されてないケースも多い。建立の主体も同胞や日本市民、自治体首長、行政、企業が建てた「慰霊碑」「慰霊塔」「供養塔」「記念碑」「祈念碑」「墓」などさまざまだ。

 一番古い碑は1908年に熊本で建てられた。鹿児島本線工事での犠牲者を追悼するものだ。

 72年以降に各地に朝鮮人強制連行真相調査団が結成されてからは、調査が活発になったことを受け、追悼碑が多く建立された。この時期の特徴として、①建立主体が日本の市民や団体に変わり、②碑文に「強制連行」「強制労働」の文言が刻まれ、③日本軍性奴隷被害者や原爆犠牲者、沖縄戦で亡くなった軍人・軍属の碑が建立されるようになった―と分析するのは金哲秀・朝鮮人側事務局次長。資料集の巻末に解説を寄せている。

しかし、2012年以降、各地で追悼碑や説明板の撤去や書き換えなど、歴史修正主義者による追悼碑への攻撃が始まったことで、朝鮮人強制連行真相調査は大きな試練に直面した。そこで、長年の調査の結晶とも言える追悼碑を記録することを調査団の河秀光事務局長(71)が発案。調査団メンバーや現地に詳しい人たちが現地に赴き、碑文を起こし、碑文にはない建立の経緯や追悼の現状について取材を重ねた。

 完成まで足掛け2年。「過酷な状況の中で犠牲になった人たちやその家族の運命に接し、涙ぐんだことも一度や二度ではなかった」と執筆陣は語る。協力者は100人以上に及んだ。今後は国立国会図書館や総聯本部、日本人有志に普及していく。また朝鮮半島や欧米にも広く発信するため、朝鮮語版、英語版も出版する予定だ。また、掲載できなかった碑の調査も続けていく。(瑛)

※資料集は1冊、3000円、問合せ先:朝鮮人強制連行真相調査団・資料集制作委員会(krc72@outlook.jp)

各地に様々な碑



 祖国解放後、関東大震災時や強制連行期の犠牲者を追悼する碑が建てられたが、碑名に「朝鮮人」と書かれたのは福島の朝連猪苗代支部によって建てられた「朝鮮人殉職者慰霊碑」が初めて(写真)。関東大震災の朝鮮人虐殺に関しては日本国家による朝鮮人虐殺の責任を記した碑が47年に朝連千葉県本部によって建てられた。

 千葉県には、性奴隷被害者を追悼した二つの碑がある。鴨川市の「名も無き女の碑」は、日本軍で衛生兵として従事していた二人の日本人が建てた。今は遺族が供養を続けている。

 三重県には「追悼」と彫られた碑がある。三重県が発注した木本トンネル工事には、多い時で200人の朝鮮人が働いていた。工事も終盤に迫った26年1月2日、日本人と些細なケンカをした一人の朝鮮人が日本人に日本刀で切りつけられた。
 翌3日に朝鮮人労働者がこれに抗議したところ、木本の住民が労働者の飯場を襲い、立ち向かった李基允さんが殺された。さらに、木本警察署長の要請を受けた町長が召集した在郷軍人によって裵相度さんが虐殺された。現地の日本人住職が建立した二人の墓は無縁墓地にあったが、当時4歳だった裵さんの次男が90年4月に熊野市を訪れたことを機に並んで置かれるようになった。

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墓前で接した首脳会談

2018-06-18 10:00:00 | (相)のブログ
 6月12日、朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ合衆国間の史上初となる首脳会談がシンガポールで開かれた。
 仕事柄、このような大きな政治的イベントがあった際はテレビモニター(あるいはパソコン)にかじりつくか、「街の声を拾う」的な取材に出かけることが多い。今から11年前の2007年10月、2度目の北南首脳会談が行われた際、某新聞で朝鮮半島問題を担当していた私は職場に備え付けられたテレビ画面とデスクのノートパソコン画面を交互に見ながら、平壌から送られてくる記事と写真をキャッチする作業に没入していた。今年4月27日の北南首脳会談の時は近畿地方に出張し、パブリックビューイングや祝賀会の会場、商店街などを回りながら、在日同胞の声を取材した。

