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野田政権の「日本再生戦略」

2012-08-05 10:36:44 | 歴史・社会
「日本再生戦略」の重点3分野、来年度予算に特別枠 財務相が表明
産経新聞 7月31日(火)14時53分配信
『政府の国家戦略会議(議長・野田佳彦首相)で策定された野田政権の経済成長戦略である「日本再生戦略」が、31日に閣議決定された。この決定を受け、安住淳財務相は同日の閣議後会見で、日本再生戦略で重点3分野と規定された医療、環境、農林漁業の3分野に予算を傾斜配分できるよう、平成25年度予算に特別枠を設定することを表明した。』

私は、『野田政権の経済成長戦略である「日本再生戦略」が、31日に閣議決定された』というニュースを見過ごしていたようです。気づきませんでした。本文はこちら(pdf)のようです。

この「日本再生戦略」に対して、岸博幸氏(オリンピックの影に隠れた“日本再生戦略”が示す政府の深刻な問題点)、古賀茂明氏(メールマガジン)による論評が出ています。

お二人の論評からピックアップすると・・・
○ マスコミではほとんどまともに取り上げられていない。
○ 中身が全くないと言って良い。
○ 内容はすべて官僚が書いている。縦割りで各省の各局ごと、各課ごとに自分たちがやりたい政策を出させて、それを官邸官僚がまとめ上げ、最後に政治家の顔を立てる味付けをして終わりだ。

○ 「デフレ脱却」を「当面の最大の課題」とし、「デフレという長年の問題と決別するチャンスであり、全力で取り組む」という決意だけを表明したが、前の「新成長戦略」とは異なり、デフレ脱却の達成時期は書き込まなかった。これにより、増税前にデフレ脱却する義務はなくなった。
○ デフレ脱却に関しては、デフレの原因について「需給ギャップの存在、企業や消費者の成長期待の低下、デフレ予想の固定化といった要因がある」と記述するのみで、デフレの主因である日銀の金融緩和不足には何も言及されていない。

○ エネルギーで予算を取りたいと考える経産省の作文は、延々と連ねられている。これから、壮大なエネルギー予算のバラマキが始まるのことは確実だ。
○ こうしてバラマキのためには、しっかりと細かく書き込んだのと対照的に、電力システム改革については、例えば発送電分離については、「送配電網の中立性を高めるなど更なる電力システム改革の実施」と極めて抽象的な表現にとどめた。

○ グリーン、ライフ、農林漁業の3つが重点分野に選ばれた理由について“暮らしの向上や経済・地域の活性化等に結び付き、その速やかな実施が特に求められる”という抽象的な記述しかなく、それを超える説得的な理由は何も示されていない。
○ グリーン(エネルギー・環境)、ライフ(健康)、農林漁業が3つの重点分野だとする報道が多いが、原文をよく読むと、そうではない。すなわち、
「グリーン(エネルギー・環境)、ライフ(健康)、農林漁業(6次産業化)などの重点分野については、・・・・・予算配分(重点配分)を徹底する」。
ちゃんとこの三つの分野を挙げた後に「などの重点分野」と書いてある。重点分野は3つに限定されるわけではないのだ。
○ 官僚、既得権グループ、族議員達が困る「規制改革」の「大玉」がまったく入っていない。今、最も必要な、規制改革を中心とした、「既得権と闘う成長戦略」への路線転換は今回もできなかった。
○ 重点分野の「ライフ成長戦略」を見ると、“医療・介護・健康関連産業を真に日本の成長産業とする”と啖呵を切ってはいるが、そのための具体策を見ると、これまで規制改革会議や経済財政諮問会議などで何度となく指摘されてきた医療や福祉の規制改革の具体策は皆無。“関連する規制・制度改革を進める”という抽象的な一言があるだけ。

○ 要は、中身の調整を官僚に丸投げして政治がしっかりとチェック/修正をしなかった結果、「日本再生戦略」の中身は官僚がやりたい政策、財務省に対する予算要求の根拠となる表現の羅列となってしまった。その意味では、この戦略は、日本の再生の主役となるべき民間に対するメッセージというよりも、霞ヶ関内部での自己満足ばかりという内向きなメッセージばかりという、霞ヶ関文学の集大成とも言える。

○ 「日本再生戦略」は、政治の官僚依存はひどくなる一方なのに、その官僚の質が激しく低下しているという政府の深刻な状況を示している。

いくら「内容が空疎だ」といっても、新聞がその中身について全く取り上げないというのは問題です。このままこっそり、官僚がバラマキのためのムダ遣いを始めてしまったらどうするのですか。
冒頭のニュースで安住財務大臣が「日本再生戦略で重点3分野と規定された医療、環境、農林漁業の3分野に予算を傾斜配分できるよう、平成25年度予算に特別枠を設定することを表明した」とありますが、「グリーン(エネルギー・環境)、ライフ(健康)、農林漁業(6次産業化)などの重点分野については」とあるように重点分野は3分野に限定されていません。各省庁が自分で「重点分野」と称すれば、それに対して特別枠の予算がついてしまうことになります。

ps 8/5 「日本再生戦略」に対する批評は、むしろ海外メディアで見ることができます。ニューヨークタイムズに「Japan’s Economic Plan Has Blanks to Fill」(By HIROKO TABUCHI, Published: July 30, 2012)が掲載されました。抄訳を外務省の海外主要メディアの日本関連報道)(「日本の経済戦略,具体策が必要」ヒロコ・タブチ記者)で読むことができます。
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