京都童心の会

ほっこりあそぼ 京都洛西の俳句の会
代表 金澤 ひろあき
俳句 冠句 自由律 詩 エッセイなど同好の人たちと交流

声を出さない笑い

2021-04-22 07:48:24 | 俳句
声を出さない笑い
          金澤ひろあき
若葉の頃の去年は学校なかったな
コロナ二年声を出さない笑いが増えた
コロナでは死にとうないが合言葉
時差登校せよと雨の休日
コロナの代わりに庭の草引っこ抜く

読書録 松本清張 『点と線』(文春文庫)

2021-04-21 07:53:45 | 俳句
読書録 松本清張 『点と線』(文春文庫)
             金澤ひろあき
 JRが国鉄だった頃の話です。東京と博多を結ぶ「あさかぜ」という夜行特急がありました。昭和50年代まで私は福岡にいましたので、博多駅で「あさかぜ」の青い車体を見ています。その頃は九州に新幹線もなかったので、東京へ行く最高の列車でした。
 『点と線』の頃は、新幹線自体がなく、東京~博多が17時間以上もかかるので、当時は食堂車を連結していました。この食堂車の領収書に不審を抱いた福岡の鳥飼刑事が、心中事件にみせかけた殺人事件を解く鍵になって行きますから、大切な役を果たします。
 当時の東京駅13番ホームから、向かいの15番ホームを見渡せるのが、たった4分間であること。犯行現場の博多近郊の香椎に、国鉄と西鉄の駅があり、駅同士の間がゆっくり歩いても7分しかかからないこと。青函連絡船の乗船名簿、飛行機を使えば九州から移動して小樽の列車にアリバイ工作ができるように乗れること。鉄道ファンやミステリーファンにしてみればたいしたことではないかもしれませんが、当時の日本は新幹線もない、スマホやネットもない時代です。旅が今以上に「非日常」で、しかも不便だったのです。当時の読者はワクワクして読んだのではないでしょうか。制限の多い中で、犯人も犯人を追う三原警部補も、北海道と東京と九州を往復し、その描写がリアルなのです。今なお読んでひきつけられるのは、旅への想いと、このリアルさなのかなと思います。
 リアルといえば、この小説は某省の汚職事件を背景に殺人が起こる設定です。事件の中心人物の高官には法の力が及ばず、殺人の実行犯は死に、全てを知る部下が犠牲になっています。どこかで聞いたような話ですが、後に「社会派」作家になる松本清張の出発点の作品でもあることを実感します。

