団塊太郎の徒然草

つれづれなるままに日ぐらし

「相乗り」で使うことから生まれるクラウドコンピューティングのメリット

2011-11-06 21:01:36 | 日記

クラウドコンピューティングの市場が急拡大している。2010年度の市場規模は454億円と
前年比45.3%という驚異的な伸びを記録した。今後、その勢いはさらに加速し、2015年には
1947億円規模になると予測されている(IDCジャパンの発表より)。

一般に、クラウドコンピューティングには、「コスト」・「スピード」・「フレキシビリティ」といった
メリットがあるとされるが、実際にこれらの成果を発揮し、自社の経営課題解決に活用するためには
どのような取り組みが必要なのだろうか。ITと経営、ビジネスモデルなどについての研究の
第一人者である早稲田大学IT戦略研究所所長の根来龍之教授に聞いた。

―― クラウドコンピューティングの普及が急速に進んでいます。一方で、その定義について、ユーザーである企業によって若干認識が異なるようですが。

根来 クラウドコンピューティングは、コンピュータを資産としてではなく、サービスとして使用するというITのユーティリティ化のトレンドの中に位置づけられます。狭義のクラウドコンピューティングは、同じサーバーを複数の会社で共有する「パブリッククラウド」を意味すると思います。というのは、クラウドコンピューティングは、いわば「相乗り」することによって、「コスト」、「スケーラビリティ」などのメリットを享受できるからです。

 しかし、自社専用のサーバーやアプリケーションを用意してもらう「プライベートクラウド」も、クラウドコンピューティングに入れることも可能です。最近では「プライベートクラウド」のサービスであっても、短期間の契約が可能なものや、費用請求が「使った分だけ」といったものも登場しています。価格体系の変更に過ぎないという考え方もできますが、支払うコストは抑えられつつあります。

―― クラウドコンピューティングにはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

根来 まずはコストの削減です。特に、導入コスト(初期投資)は大幅に安くなります。ただし、ランニングコストも含めたトータルなコストについては、オンプレミスシステム(自社所有システム)のほうが安い場合もあり、比較検討が必要です。導入までの期間が短いのも、大きな特色です。サービスによっては、申し込んだ翌日から使うことができます。「スケーラビリティ」も柔軟です。たとえば、イベントなどの際にサーバーを増やし、終われば減らすといったことも簡単にできます。事業の立ち上げ時やトライアルなどでも便利に使うことができます。

 クラウドコンピューティングについて、セキュリティを懸念する声もあります。大手企業の場合は、大きなコストをかけて自社でセキュリティ対策を行っているところが多く、不安視するケースもあるでしょう。ただし、中堅・中小企業では自社でデータの管理をするよりも、クラウドサービスを利用したほうが、かえって高いセキュリティを確保できるケースが多いのです。

 クラウドコンピューティングにもデメリットはあります。第一に、自社独自のカスタマイズがしづらいこと、第二に、既存のオンプレミスシステムとの連携が難しいことです。ただしこれも、最近では柔軟にカスタマイズできるサービスが登場しています。また、既存のソリューションと連携できるクラウドサービスが提供されるようになっています。

ビジネスモデルとして見たクラウドコンピューティングの将来

―― クラウドコンピューティングに関連するITのトレンドとして、どういう変化がありますか。

根来 まず、「情報システムのコンシューマー化」を挙げたいと思います。第1点は、コンシューマーが使うシステムを、企業がビジネスで使うようになってきたことです。たとえば、グーグル社の「Gmail (ジーメール)」です。2点目は、まるでコンシューマーのように、企業が情報システムサービスを使うようになったことです。自社独自のシステムを作り込むのではなく、必要なときに必要なだけ購入するというスタイルです。また、乗り換えが以前よりも頻繁に行われ始めています。 もう一つのトレンドは、オンプレミスシステムとクラウドサービスとの「ハイブリッド化」です。大手企業では、顧客情報や設計情報など機密性の高いものは、オンプレミスシステムで、それ以外のものはクラウドサービスでと使い分けているところも多く見られます。

―― 最近のクラウドコンピューティングの使い方にはほかにも何か特徴がありますか。

根来 スマートフォンやタブレット端末をビジネスで活用したいと考える企業も増えています。さまざまなソリューションも登場していますが、その多くがクラウドコンピューティングを前提としています。BCP(事業継続計画)の観点から、クラウドサービスを選ぶ企業も増えています。業種・業態、企業規模の違いを問わず、どの企業もクラウドサービスを使うのが当たり前になるでしょう。特に成長途上のベンチャー企業などにとっては、スケールを一気に拡大できるクラウドサービスがなじみやすいと思います。携帯電話を使うゲームの場合などの場合が、その種の典型例です。

―― これからクラウドコンピューティングの導入を検討している企業に、アドバイスをお願いします。

 まず大切なのは、何のためにクラウドサービスを活用するのかを明確にすることです。そのために、自社にどのような情報システムがあり、今後、何をクラウド化し、何をオンプレミスシステムとして残すのかを「棚卸し」します。自社のシステムすべてをクラウド化することもできるでしょうが、既存のシステムの移行コストを考えると現実的ではないかもしれません。システムのリニューアルや新システムの導入などに併せて徐々にクラウド化を進めていくのがよいでしょう。

 さまざまなクラウドサービスが登場していますが、どれを選ぶかにおいては、どの程度のリスクを許容できるかも考える必要があります。サーバー(データセンター)の所在地なども含めて検討し、必要に応じて、サービス提供企業に、バックアップ対策などの明確な説明を求める必要があります。

 いずれにしても、経営のスピードを速くし、より大きな成長を目指す企業にとって、クラウドコンピューティングは、積極的に活用すべき手段の1つであることは間違いありません。


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