弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

年齢・性別と人殺し比率の関係

2006-06-12 00:15:28 | 歴史・社会
以前の新聞で、以下のような記事を見たことがあります。
「人が殺人を犯す比率は、年齢・性別の影響を強く受ける。世界中どの国でも、文化・宗教によらず共通している。二十台前半の男性が殺人を犯す比率が圧倒的に多い。ところが唯一の例外があり、現代の日本では二十代男性の殺人比率が劇的に下がっている。」
という記事です。

詳しく知りたいと思ってググったところ、すぐに見つかりました。上記の議論は、長谷川眞理子先生が研究されていたのですね。先日の男と女の生産性を書かれた先生です。
ヒトがヒトを殺すとき」という取材記事の中に、世界共通の年齢別・性別の殺人比率(人口百万人当たりの殺人者数)のグラフが載っています。このグラフを見てください。
イングランドの例とシカゴの例で、見事なまでにグラフの形が同一です。女性は各年代いずれも殺人を犯す比率が少ないのに対し、男性のそれも二十代前半が飛び抜けて、殺人を犯す比率が高くなっています。ただし、イングランドとシカゴで縦軸の縮尺が異なることには注意が必要です。

次に、おなじ長谷川眞理子先生の「犯罪を科学する」という記事があります。
この記事の図1は、日本人全体の百万人当たり殺人検挙率の年別推移です。1900年から1955年までは(戦時中を除いて)安定して35人前後です。1955年から率は下がりはじめ、今では10人前後です。そしてその傾向を年齢別性別に解析したのが図2です。若い男性の人殺し比率が継続して下がった結果として、日本全体の殺人率が低減した、という事実が明らかです。こんな傾向を示す国は日本以外には存在しないそうです。

1.なぜ二十代の男性はどこの国でも高い比率で人を殺すのか
これについては上記2つの長谷川眞理子先生の記事を読んでください。一言でいうと「若い男性が殺人を犯す動機の半分以上は、面子やプライドを傷つけられたことが原因で相手を殺してしまう」というものです。

2.なぜ戦後の日本では二十代男性の殺人比率がこんなに下がったのか
長谷川先生は、「戦後の日本社会は、国全体が豊で、貧富の差が少なく、あまねく高学歴となり、国民のすべての層で若者がリスクを回避する要因が増加したからだ」と論じておられます。
そうであれば嬉しいです。
私が懸念するのは、「戦後の日本で男性がユニセックス化する傾向が増大し、それがために若い男性が人を殺さなくなったのだ」ということでなければいいが、というものです。
ところで、日本では毎年百万人前後の人が亡くなっていますが、死亡原因別で見ると、交通事故が8000人前後、自殺が3万人前後、他殺が800人前後です。
他殺の800人の中で、ニュースで大きく取り上げられるのが数十人程度でしょうか。直近では、一人の小学生が殺された事件がとりわけ話題になっています。われわれはニュースが取り上げた数十人についてはよく見聞していますが、「全体としてどのような傾向があり、その傾向は例年と比較して変化しているのかしていないのか」という観点では知ることができません。
マスコミには、個別の事件を詳細に報道するのみではなく、ぜひ全体像を描くように心がけていただきたいとお願いしたいです。
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