ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『宇宙戦争』

2005-07-03 12:01:33 | 映画
------これってもう公開されてるよね。
すごい秘密主義だったみたいだけど、予想と比べてみてどうだった?
「スピルバーグって『未知との遭遇』で
それまで映画で描かれていた宇宙人=侵略者のイメージを覆した人。
そこで放たれた<We are not alone>のメッセージは
『E.T.』で個と個の友情にまで発展していく。
でもこの『宇宙戦争』は
H・G・ウェルズの原作を基に侵略をテーマに描かれた映画。
すでにバイロン・ハスキンが53年に映画化。
50年代SFの代表とも言われている。
もっとも製作のジョージ・パルの方が有名で、
この映画はジョージ・パルの名で語られることが多いけど...」

-----そういうことはどうでもいいから、この映画はどうだったの?
「うん。これは<家族愛>を前面に打ち出した宣伝展開になってるけど、
どちらかというと<ホラー>映画という感じだったね。
もちろんタイトルに偽りなしで<戦争>もあるし<SF>もある。
でも、観ている途中ぼくの頭をよぎっていったのは
『ゾンビ』『タイタニック』『プライベート・ライアン』
『ポルターガイスト』『エイリアン』、そして『GONIN』」

-----えっ?『GONIN』って石井隆の?
「まあ、それは後で話すことにして、
この映画、冒頭はニュージャージー。
主人公レイが別れた妻と面会するシーンから始まる。
ある期間だけ子供たちと過ごせるというこの設定はアメリカ映画に多く、
正直、またか...という気にもなったけど、
この<父と子の関係>が映画を最後まで牽引していく。
反抗的な息子ロビーと、神経過敏な娘レイチェル。
前触れもなく唐突に始まった異星人の侵略に対し、
その現場に立ち会ったレイは二人の子供を抱え、
ニュージャージーから妻の住むボストンへ向かうわけだ。
自分だけじゃないからサスペンス色もさらに増してくる」

----なるほど。全地球規模の戦争でありながら、
一家族の物語にスポットを当ててるわけだ。
「うん。でも最初はこれは夢落ちかと思わせるほどの強引な展開。
他人の車を盗んで夢中で飛ばすレイ。
事情が飲み込めない子供たちは半パニック。
彼らは現場を見てない上に、もともと親を信頼してないわけだからね。
ぼくも、ここはレイの幻覚、妄想かも...と思ってしまった」

----いくらなんでもそれはニャいでしょ?
「うん。それはなかった(笑)。
さて、この後さらなる<悪夢>が彼を襲う。
フェリー乗り場近くで、一台だけ動いている彼らの車を目がけて
人々が<ゾンビ>の群れのように突進。
どうにか乗り込んだフェリーでは乗り遅れた人々が船に飛び乗る」

----ああ、ここが『タイタニック』か。
「必死に岸に泳ぎ着いた家族が目撃するのは異星人に立ち向かう軍隊」
----ここが『プライベート・ライアン』ね。
「で、身を切られるような親子泣き別れのシーンを挟んで
映画の中軸をなす廃屋のシーンが始まる。
彼らを廃屋に招き入れた男(ティム・ロビンス好演!)は異星人と戦うことを主張。
一方のレイは彼らの目を逃れて生き延びることを選ぶ。
この<生きざま>の対立の中、
廃屋内を異星人の<眼>が巨大蛇のように彼らを探し回る。
ばくがさっき言った石井隆『GONIN』というのはここ。
あの映画でもっとも恐かったのは
押し入れに身を潜めて隠れた恋人たちが見つかるところ。
見つかればその先に待ち受けるのは<逃れられない死>。
ただ、今回ちょっと不満なのは
そこで<眼>を避けて逃げ回る3人の<脅え>が足りなかったところ。
もし、実際にあんな事態に遭遇したら、
震えて足も動かないんじゃないか....そう思ったわけだ。
たとえばこれを時代劇に置き換えてみよう。
城を攻められ、秘密の小部屋に隠れ息を潜める城主。
外には刀を手に彼を探し回る敵軍。これはほんとうに恐いと思う。
吉良上野介の気持ち、分かるなあ...」

----ちょっと、ちょっと。話がとんでもない方向にってニャい?
「あっ、ごめんごめん。
さて、ここでついに異星人が姿を現す。
最初は『エイリアン』を思わせたけど、
やはりあれを超えるほどの造型ではなかったね。
ま、この後の見どころは
異星人のマシーンに飲み込まれた後、彼らがどうするか?ってことかな」

----ニャんだか、あっさりまとめようとしてニャい。
結局はどうだったの?オモシロかったの?オモシロくなかったの?
『ポルターガイスト』の話もしてないし...。
「スピルバーグってファミリー・エンターテイメントのイメージが強く、
あまりホラーなんて作ってないよなあ....と思って出かけたため、
その過激なまでの残酷描写にびっくりしたというのが正直な気持ち。
でもよくよく考えてみれば、彼は『激突!』『JAWS・ジョーズ』という
どちらかと言えばショッキングな作品から、そのキャリアを始めているわけで、
こういうのはもともとお手の物だったわけだ。
あとトビー・フーパー監督の『ポルターガイスト』なんだけど、
これは実質的にはスピルバーグが監督したと言われている。
<少女を未知の脅威から守る父親>という、その構成も似てるけど、
あの映画の中に、キッチンでぐにょぐにょ動くステーキ肉という、
スピルバーグらしからぬグロテスクな映像が出てくる。
(ここだけはトビー・フーパーが演出したという説もあり)
今回の映画は、あのシーンを観たときの胸のざわめきと近い。
いままで封印されていた
スピルバーグの闇の部分が描かれたという意味でも、
ぼくはオモシロかったよ」

     (byえいwithフォーン)

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