弁理士の日々

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再びデフレについて

2009-11-21 18:46:08 | 歴史・社会
「デフレ」認識、政府と日銀に温度差
11月20日23時0分配信 読売新聞
『政府が「デフレ」による経済への悪影響への危機感を強める一方、日本銀行は20日の金融政策決定会合で景気の現状認識を上方修正するなど、政府と日銀の間のデフレを巡る認識の違いが際立ってきた。』

デフレ宣言 利益出ない…経済界警戒 回復基調くじく悪循環
11月21日8時16分配信 フジサンケイ ビジネスアイ
『政府によるデフレ宣言は、回復基調にあった株式市場や企業業績に冷や水を浴びせる。企業活動は「作っても利益が出ない」「売ってももうからない」悪循環」に陥り、賃下げや失業増を招く恐れも強まるなど、経済界に警戒感が広がっている。』

そりゃそうですよね。
政府がデフレ宣言をするのみで、政府と日銀がともにデフレ脱却のための方策を打ち出さなかったら、国民と経済界をただ萎縮させるだけです。
日経平均の下げは止まらず、20日の終値は9500円割れです。ここ数日、景気回復の気分はあっという間に萎えてしまいました。

11月21日の日経朝刊から、「デフレと日銀の量的緩和」についての話題を拾ってみます。
1面では『「縮み」脱する成長策を』として
『税収の激減、景気の二番底懸念、そして今回のデフレ認定。日本経済に対する危機感を唐突に盛り上げるのが鳩山政権の習性のようだ。経済の全体像を見わたす司令塔が不在のまま困難な現実に直面して右往左往する。この繰り返しで根の深いデフレを克服できるのか、はなはだ心もとない。』
『政府が着手した経済対策も、麻生前政権で組んだ補正予算の凍結分を2次補正に充てる「組み替え」の色彩が濃い。
揚げ句の果てが「日銀頼み」である。菅直人経済財政担当相は「金融の果たすべき役割が多い」と注文をつけ、亀井静香金融担当相も日銀の認識の甘さを再三批判する。』
『世界市場の株価上昇と裏腹に、じわじわと4日続落した日経平均株価は、戦略不在で「買えない日本」への投資家の警告と受け止めるべきだ』

2面『社説 閉塞デフレ脱却に政府・日銀は足並みを』
『問題は政府の危機意識である。鳩山由紀夫政権は、まとまった経済政策が不在である。デフレの問題に正面から取り組んでいない。
日銀も金融は十分に緩和的だとして、追加的な対応には消極的である。行動できないことを理路整然と説明するだけでは、デフレの解消はおぼつかない。』
『デフレは物価変動を考慮した実質金利を高止まりさせ、円相場を経済の実力以上に高くする傾向にある。財政面での景気てこ入れは、長期金利の上昇を通じた意図せぬ円高という副作用を招く恐れもある。
政府・日銀が経済政策の運用で認識を共有できるなら、国債の買い入れ増額なども検討の余地があるだろう。経済財政諮問会議を廃止して以降、政府と日銀のトップが定例の話し合いの場を持っていない。そんな現状を一刻も早く改めるべきだ。』
『潜在的な需要の大きい医療、教育、保育などの分野の規制を一段と緩和することが大切だ。』

3面『資金供給の拡大 日銀総裁は慎重』
『日銀の白川方明総裁は20日記者会見し、設備投資や個人消費などの最終需要が大きく不足した状態では「流動性を供給するだけでは物価は上がらない」と指摘。デフレ克服に向けた資金供給の拡大に否定的な考えをにじませた。米連邦準備理事会(FRB)は現在、日銀のかつての量的緩和政策に匹敵する規模の資金を供給しているが「物価を押し上げる力は乏しい」とも語った。』
『総裁が追加融資の効果に懐疑的なのは、需要の弱さという「根本的な原因に働きかける」ことが今の局面では重要と考えているためだ。「家計の将来への安心感や企業の成長期待を確保することがもっとも大事」と述べ、現在の超低金利政策や潤沢な資金供給で「粘り強く支援していく」姿勢を改めて強調した。』
『日銀は景気悪化と物価下落の悪循環(デフレスパイラル)に陥らないように、金融システムの安定に務める構え。総裁は流動性が枯渇するような状況での資金供給は「物価下落を防ぐうえで大きな効果がある」と述べた。』

