「春」の章では、主人公は明良。都心の一軒家に暮らす。妻歩美の姉の息子も一緒に暮らしている。彼の持ち込んだちょっとしたトラブル。歩美のギャラリーへ絵を持ち込み、歩美が断った後も自宅へ押しかける画家… 「夏」の章は、都議会議員の妻篤子の目線から描く。例の塩村文夏議員に対するヤジ事件。もしかしてあのヤジは私の夫が放ったものだろうかという疑念が止まらない… 「秋」の賞は、ドキュメントのテレビ番組を制作している謙一郎。婚約者薫子との結婚はもうすぐ。しかし彼女は昔好きだった男と会っているらしい。「正しい」とはいかなることなのか… 「冬」は「春」「夏」「秋」からだいぶ後を描いている…
おお。これは大好物。かなりの時間をかけてゆっくり読んでしまった。
一つ面白いのは、週刊誌の連載があった当時(2014年から2015年)の時事問題がたくさん盛り込まれていること。先に挙げた「都議会ヤジ」や「セウォル号」の沈没など。普通、小説は何十年たっても読んでもらいたいから(他に理由はあるかもしれない)、その時々の時事ネタはあまり入れないものだと思う。それをむしろ逆手にとってきた。後の方をよく読むとそれには理由があることが分かる。この辺り、すごく上手。
主人公たちの抱える悩み。自らを振り返り考えさせられてしまうこともあるし、自分が同じ立場だったら、同じことやってしまうかなと同情してしまう部分もある。
そしてキャラの設定も巧い。特に「夏」の篤子の夫。悪い人ではないのだけれど、デリカシーにかける夫。彼の言動が何とも言えず、怖くてリアル。
さらには、三つの章が実は関係があって、という構造もにくい。そして最終の「冬」 三つの章は2015年、冬は近未来のこと。もうどういう小説なんだか一言では言えない。
しかし、激しく面白かった。

今日の一曲
橋。Simon and Garfunkelで"Bridge Over Troubled Water"
では、また。
おお。これは大好物。かなりの時間をかけてゆっくり読んでしまった。
一つ面白いのは、週刊誌の連載があった当時(2014年から2015年)の時事問題がたくさん盛り込まれていること。先に挙げた「都議会ヤジ」や「セウォル号」の沈没など。普通、小説は何十年たっても読んでもらいたいから(他に理由はあるかもしれない)、その時々の時事ネタはあまり入れないものだと思う。それをむしろ逆手にとってきた。後の方をよく読むとそれには理由があることが分かる。この辺り、すごく上手。
主人公たちの抱える悩み。自らを振り返り考えさせられてしまうこともあるし、自分が同じ立場だったら、同じことやってしまうかなと同情してしまう部分もある。
ルールも知らないのに、「さぁ、ゲームを始めろ」と言われている東京という町で、
「いや、そうでもないよ。『このドアは絶対に開かない』ってずっと言われ続けたら、たいがいの人間は別のドアを探すようになる。「実際には、そのドアが開いても、ですか?」
「そうじゃなくて、俺が言いたいのは、お前は正しいってことなんだよ。正しい奴は、たとえ自分が間違ったことしても、それを正しいと思い込むんだよ」
そしてキャラの設定も巧い。特に「夏」の篤子の夫。悪い人ではないのだけれど、デリカシーにかける夫。彼の言動が何とも言えず、怖くてリアル。
さらには、三つの章が実は関係があって、という構造もにくい。そして最終の「冬」 三つの章は2015年、冬は近未来のこと。もうどういう小説なんだか一言では言えない。
しかし、激しく面白かった。

今日の一曲
橋。Simon and Garfunkelで"Bridge Over Troubled Water"
では、また。
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