ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

再び、マーラーの交響曲第9番を生演奏で聴く

2024年05月11日 00時00分00秒 | 音楽

 2024年5月10日の夕方、六本木駅の近くで夕食をとってからサントリーホールに向かいました。日本フィルハーモニー交響楽団の第760回東京定期演奏会のためです。

 演奏曲目はグスターフ・マーラーの交響曲第9番で、指揮は首席指揮者のカーチュン・ウォン氏です。このブログにも記したように、私は2022年10月15日、ヘルベルト・ブロムシュテット氏が指揮するNHK交響楽団による演奏をNHKホールで聴いています同年11月6日にはNHKのEテレの「クラシック音楽館」でも放送されました。勿論、私は見ました)。そして、2023年11月9日に記したように、ウォン氏の指揮の下で日本フィルハーモニー交響楽団がマーラーの交響曲第9番を演奏するという話を仕入れており、たしか2023年の12月に予約を入れました。

 指揮者も違う。交響楽団も違う。会場も違う。私がこれまで買ってきたCDでも、マーラーの交響曲第9番は全く違います。期待と不安が入り乱れました。

 私はサントリーホールに入り、2階席の右側、ヴィオラやコントラバスを見下ろせるような位置に座り、聴きました。

 開演前は不安のほうが高まりました。日本フィルハーモニー交響楽団のコンサートではプレトークがあるのですが、正直なところ、今回のプレトークは不要であるとしか言えなかったのです。今日の演奏曲と全く関係のない、今後の日フィルのコンサートの予定に関する話ばかりで、ハッキリ言えばどうでもよい内容でした。肝心のマーラーの交響曲第9番については最後にほんの数秒で終わったのではないでしょうか。NHK-FMのクラシック番組以外の音楽番組などで聞かれるような無駄話は(最近は何処かの店で流されているものを聞かされる程度であるためによくわかりませんが、昔のFM東京の音楽番組は特にひどく、ライヴ・アンダー・ザ・スカイの中継は15分くらい無駄なしゃべりで中身に入らなかったことをよく覚えています)、やめて欲しいものです。日本フィルハーモニー交響楽団には、真剣に再検討をお願い申し上げます。

 さて、19時を過ぎて開演ということで、第1楽章(Andante Comodo)が始まった途端に、2022年10月15日と2024年5月10日とでは全く違うという印象を受けました。「会場の違いか」、「私が座った席のせいか」とも思いましたが、それだけではないでしょう。

  2022年10月15日のほうは、事情によって氏が着席して指揮をしていたためか、淡々と進むような様子でした。演奏は淡々としていなかったのですが、2024年5月10日ほど管楽器の音量が大きくなかったような気もしました。ブロムシュテット氏とウォン氏とでは指揮のスタイルが全く違うので、演奏も違うのでしょう。

  2024年5月10日のほうは、第1楽章から第3楽章までは音量も大きく、速く進んでいきました。第2楽章および第3楽章は、ブロムシュテット氏指揮の演奏よりもウォン氏指揮の演奏のほうが、かなり荒々しかったという印象です。但し、第2楽章はIm Tempo eines gemächlichen Läntlers. Etwas täppisch und sehr derb、第3楽章はRondo-Burleske: Allegro assai, Sehr trotzigとなっているので、荒々しいくらいでよいのでしょう。

 「もしかしたら、第2楽章および第3楽章の荒々しさはかなりの意図が込められていたのではないか」と思ったのは、第4楽章(Sehr langsam und noch zurückhaltend)に入ってすぐのことでした。落差という表現をとってもよいくらいに、極端なくらいに違うのです。第4楽章は弦楽器が中心であり、速度もかなり遅くとられていました。2022年10月15日よりも遅かったのではないでしょうか。他の方はどうであるのかわかりませんが、私は、マーラーの交響曲第9番といえば第4楽章を好み、この変ニ長調の最終楽章のみを聴くこともあるくらいですし、第4楽章を基準に判断しますので、2024年5月10日の第4楽章は良かったと思いました。何小節目かは覚えていませんが(実家に置いてあるはずのミニスコアを持参すればよかったと後悔しました)、私が「ここだ!」と思う所があり、その部分のテンポが絶妙でした。軽いリタルダントがなされた後にDes、C、Bと弾かれる部分で、一種の「ため」のようなものが必要と考えられるところです。

 第4楽章の最後は、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラおよびチェロだけで演奏されます。そして、指示通りに消え入るように終わりましたが、やはりかなり長い余韻がありました。その後、割れんばかりの拍手が起こり、それが鳴り止まなかったのでした。10分以上は続いたでしょうか。何しろ、指揮者が3回、指揮台に登場して挨拶し、楽団員が退席する間も拍手が鳴っており、全員がステージから去っても鳴り続き、最後にはウォン氏、今回のソロ・コンサートマスターの田野倉雅秋氏、そしてもう一方の女性の演奏者(ハープ奏者の松井久子氏ではなかったしょうか)の3人のみが再びステージに現れました。演奏が終わったということで多くの方がスマートフォンで撮影をしており(開演前に、終演後であればステージを撮影してもよいとアナウンスされていたので)、私も3枚撮影しました。ただ、ここに載せるべきではないでしょう。載せてもよいのであれば載せますが、許可はいただけないでしょうし、私から許可を申し出るつもりもありません。

 そう言えば、2022年10月15日の時も拍手はなかなか鳴り止まなかったことを思い出しました。私も立って拍手したのです。そして2024年5月10日も。

 この交響曲が演奏されたら、アンコールの演奏は要りません。下手な選曲では雰囲気をぶち壊しますし、余程の人でなければアンコールの曲を選べないでしょう。生涯最後に聴いた曲がマーラーの交響曲第9番であってもよいほどなのですから。そのようなことを考えながら、六本木一丁目駅から南北線・目黒線、大井町線、田園都市線を乗り継ぎ、うちに帰りました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする