弁理士の日々

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「吉田調書」抜粋

2014-09-13 22:55:30 | サイエンス・パソコン
(10月4日修正)
「吉田調書」をはじめ、政府事故調査委員会ヒアリング記録が内閣官房で開示されました。
吉田調書だけでA4で400枚ということです。ちょっと眺めたら、テキストではなくイメージファイルですね。検索もできないし、これを読み通すことにはならなそうです。2年以上前、政府事故調中間報告、国会事故調報告書では、それぞれ両面で4~5cmの厚さになる書類を印刷して読みましたが、そのときほどの逼迫感はもちろんありません。

朝日新聞9月12日には、吉田調書の抜粋が2面ぶち抜きで掲載されています。当の朝日が掲載するのですから、5月20日の問題記事が依拠した部分は全部抜粋しているだろうと考え、取りあえずはこれだけ読むことにしました。

しかし、朝日新聞の抜粋を上記内閣官房の公表書類と比較してみると、朝日の抜粋では微妙に抜けているところがありました。そこで、朝日の抜粋のうちで5月20日記事が関連する部分について、内閣官房の公表書類を補って以下に掲載します。

また、朝日新聞デジタル『「吉田調書」福島原発事故、吉田昌郎所長が語ったもの』というサイトを見つけました。この中に出てくる吉田調書抜粋には、9月12日の朝日新聞記事に掲載された抜粋には出てこない部分があります。この部分が調書のどこに乗っているのかもわかったので(xls-hashimotoさん、ありがとうございます)、調書の記載順に則って並べ替えました(10月4日)。
以下で、「Q」「A」から始まる部分は朝日新聞の記事、「---」「吉田」から始まる部分は朝日新聞デジタルです。また「○質問者」「○回答者」で始まる部分は、内閣官房の資料から文字起こししたものです。

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朝日新聞デジタルに掲載された部分(その1)
2011/7/29 事故時の状況とその対応について (PDF:7,170KB) 56ページ

--- 2号機とは限らないんですが、3月15日の6時から6時10分ころ、その前後の話なんですが、このとき、一つは2号機の圧力抑制室の圧力が急激に低下してゼロになる。それから、このころ、何か。

吉田「爆発音ですね」

--- 音があったと。これは免震重要棟から聞こえたり、感じたりしましたか。衝撃なり音なりというのを。

吉田「免震重要棟には来ていないんです。思い出すと、この日の朝、菅総理が本店に来られるということでテレビ会議を通じて本店とつないでいたんです。我々は免震重要棟の中でテレビ会議を見ながらということでおったら、中操から、あのとき、中操にたまたま行っていたのかよくわからないですけれども、その辺は発電班の班長に聞いてもらった方が、記憶にないんですけれども、要するに、パラメーターがゼロになったという情報と、ぽんという音がしたという情報が入ってきたんですね。免震重要棟の本部席に」
 「私がまず思ったのは、そのときはまだドライウェル圧力はあったんです。ドライウェル圧力が残っていたから、普通で考えますと、ドライウェル圧力がまだ残っていて、サプチャンがゼロというのは考えられないんです。ただ、最悪、ドライウェルの圧力が全然信用できないとすると、サプチャンの圧力がゼロになっているということは、格納容器が破壊された可能性があるわけです。ですから保守的に考えて、これは格納容器が破損した可能性があるということで、ぼんという音が何がしかの破壊をされたのかということで、確認は不十分だったんですが、それを前提に非常事態だと私は判断して、これまた退避命令を出して、運転にかかわる人間と保修の主要な人間だけ残して一回退避しろという命令を出した

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朝日新聞9月12日吉田調書の抜粋に載っている内容は、事故時の状況とその対応について 4がそれに該当します。
まずはそのうちの52ページです。
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《2号機について》
○回答者 そうです。これもどこで燃料入れて、水が入ったか、覚えていないんですけれども、その後、下がっているんで、やはり水が入ったと思うんです。水が入ったら、逆に、今度は、水が過熱した燃料に触れますから、ふわっとフラッシュして、それで圧力がぐっと上がってしまったという現象だと思っているんですけれども、また水が入らなくなる。そういう形で若干落ちてきて、そういう現象だと私は思っているんですけれども、解析をやってみないとわからないです。いずれにしても、かなりこれは損傷して、メルトに近い状態になっていると私は思っていましたから。

○質問者 14日から15日のかけての夜ですね。

○回答者 はい。

○質問者 そのときは、実際、協力企業さんたちは帰られたんですね。

○回答者 まず、廊下にいる人はほとんど帰ったと。

○質問者 当時ですと、
 Q 本部に詰められている東電の社員の方々いますよね。その人たちはどう。

 A 本部といいますか、サイトですね。免震重要棟。そのときに、■君(政府が名を伏せている)という総務の人員を呼んで、これも密(ひそ)かに部屋へ呼んで、何人いるか確認しろと。協力企業の方は車で来ていらっしゃるから……。うちの人間は何人いるか確認しろ。特に運転・補修に関係ない人間の人数を調べておけと。本部籍の人間はしようがないですけれどもね。使えるバスは何台あるか。たしか2台か3台あると思って、運転手は大丈夫か、燃料入っているか、表に待機させろと。何かあったらすぐに発進して退避できるように準備を整えろというのは、こんなところに出てきていませんが、指示をしています。

 Q それは、2号機とか4号機がああいう感じに、15日の6時になりますね。それよりももっと前にそういうふうにして。

 A ずっと前です。2号機はだめだと思ったんです、ここで、はっきり言って。

 Q それは3号機とかよりも2号機。

 A 3号機は水入れていましたでしょう。1号も水入れていましたでしょう。水入らないんですもの。水入らないということは、ただ溶けていくだけですから、燃料が。燃料が溶けて1200度になりますと、何も冷やさないと、圧力容器の壁抜きますから、それから、格納容器の壁もそのどろどろで抜きますから、チャイナシンドロームになってしまうわけですよ。今、ぐずぐずとは言え、格納容器があり、圧力容器、それなりのバウンダリを構成しているわけですけれども、あれが全くなくなるわけですから、燃料分が全部外へ出てしまう。プルトニウムであれ、何であれ、今のセシウムどころの話ではないわけですよ。放射性物質が全部出て、まき散らしてしまうわけですから、我々のイメージは東日本壊滅ですよ。

 Q それで準備は一応、最低限の人間を残そうということで考えておられて、その後、すぐに退避というふうになっていないですね。

 A それは、水を入れに行ったわけですよ。水がやっと入ったんですよ。入ったという兆候が出たんで、そこで、水入ったというふうに喜んで、あとはずっと水を入れ続けるだけだということで、忘れてしまいました、はっきり言って、ここは忘れたいんだけれども、余りここの時間を取りたくないんですけれども、忘れてしまいましたけれども、やっと助かったと思ったタイミングがあるんです。(8月9日聴取)

(続いて、55ページから始まる部分です。)

 Q 3月15日の6時ぐらいに異変が生じて、最初は2号機の圧力が一気に低下していって、それから、衝撃音がしたということが合わさって、最初の報告のときは2号から報告が来て、2号であったんだろうという、この音と結びついてですね。その後、今度また4号の方という話も来るわけですね。しばらく人員が少なくなる。

 A バスで退避させました。2Fのほうに。

○質問者 このときというのは、例えば、さっきの引き続き爆発音というか、何があるかわからないから、しばらくは現場で作業とかはできないですね。ただ、注水の、例えば。

○回答者 それは、どちらかというとストップして何かしたかというと、周辺の放射線量だとか、そこをまずしっかり測れと。だから、何かあったと。何かあったから、まずは引き上げろと。一番重要なのは、放射線量が急激に増加する、格納容器が破れるということで急激に放射線量が上がるわけですから、それをまず確実に測定して連絡しろと。その値を見て、どう操作をするとか、次のステップを決める、こういうことですから、まずはそういう対応をした。

○質問者 その後、例えば、パラメータとか、要するに、何が起こったかと。

○回答者 中央操作室も一応、引き上げさせましたので、しばらくはそのパラメータは見られていない状況です。いずれにしても、まずは放射線量がどうかということで、それが大きく変化するようであれば、またそれは考えないといけませんし、まずはそこをしっかり見ましょうと。

○質問者 当時はこんなのがわかっていたのかどうか、定かではないんですけれども、これはどういう意味なんですか。3月16日のこの辺り、原子炉圧力がマイナス。

○回答者 データは、16日の1時ですね。2号機は、パラメータがわけがわからない状態になっていて、サプチェンがゼロからダウンスケールでしょう。圧力容器が、ドライウェルの方が高くて、サプチェンがそれより低い状態から、ドライウェルの圧力は残ったままサプチェンがゼロになって、それに引き続いてドライウェルの圧力がどんどん落ちてきた。水位はマイナスのままですね。炉圧も途中で変な値を出しているんで、逆に言うと、ここのプレークか何かによって、圧力計だとか、その辺の異常が起こったのかなと、こんなふうに思った。

○質問者 圧力計が仮に故障していなかったとして、圧力がマイナスの状態というのは考えがたい状況だというのがありますね。基本的にこれは圧力計が故障しているのだろうと、爆発の影響で。
 あと、一回退避していた人間たちが帰ってくるとき、聞いたあれだと、
 Q 3月15日の10時か、午前中に、GM(グループマネジャー)クラスの人たちは、基本的にほとんどの人たちが帰ってき始めていたと聞いていて、実際に2Fに退避した人が帰ってくる、その人にお話を伺ったんですけれども、どのクラスの人にまず帰ってこいとかいう。

