団塊太郎の徒然草

つれづれなるままに日ぐらし

製鉄所発電の実力、電力不足が追い風に

2012-06-13 22:04:20 | 日記

今夏、電力不足が危ぶまれる中、鉄鋼メーカーの発電所に再び注目が集まっている。

 6月下旬、新日本製鉄の君津製鉄所内の火力発電所で新たに6号機が稼働する。すでに稼働中の3基と合わせた発電総量は115万キロワットと原発1基分に上る。同発電所は東京電力と折半で設立した共同火力で、発電した半分ずつをそれぞれが使う。

 製鉄所では操業過程で大量の副生ガスが発生する。これを有効利用するため発電所を建設、工場で必要となる電力の一部を賄っている。君津や住友金属の鹿島など国内の大規模製鉄所では地元電力会社と折半で共同火力を運営してきた。

 また、1995年の電気事業法改正後は、火力発電を利用した独立系発電事業(IPP)にも参入。各社がこぞってIPP用の発電所を設立し、電力会社に売電している(下表)。

 こうした鉄鋼メーカーの“発電能力”が脚光を浴びたのは、福島第一原発事故後だ。電力会社からの電力供給要請を受け、共同火力を中心にフル稼働に入ったのである。従来、電力会社は原子力に比べ火力の発電コストは高いとして、共同火力やIPPの利用には消極的だった。が、全原発停止の状況下、電力会社の共同火力への抵抗感は薄まった。原発の停止状態が続くようなら、IPPのニーズが高まる可能性もある。

 
追い風も吹いている。5月28日、経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本問題委員会は2030年の電源構成比を4案に絞ったが、そのいずれの案でもコージェネレーション(電熱併給)を現状の3%から15%に増やすとしたのである。

 コージェネとは、発電時に発生する排熱を冷暖房や給湯などに利用するシステム。高炉ガスを使う共同火力IPPの一部はコージェネ方式といえる。エネルギー問題に詳しい一橋大学の橘川武郎教授は「コージェネを増やすかなりの部分は共同火力という形を取るのではないか」と見る。欧州でもコージェネの中核を担っているのは共同火力という。

増設には課題も

 当の鉄鋼メーカーからも「土地を含めて余地はあるので、もっと発電量を増やしたい」(高炉大手幹部)との声が聞こえる。

 が、実現には課題もある。一つは設立にかかわる環境アセスメントに時間を要することだ。出力11・25万キロワット以上の火力発電所を建てるには、アセスに約3年半かかる。出力増となった場合、二酸化炭素(CO2)削減目標との整合性もチェックされるため、「発電能力を増やした分、鉄の減産を迫られたり、排出権を買わされたりするのはたまらない」(高炉大手)と懸念する向きもある。また、「多額の投資になるので、電力会社がいくらで買ってくれるのかも重要」(別の高炉大手)だ。

 制度上の問題もある。現行の電気事業法では製鉄所で発電した電力は電力会社の送電網を通さねばならず、隣接する工場などに売ることができない。送電網を使うには託送コストがかかり、「共同火力で作ったとしても、メリットが減殺されてしまう」(橘川教授)。鉄鋼メーカーが電力会社になる日は来るか。

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(山内哲夫 =週刊東洋経済2012年6月9日号)
記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります
 

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