 そして今回の歴史的な朝米首脳会談がシンガポールで行われていた同時刻、私は職場や取材の現場ではなく、祖母と父が眠る墓の前にいた。
 この日は祖母の命日。昨年6月12日に96歳で亡くなった祖母の一周忌法要に参加した。
 家族、親戚一同が集まった場の話題は、亡き祖母の思い出と急進展する最近の朝鮮半島情勢。当然ながら、同時刻に行われていた朝米首脳会談も話題にのぼった。
 家族史と首脳会談。一見、何の関係もなさそうだが、年老いた叔父、叔母が話す家族史をそばで聞きながら、私の家族が歩んできた歴史は朝鮮半島の近現代史と分かちがたく結びついているということをあらためて実感した。

 祖母がもし生きていたら、朝米両首脳の握手を見て何と言っただろうか―。
 祖母の命日と首脳会談の日程が重なったのはもちろんまったくの偶然なのだが、祖母がもたらしてくれたこの偶然に感謝した。(相)
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歴史に刻まれた6.12朝米首脳会談

2018-06-15 09:24:55 | (K)のブログ
 今日6月15日は2000年に実現した初めての北南首脳会談で共同宣言が発表された日である。6月25日は朝鮮戦争が始まった日とされている。そして新たに、6月12日が歴史的な日として記録されることとなった。
 6・12――初めての朝米首脳会談の実現と共同声明が発表された日として歴史に刻まれることになる。両国国旗の前で両首脳が固く握手する姿は今後、繰り返し目にされるだろう。

 朝米共同声明では、大きく4つのことが合意された。
1. 朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ合衆国は平和と繁栄を願う両国人民の念願に基づいて新たな朝米関係を樹立していくことにした。
2. 朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ合衆国は朝鮮半島で恒久的で強固な平和体制を構築するために共に努力する。
3. 朝鮮民主主義人民共和国は2018年4月27日に採択された板門店宣言を再確認し、朝鮮半島の完全な非核化に向けて努力することを確約した。
4. 朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ合衆国は、戦争捕虜および行方不明者の遺骨発掘を行い、すでに身元が確認された遺骨を即時送還することを確約した。

 1と2は、朝鮮と米国は、朝鮮戦争を終結させて平和協定を結び、国交正常化を実現させるために努力することを約束したものだと私には読める。その上で朝鮮半島の非核化の実現。会談後の姿や報道を見ていると朝米両国とも会談と合意内容に満足していることがわかる。
 3年間の朝鮮戦争では北と南など合わせて500万人の死者が出たと言われている。朝鮮全土は米国の猛烈な爆撃を受け、特に平壌は完全に廃墟となった。「朝鮮が復興するには100年かかる」とまで言われたほどだ。米国は核爆弾の使用も考えていた。そして、休戦後も米国は一貫して朝鮮の政権を崩壊させるために、軍事的・経済的圧力をかけ続けてきたのだ。
 その朝鮮と米国の首脳同士が直接会って話し合い共同声明が発表されたのである。日本のマスコミは、「具体策がない」などと言って文句をつけているが、とてつもない大きな意義があり画期的な出来事だ。スタートを切ったにすぎないとも言えるが、偉大なスタート、第一歩だと強調しておきたい。

 声明にも明記されているが、今後すみやかに政府間で話し合いが持たれ具体的なことが決められ積み重ねられていくことだろう。休戦協定が結ばれた7月27日、8月15日の解放の日、9月9日の朝鮮の建国70周年にどのような行事が行われるのか、文在寅大統領が秋に平壌を訪問するのか、今後も朝米首脳会談が平壌やワシントンで開かれるのか……板門店宣言、朝米共同声明の履行の中で、これからの様々な日程がどのように進められていくのか。歴史・世界の大きな変化を目撃したい。最後になったが、朝・日の会談にも期待したい。(k)
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イオ7月号が完成!

2018-06-14 10:40:00 | (全)のブログ


本日14日に月刊イオ7月号が完成しました。

表紙を飾ってくれたのは、大阪朝鮮高級学校ラグビー部監督の権晶秀さん。
14年以来の花園出場を目指す大阪朝高ラグビー部は「第73回大阪高等学校総合体育大会」(4月8日~5月20日)で準優勝を果たし、大会3位までに与えられる冬の「全国大会」(花園)の府予選Aシードを獲得しました。大阪朝高ラグビー部の花園出場への期待が大きくかかります。

特集は「真の雪解けへ-動き出した朝鮮半島」です。
4月27日の歴史的な北南首脳会談に続き、5月26日には第4回北南首脳会談が電撃的に行われました。板門店宣言履行へと着実に動き出している朝鮮半島。

