団塊太郎の徒然草

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早すぎる!?日航の再上場 全日空・自民党が「待った」

2012-07-16 09:53:14 | 日記

9月の再上場を目指す日本航空の周辺がにわかに騒がしくなってきた。業績のV字回復で攻めの戦略を打ち出す日航に対し、ライバルの全日本空輸が「このままでは公平な競争ができなくなる」とかみついたからだ。日航の再上場が民主党政権の「手柄」とならないよう、自民党も「待った」をかけるなど政治の思惑も交錯。順調すぎた日航の再生は最終局面で思わぬ“横やり”に悩まされている。

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 「正直言ってあの利益レベルには届かない。競争環境がゆがめられる」

 全日空の伊東信一郎社長が、日航の急速な業績回復に疑問を投げかけたのは5月17日のことだった。直前に発表された平成24年3月期の最終利益は、日航が1866億円と過去最高となったのに対し、全日空は281億円と大きく水をあけられた。伊東社長は、日航の再生について「再生に向けた努力に敬意を表したい」としながらも、不満を隠さなかった。

 伊東社長の発言の背景にあるのは、会社更生法適用に伴う“特典”だ。金融機関は約5200億円に上る日航の債権を放棄。それだけでなく、破綻時に発生した赤字は次年度から利益と相殺して法人税が減免されるため、24年3月期の法人税は約350億円軽減された。法人税の減免額は、9年間で総額4千億円にのぼるとの試算もある。

 日航はこうした“特典”を生かして、攻めに転じた。燃費効率が従来機より20%高い次世代中型機「B787」を10機追加発注。格安航空会社(LCC)「ジェットスター・ジャパン」にも出資、全日空への対抗姿勢を強めている。経営を破綻させることなく、地道に利益を積み上げてきたとの自負がある全日空にとって、日航は政府支援によって競争力を高めている存在に映る。不公平感は容易に払拭できない。

 全日空の批判に対し、日航の植木義晴社長が重い口を開いたのは6月26日の定例記者会見だった。普段、記者からの厳しい質問にも温和な表情を変えない植木社長だが、「(会社更生法が)公正な競争を阻害させているのでは」との質問に、一瞬表情をこわばらせた。「全社員が身を削り、努力を重ねてくれた結果が今回の業績につながった。それを不公正といわれ、当惑している」と強い口調で反論。好業績は、あくまでルールに従って再建に取り組んだ結果であることを強調した。

 ただ、日航の再生のスピードが異例であることは確かだ。日航は9月に東証1部に再上場を予定しているが、実現すれば22年2月の上場廃止から約2年7カ月というスピード復帰だ。早すぎる上場の背景には、官民ファンドの企業再生支援機構による支援期限が来年1月に迫っていることがある。政府は是が非でも日航を上場させ、3500億円の出資金を回収しなければならない事情があるのは間違いない。

 一方、日航の再上場に政治も横やりを入れ始めた。「鶴には恩返しをさせなければならない」。今月6日、日航の再建の在り方を議論してきた自民党の航空問題プロジェクトチーム(PT)の会合で、出席議員の一人は、日航のロゴマークの鶴丸と昔話を掛けてこう皮肉った。

 株主や債権者に迷惑をかけた企業が、会社更生法の適用で身軽になった途端、積極投資をするのは「けしからん」との理屈だ。他の出席議員からは日航に対し、減免された法人税の一部を国に返還することや、破綻後に日航が撤退した地方路線の復活を求める声も相次いだ。

 日航の再建策は、民主党の前原誠司国土交通相(当時)が政治主導で決めたもので、野党の自民党からみれば格好の攻撃材料だ。民主党の分裂で衆院解散、総選挙が現実味を帯びる中、国交省は自民党の存在を無視できず、地方路線の拡充などを日航に要請する事態に追い込まれた。

 自民党は13日の航空問題PTで日航上場に反対することを正式に決議。今後、国会でも日航の再建の在り方を取り上げる構えだ。全日空も不満を漏らすばかりではない。今月3日に最大2100億円の公募増資を発表し、日航を追い込むのろしを上げた。

 6月19日に開かれた株主総会で増資に関する説明をしておらず、今回の公表で株価が下落すれば、株主から厳しい批判を浴びることは必至だ。にもかかわらず、増資に踏み切ったのは「日航の株を買おうとする個人投資家の資金を吸い上げる狙い」(市場関係者)との見方も浮上する。

 日航、全日空という宿命のライバルの攻防は、日航の経営破綻という形で第1幕を閉じた。だが、雌伏のときを経てよみがえった日航は、上場を機に反転攻勢をかける構えだ。第2幕の幕開けまで残り2カ月。両社の攻防は本番を迎える。(鈴木正行)


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