大阪大学大学院医学系研究科の澤芳樹教授、国立循環器病研究センターの白井幹康部長、高輝度光科学研究センターの八木直人コーディネーターらの研究グループは、マウス由来のiPS細胞から作製した心筋細胞が、移植した心臓と同化し、機能することを確認した。心筋に分化させたiPS細胞由来心筋細胞培養シートをラットの心筋梗塞巣に移植。細胞内の心筋収縮たんぱく質分子(アクチン・ミオシン)が宿主心筋と接合し動いている様子を放射光ナノ技術を使って観測した。iPS細胞による心筋再生療法の開発促進につながると期待される。
実験は大型放射光施設のスプリング8で実施した。シート移植から1カ月が経過したラットの心臓に0・2ミリメートル径の放射光X線マイクロビームを照射し、収縮たんぱく質の分子運動を解析した。X線回折実験と呼ばれる方法で、収縮たんぱく質の動きを映像化、観察した。
アクチンとミオシン間での質量移動が心筋の収縮弛緩と連動しており、心臓の機能改善を確認した。移植したiPS細胞由来心筋細胞が宿主細胞と結合し、同期運動することが分子レベルの観測で証明できた。従来の動物実験で、iPS細胞を心筋細胞に分化誘導させ心機能を改善できることは報告されていたが、詳細な仕組みは証明されていなかった。
日刊工業新聞
大阪大などのグループは26日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作ったシート状の心臓の筋肉(心筋シート)を心臓に移植する動物実験で、心筋シートが心臓と同じリズムで動くのを確認したと発表した。移植した心筋が心臓の一部として働くことを世界で初めて示したという。心筋を収縮させる2種類の微小なたんぱく質がくっついたり離れたりする様子を、大型放射光施設「スプリング8」(兵庫県佐用町)の強力なX線ビームを利用して観察した。
重い心臓病患者の心臓は血液を送り出すポンプ機能が低下している。大阪大心臓血管外科の澤芳樹教授らは、iPS細胞から心筋シートを作り、心臓に張り付ける治療法の開発を目指している。動物実験で心機能の改善は確認していたが、心筋シートが心臓の一部となって拍動を助けるかどうかは不明だった。
人工的に心筋梗塞(こうそく)にしたラット5匹の心臓に、マウスの心筋シートを張り付けて実験した。ビームを当てた状態で、心筋を収縮させるたんぱく質「アクチン」と「ミオシン」が結合すると光の強さが変化するようにし、光の強弱で動きを観察した。心臓と心筋シートは同じ周期で動いたという。
大阪大は今後2~3年内の臨床研究の開始を計画しているという。澤教授は「分子レベルで心筋シートの働きを確認できたことは、臨床研究に応用する際に大変心強い」と話している。論文は米科学誌に掲載された。毎日新聞【斎藤広子】
実験は大型放射光施設のスプリング8で実施した。シート移植から1カ月が経過したラットの心臓に0・2ミリメートル径の放射光X線マイクロビームを照射し、収縮たんぱく質の分子運動を解析した。X線回折実験と呼ばれる方法で、収縮たんぱく質の動きを映像化、観察した。
アクチンとミオシン間での質量移動が心筋の収縮弛緩と連動しており、心臓の機能改善を確認した。移植したiPS細胞由来心筋細胞が宿主細胞と結合し、同期運動することが分子レベルの観測で証明できた。従来の動物実験で、iPS細胞を心筋細胞に分化誘導させ心機能を改善できることは報告されていたが、詳細な仕組みは証明されていなかった。
日刊工業新聞
大阪大などのグループは26日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作ったシート状の心臓の筋肉(心筋シート)を心臓に移植する動物実験で、心筋シートが心臓と同じリズムで動くのを確認したと発表した。移植した心筋が心臓の一部として働くことを世界で初めて示したという。心筋を収縮させる2種類の微小なたんぱく質がくっついたり離れたりする様子を、大型放射光施設「スプリング8」(兵庫県佐用町)の強力なX線ビームを利用して観察した。
重い心臓病患者の心臓は血液を送り出すポンプ機能が低下している。大阪大心臓血管外科の澤芳樹教授らは、iPS細胞から心筋シートを作り、心臓に張り付ける治療法の開発を目指している。動物実験で心機能の改善は確認していたが、心筋シートが心臓の一部となって拍動を助けるかどうかは不明だった。
人工的に心筋梗塞(こうそく)にしたラット5匹の心臓に、マウスの心筋シートを張り付けて実験した。ビームを当てた状態で、心筋を収縮させるたんぱく質「アクチン」と「ミオシン」が結合すると光の強さが変化するようにし、光の強弱で動きを観察した。心臓と心筋シートは同じ周期で動いたという。
大阪大は今後2~3年内の臨床研究の開始を計画しているという。澤教授は「分子レベルで心筋シートの働きを確認できたことは、臨床研究に応用する際に大変心強い」と話している。論文は米科学誌に掲載された。毎日新聞【斎藤広子】