本特集では、第4回北南首脳会談や板門店宣言後の朝鮮半島情勢と今後のスケジュールをまとめたもの、情勢がもっとよくわかる「朝鮮半島現代史きほんのき」、「蚊帳の外」日本に対する日本人識者の視点や在日同胞作家によるエッセイ、そして本社記者による「統一」への思いなど盛りだくさんの内容となっています。

他にも、総聯24回全体大会、北南統一ムードに沸く在日同胞のイベント「統一マダン東京」、高校無償化適用、補助金再開を求める広島「朝鮮学校ええじゃないね!春の平和パレード」、緊急ルポ 入管の収容問題を追って(下)、ヘイトスピーチ解消法から2年「ネットはヘイトにどう向き合うのか」、連載無償化差別を考える②石井拓児・名古屋大学准教授へのインタビュー、黄裕子さんのエッセイ「朝鮮舞踊家・姜輝鮮先生の意思を継いで」などが載っています。


●イオ購読を希望される方は、月刊イオ定期購読フォームからお申し込みください。
http://www.io-web.net/subscribe/
※1冊からのご注文も承っています。
※定期購読ではなく1号のみの注文の場合は、「その他伝達事項」の欄にその旨と希望号数を記入して下さい。


さて、6月12日に史上初の朝米首脳会談が行われました。

この朝米関係の大転換期にある今、同胞たちは何を思うのか。私も同日、中北支部(神奈川県)で開かれた「朝米首脳会談を支持する中北支部同胞の集い」に取材で赴き、同胞たちの思いを聞いてきました。この集まりでは、50代から80代のオルシンたち(2世、3世)を中心に15人ほどが参加しました。

集まりでは乾杯をした後、平昌五輪、北南首脳会談と北南関係発展にいたる一連の流れを映像で振り返り、朝米首脳会談に関するテレビ報道をみました。

両首脳が握手する映像が流れるとたちまち起こる拍手。

オルシンたちのさまざまな声を聞くことができました。

「胸が熱くなるような瞬間だ」

「共和国旗と星条旗の見栄えが意外といい」

「うちのアボジ(1世)がこれを見たら、どんな思いだっただろうか」

「今まで言葉では統一や終戦と言っていたけど、本当に実現する日がくるんだ」

「いまウリハッキョに通っている子どもたちこそ、真の統一世代だね」など

今まで、聞く機会が多くなかったオルシンたちの思いを聞くことができた貴重な体験となりました。


米国が植民地解放から間もない朝鮮半島に冷戦の論理をもちこんだことから「二つの国家」が樹立し、同じ民族同士の戦争が起き、分断が固定化された朝鮮半島。朝米間の確執の半世紀の転換に全世界だけでなく、全国の同胞たちも注目しています。(全)


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締切延長

2018-06-13 10:00:00 | (麗)のブログ
先日お伝えした作文コンクール「コッソンイ」のポスターが完成…
ではまだないのです。締切がちょっと伸びました。
なので発表はまた来週になりそうです。

よりじっくり製作することができたので、ほっと胸を撫で下ろしているところです。
PCでの色塗りは苦手な部類なので、うまく描けているといいですが…!

さて、イオ7月号の締切も無事に終わり、まったりモードな編集部ですが、次号に向けての準備は進行中。
7月号は明日、納品されます。

いつも表紙が綺麗に仕上っているか、色がちゃんと出ているか、ミスはないか…。
封を開けて手に取る瞬間はいつもドキドキします。

ぜひお楽しみに!!(麗)
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「黒人ソング」についての考察 ~Childish Gambinoの楽曲から

2018-06-12 09:50:00 | (理)のブログ

※今日はただただ趣味の話を書き連ねます。

 最近、Donald Glover(ドナルド・グローヴァー)という人物に注目している。俳優や歌手として活躍するアメリカのアーティストで、ステージネームはChildish Gambino(チャイルディッシュ・ガンビーノ)。
 近年では「Redbone(レッドボーン)」という曲が大ヒットを果たしたそうで、かくいう私もそれを通じてChildish Gambinoという名前を知った。ちょうど昨年の今ごろ、朝鮮民主主義人民共和国へ発つ前日に入ったインドカレー屋さんの店内でかかっていたのだが(今後しばらく食べられなくなるから行っておこうと思って入ったのでよく覚えている)、イントロから引き込まれて、すぐにスマホの曲名検索アプリを起動した。
 何度かそのまま曲を堪能したあと、和訳サイトで色々と調べてみる。歌い出しが一言、「Daylight(夜明け)」だったことに気づき、(うおーかっこいい)と鳥肌が立った。また、“Redbone”とは「色素の薄い黒人女性」「(主に黒人の)明るい色を持つ人、ハーフの人」「淡褐色の比較的明るめの肌の色をした混血のアフリカ系の人間」を指すということも分かった。