こうして見ると、政府と日銀はともに、自分では有効な手を打とうとせず、相手側に下駄を預けようとしているようです。
今の日銀総裁を実質的に選んだのは現民主党政権です。民主党政権と現日銀に、日本経済を立て直す力はあるのでしょうか。


ところで、「量的金融緩和政策」についていくつかの雑誌記事を拾ってみます。

Voice 10月号の緊急特集「民主党にこれだけは言いたい!」の中で竹中平蔵氏が『“生活水準”下落の悪夢 過剰な「格差是正策」で日本人は窮乏する』との論評をしています。
その中の『成長戦略とデフレ克服』において、
『私はこれまで何度も民主党に、マクロ経済についても議論すべきだと注文してきた。ところが、やるといいながら結局何もしなかった。』
『経済が成長しないと、何であれ物事を解決するのは極端に難しくなり、普通の人が生きていくのも非常に厳しくなる。』
『もう一つの「デフレの克服」はどうすべきか。・・・本来なら日本銀行が通貨供給量(マネーサプライ)を増やし、市場に出回るお金を増やす必要があるのだが、日銀はマネーを出していない。
私が大臣を務めているとき、・・アメリカのローレンス・サマーズ財務長官が来日し、日銀幹部と三人で食事をした。当時の日本経済は実質2%成長していたが、日銀はマネーを0.5%しか出していなかった。経済が実質2%成長なら、マネーは4%ぐらいに増やさなければ2%成長の物価上昇にならない。そこで私は日銀の幹部にもっとマネーを出したらいかがですか」と訪ねたのだが、答えは「日銀のバランスシートが大きくなるから出せない」というものであった。
サマーズ財務長官はこのとき、「So what?(それがどうした?)」と驚いたものである。日銀にはシニョレッジ(通貨発行によって発行者が取得する利益)が与えられている。だからバランスシートが大きくなっても問題はない。・・・いわば日銀は日本経済より、自分の「勝手な美学」を大事に考えているのだ。
本来なら、これを是正するのが政府の責任である。多くの国で、政府は中央銀行に対して年1~2%の物価上昇率を実現するように目標を課している。・・・ところが日本でこの議論をすると、メディアを含め、「日銀の独立性」を盾に囂々たる批判が巻き起こる。
だがこれは「日銀の独立性」をはき違えた議論である。独立性には「目標の独立性」と「手段の独立性」の2種類あって、本来、中央銀行が持つべきは「手段の独立性」なのである。中央銀行には目標を勝手に決める権限はない。決めるのは国民の代表である政府でなければならない。』

一方、Voice 11月号で大前研一氏が『爆発的に経済成長する法 鳩山首相に贈る「100万都市」大改造計画』との論評をしています。
その『①もはやマクロ経済政策は時代遅れ』において
『マクロ経済政策が効かない第一の理由。それは経済に国境がなくなったこと、つまり世界が「ボーダーレス化」したからである。
・・・マネタリストの議論では、マネーサプライ(通貨供給量)を増やして景気を刺激する、インフレを作り出す、となる。
しかし少なくともここ15年間の日本、あるいはここ1年間のアメリカで、これらの古典的経済政策はまったく効果を上げていない。』
『マネーサプライを見ても、日本の経済規模を考えれば、市場に流れるお金は20兆~30兆円あれば十分である。しかし現在の流通量はその3倍にあたる93兆円だ。それほどのお金が出回ってもほとんど借り手がいない。まずはそのような事実を冷静に認識しなければならない。』
と述べています。

前回の記事でも、経済学者で駒澤大学准教授の飯田泰之氏、経済学者で上武大学教授の田中秀臣氏は「量的緩和政策」に賛成、経済学者の池田信夫氏、アメリカの投資銀行に勤めている藤沢数希氏は「効果がない」という意見であることを紹介しました。

これだけ意見が分かれるのであったら、各人が勝手に自分の見解を表明するに止まらず、賛成派と反対派が一堂に会して議論を展開してほしいものです。そうしてもらわないと、素人であるわれわれにはどちらの見解が正しいのか、皆目見当がつきません。
そうこうしているうちに実体経済におけるデフレはどんどん進行しているのです。一刻の猶予もならないと思います。
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