「007 白紙委任状」ジェフリー・ディーヴァー 文藝春秋社 2011年
CARTE BLANCHE, Jeffrey Deaver 2011
英国政府通信本部が傍受したメールには「金曜夜の計画を確認。当日の死傷者は数千に上がる見込み。イギリスの国益にも打撃が予想される」とあった。誰がどのようにしてどこを攻撃するのか。あのジェームズ・ボンドがあのジェフリー・ディーヴァーによって蘇る。攻撃計画の鍵を握る男、アイリッシュマンとノアを追って、セルビア、ロンドン、ドバイそして… 攻撃を阻止できるのか…
ふむふむ。007+ディーヴァーがはっきりと具現化しているのがよく分かる。双方のいい所を掛け合わせたと言えばとても良いし、ディーヴァーらしい非常に細かく徹底した捜査はやや希薄になっているというのを悪く捉えることも出来る。
しかし、二転三転していく様はなかなかだし、映像化されることを強く意識した物語はとても読みやすい。ボンドが駆使する機器が極めて現代的なのもまたをかし。
難点は第一章にあたる「日曜日 美しく紅いドナウ」が読みにくく、入りにくいこと。書店でこの部分だけパラパラ見たときには読むかどうか迷った。第二章にあたる月曜日から始めてボンドの個人的描写から始まるとずっと読みやすいとは思った。ま、読み進めていけば気にならなくなるけど。
産業廃棄物、英国の諜報機関内の揉め事、アフリカの内戦など様々な要素を孕んで進んでいく様はいかにもディーヴァーっぽい。読んで、楽しんで、ためになって、とでも言っておこう。本来読書はためになってはいけないとは思うけど。
では、また。
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ジェフリー・ディーヴァー | |
文藝春秋 |
…でも、物足りない…
ラドラムやカッスラーの新作を心待ちにしていた昔。
あの頃のようなわくわくした気持ちが、どこかに行ってしまいました。
アクション映画の観すぎでしょうか?
年を取ったせいでしょうか?
映像化する時は、ダニエル・クレイグなんでしょうか?
東西冷戦があった頃は、西側の敵が明確であったので、スパイ小説、謀略、諜報もの、そこから派生した冒険小説はリアリティが強くあったように思います。冷戦があるのとないのでは、どちらがより世界平和に貢献するのかよく分かりませんが、小説に関して言えば、あった方が面白いのだろうとは思います。
先日「暗号解読」という本を読んでいたら、第一次大戦のときに、ドイツの外相が、アメリカの参戦を防ぐためにメキシコにアメリカを攻めさせるべく、その依頼を暗号電報で送ったという箇所がありました。その暗号は英国に見破られ・・・という箇所を読んで、不謹慎ながら戦争っていうのは歴史を面白くするものだなーなんて思いました。
おっしゃる通り、ロバート・ラドラムやクライブ・カッスラー、ブライアン・フリーマントルの小説をごちそうとしていただいていた時代がありました。今はそうでないのは、ディーヴァーの筆力のせいか、時代のせいか、あるいは他に原因があるのでしょうか・・・