「悪の教典」(上下)貴志祐介 文藝春秋社 2010年(初出別冊文藝春秋)
町田の高校の英語教師蓮実は生徒の人気者。授業をこなし、叱るべきは叱り、生徒の面倒見もよく、同じ高校の暴力教師ともやる気がないでもしか教師とも一線を画している。担任を受け持っている2年4組で起こるいじめや暴力、カンニングにも懸命に手を尽くし、出来る教師として仕事をこなす。しかし、何かがおかしい。蓮実は妙に心理テストに詳しい。蓮実は妙に格闘技に詳しい。蓮実は妙に策士である。その違和感が・・・
いやいやいや。うまい。上下巻と分厚いのにあっと言う間に読み終えてしまった。学校+サイコ=好きな人にはたまらないし、そうでない人には嫌悪感でいっぱいになるような作品となった。
全部で12章ある。第10章はちょっとどうなのかなと思った。それと散弾銃はちょっとなとも。しかしそれ以外、少しずつ明らかになる蓮実の過去とその描き方、用意周到な様など実に読ませる。11章と終章の終わらせ方は悪くない。
映像化されることを強く意識したような書き方も小説というより、脚本に近いように感じた。描写が細かい割りに、それってどうなのよ?というツッコミを入れたくなる。それが物語の瑕疵であるとは考えずに、全体として楽しめればよいのではないかと思いながら読んでいた。サイコとサイコパスは違うという台詞が出てくるが、まさにその違いを味わうことができる、と言ったら変な褒め方になるだろうか。
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