港町のカフェテリア 『Sentimiento-Cinema』


献立は…  
シネマ・ポップス…ときどきイラスト

『すみらん』にて

2013-06-28 11:41:09 | ポップス

若かりし頃の思い出です。

当時、憬れ敬意を持っていた少し年上の女性に誘われて二人きりで楽しいひと時を過ごすことになりました。
三宮からセンター街を入り、星電社付近の北側の南北の路地にスタンドバー『すみらん』がありました。
紫煙がたちこめる店内は神戸っ子の好む小洒落れた雰囲気でした。
勿論、BGMはポピュラーで最新の流行曲が流れていました。
私たちは肩を並べて談笑していましたが、やがて聞き覚えのない曲が流れてきます。
「ねえ、この曲、知ってる?」
「いえ、初めて聞く曲ですよ」
「これはね、アダモの“いとしのパオラ”って曲なのよ。イイでしょ?」
「あ、ブルージーンと皮ジャンパーの…」
「そうよ。あの曲も素敵な曲ね」
という会話が交わされたように覚えています。
勿論、アダモの『ブルージーンと皮ジャンパー』という曲は何度か聞いて知ってはいました。
しかし、ブルージーンと皮ジャンパーといえばと当時では不良ファッションの定番でした。
私はそんなファッションを推奨している歌だと思い込んでいたのでちょっと敬遠していたのに、彼女は素敵な曲だと言う。
私はなぜなのか聞こう思いましたが、ためらっているうちに話題が変わって聞きそびれてしまいました。
彼女を絶対的に信じていた私は、後日、『ブルージーンと皮ジャンパー』のEPレコードを購入し、ジャケットの裏の歌詞を辞書を引きながら翻訳しました。
その内容は私の思っていたのとは真逆で、そんな若者を諌める内容でした。
なぜ彼女が素敵な曲と言ったかということにやっと気づいたものでした。


元来、米英よりも大陸文化に興味があった私でしたが、彼女と接したことでさらに拍車がかかり、
フランスやイタリアなどの大陸文化に傾倒し、絵画の作風にも大きな変化をもたらすきっかけとなりました。
それ以後、嗜好や物事の考え方についても彼女から計り知れないほど大きくて貴重な影響を受け、
何十年を経過した現在でもその影響下にあるといっても過言ではありません。

昭和41年6月28日(火曜日)の忘れられない一曲です。


サルヴァトーレ・アダモ『いとしのパオラ』YOUTUBEより


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