 数多くある和訳サイトのうち一つを引用してみる。
http://ongakugatomaranai.com/childishgambino_redbone/

Daylight(夜が明けてくる)
I wake up feeling like you won’t play right(君が何か正しくないことをしてる気がして目が覚める)
I used to know, but now that shit don’t feel right(気づいてたんだ、今は君がしたことが正しいことだったとは思わない)
It made me put away my pride(僕のプライドを傷つけたんだ)

So long(さよならだ)
You made a nigga wait for some, so long(君は一人のニガーをずっと期待させていたんだ、だからさよならさ)
You make it hard for boy like that to go on(僕みたいな男は君と一緒にいることは難しい)
I’m wishing I could make this mine, oh(それでも、君が僕のものになるんじゃないかって気がしてるんだ)


 歌詞の内容は一見、浮気した“Redbone”を想いすがる黒人男性のことを歌っているように読める。しかし、最近になって別の意味も考えられそうな気がしてきた。今年5月に発表された、Childish Gambinoの新曲「This is America(ディス・イズ・アメリカ)」を知ったことが再考のきっかけだ。

 この曲も相当な話題になり、5月頭にMVが公開されてから約1週間で再生回数は1億回を超えたそう。私はなんの前知識もなく観たために最初はひどいショックを受け、硬直したまま最後まで映像から目が離せなかった。この先すぐネタバレになるので、未見の方で興味があれば、まずはぜひMVを検索して頂きたい。MVの冒頭シーンは以下。

―だだっ広い空間に椅子とギターが置かれている。後ろでは陽気で楽しそうなイントロが流れ、カメラがだんだんとズームアップしていく。すると右端から黒人の男性が登場しギターを弾き始める。カメラワークに合わせてChildish Gambinoが現れ、リズムに乗り身体を揺らす姿が画面に大きく写される。踊りながら先ほどの黒人男性に近づいていくと、いつの間にかギターは消え、なぜか頭に袋を被せられた状態で背筋を伸ばして座っている。Childish Gambinoがおもむろにピストルを取り出し、躊躇なく後頭部を撃ち抜く。…

 どアップではないが、弾丸が貫通して頭から血が噴き出す場面も普通に見ることができ、(えっなに!?!?!?)と息が止まる思いがした。ここから曲調がガラッと変わり、不穏な雰囲気に。そこで歌が始まる、「This is America(これがアメリカだ)」。

 MVを一度見終わったあと、すぐに和訳を検索。複数あったが、個人的にしっくり来たものを引用する。
https://www.youtube.com/watch?v=2Z84ahpw-3Y

Yeah, yeah, yeah, yeah, yeah,
yeah, yeah, yeah, go, go away(イェイ、イェイ あっちへ行け)


 イントロの部分である。(ん?)と思い、念のため「go away」の意味を改めて調べてみると、やはりその通りの意味が出てくる。(あ…初めからこんな感じだったのねー)とまた少し鳥肌が立った。曲中に黒人差別に対する直接的な表現が出てくることからも、この「go away」は黒人に向かって発せられたものであると想像できる。もしも英語ネイティブだったら、私のようにわざわざ和訳を確認してから再び映像を観るというタイムラグがない分、より感覚的な違和感を持つかもしれない。

Ooh-ooh-ooh-ooh-ooh, tell somebody 
You go tell somebody(誰かに教えるんだ、教えてあげるんだ)
Grandma told me(ばあちゃんが言ってたんだ)
Get your money, black man (get your money)(黒人ならしっかり稼がないとねって(働かないと))
Get your money, black man (get your money)(黒人ならしっかり稼がないとねって(お金を持っていないと))
Get your money, black man (get your, black man)(黒人ならしっかり稼がないとねって(黒人は買われるのさ))
Get your money, black man (get your, black man)(黒人ならしっかり稼がないとねって(買われてしまうのさ))
Black man(黒人だから)



You just a black man in this world(おまえがこの世界では黒人であることに変わりはない)
You just a barcode, ayy(おまえがただのバーコードだということも)
You just a black man in this world(おまえがこの世界では黒人であることに変わりはない)
Drivin' expensive foreigns, ayy(外国製の高級車を乗り回してるとしても)
You just a big dawg, yeah(おまえはいい仲間で)
I kenneled him in the backyard(庭で買ってた犬ほど仲がいい)
No proper life to a dog(だがあいつは犬の生涯を生きたわけじゃなかった)
For a big dog(“仲間”の人生も)


