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次回、ついに結審!―九州無償化裁判第19回口頭弁論

2018-06-22 10:00:00 | (理)のブログ
 九州無償化裁判の第19回口頭弁論が、きのう福岡地裁小倉支部207号法廷で行われ、約90の傍聴券を求めて百数十人の同胞・日本市民が駆けつけました。九州朝鮮中高級学校の高級部全生徒のほか、福岡朝鮮初級学校の初級部6年生も参加。福岡初級の子どもたちはオモニ会の代表と一緒に車で1時間かけて裁判所を訪れ、初めての裁判所に少し緊張した面持ちでした。

 昨日は、原告側の意見書を提出した三輪定宣先生の証人尋問が行われました。三輪先生は、教育行政学の中でも主に教育財政学を専門として研究されている方で、千葉県に暮らしながらさまざまな大学で教えています。加えて、1980年代からは日本で無償教育をすすめる教育運動を精力的に続けてこられたそうです。御年80歳!



 ご自身の専攻の立場から書き上げた意見書のタイトルは「朝鮮高校生就学支援金差別事件に関する意見書―無償教育の意義と朝鮮高校生就学支援金差別の不当性―」。法廷では、この意見書をもとに尋問が進みました。

 三輪先生は意見書の冒頭で、国連・国際人権規約の社会権規約(=“A規約”。「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」のこと)について、「半世紀にわたり国際社会の権利保障の法規範となっている」と重要性を説明しています。法廷でもそれに言及しつつ、A規約13条で示している「教育への権利」の部分を強調しました。
 
 同13条1項では、「教育についてのすべての者の権利」を定め、「教育が人格の完成及び人格の尊厳」、「諸国民の間及び人種的、種族的又は宗教的集団の間の理解、寛容及び友好」などを目指すべきことを明記しています。
 続く2項では、このような「権利の完全な実現」のため、初等教育の無償制に加えて中等・高等教育の「無償教育の漸進的導入」などを規定しています。
 そして同13条は、規約2条2項が定める無差別平等原則が適用されるため、「人種」「国民的出身」など「地位によるいかなる差別もなしに行使されることを保障」されています。(以上、概要は意見書より)

 三輪先生は尋問に沿って以上のような内容について適切に説明しつつ、したがって「無償教育を受ける権利は、朝鮮高校の生徒にも無差別平等に保障されるべき」だと理論的に明言しました。

 他にも、朝鮮学校が無償化制度に適用されるかどうかの基準となっていた規則1条1項(専修学校及び各種学校のうち「高等学校の課程に類する課程」)2号ハの削除については、「もともと『高等学校の課程に準ずる課程』ではなく、『高等学校の課程に類する課程』」としたのは、一条校だけではなく、より柔軟に適用を認める趣旨のものだから。ハの削除は、朝鮮学校を排除するための恣意的な細工」という旨の発言をして、文科省の裁量権の乱用を指摘しました。

 また、被告による「朝鮮学校は総聯や朝鮮から『不当な支配』を受けている」という主張に関連づけて行われた尋問では、以下のようなやり取りがありました。
 ●弁護士「朝鮮学校を見てどう思われましたか?」
 ●三輪先生「教育の自治が保障されている。日本の文化についての理解も取り入れながら、自分たちの教育を実践しようという思いが感じられた」
 三輪先生は続いて、「民間の団体が教育の内容を促進させる。そこに権力が不当に介入することが良くない、許されないというのが『不当な支配』の考え方。『不当な支配』の主体は国家や権力」、「(朝鮮による「不当な支配」という論法もあるが)教育基本法ではもともと『他国からの干渉』ということは想定していない」という風にものべていました。

 そうして約1時間におよぶ尋問は終了。専門家による、よどみのない回答に傍聴席からは小さく拍手も上がりました。



 裁判後の報告集会では、三輪先生への尋問を行った安元隆治弁護士が発言。
 「三輪先生は普段から色々な人と話す機会があるが、教育法の学者の中で、この問題について国と同じような立場をとって、無償化制度から朝鮮学校を除外するのを是とするような人とは会ったことがないと仰っていた」
 「今回の裁判に向けて三輪先生と何度も打ち合わせをしながら思ったのが、先生は『(日本で完全な)無償教育を実現する』という、高校無償化よりもさらにずっと先を見ている方だということ。とても大きなことを考えている先生に、国によるヘイトのような、朝鮮学校だけを除外するという理屈はあり得ないという、こんな情けない証言をして頂かないといけない事態に申し訳なさを感じた。そういう酷い価値観の中で、この問題をどう捉えるべきかということを裁判官にアピールしたかった」
 とても印象的な視点でした。



 続いて金敏寛弁護士が、「先日の原告2人も、裁判官に対して非常に堂々と、朝鮮学校で学ぶことの意義、なぜ自分が高級部を卒業しても原告となり、裁判所に来て話をするのかという熱い思いを話してくれた」と、6月7日に開かれた第18回口頭弁論(原告への本人尋問)についてもおさらい的に言及しました。
 この日、イオからは取材に行けませんでしたが、九州無償化裁判のHPで活動報告が掲載されているので詳細が気になる方はチェックしてみて下さい。
http://msk-f.net/katudou.html

 私も別の場所でたまたま聞いたところによると、大変いい尋問だったとのことで、内容を以下に紹介します。

 「幼稚班から高級部まで朝鮮学校に通った子で、今は日本の大学に通っている。その子によると、差別はときどき受けてきたらしいんですね。例えば、中級部の時に日本の学校とサッカーの試合をしていて、朝鮮学校側が勝っていたら相手チームの選手から『キムチくせえ』と言われたとか。私みたいな日本人からしたらすごくショックで、ああ、もっと差別の現状を知らないといけないなと思いました。でも、その子は『ほとんどの日本人はそんなことはなくて、とても親切にしてくれる』とキラキラした目で話すんですね…」
 「私が尋問を担当したんですが、質問の打ち合せも特にせず、その子には思っていることを本当に素直に自由に話してもらいました。そうしたら、『大学には朝鮮名で通っているの? 通名で通っているの?』という質問で、その子がついうっかり法廷で自分の本名を言ってしまったんですね。法廷では、傍聴席から顔が見えないように仕切りも置くのに、自分で名前を言っちゃった(笑)。閉廷後、報道の方に『名前を出すのは控えて下さい』と伝えましたよ」(弁護団・後藤富和弁護士より)

 裁判官も、このハプニングにはつい笑ってしまったそうです。

 さて次回、第20回口頭弁論の期日は9月20日(木)14:00に決まりました。場所は福岡地裁小倉支部207号法廷です。弁護団はこれから最終準備書面の作成に取りかかります。九州でもついに結審! 緊張が高まります。引き続き各地の進行状況とリンクさせながら、力強く進んでいく様子を追っていきたいと思います。(理)
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