教科書によく出るシリーズ 大江山 十訓抄 訂正版

2021-04-20 10:50:34 | 俳句
教科書によく出るシリーズ
大江山 十訓抄 訂正版
【本文】1
① 和泉式部、保昌が妻にて丹後に下りけるほどに、②京に歌合ありけるに、
③ 小式部内侍、歌よみにとられてよみけるを、④定頼の中納言、たはぶれに小
式部内侍に、⑤「丹後へつかはしける人は参りたりや。⑥いかに心もとなく思すらむ」と言ひて、局の前を過ぎられけるを、⑦御簾よりなからばかり出でて、わづかに直衣の袖をひかへて、
⑧大江山いくのの道の遠ければまだふみもみず天橋立
とよみかけけり。⑨思はずにあさましくて、「こはいかに。⑩かかるやうやはある」とばかり言ひて、返歌にも及ばず、袖をひきはなちて逃げられにけり。⑪小式部、これより歌よみの世おぼえ出で来にけり。
(口語訳)1
① 和泉式部が、保昌の妻として丹後に行った時に、②京で歌合があったが、
③(和泉式部の娘の)小式部内侍が、歌を詠む選手に採用されて(和歌を)詠んだのを、④定頼の中納言が、冗談で小式部内侍がいた部屋に、⑤「丹後(のお母さんのところに)へ(代作の和歌をもらいに)おやりになった人は参上しましたか。⑥どんなに不安にお思いになられるのだろう。」と言って、小式部内侍の部屋の前を通り過ぎられたのを、⑦小式部内侍は御簾より体半分ぐらい出て、少し定頼の直衣の袖をつかんで、
⑧(母がいる丹後にいく途中にある)大江山に行く生野までの道は遠いのでまだ(母がいる所の近くの)天橋立の地を踏んでみていないし、母の手紙を見てもいない
と詠みかけた。
⑨思いがけないことで、定頼は意外に思って、「これはどうしたことだ。⑩このような様子があるだろうか、いやありえない。」とだけ言って、返事の和歌もできず、袖を引っ張り放って、お逃げになった。
⑪小式部は、これより歌人の世界で名声が出てきてしまった。
【語句説明】
① ・和泉式部・・平安時代中期の有名な女流歌人。恋多き女性であった。後で出てくる「小式部内侍」の母。
・保昌・・藤原保昌 武士。和泉式部が再婚していた。丹後の国司として、赴任している。
・下り(四段動詞 下る)・・都から地方へ行く
・「ける」(過去助動詞 けり) 
・ほど・・時
② ・歌合・・和歌を使ったゲーム。 2チームに分かれ、同じ題で作った和歌の優劣を競う。
③ れ(受身助動詞「る」) 
※助動詞「る」「らる」は、現代語の「れる」「られる」と同じ用法
  受身・尊敬・自発・可能  未然形接続
④・定頼の中納言・・藤原定頼 歌人 小式部内侍をなめている。小式部内侍が自分で和歌を作れるはずがない。母に代作してもらっているのだろうと言いがかりをつける。
・たはぶれ・・冗談
⑤・つかはし(四段動詞 つかはす)・・おやりになる
・参り(参る) 謙譲語 参上する
⑥・いかに・・どんなに
・心もとなく(形容詞 心もとなし)・・不安に思う
・思す(おぼす)尊敬語 お思いになる
・らむ(現在推量助動詞 らむ)
・局(よみ つぼね)・・小式部内侍のいる部屋
・られ(尊敬助動詞 らる)
⑦・御簾 (よみ みす) 部屋のしきりのカーテンの一種
・なから・・体半分
・ばかり・・ぐらい
・直衣(よみ のうし)・・男性貴族の正装
・ひかへ(下二段動詞 ひかふ)・・つかむ
※この時代の女性は、部屋の中にこもって、男に顔や姿をみせないのが普通。部屋の中から飛び出して来たというのは、小式部の怒りの激しさを表している。
⑧小式部内侍の和歌
・掛詞 1語で2つの意味を持つ語
「いく」 1 行く 2 生野の「生」
「ふみ」 1 踏み 2 文
・縁語 関係の深い言葉
「ふみ」と「橋」
※ こういう技巧を使えることが、歌人の実力だと思われていた。
・大江山・・・丹後へ行く途中にある山
・生野・・これも丹後の地名
・天橋立・・丹後宮津 和泉式部がいる近く
※ちなみにこの歌、百人一首にもとられ、小式部のおもて歌になっている。
⑨・思はずに(思はずなり) 思いがけないことに
・あさましく (形容詞 あさまし) 意外に思う あきれる
・こ・・これ
・いかに・・どうしたことだ
⑩・かかるやう・・このような様子
(具体的)小式部内侍が即座にすばらしい和歌を詠んだこと。
・やは(係り助詞 反語)  ~か、いや・・・
  結びは「ある」 ラ変動詞「あり」連体形
・返歌・・返事の和歌 和歌をもらうと、必ず返歌をするのがマナーだった。定頼はこれができなかったのである。
・及ばず・・できず
・逃げられ 「られ」は尊敬助動詞
・歌詠み・・歌人
・おもえ・・評判 名声
・出で来 (いでき カ変動詞 いでく) 出てくる
・にけり・・「に」(完了助動詞「ぬ」連用形 「けり」過去助動詞)