 A 本当は私、2Fに行けと言っていないんですよ。ここがまた伝言ゲームのあれのところで、行くとしたら2Fかという話をやっていて、退避をして、車を用意してという話をしたら、伝言した人間は、運転手に、福島第二に行けという指示をしたんです。私は、福島第一の近辺で、所内に関わらず、線量の低いようなところに一回退避して次の指示を待てと言ったつもりなんですが、2Fに行ってしまいましたと言うんで、しようがないなと。2Fに着いた後、連絡をして、まずGMクラスは帰ってきてくれという話をして、まずはGMから帰ってきてということになったわけです。

○質問者 そうなんですか。そうすると、
 Q 所長の頭の中では、1F周辺の線量の低いところで、例えば、バスならバスの中で。

 A 今、2号機があって、2号機が一番危ないわけですね。放射能というか、放射線量。免震重要棟はその近くですから、ここから外れて、南側でも北側でも、線量が落ち着いているところで一回退避してくれというつもりで言ったんですが、確かに考えてみれば、みんな全面マスクしているわけです。それで何時間も退避していて、死んでしまうよねとなって、よく考えれば2Fに行った方がはるかに正しいと思ったわけです。いずれにしても2Fに行って、面を外してあれしたんだと思うんです。マスク外して。

 Q 最初にGMクラスを呼び戻しますね。それから、徐々に人は帰ってくるわけですけれども、それはこちらの方から、だれとだれ、悪いけれども、戻ってくれと。

 A 線量レベルが高くなりましたけれども、著しくあれしているわけではないんで、作業できる人間だとか、バックアップできる人間は各班で戻してくれという形は班長に。(8月9日聴取)
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朝日新聞デジタルに掲載された部分(その2)
2011/11/6 事故時の状況とその対応について (PDF:4,233KB)30ページの真ん中より下

○吉田所長 そのときの免震棟の本部の状況を言いますと、あれは菅さんが来ていたときです。来ていたというのは、本店の方にですね。朝から待機するだとか、訓示を垂れるか何か知らないですけれども、テレビ会議をつないでやっているときに、私自身は音を聞いていないです。

○質問者 聞こえなかったですか。

○吉田所長 私自身は免震重要棟で、そのタイミングでの音を聞いていないんですけれども、運転の方から、2号機のサプチャンの圧力がゼロになったという話と、音の話が先に入ってきたんです゜音とサプチャンゼロという話が入ってきて、2号かどうかはわかりませんが、音が聞こえたという事実と、2号のサプチャンがゼロになったという話があったんで、一番危険なことを考えると、そのときにまだ4号機の情報が入ってきていませんから、2号機が格納容器が破壊されてゼロになったんではないか。そのとき、ドライウェルの圧力がまだあったんで、本店からすると、ドライウェルの圧力があるんだから問題ないだろうと。それは遠くにいるから思うんであって、音を聞いて、サプチャンがゼロになったら、危ないと思うのは当たり前でしょう。ドライウェルの圧力計などは、計器そのものがほとんど信用できない状態だったものですから、まず、それを中心に、最低限の人間は置いておいて、避難しないといけないと言った。
吉田「20~30分たってから、4号機から帰ってきた人間がいて、4号機ぼろぼろですという話で、何だそれはというんで、写真を撮りに行かせたら、ぼこぼこになっていたわけです。当直長は誰だったか、斎藤君か、斎藤当直長が最初に帰って来て、どうなのと聞いたら、爆風がありましたと。その爆風は3、4号機のサービス建屋に入ったときかどうか、そんな話をして、爆風を感じて、彼は入っていくか、出ていくかだったか、帰りに見たら、4号機がぐずぐずになっていて、富田と斎藤が同じだったかどうか、私は覚えていないんだけれども、富田と斎藤から後で話を聞いたら、ぼんと爆風を感じた時間と、2号機のサプチャンのゼロの時間がたまたま同じぐらいなので、どちらか判断できないというのが私がそのときに思った話で。だけれども、2号機はサプチャンがゼロになっているわけですから、これはかなり危ない。ブレークしているとすると放射能が出てくるし、かなり危険な状態になるから、避難できる人は極力退避させておけという判断で退避させた
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(10月4日修正)
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「吉田調書抜粋」記事の修正 (snaito)
2014-10-04 15:30:48
上記記事において、記事記載当時には調書中の掲載位置が不明たった部分がありましたが、その後xls-hashimotoさんのご協力もあって判明したので、10月4日に記事内容を修正しました。
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