Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

カンブルラン/読響

2014年12月05日 | 音楽
 カンブルラン/読響が来年3月のヨーロッパ公演に持っていくプログラムでの定期(同プログラムはユトレヒトとブリュッセルで演奏予定)。

 1曲目は若手作曲家、酒井健治の新作「ブルーコンチェルト」。音の鮮度がいい。明るく瑞々しい音だ。演奏のよさも与って力がある。そう思って聴いているうちに、意外に長いなと感じ始めた(後でプログラムを見ると、演奏時間は約17分)。

 音の生成、発展そして変容が繰り返される。意外な展開を伴うこともある。その論理というか、‘帰結の仕方’を追うことが段々難しくなった。山歩きをしているときに踏み跡を見失ったような感覚だ。

 メシアンの「トゥーランガリラ交響曲」の前に演奏されることを念頭に置いて作曲された(作曲者自身のプログラムノーツより)。たしかに、後半に頻出する下降音型は、トゥーランガリラを髣髴とさせた。2曲目にトゥーランガリラが演奏されたとき、その効果が表れた。1曲目と2曲目とがシンクロした。

 2曲目はそのトゥーランガリラ。冒頭から、明るく、かつパワフルな演奏が続いた。カンブルランは2006年の読響初登場のときも、トゥーランガリラを取り上げた。鮮烈な登場だった。そのときはスタイリッシュな演奏だったと記憶する。今回はもっと掘り下げた演奏だ。

 個々の楽章では、3、7、9の各楽章の「トゥーランガリラ」(Ⅰ~Ⅲ)が面白かった。リズム処理の明快さが際立っていた。一方、緩徐楽章に相当する第6楽章「愛のまどろみの園」の細やかな起伏にも魅せられた。弦楽器が、たとえていえばオーロラのように、ゆっくり波打ち、木管楽器と打楽器がアクセントを添える。そのニュアンス豊かな表現は、今まで聴いた演奏の中で最上のものだった。

 アンジェラ・ヒューイットのピアノ独奏も絶品だった。今まではバッハしか聴いたことがないが、思えばそのバッハ演奏も、モダン・ピアノの美質を最大限に活かす性質のものだった。なので、メシアンに適性があるのも不思議ではないかもしれない。これなら、今度は「幼子イエスに注ぐ20の眼差し」か「鳥のカタログ」でも聴いてみたいと思った。

 オンド・マルトノはシンシア・ミラー。オーケストラに埋もれもせず、また音像が大きすぎもせず、適当な音量だったことが、なによりも幸いだ(2階正面後方席)。安心してこの曲の二重協奏曲としての側面を楽しむことができた。
(2014.12.4.サントリーホール)
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