【本文】2
⑫これはうちまかせての理運のことなれども、かの卿の心には、これほどの歌、ただいま詠み出だすべしとは知られざりけるにや。
(口語訳)2
⑫これは一般的に当然のことであるけれども、あの公卿(定頼)の心には、これほどの和歌が、すぐに詠み出せるとはご存じではなかったのであろうか。
【語句説明】
⑫・うちまかせて・・一般的に 
・理運・・当然
・なれ(断定助動詞「なり」已然形 名詞接続)
・かの卿・・あの公卿=定頼
・ただいま・・すぐに 即座に
・べし(可能助動詞)
・れ(尊敬助動詞「る」)
・ざり (打消助動詞「ず」連用)
・ける(過去助動詞)
・にや 「に」・・断定助動詞「なり」連用形
    「や」・・係り助詞 疑問

フリー句「露天風呂」の巻

2021-04-20 07:51:45 | 俳句
フリー句「露天風呂」の巻
露天風呂雲に名前を付けていく    巡紅
新婚旅行は新緑の中         ひろあき
朝の海教会の鐘足止める       巡紅
永遠の誓いする時風が凪ぐ      ひろあき
光子ロケットのエンジン点火     巡紅
SFがすべて予言となっている    ひろあき
花占いする姫の背を見て従者溜息   巡紅
心の嵐押さえつけつけるがおさまらず ひろあき
毎年約4センチずつ遠ざかる月の強情さ 巡紅
人情噺の落語に出てくる大家さん   ひろあき
綱引き負けかけて一斉に手を離す   巡紅
うっちゃりで生き残っている土俵際  ひろあき
現場に出られなくなって数ヶ月で亡くなった親爺さん 巡紅
表彰状職場対抗運動会        ひろあき
イグノーベル賞14年連続日本人受賞  (人々を笑わせ考えさせた業績への賞) 巡紅
少年期の好奇心そのまま大人に    ひろあき
複素数で宇宙人見つけよう電波天文学 巡紅
割り切れない答追い求め続ける    ひろあき
何故猫は十二支から外れたか     巡紅
自由がいいさと月夜のおでかけ    ひろあき
デザートバイキング彼女を置いて外に出る 巡紅
春の闇に包まれて行く秘密      ひろあき
※イグノーベル賞は、ノーベル賞のパロディで設けられた賞だそうです。でも、イグノーベル賞とノーベル賞の両方を受賞したアンドレ・ガイムという学者もいます。そのうち日本人も・・・と期待しています。

