ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『伝染歌』

2007-07-24 22:45:48 | 新作映画
「いやあ。この映画は気分が悪くなるくらい怖かったね」
----えっ?清水崇や中田秀夫より怖いの?
「いや、そういう意味の怖さじゃなくて、
おそらく監督が原田眞人だからだろうけど、
あまりにも中身が厭世的なんだ」

----原田眞人って
『金融腐蝕列島〔呪縛〕』とか『突入せよ! 「あさま山荘」事件』といった
社会派の監督のイメージがあるけど。
「うん。その一方で『バウンス ko GALS』なんてのもある。
この『バウンス ko GALS』と庵野秀明監督の『ラブ&ポップ』は
いわゆる90年代後期のコギャルたちのリアルな姿を描いた作品として、
ぼくには強烈に記憶に残っている。
それまでの女子高生作品と大きく違っていたからね。
今回は、その延長線上とも言うべき、
現代の女子高生たちが主人公。
教師をまったく無視したその空気感がまず怖い。
実を言うと、彼女らの会話の言葉尻をやたら強調したようなカット割りに
最初はセリフが聞き取れず
映画の中に入っていきづらかったんだけどね」

----原作は『着信アリ』シリーズの秋元康だっけ。
ちょっと「意外な組み合わせって気がするけど?
「いやいや。原田監督は
『おニャン子ザ・ムービー 危機イッパツ!』も撮っているし、
この組み合わせはそう驚くことでもない。
しかも主演が秋元康プロデュースによるアイドルユニットAKB48だしね」

----そういう話、聞いてると全然怖そうじゃないけど?
「う~ん。どう言ったらいいんだろう。
お話自体は、そうでもないんだけど、
怖いのはその背後にある社会の切り取り方かな。
社会派と言われるだけあって、妙なリアリティがあるんだね。
物語は、“その歌”を聴いたら人が死ぬと言われる自殺ソングを巡って、
次々と死んでいく女子高生たちと
それを記事にしようと追いかける雑誌社の面々を描いたもの。
描写そのものは、ときにオカルト的になるとは言え、
ホラーを見慣れた目からするとそれほどのものでもない。
問題は、“その歌”の背景、
そして“その歌”が自殺ソングとなるに至ったある事件だね。
実はそれが主人公のトラウマとなってるわけだけど、
監督はそこにいまの日本が抱えるさまざまな問題を投げ入れる。
たとえば借金による生活苦、たとえば親による子供の殺人…。
シナリオ自体は『フラガール』の羽原大介だけあって、
実にうまく二つの物語を融合させてはいるんだけど
観ていて実につらかったね」

----でも原田監督と言えば、
そのハイセンスなカメラワークでも知られるよね。
「確かに。
今回も超広角やソフトフォーカスなどはあたりまえ。
たとえば真俯瞰で部屋から部屋へと移動する女子高生たちを捉えた
『マイノリティ・リポート』を思わせるトリッキーな映像や
オーソン・ウェルズの『上海から来た女』そっくりの鏡の間のスリラーもある。
そうそう、それにこれは映像の部分だけでなく
物語としてもなんだけど、
スティーブン・キング『シャイニング』もたっぷり出てくるね。
でも、そういうさまざまな名作へのオマージュを感じさせる以上に、
この監督の持つ<社会性>が前面に出ているのがこの映画。
純粋にホラーを楽しみにいったら、
しっぺ返しを食らうかもね。
とにかく『着信アリ』とはまったく違う」

----やはり映画は監督次第と言うことなもかニャ。

 (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「そんな怖いのダメだニャあ」もう寝る

※いやあ、ヘビーだった度
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