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『正義をふりかざす君へ』真保裕一

2013-07-24 | books
長野県で新聞記者をしていたが、ホテルなど会社を手広く経営する者の娘と結婚することになり、記者をやめて傘下のホテルで幹部候補生として修業していた。しかしそのホテルで食中毒事件が起こり、私はホテルを辞め離婚し東京に出て来た。たまたまスポーツクラブの経営に関わることになり今では社長になった。しかし、長野から連絡があった。元妻が市長候補と不倫関係にあるということを示す写真が送られてきて、それについて調べてくれと頼まれ、7年ぶりに長野に帰ることになる。市長選、食中毒事件の顛末、高校時代の先輩で新聞社の社長でもある男と現職市長、マスコミと政治家による市政コントロール…7年の歳月を経て明らかになる真相とは…

うーん。そんなに悪くはない。しかし欠点をいくつか感じた。

前半の説明口調が気になる。主人公の内面を利用して、過去の出来事について語らせるのだが、どうもそれが多すぎるように感じた。字数を数えたわけじゃないのだけれど。巻き込まれ型ハードボイルドとカテゴライズできるかと思うけれど、なぜそんなに巻き込まれようとするのか、なぜそんなに頑張ってしまうのか、それがあまり伝わってこなかった。ラストのどんでん返しはあることはあるものの、インパクトに欠けた。

タイトルの「正義をふりかざす君へ」 正義をふりかざしている者は確かに登場人物にいなくはないけれど、その人物に問いかけるのがこの小説のテーマではないだろう。また、読者に対して呼びかけているというわけでもないようだ。つまりタイトルの意味も結局不明だった。真保裕一の近年の作品が昔ほど楽しめなくなった。鈍っているのは私の感性なのだろうか。

今日の一曲

主人公は新聞記者だった。新聞と言えばpaper
ということで、John MellencampでPaper In Fire(強引)



では、また。

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