 意訳っぽい部分も結構ある気はするが、心情的になんとなく伝わるものがある。

…と、ここら辺で先ほど書いた、「Redbone」の歌詞が失恋ソング以上の、別の意味としても読めるかもしれないということに話を戻したい。
 「This is America」の歌詞を見ながら連想的に思いついたことだが、「Redbone」には「黒人は黒人であり、そのルーツから目を背けることはできない」というようなメッセージを当てはめることもできるのではないだろうか、と思ったのである。

 先ほど、“Redbone”=「(主に黒人の)明るい色を持つ人、ハーフの人」という意味を書いた。この歌は、(すごく単純に書けば)「ハーフであるがゆえに自由なアイデンティティを持つ人」へ、自身のルーツと歴史に自覚的になることを訴えているようにも感じられる。
 「Redbone」の歌詞には以下のような部分もある(冒頭で引用したサイトより)。

But stay woke(目を覚ますんだ)
Niggas creepin’(男たちが近づいてくる)※
They gon’ find you(奴らはきっと君を見つける)
Gon’ catch you sleepin’(君が寝ている隙に捕まえにやってくる)
Now stay woke(今すぐ目を覚ますんだ)
Niggas creepin’(男たちがやってくる)
Now don’t you close your eyes(目を閉じてはダメだ)

※「Niggas」を「男たち」と訳しているが、本来は「黒人」の意味。

 そういう意図で上の歌詞を読むと、また違った見方も生まれてくるような気がする。例えば、「“黒人„として見られる瞬間が来る」「黒人ということから目を逸らしてはダメだ」というような。

 また、「This is America」について考察しているネット記事の一つには、MVに登場するChildish Gambinoが上半身裸なのは、黒人解放運動家であるフェラ・クティという人物をインスパイアしているから?という説も書かれていた。比較写真を見ると、確かに格好が似ている。
 その記事を読んだあと、たまたまYoutubeにアップされている動画を見つけた。アメリカの「The Tonight Show(ザ・トゥナイト・ショー)」というテレビ番組でChildish Gambinoが「Redbone」を披露している映像だ(トップの写真)。この時も同じく上半身裸で歌っていた。動画が公開されたのは17年1月だから「This is America」が発表されるよりずっと前だが、先ほどの「もう一つの意味」について考えると、ついついこじつけて考えたくなる。(理)

余談①
 くしくも、月刊イオ2018年1月号の映画欄で紹介した「ゲット・アウト」という作品の冒頭挿入歌で「Redbone」が使用されていた。当時の記事にも書いた通り、この作品はアメリカの黒人差別を題材にした異色スリラーだ。映画の内容と歌詞が絶妙にリンクしている部分があり、それを意識して観るのも面白い。

余談②

 「This is America」はやはりショッキングな映像だったようで、事前知識を与えずにこのMVを見た人たちがどんな反応を示すかというモニタリングをまとめた2次制作動画がいくつもYoutubeに上がっていた。みな初めは身体をくねらせるChildish Gambinoに笑って自身もリズムをとったりするが、ピストルが登場した瞬間に表情が変わり、本当に撃つのを目撃して驚愕する。
 中には、複数の黒人たちにこのMVをすべて見せたあとで自由にディベートさせるような動画もあった。ほかに、白人2人が同様のことをしている動画も。双方がなにを話していたのか聞いてみたかったが、英語が分からず残念な思いをした。
 一方で、「This is America」のインスパイア作品として「This is Nigeria(ディス・イズ・ナイジェリア)」という作品もアップされており、このMVをレビューした記事も興味深かった。
●インパクトは「This is America」以上?「This is Nigeria」MVが訴える"みんなが犯罪者"的ゲトーでリアルなナイジェリア
http://www.jfmusicwritterclass.com/entry/this-is-nigeria-mv

余談③

 なんと、6月29日(金)に日本で公開される映画「ハン・ソロ」(スター・ウォーズシリーズのスピンオフ)にDonald Gloverが出演していることに先日気づいた。歌手・Childish Gambinoではなく俳優としてのかれが見られるとあって、以前よりさらに作品への興味がわいた。しかも主要キャラの一人である。公開を待ちながら期待度が急上昇している。
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