----この映画のって、
『時をかける少女』や『サマーウォーズ』で人気の細田守監督作品だよね。
タイトルが分かりにくいんだけど…。
「そうだね。
でも、よくキービジュアルを見てごらん。
ほら、ふたりの子どもの耳…」
----あっ。
「ね。彼らは
人間とオオカミの間に生まれた子ども。
その名前が“雨”と“雪”ってわけ。
このお父さんにあたる狼男(大沢たかお)は、
映画が始まって、早々に命を落としてしまう。
で、映画は、残された人間の“花”(宮あおい)が
ふたりの子どもを大自然の中で
どのように育てていくかが中心となってくる。
ぼくは、この映画のテーマ、
それは“育”ではないかと思いながら
ずっと観ていた」
----“育”?
「そう。
命あるものは、みな育っていくことによって
生の営みを続けていく。
それは、狼だろうと人間だろうと、そして動物ばかりではなく植物でも同じ。
この映画には、田舎に移り住んだ“花”が
自分たちが食する野菜を育てる…など、
この“育”がさまざまな形で姿を覗かせている。
そして、子どもたちを育てることが、
また、“花”自身が大きく育っていくことでもあるんだ。
“命”だの“生”だのにテーマを持ってくる作品は多いけど、
この“育”に持ってきたところが野心的」
----そう言えば、
プレスにもお花の絵が多い気が…。
「植物の方の<花>ね。
この植物の<花>は、冒頭のお花畑に始まり、
大きな比重を占めて登場する。
たとえば、狼男が亡くなった後、
毎日、その写真の前に<花>が瓶に活けられている…。
田舎に移り住むまでは、
若者ふたりの秘かに育む恋愛という感じで、
まったく違う映画を見ているようだった。
かなり、甘酸っぱいシーンもあるし…。
映画がそのトーンを変えるのは、田舎に移り住んでから…。
子ども時代の“雨”と“雪”がエピソードの多くを占めることもあり、
やんちゃで楽しいシーンが続く」
----でも、いずれ子どもたちも
そのアイデンティティに悩んじゃうよね。
「そういうことだね。
彼らは、人間として生きるのか、それとも狼として生きるのか?
いずれ決断のときはやってくる。
そしてそれは巣立ちのときでもある。
花が育てることから、自分で育つことへ--。
映画はそのクライマックスを
あの『台風クラブ』をも思わせる豪雨の日に持ってくる。
一人またひとりと帰って、自分と草平という男の子だけが残った教室。
“雪”はここで彼に対し、ある<禁断>の行為に出る。
あっ、変な意味じゃないからね。
ここにおける映像は、もう、アニメ史上に残る屈指のシーン。
誰もが息を飲むだろうね。
一方、同時刻、“雨”はある決意の元に森の奥深く入っていく。
それを追う“花”の前に姿を現すのは…!?
ここもまた巧い。
大自然で“育”っているのは人間だけではないこと、
そして、そこにも家族と愛があることを
肌打つ冷たい雨によって、
その下に流れる血の暖かさを見る者に伝えてくれる」
----いよいよ楽しみだ。
音楽もよさそうだね
「高木正勝だね。
最初の方で、映画の主旋律が流れてきただけで
涙腺が緩んできた。
世界的な注目を集めている彼だけど、
こういう新しい才能が映画に流れてくるのはとても嬉しいね。
エンドロールの歌も、
よくあるタイアップ曲というのではなく、
歌詞が映画の内容をきちんと押さえている。
監督の細田守自身が作詞しているんだから
当然といえば当然なんだけどね」
(byえいwithフォーン)
フォーンの一言「日本のアニメーターは、ほんとスゴイのニャ」

※いまwikiを観たら、なんと細田守監督は『台風クラブ』を名作と評価しているとか。納得だ度…




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狼って、10歳そこらでもう十分「大人」なんですね・・・
どちらを選択するのかで悩む子供たちを
ホントに大きな愛で包み込んで育てていた
花は、正直決して肝っ玉母さんとかいうタイプではないんだけど
かよわくもありながら、何が来ても「笑ってる」
その強さに感動しました・・・。
細田さんの映画って笑いと切なさと爽やかさが同居しててやっぱ好きです☆
あの最後の別れ。
つらいなあ。
でも、そこまできっちり育て上げる。
これは「育」がテーマだと改めて思いました。
子供よりも
一緒に行ったお母さんの心を打つのではないでしょうか?
雪ちゃんも雨クンも成長し、花も成長する。
一つの家族が成長していく姿に温かい涙が止まりませんでしたよ。
私は自分がアニメ制作に携わっている事もあって、アニメの利点と共に、どうしても実写にかなわない限界も感じていました。
しかし、本作はそんな壁を軽々と超えてしまった。
アニメと言う表現手段で作られた人間ドラマで、絶対に実写では作れないし、作ったとしてもこれを超えることができないと確信したのは初めてです。
私的には日本アニメ史上のエポックとなった作品でした。
アニメが語れるようになった。
これは時代でしょうね。
また、その語り口の丁寧さにも
改めて敬意を表します。
大絶賛ですね。
個人的には少し長く感じ、
後半は
う~んという感じもしたのですが、
それでもこれだけのテーマと大河性が
アニメの中に現われたことには驚きを禁じ得ません。
幸い、大ヒットしているようで、
アニメ=ジブリじゃなくても勝負できることを示してくれた嬉しい映画でした。
ネタバレコメント失礼します。
以下、ネタバレ
私このラストの「子離れ」の部分が、「母親業」をした多くの人に、問題を投げかけるのではないか、と思いました。
そして中には、この作品が言いたいことが伝わらない人も居るのではないかと・・。
えいさんはどう感じられましたでしょうか。
いまごろ、機中ですね。
楽しいご旅行を…。
さて、ご質問の件です。
ぼくは、もちろん「母親業」体験していません(笑)。
ですから、「子離れ」の辛さ、寂しさは実感できません。
というわけで、
感じたままに書きますね。
そのシーンについてのご指摘を受けて、
なぜ、クライマックスで
花が雨ばかりを追っていったのかが
少し分かった気がしました。
観たときは、
雪のことを気にかけていない花が不思議だったのですが、
いい悪いは別にして
母親にとって男の子というのは特別な存在なのでしょう。
女の子にとっては残酷なこの事実を
映画はきちんと見つめて描いていたのだと、
いまはそう思います。