いつ頃だっただろうか。「写真時代」は好きな雑誌だった。アナーキーな感じがガキだった自分に受けたのだろう。
編集長末井昭は、後に「パチンコ必勝ガイド」を出すのだけれど、(麻雀以外のギャンブルを少し小ばかにしていた私からすると)アナーキーがこの頃にはしょぼくれたおじさんになっていた。
しかし、後にはああいう生き方がカッコいいと思ったりする。(末井の生き方がフラフラしているのか)(私の見方がフラフラしているのか)(その両方か)
母親が自殺した経験について書いたことがきっかけになり、そんな彼が朝日出版のブログで連載したものをまとめたもの。
自殺に関するインタビューや自らの体験を語る。かなり赤裸々に。とても赤裸々に。
この本を読んで、末井に対するリスペクトの念を強くした。自分を全く飾ろうとしていないのだ。例えば、<眠れない夜>という章で、
そして、末井はFのストーカーになってしまうのだ。しかし、しかしである。末井はこの時結婚していたのである。
というような、あまりカッコよくない話を(だいたい「大人の男」は、自分の過去は美化するか、もしくは過剰にワル化するかのどちらかである)サラッとした筆致でなんということもなく書く。これぞ真の大人の男である。
自殺という、書き方を間違えれば、いや、フツーに書けば、暗くジメジメとしたものになってしまうネタを、サラッとした筆致で書かれた、レベルの高いエッセイ。
自殺しようかなと思ったら、「完全自殺マニュアル」を読んで、自殺をリアルなものに感じることで、むしろ抑止してしまうのもいいし、本書を読んで、自殺を引きつけてから投げるように柔道的に滅却してしまうのもいい。
カッコよくないけど、カッコいい大人が書いた、ありそうでない本だった。


今日の一曲
なぜかこの曲が浮かんだ。Cyndi LauperでTime After Time
では、また。
編集長末井昭は、後に「パチンコ必勝ガイド」を出すのだけれど、(麻雀以外のギャンブルを少し小ばかにしていた私からすると)アナーキーがこの頃にはしょぼくれたおじさんになっていた。
しかし、後にはああいう生き方がカッコいいと思ったりする。(末井の生き方がフラフラしているのか)(私の見方がフラフラしているのか)(その両方か)
母親が自殺した経験について書いたことがきっかけになり、そんな彼が朝日出版のブログで連載したものをまとめたもの。
自殺に関するインタビューや自らの体験を語る。かなり赤裸々に。とても赤裸々に。
この本を読んで、末井に対するリスペクトの念を強くした。自分を全く飾ろうとしていないのだ。例えば、<眠れない夜>という章で、
Fと最初にセックスしたのは、新宿の同伴喫茶でした。なんでそんなところに入ったのか覚えていませんが、入ってからのことはよく覚えています。
中に入ると、喫茶店というよりドヤ街の簡易宿泊所みたいなところで、ベニヤで仕切った三畳ほどの部屋が並んでいました。その一室に案内され中に入ると、なんとそこにはコタツがありました。独身男子のボロアパートか、はたまたどこか東北の田舎かといった感じで、とんでもないところに来てしまったという後悔があったのですが、そこを出ることも考えつかず、二人でコタツの中に足を入れました。
ドアが開いて、その場所に不釣り合いな蝶ネクタイのボーイが注文を取りに来ました。しばらくするとコーヒーが運ばれてきて、無言でコタツの上に置かれます。
突然ドーンと音がしました。隣のお客がベニヤの壁を蹴った音です。怒って蹴ったわけじゃなくて、部屋が狭いから、セックス中に足でベニヤを蹴飛ばしてしまったんだと思います。
そこで僕らもセックスしたのですが、入れたと思ったらすぐ出てしまい、つまり早漏ということですが、ますます気まずい思いになって、自分のチンコとその部屋を呪いました。
その同伴喫茶を出て、近くのジャズバーに入りました。レンガ作りの雰囲気のいい店でしたが、先ほどのことがあって、なんとなく気まずい思いでお酒を飲んでいたら、Fが小さな声で「最後が良ければそれでいいよ」と言います。その言葉に救われた思いがしましたね、ほんとに。優しい人なんだと思いました。
しかし、その日の気まずさはその後も尾を引いていて、なんとなくFを避けるようになっていたのですが、Fのことが気になって気になって、仕事も上の空です
中に入ると、喫茶店というよりドヤ街の簡易宿泊所みたいなところで、ベニヤで仕切った三畳ほどの部屋が並んでいました。その一室に案内され中に入ると、なんとそこにはコタツがありました。独身男子のボロアパートか、はたまたどこか東北の田舎かといった感じで、とんでもないところに来てしまったという後悔があったのですが、そこを出ることも考えつかず、二人でコタツの中に足を入れました。
ドアが開いて、その場所に不釣り合いな蝶ネクタイのボーイが注文を取りに来ました。しばらくするとコーヒーが運ばれてきて、無言でコタツの上に置かれます。
突然ドーンと音がしました。隣のお客がベニヤの壁を蹴った音です。怒って蹴ったわけじゃなくて、部屋が狭いから、セックス中に足でベニヤを蹴飛ばしてしまったんだと思います。
そこで僕らもセックスしたのですが、入れたと思ったらすぐ出てしまい、つまり早漏ということですが、ますます気まずい思いになって、自分のチンコとその部屋を呪いました。
その同伴喫茶を出て、近くのジャズバーに入りました。レンガ作りの雰囲気のいい店でしたが、先ほどのことがあって、なんとなく気まずい思いでお酒を飲んでいたら、Fが小さな声で「最後が良ければそれでいいよ」と言います。その言葉に救われた思いがしましたね、ほんとに。優しい人なんだと思いました。
しかし、その日の気まずさはその後も尾を引いていて、なんとなくFを避けるようになっていたのですが、Fのことが気になって気になって、仕事も上の空です
そして、末井はFのストーカーになってしまうのだ。しかし、しかしである。末井はこの時結婚していたのである。
というような、あまりカッコよくない話を(だいたい「大人の男」は、自分の過去は美化するか、もしくは過剰にワル化するかのどちらかである)サラッとした筆致でなんということもなく書く。これぞ真の大人の男である。
自殺という、書き方を間違えれば、いや、フツーに書けば、暗くジメジメとしたものになってしまうネタを、サラッとした筆致で書かれた、レベルの高いエッセイ。
こういう自分の手はよごさないで、自分たちに都合の悪いもの、不安になるものを排除しようとする意思を、僕は「世間サマ」と呼んでいるのですが、近年頓に息苦しさが増している原因は、世間サマが増長しているかはではないでしょうか。
自殺しようかなと思ったら、「完全自殺マニュアル」を読んで、自殺をリアルなものに感じることで、むしろ抑止してしまうのもいいし、本書を読んで、自殺を引きつけてから投げるように柔道的に滅却してしまうのもいい。
カッコよくないけど、カッコいい大人が書いた、ありそうでない本だった。


今日の一曲
なぜかこの曲が浮かんだ。Cyndi LauperでTime After Time
では、また。
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