ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

総動脈幹症

2011年10月12日 | 周産期医学

truncus arteriosus

【概念】 左右両心室から、単一大血管である総動脈幹に血液が流入し、それから大動脈と肺動脈に別れる心奇形である。通常は大きなVSDがある。発生初期に総動脈管から肺動脈が分割されず総動脈管が残遺することで生じる。頻度は全先天性心疾患の約0.7~0.8%である。

Truncus_arteriosus

【臨床症状】 新生児期あるいは乳児期早期より心不全症状を示す。肺血流量増加を伴う先天性心疾患に特有な多呼吸、哺乳力低下、体重増加不良、呼吸器感染の易罹患性などの症状がみられる。チアノーゼの程度は軽い。四肢末梢でbounding pulseを触知し、聴診では心基部に単一Ⅱ音の亢進を認める。

【検査所見】
・ 胸部X線: 左右心室の拡大と肺血管陰影の増強を示す。
・ 心電図: 両室肥大を示す。
・ 心エコー: 上行大動脈より肺動脈が出ていることを確認する。半月弁が1つ。総動脈幹が心室中隔に騎乗する。
・ 心カテーテル・心血管造影: 総動脈幹基部で造影すると、上行大動脈、肺動脈、冠動脈が同時に造影される。

【治療】 診断即外科治療が基本である。根治手術としては(graft導管により右室と肺動脈をつなぐ)Rastelli手術を行う。総じて早期の一期的根治手術が推奨されているが、新生児期の左右肺動脈絞扼術により2~3ヵ月まで根治手術を待機させることが可能であり、手術に伴う危険性を減少させるとの報告もある。

Rastelli

 

【予後】 肺動脈血管病変の進行が速いため、外科的手術が行われなければ予後不良。