頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『鴨川ホルモー』万城目学、なんじゃこりゃ?

2008-02-24 | books

「鴨川ホルモー」万城目学 産業編集センター 2006年

つい先日、「鹿男あをによし」で、俺をのけぞらせた万城目学。のけぞり過ぎて、エビちゃんも真っ青の完璧なエビぞりが完成してしまった。

その万城目(まきめなんて苗字初めて見た)のデビュー作がこの「鴨川ホルモー」 話題になってたのは知ってた。でも、たぶん俺好みの小説じゃないと勝手に思い込んでいた。しかも、普通の青春小説かなんかだろうと勘違いしていた。しかし読んでみたら、



ぬぬぬぬー



なんなんだこの本は?

青春 + アホ + 恋 + α + β

一体全体何が起こるのか、という謎を冒頭に提示しておいて、それが解決していくカタルシスを味わうという意味では、ミステリーの作法をとっている。だからと言って、ミステリーの棚に入れるべき作品ではないだろうが。うう。何を書いてもネタバレにつながってしまう。ヤヴァイヤヴァイ。そしてヤヴァイくらい面白かったぞ(小学生の読書感想文か!)(←タカアンドトシ風にツッコミ)

ネタバレしないようにおそるおそるレビューしてみると、

 テイストは「鹿男あをによし」に近い。①主人公が情けない ②主人公の「巻き込まれ型ミステリー」
 まさかそんなものが本当にあるのか?と疑いながら読んでいくが、そしてそんなものあるはずないと思っているはずなのに → あれー → なぜか、そんなものがあるの確信に変わってしまう (これは作者の万城目学の手腕によるものだろう)
 表紙がマンガチックなので、しかもふざけたマンガ。じゃあ中身はと言うと、確かにふざけている。しかし表紙のマンガがかもし出す雰囲気とは違うと思う。
 まるで京都のガイドブックのような小説。そうだ、京都へ行こう。と思う読者も多い、かどうかは知らない。
 この処女作(本て、女だったんだね)は、産業編集センターなる聞いたことのない出版社から出てる。巻末を見ると、三浦しをんのエージェントでもあるボイルドエッグズの「ボイルドエッグズ新人賞」を受賞した作品だと分かる。「鴨川ホルモー」はかなり売れただろうが、2作目の「鹿男」は幻冬舎から。さすが幻冬舎と言うべきか。しかし、3作目の「ホルモー六景」は角川書店から出てるので、「条件のいい方に彷徨い系」作家なのだろうか。

そうそう。ネタ的に、おこちゃまでは100パーセントの堪能は難しい、昔懐かしネタや、ややマニアックな日本史ネタ、まず最近は見かけない表現がてんこ盛りだった。増上慢、夜郎自大なんて知らん人の方が多かろう。たぶん。

ネタバレしない代わりに、印象的な文章を一部紹介する。


 シガレットをご存知ない方に一応説明しておくが、シガレットとは薄いクッキー生地をくるくるとロールした、葉巻型の舶来菓子だ。普通はタバコを吸うように、先に口をつけて「縦」からぽりぽりやるものだが、あろうことか高村は、犬が骨をくわえるかのようにシガレットを「横」に持ち、前歯でちまちまと巻かれた生地を少しずつ剥がして食べ始めたのだ。まるで猿が芸をしているかのような、その見苦しい様に、俺は思わず目を背けた。(36ページより引用)


俺だって目を背けるだろう。と、知り合いのN子にこの話をしたら、「ヨックモックのシガレットはそうやって食べたことあるよー。子供の頃だけど。でもーでもーでもー、今でもやったらどうする?」と気色の悪いことを言っていた。お前はキモイぞ。


このままでは、俺は正真正銘の変態になってしまう。世の変態と通常人を大きく隔ててる境界とは何か。それは行動に移すか否か、という一点にある(48ページより引用)


そうそう。本当にそう思う。脳内で、妄想で思う内は変態じゃないんだよね。ってゆうか、俺の脳内で繰り広げられていることが現実と化したら、間違いなく刑務所行きだね。みんなもそうでしょ?でしょ?


二年間の浪人生活で、俺のメンタル面を誰よりも支えてくれたまさしのことを、人に打ち明けるのは初めての経験だった。(22ページより引用)


まさしってもしかしてあのまさし? これには笑わせてもらった。













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5 コメント

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気になる (あお空)
2008-02-24 22:20:13
確かに話題にはなってましたね。

わたしも表紙を見て買うのを見送った記憶が
あります。

面白いのかー。
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面白いっす (kiriya)
2008-02-25 20:00:24
なん読発行者の私が保証します。
そりゃ面白いです。
「鹿男あをによし」ものけぞりますが、
「鴨川ホルモー」のアホさかげんには
吹き出します。
返信する
ど~も~ (ふる)
2008-02-26 14:14:07
★あお空さん、

そうそう。
すっとぼけた表紙は、買う気を削ぎますよね。
でも、↓のkiriyaさんがおっしゃってる通り、
面白いですよー

★kiriyaさん、

確かに、すばらしい「アホ」の祭典でしたね(笑)
アホも極めると、傑作になるといういい例かと。
返信する
Unknown (Ageha)
2009-06-21 00:35:56
むっちゃお久しぶりです。
いきなりお仕事ブログのほうからTBしてすいませんです・・・。

映画は栗山千明ちゃんが奮闘するものの
原作よりもラブストーリーメインになった分
ホルモーが少なくてちょっと残念。
でもどさくさまぎれにあちこち走りまわって
ものすごく京都観光映画になってました。(笑)

そうそう、聞いたことない出版社だったから
最初は文庫になってもそんなに入ってこないだろうと思ったら
角川からドバー・・・。
でも映画が公開されると同時に品切れて
意味ないじゃ~んってホトホト困りました。
シネコンにはおいてるのに。

今までは文芸書が文庫化するのに
たいてい2,3年のインターバルがあったんですが
幻冬舎文庫で
劇団ひとりの「影日向に咲く」なんて
ヒットしてたった一年で文庫化ですから
ハードカバー担当者が泣いてます。
もうちっちゃくなったん~~~!って。(笑)
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こんにちは (ふる)
2009-06-22 12:37:07
★Agehaさん、

お久しぶりです。Agehaというと最近は小悪魔を連想するようになりました。
Agehaさんは本屋さんなのですな。枚方ですか。映画は観てないのですが、CMなどを見るとあまり観る気がしないんですね。
単行本の文庫化へのスピードが昔より、作品によっては速くなったなと感じます。逆に文庫化されないモノはいつまでたっても文庫化されないですね。「夜と霧」とか「ゲーデル・エッシャー・バッハ」とかエーリッヒ・フロムの著作とか。みすず書房のモノが文庫になりにくいように思うのですが、いかがでしょう?
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