ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

大学院生の奨学金、一部返還免除への方向転換か

2024年03月21日 22時00分00秒 | 社会・経済

 昨日(2024年3月20日)付の朝日新聞朝刊31面14版に「大学院奨学金 教員になれば返済免除 文科省方針」という記事が掲載されていました。気になったので、ここで取り上げておきます。

 目が止まった理由は、私自身が大学院法学研究科博士後期課程に在籍していた時のみ、当時の日本育英会の奨学金を受けていたからです。現在はどうなのかよくわかりませんが、当時は、学部生、大学院修士課程(博士前期課程)学生、博士後期課程学生の別によって月額が異なっており、博士後期課程学生が最も高い額を受けていました(10万円を超えていました)。大学教員として就職したので支給されたのは2年間のみでしたが、返還免除が完全に認められるまで15年を要しました。日本育英会が指定する職種にて15年間在職する必要があるからです。この制度は2003年度か2004年度まで存在していましたが、廃止されてしまいました。ただ、「優れた業績を残した院生向けの既存の返還免除制度を活用して対応する」と書かれていますので、大学院生については返還免除制度が全く存在しないという訳でもないようです。

 さて、上記記事の話です。この記事に登場する「教職大学院」という言葉について説明がないのでよくわからなかったのですが、文部科学省のサイトにおいては次のように説明されています。

 「【教職大学院の概要】

 近年の社会の大きな変動の中、様々な専門的職種や領域において、大学院段階で養成されるより高度な専門的職業能力を備えた人材が求められています。教員養成の分野についても、子供たちの学ぶ意欲の低下や社会意識・自立心の低下、社会性の不足、いじめや不登校などの深刻な状況など学校教育の抱える課題の複雑・多様化する中で、こうした変化や諸課題に対応しうる高度な専門性と豊かな人間性・社会性を備えた力量ある教員が求められてきています。このため、教員養成教育の改善・充実を図るべく、高度専門職業人養成としての教員養成に特化した専門職大学院としての枠組みとして『教職大学院』制度が創設されました。

 教職大学院では、以下の人材を養成することを目的としています。

 1.学校現場における職務についての広い理解をもって自ら諸課題に積極的に取り組む資質能力を有し、新しい学校づくりの有力な一員となり得る新人教員

 2.学校現場が直面する諸課題の構造的・総合的な理解に立って、教科・学年・学校種の枠を超えた幅広い指導性を発揮できるスクールリーダー」

 教職大学院を修了し、かつ、正規教員に採用された者について、日本学生支援機構の奨学金の返済を全額免除するという方針を文部科学省が固めたのは3月19日のことです。2024年度に正規教員に採用された者から返済免除を適用するということです。随分と急な動きですが、国立大学で教育関係の学部を有する大学であれば教職大学院があるのに対し、公立大学には教職大学院がなく、私立大学でも聖徳大学、創価大学、玉川大学、帝京大学、早稲田大学、常葉大学および立命館大学にのみ教職大学院がないということが、何か意味するところがあるのだろうと思われるのですが、そこは脇に置いておきましょう。

 今回の方針は、あくまでも教職大学院在学中の奨学金についてのみを対象とするようで、その点にも注意を要します(学部生時代に受けた奨学金は対象外であるということです)。その一方、教職大学院以外の大学院の修了者であっても、教育活動に関して実習経験があれば返済免除となるようです。

 事実などがよくわからないので何の論評(というほどのものでもありません)を加えることはしませんが、上記記事には「23年度の採用者数でみると、教職大学院から国公私立学校の正規教員に採用されたのは753人。教職以外の大学院を加えれば、年間1千数百人が対象になる見通しだ」と書かれており、さらに「一方、正規教員に採用された大学・短大の学部卒業者も免除とするかは今後の検討課題とする。23年度採用で1万4794人(公立のみ)と人数の規模が大きく、他の職種とのバランスも考慮する必要があるためだ」とも書かれています。

 この方針が現実のものとなった場合に、教職大学院の立ち位置はどのように変化するのでしょうか。

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