2021年 4月 京都童心の会 通信句会作品

2021-04-19 07:47:16 | 俳句
2021年 4月 京都童心の会 通信句会作品

この中より、十五句を選んでください。さらに特選一句をお願いします。
特選句の選評をいただけるとありがたいです。

1 其夜其角忌其時何処其処
2 「ガロ編集室」文庫片手の薄霞
3 黙っている子供マスク越しのマスク
4 スマホ充電キュービズムの座席
5 春隣あしたの先のプラットホーム
6 流し雛潮目に乗りし加太の海
7 真直な禁裏の溝の蜷の道
8 ためらひもしりごみもなし蜷の道
9 綴織る爪先平ら木瓜の花
10 へそ石の臍に銭置く彼岸かな
11 彼岸会や六角堂にギャルの声
12 入学児ヒップに跳ねるランドセル
13 講堂に背高見立つ一年生
14 霾や周恩来の詩碑めぐる
15 霾や幌仕立てする人力車
16 春雨の足の踏み場の小川かな 
17 春雨や田圃の草の阿波踊り 
18 春雨や傘さす距離の無言行 
19 早咲きの花に追いつき並んでる 
20 春の夢首を吊るならこの陸橋 
21 花筏乞食坊主の旅日記 
22 春雨の読書合間の仕事かな (駅待ちタクシー)
23 花吹雪開いた傘の一人旅
24 蓮の種二千年後に花咲かす 
25 葉桜や蹴上に人の影まばら
26 のんびりと生きてても一日春の昼
27 吾が鬱は目も耳もダメ春うらら
28 春うらら今日は烏がよう騒ぐ
29 無花果の芽吹きを数えて春が来た
30 此頃はちっとも雀を見ない伏見へ行こうか
31 旅愁とかやテレビが代わって勤めを果たす
32 コロナ禍よテレビの旅で我慢しな
33 たった三輪の花水木風に揺れて笑ってる
34 肩がばんばん春は柔らかに締め付けてくる
35 あかつきを覚えて桜満開に
36 お花見は公園一周車窓にて
37 コロナ邪魔春らんまんが楽しめず
38 来年はきっと普通のお花見を(鬼が笑うでしょうか)
39 待ちこがれ新緑の風胸に受け
40 さあ行こう陽のもと楠の香りして
41 柿の芽の薄みどりに鳥遊び
42 ラベル・ファリアリズムに酔って眠られず
43 一年生ランドセルガチャガチャスキップし
44 街路樹やコロナに押される今春闘
45 花一輪子供呼び寄せハイポーズ
46 花は葉に遅れとらじと渡り鳥
47 コロナワクチン堤にぎわす菜花群
48 青もみじトンボの赤子先導す
49 青もみじ薬医門の鬼に獅子
50 谷瀬音杉の木立のしゃが の蝶
51 しゃが活けて偲ぶ故郷の登下校
52 泣きおさえママにバイバイ進級児
53 からたちやスマホにおさむ熟女かな
54 牡丹や葉のゆりかごに笑み給ふ
55 偏頭痛茗荷の角のつんつくつん
56 行く春や写メール届く同級網
57 寒椿庭の一隅ともしけり
58 春めくや窓辺に笹の葉づれ聞く
59 水仙の力尽くして開きけり
60 玄関の午後の陽だまり沈丁花
61 神戸より釘煮の届き妹達者
62 坪庭をひとりじめして蕗の薹
63 春の花窓辺せましと並べけり
64 土筆つんつん津波が来た空き地
65 バンクシー突如現れるしんきろう
66 花吹雪悪友達と散り散りに
67 春の虹同じ音符が鳴っている
68 協奏詩しだれ桜と降るしずく
69 春一番石ころころころ鬼ごっこ
70 桜は咲いたが相変わらずのわたしたち
71 町屋から美人出てくる夕桜
72 スキッとコロナいなくなり本当の春がほしい
73 花屑が風に巻かれるわたくしの行き先
74 春陽浴びラッパ水仙やわらかく
75 春の宵黄砂まみれのおぼろ月
76 黄砂去り晴れやか桜顔を出す
77 三階の窓から花見春うらら
78 花吹雪風に舞いつつこんにちわ
79 花冷えに肩をすくめて散歩する
80 ほつこりと残してほしい京町屋
81 春ですよ京都が私呼んでいる
82 美しく目も楽しめる京料理
83 オンライン野菜直売大成功(24才女性)
84 若紅葉光が当たって駆け出した
85 風船が民芸品に付いてくる
86 自転車は空気で出来てる針供養
87 終電の黒飴片付け秋早し
88 喉飴が跳ねるのをみた子猫達
89 制服の袖を縫う日春春日
90 ミルクティープチアンテナを立てている
91 竹の葉にゆりねみたいな涙かな
92 桜貝シップ貼る手があたたかい
93 残る雪コーヒーきっと遺伝する
94 「おしん」を生んだ親逝って世界中の涙
95 難病を越えてプールにタダイマ
96 その涙の中に輝く金メダル
97 やればできると夢叶う夢
98 空を見ていた君が消えたあの日
99 薄紅色の手を広げ陽に輝く花水木
101 恋猫の声に震え散る八重桜
102 アマビエも手を合わせて令和の祈り
103 遂に怒ったコロナは第四波
104 花の顎踏んでピカピカの制服
105 新緑が夜空に光る春愛し
106 お祝いや5月の節句鯉のぼり
107 病室から土筆が見えると父の声
108 新緑に心踊りし春爛漫
109 桜道通り抜けて満開か
110 春日和ツバメ鳴きては巣探して